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お知らせ
  • 「ターゲットタンパク研究プログラム(TPRP)」は2007年から5年間実施され2011年度末に一応終了致しましたが、2012年度以後も、ターゲットタンパク研究分野の基本的生命医学・薬学等への貢献そして食品・環境等の産業利用、ならびに、技術開発研究課題の生産解析制御そして情報の各領域から成果がさまざまな形で発表・提供されています。特に、技術研究開発課題の成果は、創薬等支援技術基盤プラットフォーム事業に継承されて、構造生命科学の基盤として機能し始めています。  本ポータルサイトでは、これからも2012年3月までの研究成果の集約を開示し続けるとともに、その後の展開も「構造ギャラリー」と「構造生命科学ニュースウオッチ」でご紹介してまいります。

ターゲットタンパク研究プログラム(TPRP)に対する総合科学技術会議の事後評価結果を本サイトの「評価」ページに掲載しました
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構造生命科学ニュースウオッチ
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PINK1の変異はミトコンドリアの膜電位を低下させることによってパーキンソン病を引き起こす

セレンとトレオニンをリン酸化するキナーゼの一種であるPINK1の変異がパーキンソン病(以下、PD)を引き起こす分子機構について、ベルギーのBart De Strooper等の研究グループが、ショウジョウバエ、マウスそしてPD患者由来の細胞を使った実験結果に基づいて、新たな仮説を提唱した。Pink1遺伝子をノックアウトしたモデル生物由来の細胞とPink1が変異しているPD患者の細胞において、ミトコンドリアにおけるエネルギー生産に決定的な役割を果たすComplex I NADHデヒドロゲナーゼ)のリン酸化が正常に進まず、ミトコンドリア膜電位が低下し、ATP合成が進まなくなることを見出した。Complex I のサブユニットNdufA10の250番目のセリンがリン酸化されないという異常を回復すると、マウス細胞と患者由来の幹細胞においてPDの症状が軽減あるいは消滅した。リン酸化を促進するあるいは脱リン酸化を抑制するという観点からPDの新しい治療法が生まれる可能性がある。
原著論文→ Morais VAet al. PINK1 Loss-of-Function Mutations Affect Mitochondrial Complex I Activity via NdufA10 Ubiquinone Uncoupling. Science 2014 Apr 11;344(6180):203-7. Published Online March 20 2014
THIS WEEK IN SCIENCE→ In the PINK1. Science 2014 Apr 11;344(6180):125.

HIPHOPで躍動するケミカルジェノミックス

ケミカルジェノミックス(chemical genomics、以下CG)の解析プラットフォームHIP-HOPによって、薬らしい小分子化合物に対する酵母(Saccharomyces cerevisiae)遺伝子の応答がin vivoで網羅的に明らかにされた。HIPは、化合物のターゲットとなる遺伝子を1コピーしか持たないヘテロ接合型においてその遺伝子産物の産生が劣化する程度(haploinsufficiency)を示すプロファイル(profile)である。HOPは、ホモ接合型(homozygous)において化合物が遺伝子に与える影響を示すプロフィルである。Guri Giaeverが率いるトロント大学(カナダ)のHip-Hop CG研究室スタンフォード大学酵母CG研究室などと共同で、ヘテロ接合型酵母1,095系統とホモ接合型酵母4,810系統について、3,250種類の小分子化合物に対するHIP-HOPプロファイルを測定・解析した。その結果、121種類の遺伝子の機能を特異的に阻害する化合物317種を同定し、これらの遺伝子は例えば細胞周期やDNA損傷応答など45種類の細胞応答に属していることを明らかにした。本研究で集約されたプロファイルは、HIPHOP chemogenomics databaseとして公開されており、ダウンロードすることも可能である。
【注】バイオロジーの外の世界では、hip hop1970年代に米国ブロンクス地区で生まれた文化を意味し、ラップ、DJ、ブレイクダンス、グラフィティーがその4大要素と言われている。
原著論文→ Lee AY.et al. Mapping the Cellular Response to Small Molecules Using Chemogenomic Fitness Signatures. Science 11 April 2014;344(6180):208-211.
THIS WEEK IN SCIENCE→ Yeasty HIPHOP. Science 11 April 2014;344(6180):125.

抗がん剤開発のターゲットに新たな展開:がん細胞特有の遺伝的変異からがん細胞に必須の酵素へ

Nature Reviews Cancer2014年4月17日号RESEARCH HIGHLIGHTは、酸化ストレスから細胞を保護する酵素MTH1が抗がん剤のターゲットになることを示したNature4月10日号掲載2論文を取り上げた。カロリンスカ研究所のThomas Helledayが率いるスウェーデンの研究グループは(Article_1)MTH1が正常細胞にとっては必須の酵素ではないが、癌細胞ではその特有のレドックス反応によって産生される活性酸素種から受けるストレスを免れるために必須な酵素であることを示した。また、MTH1の活性部位に結合して活性を阻害することによって抗がん作用を示す低分子化合物を見いだした。Giulio Superti-Furga等のオーストラリア・英国・スウェーデンのグループは(Article_2)RASの異常に因るがん化を抑制する小分子SCH51344の作用機序を明らかにしていく過程で、そのターゲットがMTH1であることを特定し、化合物のスクリーニング範囲を広げて、すでに米国等では非小細胞肺がんの抗がん剤として認可されていたクリゾチニブMTH1を阻害することを見出した。驚くべきことに、臨床で用いられている鏡像異性体(R)エナンチオマーではなく(S)-エナンチオマーがMTH1の活性を選択的に阻害した。MTH1をターゲットとした抗がん剤は、多様ながん細胞に共通に有効でありまた薬剤耐性の問題を回避できることを期待できる。
RESEARCH HIGHLIGHT→ Gemma KA. DNA DAMAGE:De-sanitizing tumour cells. Nature Reviews Cancer Published online 17 April 2014
NEWS & VIEWS→ Dominissini D, He C. Cancer: Damage prevention targeted. Nature 2014 Apr 10;508(7495):191-2.
Article_1→ Gad H.et al. MTH1 inhibition eradicates cancer by preventing sanitation of the dNTP pool. Nature 2014 Apr 10;508(7495):215-21. Corrected online 10 April 2014
Article_2→ Huber KV. et al. Stereospecific targeting of MTH1 by (S)-crizotinib as an anticancer strategy. Nature 2014 Apr 10;508(7495):222-7. Published online 02 April 2014

p53とNF-κBはヒトのマクロファージにおいて炎症誘発性遺伝子応答を同時制御する

ガンの化学療法において炎症を抑制することは、患者の負担を軽減し、治療効果を上げる重要なポイントである。米国NIEHSJulie M. LoweMichael A. Resnick等は、抗腫瘍化合物Nutlin-3を外因性刺激として与える実験から、ヒトの単球とマクロファージの場合に限って、ガン抑制遺伝子産物p53と免疫応答を担う転写因子NF-κBのサブユニットp65が炎症性サイトカインIL-6プロモーター領域に結合して、IL-6発現を亢進することを見いだした。また、IL-6以外にも、p53とNF-κBによって発現が同時制御される(coregulate)サイトカインCXCL1などのケモカインの存在も確認した。したがって、この発現パスウエーを制御することによって炎症を軽減することが可能である。一方で、腫瘍微小環境にある腫瘍関連マクロファージ(tumor-associated macrophages; TAMs)の場合は、p53が腫瘍からのパラクリン因子に応答してIL-6発現を亢進することを見い出した。TAMにおけるp53の活性化には、セネッセンスを介して腫瘍を縮小に導く方向と、血管形成や腫瘍関連好中球などを介して腫瘍を増殖に導く方向とがあり、p53が腫瘍形成に及ぼす総合的評価が今後の課題となる。
原著論文→ Lowe JM.et al. p53 and NF-κB Coregulate Proinflammatory Gene Responses in Human Macrophages. Cancer Res. 2014 Apr 15;74(8):2182-92.
レビュー(免疫応答と腫瘍形成)→ Chimal-Ramirez GK, Espinoza-Sanchez NA, Fuentes-Panana EM. Protumor Activities of the Immune Response: Insights in the Mechanisms of Immunological Shift, Oncotraining, and Oncopromotion. Journal of Oncology vol. 2013, Article ID 835956, 16 pages, 2013. Published online 14 Mar 2013

抗原とアジュバントはアルブミンに乗って一路リンパ節に向かう

生ワクチンや不活性化ワクチンに比べて、抗原として機能する部分のみを含むサブユニットワクチンは安全性が高いが、免疫原生が弱いため、投与方法に工夫が必要である。今回、MITのDarrell J. Irvine等は、サブユニットワクチンをリンパ節へ集中的に送り込む新手法を開発した。がん患者においてアルブミンと結合した色素が蓄積されることを利用してセンチネルリンパ節を可視化していたことに学び、新手法は、ペプチド抗原または抗原性を補強するアジュバントアルブミンに結合させた両親媒性物質ワクチン(amphiphiles vaccine; amph-vaccine)を設計したものである。構造を最適化したCpG-DNA/ペプチドamph-vaccinesは、マウスにおいて、免疫原性と抗腫瘍性を示し、また、全身性の毒性を抑制した。
【注】Irvineは論文の筆頭著者Haipeng Liuとともにamph-vaccineを特許出願した。
原著論文→ Liu H.et al. Structure-based programming of lymph-node targeting in molecular vaccines. Nature 2014 Mar 27;507(7493):519-22. Published online 16 February 2014
MIT NEWS→ Hitchhiking vaccines boost immunity - New MIT vaccines that catch a ride to immune cell depots could help fight cancer and HIV. 2014 February 16.


TPプレスリリース(2013年4月末まで)
  2013年5月以後も、プログラムの研究成果が発表されてまいりますが、プレスリリースにつきましては、構造生命科学ニュースウオッチの記事としてご紹介してまいります。
TP論文オンライン(2013年3月末まで)
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