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お知らせ
  • 「ターゲットタンパク研究プログラム(TPRP)」は2007年から5年間実施され2011年度末に一応終了致しましたが、2012年度以後も、ターゲットタンパク研究分野の基本的生命医学・薬学等への貢献そして食品・環境等の産業利用、ならびに、技術開発研究課題の生産解析制御そして情報の各領域から成果がさまざまな形で発表・提供されています。特に、技術研究開発課題の成果は、創薬等支援技術基盤プラットフォーム事業に継承されて、構造生命科学の基盤として機能し始めています。  本ポータルサイトでは、これからも2012年3月までの研究成果の集約を開示し続けるとともに、その後の展開も「構造ギャラリー」と「構造生命科学ニュースウオッチ」でご紹介してまいります。

ターゲットタンパク研究プログラム(TPRP)に対する総合科学技術会議の事後評価結果を本サイトの「評価」ページに掲載しました
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構造生命科学ニュースウオッチ
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CRISPR-Cas9で実現可能性が高まったgene drive技術の健全な発展を目指す

Gene driveの実用化に関する論説が7月17日号のScienceeLIFEに掲載された。Gene driveは、英国Imperial CollegeのAustin Burtの手になる2003年の論文"Site-specific selfish genes as tools for the control and genetic engineering of natural populations"を端緒として広がったコンセプトである。具体的には、非メンデル遺伝する利己的遺伝子に倣って、有性生殖する特定の生物集団をターゲットとして、世代交代を重ねる中で特定の遺伝子を有する集団へと置き換えていく戦略である。Gene driveをコントロールする技術によって、感染症を媒介する生物や駆除剤に抵抗性を得た害虫や雑草への対処や、外来侵入種の絶滅が可能になる。例えば、ハマダラカのゲノムを編集して、マラリア原虫に抵抗性を持った集団に置き換えることによって、マラリアを終息させる戦略が考えられる。いうまでもなく、gene driveの実用化には、ターゲットとする生物種に意図せざる形質が現れず、また、ターゲット以外の生物種には影響しないといった安全性が保証される事が前提である。Austin Burtの論文から10年、新たなゲノム編集技術"CRISPR-Cas9"によるgene driveの具現化について、MITのKenneth A. Oye等とHarvard Medical SchoolのGeorge M Church等が、研究開発の将来を展望し、安全性と規制について論ずるとともに、社会的受容を得ながらこの新しい技術の研究開発を進めていく事が肝要であると提言した。
科学政策(投稿)→ Oye KA, Esvelt K, Appleton E, Catteruccia F, Church G, Kuiken T, Lightfoot SB, McNamara J, Smidler A, Collins JP. Regulating gene drives. Science 2014 Jul 17. pii: 1254287.
レビュー→ Esvelt KM, Smidler AL, Catteruccia F, Church GM. Concerning RNA-guided gene drives for the alteration of wild populations. eLIFE 2014 Jul 17:e03401.

サリドマイドとユビキチンリガーゼの構成因子セレブロンとの複合体の構造から、サリドマイドの二面性を読み解く 

サリドマイドは、1950年代に鎮静剤として広く用いられていたが、1961年に催奇性が報告され販売中止・回収に至った。1990年代に入ると、ハンセン病、多発性骨髄腫、5番染色体長腕部欠失を伴う骨髄異形成症候群(5q-症候群)に対して薬効を示すことが明らかになり、現在では、サリドマイドとその誘導体が免疫調整薬(immunomodulatory drugs: IMiDs)として臨床に用いられている。また、IMiDsがE3ユビキチンリガーゼであるCUL4?RBX1?DDB1?CRBN(CRL4CRBN)のCRBN(Cereblon)をターゲットとすることや、骨髄腫において、IKAROSファミリーのIKZF1(IKAROS)IKZF3(AIOLOS)をユビキチン化し分解することも明らかにされてきた。
   今回、Friedrich Miescher Institute for Biomedical ResearchのNicolas H. Thoma等のスイスと米国の研究チームは、E3ユビキチンリガーゼの構成因子DDB1-CRBNとIMiDs(サリドマイドならびにその誘導体であるレナリドマイドポマリドマイド)の3種類の複合体の構造解析と機能解析を行い、IMiDとCRBNの結合と、タンパク質のユビキチン化との間を結び付ける分子機構のモデルを提示した。
   CRBNは、N末端ドメイン(NTD) 、中央部のαヘリックスからなるドメイン(HBD)およびC末端ドメイン(CTD)からなり、HBDがDDB1のくぼみに入り込んでDDB1と結合し、CTDにはIMiDsがエナンチオ選択的に結合するポケットが存在していた。E3ユビキチンリガーゼにおいてCUL4はDDB1の周囲150°にわたり回転することで、リジンをターゲットとするユビキチン化を広い空間にわたって実現する。さて、CRBNの基質は本来IMiDsだけではない。Nicolas H. Thoma等は、ヒトタンパク質のマイクロアレー(タンパク質数9,000規模)を使ったスクリーニングから、CRBNが結合する内在性基質としてホメオボックス転写因子MEIS2を同定した。
   IMiDsとMEIS2のCRBNへの結合は相互排他的であり、IMiDが誘導するIKAROS転写因子のユビキチン化と分解は、同時に、MEIS2のような内在性基質のCRL4CRBNへのリクルートひいてはユビキチン化に干渉する。CBRN-IMiD-IKAROS複合体の構造解析によってこうした結合の分子機序がより深く理解できることになるが、IMiDsの催奇性と薬効の二面性は、IMiDsのCRL4CRBNを介したタンパク質制御の様式として、下方制御(downregulate)と上方制御(upregulate)が共存していることによると考えられる。
論文→ Fischer, ES. et al. Structure of the DDB1?CRBN E3 ubiquitin ligase in complex with thalidomide Nature Published online 16 July 2014
構造→ 4CI1: Structure of the DDB1-CRBN E3 ubiquitin ligase bound to Thalidomide (分解能3.0Å)
構造→ 4CI2:Structure of the DDB1-CRBN E3 ubiquitin ligase bound to Lenalodomide (分解能3.0Å)
構造→ 4CI3: Structure of the DDB1-CRBN E3 ubiquitin ligase bound to Pomalidomide (分解能3.5Å)

ヒトCOP9シグナロソーム(CSN)の結晶構造を解き、そのユビキチンリガーゼ調節の分子機構を明らかにした

ユビキチンは、文字通り生体内のさまざまな場において他のタンパク質を修飾し生命現象において多彩な役割を担っている。このため、その活性は多段階の分子機構によって精緻に調節されている。例えば、Cullin-RING E3ユビキチンリガーゼ(CRLs)の活性は、8つのサブユニットで構成されるCOP9シグナロソーム(CSN)によって調節されている。CSNは、CRLsに共有結合しているユビキチン様タンパク質NEDD8をCRLsから解離してCRLsを不活性化するとともに、CRLsに結合して不活性状態に保つ。CSNによるNEDD8の解離は、CSNのサブユニットの一つでZn2+依存性のイソペプチダーゼ"CNS5"によって触媒される。CNS5におけるJAB1/ MPN/MOV34 (JAMM)ドメインがその活性部位であるが、CSN5単独では活性を示さない。今回、Friedrich Miescher Institute for Biomedical ResearchのNicolas H. Thoma等の研究チームは、およそ350-kDaのヒトCSNホロ酵素の結晶構造を分解能3.8Åで決定し、この複合体の分子機構を詳らかにした。
   CSNは全体として指を広げた手の形をしており、掌にあたる部分には3つの構造が複雑に重なっていた:(1)8つのサブセットのうち「指」にあたるCSN1, CSN2, CSN4, CSN7, CSN8, CSN3の6つのプロテアソームの付け根の部分"lid-CSN-initiator factor 3(PCI)ドメインが集合した馬蹄型のリング構造";(2)CSN1からCSN8までの全てのサブユニットのC末端αヘリックスの束が集中した"box"構造;(3)CSN5とCSN6のヘテロダイマー。基質に結合していない状態のCSNにおいては、CSN5には自己抑制がかかっており活性を示さない。NEDD8と結合している状態のCRLがCSNに結合すると、CSN4のコンフォメーションが変わり、CSN6-CSN5のコンフォメーションの変化を引き起こし、それによってCSN5が活性化して、NEDD8をCRLから解離する(deneddylase)に至る。基質との結合がきっかけとなるCSN5の活性化の分子機構は、他のJAMMドメインを有する酵素の活性化機構にはないCSB5に特異的な機構である。
【注】"シグナロソームとは、細胞外のシグナルが細胞内に伝わる際に特異的受容体とシグナル伝達機構が集積する情報変換装置のことをさす"(平成22-26年度新学術領域研究「修飾シグナル病 - COP9シグナロソームを介した脱Nedd8化によるシグナル伝達と発がんの理解」課題(研究代表者:奈良先端大加藤順也)Web頁より)
論文→ Lingaraju, GM. et al. Crystal structure of the human COP9 signalosome. Nature Published online 16 July 2014
Nature News & Views→ Deshaies, RJ. Structural biology: Corralling a protein-degradation regulator. Nature Published online 16 July 2014
構造→ 4D10: Crystal structure of the COP9 signalosome
構造→ 4D18: Crystal structure of the COP9 signalosome
構造→ 4D0P: Crystal structure of human CSN4

タンパク質分解と転写の双方に寄与するE3ユビキチンリガーゼの設計原理を数理モデルで探った

E3ユビキチンリガーゼは、ユビキチン-プロテアソーム系(ubiquitin-proteasome system:UPS)において、基質を認識してユビキチンを転移し、ターゲットのタンパク質の分解に寄与する。一方で、最近、E3ユビキチンリガーゼが転写の活性化にも寄与することが分かって来た。今回、KAISTKwang-Hyun Cho等は、タンパク質分解と転写という一見相反する機能を示すE3ユビキチンリガーゼの設計原理を探るべく、integrated transcription and UPS-dependent degradation (ITUD)と名付けた数理モデルを開発した。ITUDは、細胞外からのシグナルや細胞内の生体高分子(S)、産物(P)とPの遺伝子発現を促進する転写因子(T)、ポリユビキチン化された転写因子(ubT)、そして、Tの分解と同時にTの転写を促進するE3ユビキチンリガーゼ(E3)の5要素で構成され、また、E3はTによってトランス活性化されると設定された。ITUDの出力(すなわちP)は、E3に対するノックダウンから過剰発現までの擾乱に対して二相性を示したが、その由来を、E3に関する単量体と二量体、細胞質と核との間のシャトル輸送と局在、リン酸化と脱リン酸化の観点から論じた。その上で、E3がタンパク質分解と転写活性化の一見相矛盾する働きを有しているのは、E3が不安定になっても細胞機能の過剰な活性化が起こらないようにする安全インターロックの設計原理に対応するものとした。また、ITUDモデルを使って、E3ユビキチンリガーゼをターゲットとする抗がん剤の評価も試みた。
論文→ Lee D, Kim M, Cho KH. A design principle underlying the paradoxical roles of E3 ubiquitin ligases. Sci Rep. 2014 Jul 4;4:5573.

甘味受容体のT1r2とT1r3の細胞内膜輸送の仕組みが、ヒトとマウスで異なっていた

食品開発において味の評価は必須であり、専門家による官能評価が行われているが、より簡便かつ客観的評価法が求められている。味を認識するに至る分子機序については、甘味、苦味、酸味、塩味、うま味の基本味の元になる分子が味覚受容体に結合し、そのシグナルが脳に伝達されることで味として認識される仕組みは、マウス等のモデル動物によって解明されてきており、また、食品の味の評価にもマウスが使われてきたが、生物種によって味感受の分子機序が異なるという報告もなされるようになってきた。今回、農研機構、理化学研究所ならびに岡山大学は、ヒトとマウスの甘味受容の分子機序に違いがあることを明らかにした。
   ヒトとマウスの甘味受容体はいずれも、二種類のタンパク質"T1r2"と"T1r3"が結合したヘテロダイマーとして細胞膜において機能する。しかしそれぞれが細胞膜へ移動する仕組みにはヒトとマウスの間で大きな違いがあった。マウスの場合、T1r3単独で細胞膜に移動するのに対して、ヒトの場合は、T1r3の細胞外領域にT1r3の細胞膜への移動を妨げる部位があるために、T1r2が共存してはじめてT1r3が細胞膜に移動できる。ヒトの甘味受容体のこの新奇な輸送機構は興味深い。また、今回の成果をもとに、これまでの官能検査に匹敵する味覚検査をヒトのタンパク質とヒト細胞によって実現していくことが考えられる。(本稿は、主として農研機構のプレスリリースを編集したものであるが、文責は構造生命科学ニュースウオッチ欄にある)
【注】本研究の一部は文部科学省ターゲットタンパク研究プログラム課題「新規味物質・味評価法開発に重要な味覚受容体の構造・機能解析」によって支援された。
論文→ Shimizu, M. et al. Distinct Human and Mouse Membrane Trafficking Systems for Sweet Taste Receptors T1r2 and T1r3. PLoS ONE 2014;9(7):e100425. Published online 2014 July 16
農研機構プレスリリース→ ヒトとマウスの甘味受容体の機能の違いを解明 - ヒトの客観的な味覚評価法の構築に向けて - 2014年7月17日


TPプレスリリース(2013年4月末まで)
  2013年5月以後も、プログラムの研究成果が発表されてまいりますが、プレスリリースにつきましては、構造生命科学ニュースウオッチの記事としてご紹介してまいります。
TP論文オンライン(2013年3月末まで)
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