研究課題
技術開発研究課題は右カラムarrow
お知らせ
  • 「ターゲットタンパク研究プログラム(TPRP)」は2007年から5年間実施され2011年度末に一応終了致しましたが、2012年度以後も、ターゲットタンパク研究分野の基本的生命医学・薬学等への貢献そして食品・環境等の産業利用、ならびに、技術開発研究課題の生産解析制御そして情報の各領域から成果がさまざまな形で発表・提供されています。特に、技術研究開発課題の成果は、創薬等支援技術基盤プラットフォーム事業に継承されて、構造生命科学の基盤として機能し始めています。  本ポータルサイトでは、これからも2012年3月までの研究成果の集約を開示し続けるとともに、その後の展開も「構造ギャラリー」と「構造生命科学ニュースウオッチ」でご紹介してまいります。

ターゲットタンパク研究プログラム(TPRP)に対する総合科学技術会議の事後評価結果を本サイトの「評価」ページに掲載しました
構造ギャラリー
RSSアイコン


構造生命科学ニュースウオッチ
RSSアイコン

分子プロファイリングによる胃癌のサブタイプ4種類が定義され、これまでよりきめ細かな治療が可能に

   (本記事は、7月31日掲載版に、肺腺がんの包括的分子プロファイリングの論文を参考文献として付け加えたものに当たります)今回、The Cancer Genome Atlas (TCGA) Research Networkは、化学療法も放射線治療も受けていない295名の胃癌患者の血液と胃粘膜の正常な細胞をサンプルとして、6種類の分子プロファイリング(molecular profiling) を行い、その結果を統合して、胃癌の4種類のサブタイプを定義し、また、各サブタイプを特徴づける分子プロファイルを特定した。この研究成果によって、サブタイプごとに創薬のターゲットを選択し、また、従来の均一な治療法から脱却して患者のサブタイプに適合した治療法が選択されるようになり、胃癌の治癒率が向上していくであろう。
   【6種類の分子プロファイリング】測定のプラットフォームは、コピー数多型測定、全エクソーム配列決定、DNAメチル化測定、mRNA配列決定、マイクロRNA配列決定ならびにタンパク質リン酸化測定
   【サブタイプ名:患者の割合:特徴】
   1) EBV(EBウイルス感染):9%:PIK3CA遺伝子パスウエイの変異、極めて高頻度なCpGアイランドメチル化(CIMP)PD-L1/PD-L2の過剰発現、CDKN2Aサイレンシング;胃体部と胃底部に多い、患者の81%が男性
   2) MSI(microsatellite instability):22%:DNA修復機構の毀損による高頻度な変異、CIMP高頻度、MLH1サイレンシング、有糸分裂パスウエイ活性化;患者の平均年齢72歳
   3) CIN(chromosomal instability):50%:遺伝子や染色体における多様な重複や欠損、TP53変異、RTK-RAS活性化;比較的胃食道接合部/噴門に多い
   4) GS(genomically stable):20%:CDH1変異、RHOA変異、CLDN18-ARHGAP融合、細胞接着パスウエイ活性化;びまん浸潤型(diffuse-type)の胃癌に多い、患者の平均年齢59歳
   【注1】胃癌の4つのサブタイプをまとめた図はこちら→
   【注2】データ入手先:Data Coordinating Center
   【注3】TCGA Research Networkは、230例の肺腺がん標本について分子プロファイリングを行った結果を、2014年7月9日にNatureオンライン版に発表している(→ 参考文献)。
論文→ The Cancer Genome Atlas Research Network. Comprehensive molecular characterization of gastric adenocarcinoma. Nature Published online 23 July 2014.
参考論文→ The Cancer Genome Atlas Research Network. Comprehensive molecular profiling of lung adenocarcinoma. Nature 2014 July 31;511(7511):543-550. Published online 09 July 2014

不均一なサブクローンの共存が腫瘍の進行を駆動する


    癌は、somatic evolutionによって不均一なサブクローン(sub-clone)が発生する過程を経て、発症する。しかし、不均一なサブクローンが共存する機構とその共存がもたらす生物学的意味については、理解が進んでいなかった。今回、Dana-Farber Cancer InstituteのKornelia Polyak等は、ヒト乳がん由来細胞から比較的増殖速度が遅い細胞(MDA-MB-468)を選別した上で、腫瘍進行に関連するとされている因子または乳がんで高発現している因子18種類をそれぞれ過剰発現させたサブクローン群を用意し、MDA-MB-468と各サブクローン(18:1の比率)、または、複数のサブクローンのセットをマウスに異種移植し、その影響を解析する実験系を構築して、研究を進めた。
    サブクローンごとの実験から、腫瘍増殖は、ケモカインCCL5(CCL5)またはインターロイキン11(IL11)のサブクローンを移植した場合にだけ起きることを見出した。また、前者では細胞自律的(cell autonomous)に起こり、後者では、MDA-MB-468の増殖も伴って非細胞自律的に起こることを見出した。これらのサブクローンに起因する腫瘍は転移性を示さなかったが、他のサブクローンと混在させた場合は転移が見られた。さらに、L11サブクローンについては、微小環境の制約を緩和して腫瘍の増殖を促進することによると思われる現象を見出した。異種移植の実験と共に、数理モデルを構築して、腫瘍増殖の機序の推定と医療で想定されるような長期間にわたるサブクローンの動態の予測を試みた。数理モデルによると、IL11非存在下では、増殖速度が速いサブクローンが他のサブクローンを圧倒し、クローンの不均一性が失われた。また、IL11サブクローンと比較的増殖速度が速いLOXL3サブクローンを移植したモデルマウスでは、後者が前者を圧倒しIL11サブクローンが検出されなくなり、細胞死に至ったと思われる実験結果を得た。以上、実験と数理モデルによる解析の結果、腫瘍の進行をドライブするのは、ある時点で腫瘍の中で大きな部分を占めているサブタイプではなく、微小環境を改変して他のサブクローンも増殖させる(いわば共存共栄する)比較的小さな細胞集団がドライブすると考えられる。この知見は、癌治療のターゲットとするサブタイプ特定に、新たな視点をもたらす。
論文→ Marusyk A. et al. Non-cell-autonomous driving of tumour growth supports sub-clonal heterogeneity. Nature Published online 30 July 2014
腫瘍細胞不均一性モデル参考文献→ Dick JE. Stem cell concepts renew cancer research (Figure 2). Blood 2008 Dec 15;112(13):4793-807.

黄斑モザイクウイルスのtRNA様構造の精密構造を決定し、機能の多様性が依って来るところを明らかにした

   黄斑モザイクウイルス(TYMV)のtRNA様構造(transfer RNA-like structures:TLS)の3'末端にはCCAの塩基配列が存在し、TLSはtRNAと同様にアミノアシル化され、真核生物の伸長因子α1(eEF1A)に結合し、tRNA修飾酵素の基質となる。一方で、ウイルス感染過程でリボソームとレプリカーゼの活性を調節するといった働きもする。今回、コロラド大学のJeffrey S. Kieft等は、TYMVのTLSの構造を分解能2Åで決定し、分解能1.93Åで決定されていた酵母のフェニルアラニンtRNAの構造と対照させて、TLS独特の構造と機能を解明した。全体としてL型をとっている構造はTLSとtRNAと非常に良く似ているが、その構造を維持している分子内相互作用は全く異なっていた。tRNAでは、Vループ(variable loop)がDアームとの相互作用によって構造が維持されているのに対して、TLSでは、Vループが5末端とシュードノットと相互作用することで構造が維持されている。TLS独特の分子内相互作用によってTLSの構造と機能は可塑性を得、TLSには、tRNAを"擬態して"アミノアシル化を駆動する面と、tRNAは多様な分子と結合して多様な機能を発揮する面の二面が共存する。そして、TYMVの3'末端全体が、リボソーム内部に結合することから、TLSは、翻訳を促進し、RNAゲノムの3末端を保護する働きもすると考えられる。
論文→ Colussi TM. et al. The structural basis of transfer RNA mimicry and conformational plasticity by a viral RNA. Nature Jul 17;511(7509):366-9. Published online 08 June 2014
構造→ 4P5J: Crystal structure of the tRNA-like structure from Turnip Yellow Mosaic Virus (TYMV), a tRNA mimicking RNA (分解能2.0Å)

遺伝子診断会社23andMe、米国NIHから2年間140万ドルの資金を得てデータベースを拡充・公開

   遺伝子解析サービスの草分けである23andMeは、すでに70万人以上の顧客の遺伝型を蓄積し、そのおよそ80%について表現型に関わる情報も蓄積しているとされている。遺伝子解析サービスの中で、254種類の疾病のリクスを推定するPersonal Genome Sercive (PGS)は、2013年11月のFDAからの警告によって中止され、現在は、遺伝型の生データと祖先に関する解析結果をサービスするに止めている。一方で、23andMeは、4,000人の患者群と62,000人の対照群の情報をパーキンソン病の病因遺伝子を探索する大規模な国際共同研究プロジェクトに提供し、7月27日にNature Geneticsオンライン版に発表されたパーキンソン病に相関する新たな遺伝子領域6カ所を特定した論文に共著機関として加わった。各種オンラインニュースによると、偶然にもその2日後の7月29日、23andMeは、「NIHから新たに資金を得て、健康・疾病と遺伝型の相関を解析する研究に貢献することを目指して、表現型情報の収集方法という入り口からResearch Acceleratorを進化させるという出口までのシステムを洗練させて、匿名化したデータベースを23andMe外の研究者にも提供する」と発表した。
【注】23andMeは過去3年間に16報を査読付きジャーナルに発表してきた。
News→ Bio-IT World. 23andMe Gets $1.4m from NIH, Publishes Parkinson's Research. Published online July 29, 2014
Newws→ REUTERS (Farr, C. and Craft, D.). 23andMe lands $1.4 million grant from NIH to detect genetic roots for disease. Published online 29 July 2014

ヒトのアミノアシルtRNA合成酵素の選択的スプライシングから生成される変異タンパク質は、酵素活性を失うが、多様な機能を新たに獲得する

ヒトを含むいわゆる進化した生物種では、選択的スプライシング(alternative splicing: AS)の仕組みによって、一つの遺伝子から多数の転写物ひいてはタンパク質を生成する。今回、Scripps Research InstitutePaul Schimmelが率いる米国と香港の産学研究チームは、選択的スプライシングがもたらす変異タンパク質の構造と機能を包括的に明らかにするために、全生物に存在し、生物進化の過程における最古のタンパク質と思われるアミノアシルtRNA合成酵素(aminoacyl-tRNA synthetase: AARS)ファミリーを対象とするトランスクリプトーム解析を行った。具体的には、ヒトの6種類の組織(胎児脳、成人脳、初代白血球細胞、継代白血球細胞(Raji B細胞株Jurkat T細胞株THP1単球細胞株))において、細胞質とミトコンドリアに存在する37種類のAARSsの全mRNAについてdeep sequencingを行い、さらに、変異タンパク質の発現、ドメイン構造、そして機能の解析を行った。
   今回の解析によって、既知の61種類の転写物に加えて、新たに248種類の転写物が発見された。また、配列データから見ると、多くの転写物は活性部位の毀損・欠損によって本来の酵素活性を失った(catalytic nulls: CNs)と思われる一方で、新たに、高等生物に見られる13種類のタンパク質ドメインを持つに至った転写物も存在し、タンパク質として新たな機能を獲得していることを思わせた。事実、CNのうち48種類については、ポリソームとの結合が見られ、ウエスタンブロッティングや質量分析の結果、CNがタンパク質を形作ることが確認され、組み換えAARSの発現と細胞レベルでのアッセーによって、例えば、骨格筋芽細胞の形成を促すなどの全く新しい機能を発揮することが見出された。著者等は、元々の酵素活性とは直交する調節機能を有する変異タンパク質"Physiocrines"は、AARSsファミリーに限らず、酵素全般について普遍的存在であり、創薬の新たなターゲットになりうると考えている。
【注】"Physiocrines"は、共著機関の一つaThy Pahrmaによる命名
論文→ Lo WS. et al. Human tRNA synthetase catalytic nulls with diverse functions. Science 2014 Jul 18;345(6194):328-32


TPプレスリリース(2013年4月末まで)
  2013年5月以後も、プログラムの研究成果が発表されてまいりますが、プレスリリースにつきましては、構造生命科学ニュースウオッチの記事としてご紹介してまいります。
TP論文オンライン(2013年3月末まで)
RSSアイコン

ページトップへ