研究課題
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神経細胞死に関与する活性酸素発生源の解明と構造生物学的手法を駆使した阻害剤創成

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代表機関:九州大学生体防御医学研究所 (九州大学大学院医学研究院)
代表研究者:住本英樹

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アルツハイマー病やパーキンソン病など「神経変性疾患」と呼ばれる病気は、神経細胞がだんだんに死滅し、神経系の機能に障害をきたすことで発症します。しかし、発症にいたるまでのメカニズムは十分に解明されておらず、確実な治療法はほとんどありません。社会の急速な高齢化によって治療法の確立が急がれる中、あらゆる方面からの研究がさかんに行われています。

神経細胞の死滅は、活性酸素によって引き起こされます。私たちは神経細胞で活性酸素が生成されるしくみを探ってきました。活性酸素を生成するのは、NADPHオキシダーゼ(Nox)という酵素です。通常、Noxはそのままでは不活性な状態ですが、いくつかのタンパク質が協調してNoxにはたらきかけると、Noxは活性化され、活性酸素をつくるようになります。

ヒトの場合、NoxはNox1〜Nox5という5種類があり、神経細胞ではNox1、2、4などが働いています。私たちは、Nox4の発見、Nox1を活性化するタンパク質の発見、Nox2の活性化機構の研究などを行ってきました。こうした経験と実績を生かし、当課題ではNox本体の構造解析に取り組んでいます。

Noxは細胞膜に埋まるような状態で存在しており、電子を細胞の内側から表面側へと運んで表面側で活性酸素を発生させると考えられています。Noxの立体構造が明らかになれば、電子がNoxの中をどのように伝わるかというしくみがわかる可能性があります。Noxの大量生成や結晶化など構造解析を行うまでの道のりは容易ではありませんが、チャレンジする価値は高いのです。また、これと同時にNoxの生化学的な性質を探る研究にも取り組んでいます。

一方、Noxにはたらきかけて活性化させる一連のタンパク質群も、私たちの重要なターゲットです。これらのうち、すでに大量生成の方法を確立しているタンパク質については、さっそく結晶化を行い、構造解析を進めます。そして、4〜5年目にはNox1およびNox2に作用するタンパク質間の相互作用を阻害する物質を見つけ、神経変性疾患の治療薬を開発するための基盤をつくっていく予定です。

一方、活性酸素は生体内でさまざまな役割を担っているため、その発生源となるNox関連のタンパク質は神経変性疾患だけでなく、感染症の防御や耳石の形成、甲状腺ホルモンの合成、血圧の調節などにおいても重要な働きをしていることがマウスの実験で報告されています。この研究プログラムでの私たちの研究成果は、さまざまな病気の理解と治療法の開発に貢献できるはずです。

神経細胞死に関与する活性酸素発生源の解明と構造生物学的手法を駆使した阻害剤創成
神経細胞死に関与する活性酸素発生源の解明と構造生物学的手法を駆使した阻害剤創成
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