研究課題
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タンパク質の複合体構造を推定するための構造バイオインフォマティクス(H19〜H21)

代表機関:お茶の水女子大学大学院 人間文化創成科学研究科
代表研究者:由良 敬

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多くの研究チームがX線構造解析やNMRを用いてタンパク質の構造解析を進めている一方で、私たちは「バイオインフォマティクス」とよばれるまったく異なるアプローチでタンパク質の立体構造の解明に迫っています。バイオインフォマティクスとは生命現象に関する情報を計算機を用いて解析する学問で、ゲノムプロジェクトで得られた膨大な塩基配列データを読み解く必要から急速に発展してきました。タンパク質の分野では、立体構造の予測や比較、またタンパク質間の相互作用を予測する研究などがさかんに行われています。そのような研究の一つとして私たちが当課題で取り組んでいるのは、複数のタンパク質のパーツから構成される巨大なタンパク質を、個々のタンパク質の構造から予測するための技術開発です。

あらゆる生命現象は一つのタンパク質のはらたきによるものではなく、いくつものタンパク質がネットワークを形成し、作用し合うことで引き起こされます。そのため、生命現象のしくみを分子レベルで理解するためには、複数のタンパク質が集まってできる複合体の立体構造を知ることが重要になります。ところが、X線構造解析やNMRでは、結晶をつくるのが難しいなどの理由から、複合体の立体構造データはおろか、タンパク質単体のデータもなかなか得られません。また、真核生物がもつタンパク質は、いくつものドメインが連結して一つの大きなタンパク質を形成している場合が多く、このようなタンパク質についても全体の立体構造を決定できることはまれです。

そこで私たちは、調べたいタンパク質の立体構造を相同タンパク質(進化上、類縁関係にあるタンパク質)の構造から高い精度で予測し、タンパク質単体の構造から複合体の全体構造を、またドメインの構造からタンパク質の全体構造を予測するための技術を開発することにしました。タンパク質の立体構造を予測する方法として、「ホモロジーモデリング」というものがあります。これは、すでに立体構造がわかっている相同タンパク質をベースのかたちとし、そのタンパク質と調べたいタンパク質のアミノ酸配列を照らし合わせることで、調べたいタンパク質の立体構造を構築していく方法です。私たちはこのホモロジーモデリングの精度向上に取り組んでいます。それと並行してドメインまたはタンパク質が結合する部分の予測法を開発し、最終的にはホモロジーモデリングと組み合わせて、複数のドメインからなるタンパク質や複合体の立体構造を推定するシステムをつくりたいと考えています。これは、複合体の結晶や安定な状態のタンパク質をつくるためのヒントとなる知見が得られる技術でもあります。

複数のドメインからなるタンパク質およびタンパク質複合体の構造推定
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