構造解析と機能解析のキャッチボールで理解が深まります

構造解析と機能解析のキャッチボールで理解が深まります
<<図をクリックすると拡大します。>>

タンパク質の中には、構造を見ただけで、「このポケットにあの分子が結合して反応するのか」というように機能がすぐにわかるものがあります。しかし、高難度タンパク質の場合は、そもそも構造を解析するのがたいへんです。さらに、「何かが結合する場所」がいくつもあることが多く、それらが機能にどのように貢献しているのかを知ることは容易ではありません。また、何かが結合することにより、構造が大きく変わる場合もよくあります。

このため、高難度タンパク質の研究では、機能解析で得られた情報を用いて構造解析を進め、構造解析で得られた情報を機能解析に生かすというように、構造解析と機能解析が互いを少しずつ前進させるような地道な取り組みが行われています。

例えば、アディポネクチン受容体の場合、機能解析の側から、この受容体が細胞膜にどのように埋まっているのかについて重要な情報がもたらされました。この受容体の膜への埋まり方は、多くの膜タンパク質とは違っていると考えられ、構造解析も多くの膜タンパク質よりさらに難しいことがわかったのです。しかし、機能解析からは、このタンパク質の大量合成や結晶化を行うのに必要な情報も次々にもたらされており、それをもとに構造解析への挑戦が続いています。

構造解析が進むと、「何かが結合しそうな場所」が明らかになってきます。アディポネクチンはどこに結合するのか、それより強い作用を示す天然物質はどこに結合するのか。結合したときに構造はどのように変化するのか。こうした構造解析からの情報が、より詳しい機能解析に役立ち、その機能解析からの情報が、さらに精密な構造解析へとつながります。こうした研究の積み重ねが、効果の高い薬の開発へと発展していくのです。

もちろん、このような「構造と機能のキャッチボール」で理解が進むのは、アディポネクチン受容体だけではありません。これまで構造が解析されず、機能も十分に解析されてこなかった数々のタンパク質について理解が進めば、さまざまな病気の治療や予防に役立つのはもちろん、細胞の活動、ひいては、広く生物科学の世界に新たな見方がもたらされる可能性もあるのです。

ページトップへ