例えば、メタボの治療や予防も手がかりはタンパク質


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私たちの体にとって重要なのに、構造解析が難しいタンパク質にはどんなものがあるでしょうか。ここでは、メタボリックシンドローム(MS)・糖尿病と関係の深いものを紹介しましょう。

MSとは、過食や運動不足などによって内臓脂肪がたまり、血圧や血糖が上昇して心筋梗塞や脳卒中を起こしやすくなった状態を指します。内臓脂肪の脂肪組織は、筋肉や肝臓にはたらきかけるさまざまな物質を分泌します。健康な状態では、脂肪組織は「善玉物質」を分泌し、筋肉や肝臓での脂肪の燃焼を促すのですが、脂肪組織が肥大すると、善玉物質の分泌や作用が低下し、「悪玉物質」の分泌が増え、筋肉や肝臓に脂肪が蓄積してMSを引き起こすのです。

そこで、善玉物質や悪玉物質がやってきたとき、細胞の中でどんなタンパク質がはたらくのかという視点から、この病気を理解しようという研究がさかんに行われています。こうした理解は、MSの治療薬の開発や予防法の確立につながると期待されます。

例えば、善玉物質の刺激ではたらくタンパク質の構造と機能を解明し、そのはたらきを強めるような物質を見つけられれば、それが治療薬の開発の手がかりとなります。「ターゲットタンパク研究プログラム」では、実際に、善玉物質の一種「アディポネクチン」に着目して、そのような研究を進めています。ターゲットは、アディポネクチンが作用する際にはたらくいくつかのタンパク質ですが、その中に、とりわけ構造解析の難しいものがあります。細胞膜にあるアディポネクチン受容体というタンパク質で、本研究プログラムに参加している東京大学大学院医学系研究科の門脇孝教授らが発見しました。

さらに、この受容体に結合する天然物質で、アディポネクチンより強い作用を示すものも発見しており、この天然物質をもとにMSの治療薬を開発できる可能性があります。そのため受容体の構造と機能はもちろん、この天然物質と受容体が結合したときの構造についても研究を進めています。

この例からもわかるように、高難度タンパク質の構造と機能を解明することは、病気の治療や予防に直接つながる、とても大事な研究なのです。

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