構造解析が難しい理由はいろいろあります

構造解析が難しい理由はいろいろあります
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1個のタンパク質分子はとても小さく、大きいものでも1mmの1万分の1以下です。このため、普通の顕微鏡で観察しても、その構造は見えません。タンパク質の構造を調べるためにおもに使われるのは、「X線結晶構造解析」と「NMR(核磁気共鳴)」という方法です。最近では、電子顕微鏡を用いた「単粒子構造解析」という手法も利用されています。

それぞれの方法について、高難度タンパク質の構造解析のための技術開発が進められていますが、もっとも一般的に使われるのはX線結晶構造解析です。X線結晶構造解析は、純度の高いタンパク質を一定量つくり、それを結晶化させてX線をあて、得られたデータを解析するという手順で行われます。高難度タンパク質を対象とする場合は、少なくともそのうちのどこかがネックとなるのです。

例えば、とても大きいタンパク質の場合、「タンパク質をつくる」という段階がネックになります。タンパク質は、大腸菌にDNAを入れてつくらせるのが一般的ですが、大腸菌はあまり大きなタンパク質はつくってくれないことがよくあります。一方、細胞膜に埋まった状態ではたらく膜タンパク質の場合は、大腸菌がつくってくれるものの、膜の中での構造を保ったまま取り出すのが困難です。機能を理解するためには、はたらいているときの構造を知る必要がありますから、これは大問題です。

また、細胞の中では、タンパク質が何個か集まって複合体をつくり、その複合体がはたらくということもよくあります。そういう場合は、構成メンバーとなるタンパク質を大腸菌に一度につくらせますが、メンバーが正しく組み合わさった複合体を得ることはとても難しいのです。このほかにも、タンパク質にはそれぞれ個性があり、解析の手順のどこかでそれがネックとなる場合があります。

このように、一口に「高難度タンパク質」といっても、タンパク質によって難しい部分が違います。高難度タンパク質の研究に取り組むには、こうした困難を克服するための技術開発を進めていかなければなりません。

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