なぜ、構造解析の難しいタンパク質に挑戦するのでしょう?

なぜ、構造解析の難しいタンパク質に挑戦するのでしょう?
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私たちの体は数十兆個もの細胞からなっており、一つひとつの細胞の活動が私たちの「生命」の基本となっています。細胞はさまざまな成分からできていますが、なかでもタンパク質は、細胞の活動を推し進め、調節するという大切な役割を果たしています。

細胞の中ではたらくタンパク質は何万種類もあり、それぞれが独自のかたち(立体構造)とはたらき(機能)をもっています。細胞の活動の鍵となるタンパク質の構造と機能を解明することは、生命のしくみを理解する上でとても重要です。また、多くの病気は細胞の活動の不調に由来するので、病気の治療法を開発するのにも大切です。さらに、動植物や微生物を上手に利用して食料や有用物質を生産するのにも、タンパク質の研究は貢献します。

これまでの研究により、タンパク質の構造を解析するための基本的な手法はほぼ確立されています。生命にとって重要なタンパク質の構造が次々に明らかになり、これに伴って機能の解明も大きく進みました。

しかし、タンパク質の構造は千差万別で、構造解析のしやすいものもあれば、難しいものもあります。構造解析が難しくて、まだ構造が明らかになっていないタンパク質(高難度タンパク質)の中にも、重要な機能をもったものはたくさんあります。これからは、そのような高難度タンパク質の構造と機能の研究にも挑戦していかなければなりません。

例えば、細胞膜に埋まった形ではたらく膜タンパク質は高難度タンパク質の代表ですが、膜タンパク質は細胞の内外の情報やもののやりとりにかかわるため、薬の重要な標的となっています。このため、膜タンパク質の構造解析を行い、その機能を明らかにすることは、薬の開発のためにぜひとも必要です。

また、細胞の中のタンパク質は単独ではたらいているわけではなく、さまざまな機能をもったタンパク質が相互に関係しあっています。このようなネットワークの鍵となるタンパク質が高難度タンパク質である場合、その構造と機能を明らかにすることは、ネットワークの全体像を把握するのに欠かせません。

このように、高難度タンパク質の構造と機能の解明は、細胞の活動を通して生命を理解し、病気の治療などに役立てるという大きな意義をもった研究なのです。

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