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タンパクニュースウオッチ
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最新の5件
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インスリン受容体がシナプス領域に存在するPIK3への使者となって、記憶・学習が達成される
インスリン(Insulin) - PI3K(Phosphoinositide 3-kinase)のシグナル伝達パスウエイは成熟脳に広がっており、記憶能力や神経障害と関連することが示唆されている。線虫(C. elegans)において、このシグナル伝達はさまざまな機能を調節するが、連合学習機能もそこに含まれる。野生の線虫は塩濃度と飢餓の関連を学習することができるが(味覚回避条件付け)、インスリン-PI3Kを構成する分子(インスリン受容体"DAF-2"、PI3K AGE-1、下流のキナーゼ)を変異させた線虫は学習能力を失う。今回、東京大学大学院の飯野研究室のチームは味覚回避条件付け線虫において、選択的スプライシングで産生されるインスリン受容体のアイソフォームのうち"DAF-2c"が、細胞体から塩分に感受性があるニューロン"ASER"のシナプス領域へと輸送され、PI3Kの活性を調節することを見出した。DAF-2cは、モータータンパク質"kinesin-1"の軽鎖KLC-2とC末端部位が結合したCASY-1(カルシンテニンの線虫オルソログ)によって輸送されるが、この輸送は、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(Mitogen-activated Protein Kinase: MAPK)パスウエイによって調節される。以上、飢餓状態を感知したMAPKパスウエイの調節を受けて、キネシンに結合したカルシンテニンがDAF-2cをASERのシナプス領域へ輸送し、その結果、PI3Kの活性が上昇するという連合学習機構のモデルが考えられる。シナプス領域に存在するPI3Kを光励起することによって味覚回避行動が引き起こされたことも、このモデルと整合する。モデル生物線虫で得られた知見は、ヒトにおける記憶・学習の機構や神経障害発症機構への手がかりを与える。
論文→ Ohno H. et al. Role of synaptic phosphatidylinositol 3-kinase in a behavioral learning response in C. elegans. 2014 Jul 18;345(6194):313-7. -
インスリンとインスリン受容体の複合体構造を解き、結合の分子機構を詳らかにした
Donald F. Steiner、Michael A. Weiss、Michael C. Lawrence等の米・豪・印の国際チームは、2013年のNature論文に続いて、インスリンβ鎖のC末端セグメントと、インスリン受容体(IR)αサブユニットのL1-CRドメインとαCTドメインで構成した"”microreceptor"(μIR)との複合体構造を解き、インスリンとIR結合の分子機構について考察を深めた。
今回の論文によれば、インスリンのβ鎖のC末端セグメントは、μIRと結合する際に、PheB24の向きが変わりB25-B28の位置のβストランドがインスリンのαヘリカルのコアに対して60°回転し、レセプターのL1-β2シートと逆平行の配置をとる。言い換えると、β細胞中における安定な構造からβ鎖に組み込まれていたヒンジが開いて活性な構造へと変化する。この構造変化によって、インスリンにおいて保存されている非極性側鎖(IleA2, ValA3, ValB12, PheB24, PheB25)がIRと結合可能になる。ヒンジ開閉とIRとの結合の相関は変異導入実験でも確認されている。ヒンジを閉じた状態に固定すると天然の構造に折り畳まれるがIRへの結合が阻害され、ヒンジを開いた状態に固定すると構造が不安定になり異常な凝集が起きる一方でIRと結合する活性が維持される。この結果はまた、臨床で見出された変異と整合している。インスリンとIRの結合機構が詳らかになってきたことにより、これまでになく安定に保存可能で効率が良く、さらに、血中グルコース濃度に従って活性を自動調節することも可能なインスリン製剤の開発が視野に入ってきた。
【注】インスリン受容体外部ドメインの構成:L1-CR-L2-FnⅢ1-FnⅢ2α-IDα-αCT(αサブユニットC末端セグメント)-IDβ-FnⅢβ-3
論文→ Menting JG. et al. Protective hinge in insulin opens to enable its receptor engagement. Proc Natl Acad Sci U S A. Published online before print August 4, 2014
構造→ 4OGA:insulin/μIR/Fab 83-7 complex
構造→ 4NIB:insulin analog 1
構造→ 2MLI:analog 2
構造→ 2MPI:analog 4
参考文献(2013年Nature論文)→ Menting JG. et al. How insulin engages its primary binding site on the insulin receptor. Nature 2013 Jan 10;493(7431):241-5. -
Nature誌2014年8月7日号のNEW AND VIEWSに、 Nature誌2014年5月29日号に掲載された2本のヒトプロテオーム概要版の論文が改めて紹介されている。米国ジョンズホプキンス大学/インドバンガロール・バイオインフォマティクス研究所のAkhilesh Pandey等の国際チームの"A draft map of the human proteome"(以下、Pandey等)とミュンヘン工科大学のBernhard Kuster等ドイツの研究チームの"Mass-spectrometry-based draft of the human proteome"(以下、Kunster等)である:
【データ源】Pandey等:30種類の正常組織、7種類の胎児組織ならび6種類の造血細胞由来(独自解析)/Kuster等:60種類の組織、147種類の細胞株ならびに13種類の体液由来(60%が公的データ由来、40%が独自解析)
【概要】Pandey等:タンパク質コード領域の約84%に相当する17,294タンパク質を同定。ゲノム上の偽遺伝子、非コードRNAおよびORF上流領域由来のペプチドも含む。すべての試料に存在してタンパク質量の多くを占める2,350のタンパク質を特定。/Kunster等:Swiss-Protに登録されているORFの92%に相当する18,097タンパク質を同定。また、長鎖遺伝子間非コードRNA(long intergenic non-coding RNA; lincRNA)のペプチドも含む。10,000~12,000種類のタンパク質が由来組織全般に存在するが、組織によって発現量が大きく異なることを発見。
【データと利用環境提供】Pandey等:Human Proteome Map(HPM)/Kunster等:ProteomicsDB(インメモリーデータベースを利用)
HPMとProteomicsDBは、抗体法に基づくHuman Protein Atlasや、抗体法と質量分析法を併用しているHuman Proteome Projectの成果とともに、質量分析によるタンパク質アッセイ法の最適設計、ゲノムアノテーションの検証と高度化、定量的タンパク質解析などの基礎研究から個別化医療までを支える情報基盤となる。
【注】本NEWS AND VIEWSの著者Robert T. LawrenceとJudit Ville?nが所属する米国ワシントン大学ゲノム科学部門のVille?n研究室は、測定技術と計算解析技術を開発しつつプロテオーム解析に取組んでいる。
NEWS AND VIEWS → Lawrence RT, Villen J. Drafts of the human proteome. Nat Biotechnol. 2014;32(8):752-3. Published online 5 August 2014
論文→ Kim MS. et al. A draft map of the human proteome. Nature 2014 May 29;509(7502):575-81. Published online 28 May 2014
論文→ Wilhelm M. et al. Mass-spectrometry-based draft of the human proteome. Nature 2014 May 29;509(7502):582-7. Published online 28 May 2014 -
イスラエルのハイファ大学とテルアビブ大学の研究チームは、タンパク質のドメイン(domain)・ネットワークとモチーフ(motif)・ネットワークによってタンパク質の関係性と進化過程を包括的に理解することを試みた。ドメイン・ネットワークは、SCOPドメインをノードとし、同一モチーフを共有するドメインを連結するエッジで構成される。モチーフ・ネットワークは、モチーフをノードとし、同一ドメインに共存するモチーフを連結するエッジで構成される。
始めに、配列同一性が70%までのSCOPドメイン9,710件を対象として、SSM法による総当たり構造アラインメントを加え、全てのペアについて、整列した(aligned)配列領域の長さ(以下、L)と全長に占める割合(以下、R)ならびに立体構造上の差異(平均二乗偏差; rmsd)を算出した。次に、L、Rならびにrmsdに閾値を設定して絞り込んだアライメント結果に基づいて描いたネットワークに分析を加えた。
当然予測される通り、閾値設定を厳しくする従って、ドメイン・ネットワークの形状が、ドメインが密に相互連結されている連続的ネットワークから、ドメインが孤立した離散的ネットワークへと変化した。その中で、中間的設定(例えば、L 75残基、R 25%、rmsd 2.5Å)において、連続的ネットワークと離散的ネットワークの双方が現れた。連続的ネットワークには、αヘリックスとβストランドが交互に並んでいるドメイン(α/βドメイン)が集中していた。離散的ネットワークは、それぞれがフォールドに対応している互いに孤立したαヘリックスで構成されるドメイン(all-αドメイン)、βシートによって構成されるドメイン(all-βドメイン)、あるいはαヘリックスとβストランドが離れて存在するドメイン(α+βドメイン)の集合であった。 8,219種類のモチーフ間の関係性を示すモチーフ・ネットワークにおいても同様に、主としてα/βドメインおよびいくつかのall-αドメインから成り立つ連続的ネットワークと、それ以外のドメインが孤立した離散的ネットワークが現れた。
論文では、ドメイン・ネットワークとモチーフ・ネットワークを「歩く」ことによって、進化過程におけるドメインとモチーフの安定性に関する考察や、ドメインの進化経路の推定が行われているが、広く一般に、CytoscapeとPyMOLをインストールすることによってドメイン・ネットワークを「歩く」ことが可能である。
論文→ et al. Nepomnyachiy S, Ben-Tal N, Kolodny R. Global view of the protein universe. Proc Natl Acad Sci U S A. 2014 Aug 12;111(32):11691-6. Published online 28 July 2014 -
マルチプラットフォームの測定結果に基づいて悪性腫瘍のサブタイプを新たに定義、がん患者10%に療法の見直しが必要に
The Cancer Genome Atlas (TCGA) Research Networkは、病理組織学的分類による腫瘍型ごとにゲノム解析を進める中で、一種類の人体組織に由来する腫瘍が、数種類のサブタイプに分類されることを示して来た。今回、TCGAのPan-Cancerイニシアチブは、12種類の腫瘍型を横断する3,527サンプルを、6種類のプラットフォーム(注1)で分析して得たデータに基づいてクラスター分析し(注2)、11種類のサブタイプ(以下、COCAサブタイプ)を同定した。
COCAサブタイプのうち5種類は、従来の病理組織学的に分類された腫瘍型とほぼ一致したが、残りの6種類のサブタイプと腫瘍型とは入り組んだ対応関係を示した。腫瘍型の複数が一つのサブタイプに集約される一方で、一つの腫瘍型が複数のサブタイプに分類されることになった。例えば、肺扁平上皮癌、頭頚部癌ならびに膀胱癌の一部が、腫瘍タンパク質p53の変異・腫瘍タンパク質p63の増幅・免疫系と増殖系のパスウエイの高発現を典型とする同一のサブタイプに集約される一方で、膀胱癌は、前述のサブタイプに加えて、膀胱癌だけのサブタイプと肺腺癌も属するサブタイプの計3種類に大別された。また、膀胱癌のサブタイプと腫瘍の悪性度に相関があることが見出された。乳癌も複数のサブタイプに峻別された。このようなCOCAサブタイプと従来の腫瘍型の比較対照の結果、サンプルの10%程度が従来の腫瘍型とは異なるサブサイプに分類されることから、該当する悪性腫瘍の患者のための療法を見直す必要があると考えられた。
腫瘍のサブタイプ(分類体系)は本来、由来組織よりも上皮性か非上皮性かといった由来細胞の種類に依存し、ひいては、由来細胞をとりまく微小環境ならびに由来細胞におきている遺伝的変異に依存すると考えられる。今後、腫瘍型の種類とサンプル数へと解析を拡大し、現行COCAサブタイプよりも網羅的でより完成度の高い分類体系を確立・公開して、診断と治療の個別化・精密化に貢献することを目指す。本論文で解析に使用したデータセットと解析結果はすでにSynapseのWebサイトから再解析可能な形で入手可能である。
【注1】6種類の実験プラットフォームは、エクソーム解析、mRNA配列解析、miRNA配列解析、SNPアレイ解析ならびにDNAメチル化アレイ解析の5種類のゲノム解析とプロテオーム解析(RPPA)
【注2】クラスター分析は、プラットフォームごとのクラスター分析に加えてTCGAにおける乳がんコホート分析のために開発されたアルゴリズム"cluster-of-cluster assingment (COCA)"による統合的なクラスター分析が行われた。キーワード
論文→ Hoadley KA. et al. et al. Multiplatform Analysis of 12 Cancer Types Reveals Molecular Classification within and across Tissues of Origin. Cell 2014 August 14;158(4):929-944.Available online 7 August 2014
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転移RNAのアンチコドンステムループの構造変化による+1フレームシフトの分子機構を探る
リボソームが遺伝子配列をアミノ酸配列へと翻訳していく際の読み枠(フレーム)は3塩基である。したがって、ゲノム配列に挿入や欠失などの変異が生じた場合は、フレームを適切にシフトする機構が必要である。フレームシフトサプレッサーの一つである tRNASufA6は、4塩基のコードをプロリンへ(Pro)と翻訳して正常なタンパク質合成を継続し、tRNAProCGGのアンチコドンステムループ(ASL)における座標37のグリシン(G37)と座標38のアラニン(A38)の間にグリシンが挿入された(G37.5)形をしていることが知られている。今回、米国エモリー大学のChristine M. Dunham等は、Thermus thermophilusの70SリボソームのAサイトに結合した状態のASLSufA6とASLProの構造を2.9~3.9Åの高分解能で解き、ASLSufA6において、tRNAの5'末端ステムの構造変化を介してU32とA38の間の水素結合が切れている事を見出した。また予想外なことに、G37のメチル化修飾(m1G37)を欠いたtRNAProCGGにおいても同様にU32とA38の結合が切れることを見出した。これらの解析結果に基づいて著者等は、+1のフレームシフトの発生機構ならびにリボソームによる読み枠の品質管理機構のモデルを提案した。
論文→ Maehigashi, T. et al. Structural insights into +1 frameshifting promoted by expanded or modification-deficient anticodon stem loops Proc Natl Acad Sci U S A. Published online before print 15 August 2014// http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1409436111
構造→ 4L47: Crystal Structure of Frameshift Suppressor tRNA SufA6 Bound to Codon CCC-U on the Ribosome
構造→ 1VVJ: Crystal Structure of Frameshift Suppressor tRNA SufA6 bound to Codon CCC-G on the Ribosome
構造→ 4L71: Crystal Structure of Frameshift Suppressor tRNA SufA6 Bound to Codon CCC-A on the Ribosome
構造→ 4LEL: Crystal Structure of Frameshift Suppressor tRNA SufA6 Bound to Codon CCG-G on the Ribosome
構造→ 4LFZ: Crystal Structure of Frameshift Suppressor tRNA SufA6 Bound to Codon CCC-U in the Absence of Paromomycin
構造→ 4LNT: Crystal Structure of tRNA Proline (CGG) Bound to Codon CCC-U on the Ribosome
構造→ 4LSK: Crystal Structure of tRNA Proline (CGG) Bound to Codon CCG-G on the Ribosome
構造→ 4LT8: Crystal Structure of tRNA Proline (CGG) Bound to Codon CCC-G on the Ribosome
構造→ 4P70: Crystal Structure of Unmodified tRNA Proline (CGG) Bound to Codon CCG on the Ribosome -
コラーゲンジェル入りの絹タンパク質のドーナッツによって、脳機能のin vitro実験が可能に
米国タフツ大学のDavid Kaplan等は、 脳機能のin vitro実験可能にする"脳のような"(brain-like)皮質組織を立体的に構築することに初めて成功した。
【作製法】半径が異なるドーナッツ状の多孔質絹タンパク質(fibroin)を複数用意する→それぞれのドーナッツにラット由来のニューロンを播く→ドーナッツを同心円状重ねると自律的に構造体となる→構造体をコラーゲン(collagen)ジェルに浸す→軸索がコラーゲンジェル内を立体的に伸張してニューロンの相互接続が実現される。
【特徴】灰白質(grey matter)と白質(white matter)が区画された構造をしている;神経毒や外部から与えられた物理的衝撃に対してin vivoの脳と同様の生化学的反応と電気生理学的反応を示す;従来にない長期間(9週間)恒常性を維持する。
今回の人工皮質モデルは、生体内における脳機能をよく再現できることに加えて、外部から擾乱が与えられた瞬間から回復に至っていくまでを非侵襲的にリアルタイムで測定可能とする画期的なモデルである。今後このモデルを、iPS細胞由来のヒト神経細胞へと応用し、より複雑な形状の絹タンパク質を組み合わせる立体的パズルを解いくことで、多層なヒト脳モデルを構築へと展開して、ヒト脳の構造・機能の研究ひいては脳神経系障害の医療の進歩に貢献することが期待される。
論文→ Tang-Schomer, MD. et al. Bioengineered functional brain-like cortical tissue. Proc Natl Acad Sci USA. Published online before print August 11, 2014
News→ TuftsNow. Bioengineers Make Functional 3D Brain-Like Tissue Model - Tufts model shows biochemical & electrophysiological responses; research offers new options for study of brain function, disease and trauma. August 11, 2014 -
Escherichia coliのCRISPRシステムにおけるCasタンパク質とCRISPR-derived RNAsの複合体構造(分解能3.24Å)
ゲノム編集技術として熱狂的に迎えられたCRISPRシステムは、3種類の主タイプ(I、Ⅱ、Ⅲ)と11種類のサブタイプに分類されている。Escherichia coliのシステムはタイプIEに分類され、"Cascade"(CRISPR-associated complex for antiviral defense)と呼ばれる複合体が出現する。Cascadeは、外来DNAの断片が挟み込まれたCRISPR座位から生成された短いCRISPR-derived RNAs (crRNAs)と5種類のCasタンパク質との複合体であり、crRNAガイド配列に相補的なDNA二重鎖(dsDNA)に結合し、Cas3を呼び寄せてdsDNAを開裂し、ウイルスやプラスミドを分解することが明らかにされてきた(獲得免疫)。しかし、Cascadeの立体構造と外来dsDNA分解に至る分子機序の詳細は不明であった。今回、米国モンタナ州立大学のBlake Wiedenheft等は、X線構造解析によってCascadeの結晶構造を3.24Åの高分解能で決定し、Cascade形成機構とターゲットdsDNAの認識機構について考察を加えた。
Cascadeは、11個のCasタンパク質サブユニットと61塩基のcrRNAで構成されていた。全体の形状をタツノオトシゴに見立てる事ができ、サブユニットのCas6eが頭、Cas5eとCase1が尾、Cas7.1-7.6が背骨、Case2.1とCase2.2が腹にあたる。crRNAについては、3'末端がCas6eに結合し、5'末端がCas5e、Cas1そしてCas7.6の3つのサブユニットに挟まれ、6個のCas7によって6塩基ごとに6カ所にキンクが発生していた。crRNAはこのCascadeの構造によって、細胞内のヌクレアーゼによる分解から保護され、二重鎖がとりうる構造の一つであるA-form的な構造をとり、ターゲットDNAに対して相補的な5塩基の断片を提示し、ターゲット配列を認識・結合する。
論文→ Jackson RN. et al. Crystal structure of the CRISPR RNA? guided surveillance complex from Escherichia coli Science Published online 7 August 2014
構造→ 4TVX -
米国、DNAシーケンシング技術の改良・革新に総額1,450万ドルを投じる
2004年に開始された米国立ヒトゲノム研究所のAdvanced DNA Sequencing Technology(以下、ADST)プログラムは、IlluminaのHiSeq Xの登場によって、"1000ドルゲノム"実現の目標を達成しつつあるが、米国NIHは2014年8月4日に、ナノポア(nanopore)技術の飛躍と革新的シーケンシング技術の開発を目的として、新たに、8機関に2~4年間にわたり総額1,450万ドルを投じると発表した。 ADSTプログラムは今回の課題をもって閉じるとされている。今後、ゲノム科学における技術開発支援のは、高性能化が続くシーケンサから時々刻々出力されてくる超大量配列データの解釈(アノテーション)へと焦点が移っていくと思われる。
採択課題一覧(機関名;期間と予算;PI;概要)
【ナノポア技術】
・University of California Santa Cruz;3年229万ドル;Mark Akeson, Ph.D.;DNA一分子を酵素で駆動してナノポアを通過させ、DNAに接触するセンサーで塩基を読み取るシステムを開発。高精度測定を実現するために反復シーケンシングを重視。
・Illumina, Inc., San Diego;2年59.2万ドル;Boyan Boyanov, Ph.D.;大量超高速の配列決定を目指してコンピュータチップ加工技術とタンパク質とを融合させたハイブリット・ナノポア・アレイを開発
・University of Pennsylvania, Philadelphia;2年間88万ドル;Marija Drndic, Ph.D.;極めて薄い(1原子層)グラフェンを基板とするナノポアを開発。基板を流れる電流がナノポアを通過する塩基によって変化することを利用して塩基を読む。
・The Scripps Research Institute, La Jolla, California;4年440万ドル;M. Reza Ghadiri, Ph.D.;脂質膜、タンパク質、DNAを利用したナノポア・アレイ技術を開発。10分間でヒトゲノムを解読完了へ。
【革新的技術】
・Caerus Molecular Diagnostics, Inc., Mountain View, California;3年間$70.1万ドル;Javier Farinas, Ph.D.;DNA一分子のシーケンシング反応から多数のレポータ分子を産生する人工酵素を開発
・Eve Biomedical, Inc., Mountain View, California;2年間50万ドル;Theofilos Kotseroglou, Ph.D.;酵素(ポリメラーゼ)をアレイ状に配置したカーボンナノチューブシステムを開発する。チューブに流れる電流が、DNAと相互作用する酵素の動きに依存して変動することを利用して塩基を読む。
・University of Washington, Seattle; 3年間170万ドル;Jay Shendure, M.D., Ph.D.;革新的ゲノムアセンブリー技術の開発
・University of California, San Diego;4年間370万ドル;Kun Zhang, Ph.D. and Xiaohua Huang, Ph.D.;哺乳動物のシングルセル由来の染色体を分離・増幅して高精度なシーケンシングを可能とするマイクロフルイディクス(microfluidics)技術を開発
NEWS & EVENTS→ National Institutes of Health. NIH awards $14.5 million to research groups studying newest DNA sequencing techniques. 4 August 2014. -
ドッキング相互作用はMAPキナーゼp38αの活性にアロステリック効果をもたらすか
MAPKs(mitogen-activated protein kinases)ファミリーに属するp38αは、環境ストレス応答や免疫応答・炎症制御をもたらすシグナル伝達系p38経路において中心的役割を果たすキナーゼである。p38αは、経路上流のMAPKKにより活性ループに存在するスレオニンとチロシンがリン酸化(二重リン酸化)されて活性化すると、下流の特異的な基質をリン酸化して、シグナル伝達を駆動する。p38αを含むMAPKsは、その活性部位とは異なるドッキング部位で、結合相手(MAPKK、基質ならびにホスファターゼ)の機能部位とは異なるドッキング領域と結合する(ドッキング相互作用)。今回、東京大学の島田一夫等は、二重リン酸化したp38α(以下、p38α-2P)と、ATPとそのアナログ、基質MK2の中のリン酸化部位を含む領域(以下、344ペプチド)、MK2のC末端ドッキング領域(以下、Dペプチド)ならびに344ペプチドとDペプチドを共に含む344Dペプチド、との相互作用を、溶液NMR法で解析し、ドッキング相互作用が引き起こすアロステリック効果によって、p38αの活性が増強されることを明らかにした。
始めに、二重リン酸化だけではなく、ATPが結合してはじめてp38α-2Pが活性なコンフォメーションをとること、その中でもATP結合の寄与が大きい事、が明らかになった。次に、p38α-2Pのドッキング部位とMK2のドッキング領域との結合に加えて、ATPがp38α-2Pに結合してはじめて、MK2リン酸化部位がp38α-2Pの活性部位に結合できることが明らかになった。続いて、ドッキング相互作用によって、ドッキング部位とは異なるp38α-2Pの活性部位のコンフォメーションが変化したこと(アロステリック効果)を示唆する化学シフトを観察した。平行して、ドッキング相互作用によって、機能的に、p38α-2PのATPに対する結合親和性、MK2リン酸化部位への結合親和性ならびにペプチドのリン酸化反応が増強される事を見出した。このドッキング相互作用によるATPの結合親和性増強によって、ストレス下でもp38α-2Pが安定したシグナル伝達を達成すると考えられる。さらに、p38α-2PへのATPの結合によって、p38α-2PとMK2のドッキング領域の結合親和性が増強されることを見出した。すなわち、ドッキング相互作用がATPと恊働しつつ、p38α-2PにMK2を正確に選択させ効率的にリン酸化させると考えられた。
論文→ Tokunaga Y, Takeuchi K, Takahashi H, Shimada I. Allosteric enhancement of MAP kinase p38α's activity and substrate selectivity by docking interactions. Nat Struct Mol Biol. 2014 Aug;21(8):704-11. Published online 20 July 2014
NMRデータ→ BMRB 19930 (nonphosphorylated apo-p38α)
NMRデータ→ BMRB 19934 (apo-p38α-2P)
NMRデータ→ BMRB 19935 (p38α-2P in ATP analog-bound state)
NMRデータ→ BMRB 19936 (p38α-2P in 334D peptide-bound state)
NMRデータ→ BMRB 19937 (p38α-2P in both ATP analog- and substrate-bound states) -
真核生物の翻訳開始因子elF4Eと小分子4EGI-1との複合体の構造解析に基づいて、翻訳開始因子eIF4GがelF4Eから解離する分子機構がアロステリック効果によることが明らかになった
翻訳開始因子の一つeIF4E(eukaryotic translation initiation factor 4E)は真核生物の殆ど全ての遺伝子の翻訳に決定的な役割を果たしている。すなわち、eIF4Eと他の翻訳開始因子eIF4G(eukaryotic translation initiation factor 4 gamma) との相互作用によって、40SリボソームがmRNAの5末端にリクルートされて、mRNA上での開始コドンAUG探索が始まる。5'UTRが複雑な構造をしている腫瘍性タンパク質と成長促進因子のmRNAの翻訳には40Sリボソームの効率的リクルートが必要であり、癌細胞ではeIF4Eが極めて亢進していることが知られている。このため、 eIF4E/eIF4の相互作用を阻害する化合物が抗がん剤の候補として注目を集めている。Harvard Medical SchoolのGerhard Wagner等は、eIF4E/eIF4G相互作用をin vivoでもin vitroでも阻害する小分子(4EGIs)を発見し、癌や神経系の研究に活用してきたが、阻害の分子機構の詳細は不明であった。今回、Gerhard Wagner等はNMR法による結合サイトのマッピングと高分解能の結晶構造解析から、eIF4Gが結合するエピトープから離れたサイトに阻害剤4EGI-1が結合することによってアロステリック効果をもたらすことを明らかにした。具体的には、4EGI-1が、βシート2(L60-T68) とαヘリックス1 (E69-N77)との間の疎水性ポケットに入り込み、主としてH78-S85の領域に局所的コンフォメーション変化を引き起こす。すなわち、短い310ヘリックス(S82-L85)がアンフォールドされ、αヘリックス1が1ターン分(H78-S82)伸張される。このように、eIF-4G結合部位と4EGI-1結合部位にわたるαヘリックス1のコンフォメーションが変化することによって、eIF4EへのeIF4Gの結合がアロステリックに阻害されていた。阻害剤を加えない状態でのαヘリックス1への変異導入実験も、このアロステリック効果のモデルを支持した。
論文→ Papadopoulos E. et al. Structure of the eukaryotic translation initiation factor eIF4E in complex with 4EGI-1 reveals an allosteric mechanism for dissociating eIF4G. Proc Natl Acad Sci U S A. 2014 Aug 5;111(31):E3187-95. Published online July 21, 2014.
構造→ 4TPW(20140808時点で未公開)
構造→ 4TQB(20140808時点で未公開)
構造→ 4TQC(20140808時点で未公開)
参考文献(4EGIs)→ Moerke NJ. et al. Small-molecule inhibition of the interaction between the translation initiation factors eIF4E and eIF4G. Cell Jan 26;128(2):257-67. -
IBM、脳・神経の構造と機能を模したコンピュータアーキテクチャーの実証実験に成功
Dharmendra S. Modha等5カ所のIBM研究センターとコーネル大学の研究開発チームは、ヒトの神経回路系を模した極めて大規模な(neuromorphic)集積回路"TrueNorth"を開発・発表した。TrueNorthは54億個のCMOSトランジスターを4.3cm2のスペースに集積したチップであり、4096個の神経シナプスを模したコアが相互に結合され、プログラム可能な100万個のデジタルのスパイキング・ニューロンと環境設定可能な(configurable)2.56億個のデジタルのシナプスが統合されたシステムを構成している。チップは、大脳皮質の層を模して、チップ間の通信インターフェースを介して二次元に配置することができ、それを任意の大きさのシートへとシームレスに拡大していくことができる。研究開発チームは、また、チップを駆動するためのコンピュータ言語も開発した。この非ノイマン型アーキテクチャーは、道を通行する車や人の識別、パーティー会場での多数の参加者の音声の識別、ノイマン型コンピュータが不得手であった課題を効率的に解決することができる。例えば、スタンフォード大学のHoover Towerから道行く車や方向者をリアルタイムで識別・分類し異なる色のフラグを付すことができる。また、TrueNorthは、ノイマン型コンピュータに比べて画期的に省電力になっており、400ピクセルx240ピクセルのビデオ画像を1秒あたり30フレーム取り込むに要した電力は僅かに62ミリワットであった。
論文→ Merolla PA. et al. A million spiking-neuron integrated circuit with a scalable communication network and interface. Science 2014 Aug 8;345(6197):668-673.
FEATURE→ Service RF. The Brain Chip. Science 2014 Aug 8;345(6197):614-616. -
WHOの発表によると8月6日時点でエボラ出血熱による死者が932人に達し、感染または感染が疑われる患者は8月4日までに1,711人までに増加した。国際的に感染が広がる恐れも言われ始め、米国ではアメリカ食品医薬品局(FDA)が、国家安全保障の観点から、国防総省(Department of Defence: DoD)が開発していたリアルタイムPCR法に基づくDoD EZ1 Real-time RT-PCR Assayの使用を、緊急措置として認可した(Emergency Use Authorization)。これによって、エボラ出血熱ウイルス(Ebola Zaire (Target 1))が広がっている地域において、症状が出ている場合、あるいは、疫学的リスク因子からみてウイルスに暴露された疑いがある場合に、Trizolで不活性化した血液または血漿を、DoDによって定められた特定の機器を使用して解析することが認められた。
FDAアナウンスメント→ U.S. Food and Drug Administration. 2014 Ebola Virus Emergency Use Authorization. August 5, 2014
診断法の一般向け解説→ U.S. Department of Defense. Fact Sheet for Patients: Understanding Results from the Ebola Zaire (Target 1) Real-Time PCR (TaqMan®) (EZ1 rRT- PCR) Test. August 5, 2014
参考文献(未認可薬使用に関する議論)→ Enserink E. INFECTIOUS DISEASES: Ebola drugs still stuck in lab. Science 2014 Jul 25;345(6195):364-5. -
T細胞受容体配列の特異性とT細胞の機能性差異を、一細胞ごとかつ網羅的に対応づける新技術
スタンフォード大学のMark M Davis等は、T細胞受容体(T cell receptor: TCR)の特異性とT細胞の機能を細胞ごとに対応づけることができる大規模解析を実現した。具体的には、FACSによってヒトの血液・組織からシングルセルを96穴のプレートへと分別し、TCRのα鎖とβ鎖をコードしている遺伝子に特異的なプライマーと、機能マーカーに特異的なプライマーを加えてnested PCRで増幅した上で、識別用のバーコードを付加した後に、deep sequencingを行う。このようにして、当初の集団のうち80%以上のT細胞のTCR配列と、細胞を固定すること無くサイトカインと転写因子のべ17種類のマーカーの発現データを得て、それらを統合解析することに成功した。本方法をヒト結腸直腸がんの患者由来の細胞に適用して、腫瘍由来のT細胞には、腫瘍組織近傍の正常組織由来のT細胞に比べて、同一のTCRを有するクローン性増殖が大規模に起きていることを見出した。また、同一TCRを有していて共通祖先由来と推定されるT細胞のマーカ発現パターンが、共通していないことも見出して、膨大な種類のT細胞集団の解析における網羅的シングルセル解析の必要性と可能性を示した。
論文→ Han A, Glanville J, Hansmann L & Davis MM4. Linking T-cell receptor sequence to functional phenotype at the single-cell level. Nat Biotechnol. 2014 Jul;32(7):684-92. Published online 2014 June 22.
NEWS AND CIEWS→ Jiang N, Zhang S & Ma K. An ID card for T cells. Nat Biotechnol. 2014 Jul 8;32(7):639-40. Published online 08 July 2014 -
【論文】
Pages 1077-1089:VEGF receptor 2(血管内皮細胞増殖因子受容体2)の活性は膜貫通領域が取りうる2種類のコンフォメーションに依存する(Kurt Ballmer-Hofer et al.)
Pages 1090-1104:線虫のZYG-1 "Cryptic Polo Box"(CPB)の構造解析の結果、Plk4キナーゼのホモログはいずれもCPB二量体表面において保存されているパッチを介して中心小体に結合することが示唆された(Karen Oegema, Gang Dong et al.)
Pages 1105-1119:SMG1とUPF1/UPF2の複合体の構造解析:SMG1は、ナンセンス変異依存 mRNA分解機構 (NMD) において、UPF2に依存するUPF1の活性化の調節に寄与する(Akio Yamashita, Oscar Llorca et al.)
Pages 1120-1139:第3回GPCR Dock 2013コンテストから見たGPCRモデリングの進歩:新たな挑戦(Ruben Abagyan et al.)
Pages 1140-1151:5-HT/1Bセロトニン受容体の結晶構造に基づいて、5-HT/1B受容体に選択的に結合するリガンドを発見(David Rodriguez, Jose Brea, Maria Isabel Loza, Jens Carlsson)
Pages 1152-1160:E. coliのペプチド・トランスポーターYbgHの結晶構造(Xuejun C. Zhang et al.)
Pages 1161-1172:AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)活性化の構造的基礎:天然リガンド(AMP)と合成リガンド(A769662)はそれぞれAMPK活性ループの異なる部位に結合し、AMPKを活性化する分子機構が異なる(Ravi G. Kurumbail et al.)
Pages 1173-1183:ヌクレオチド交換によって二量体型MCAK(有糸分裂セントロメア関連キネシン)のコンフォメーションが変化することにより微小管の端に縦方向と横方向の力がかかり、微小管が脱重合(短縮)する(Kyle M. Burns, Mike Wagenbach, Linda Wordeman, David C. Schriemer)
Pages 1184-1195:極めて構造がフレキシブルな黄色ブドウ球菌(S. aureus) プロテインAの構造アンサンブルの高分子物理学モデルはX線小角散乱解析結果にフィットする(Jo A. Capp, Andrew Hagarman, David C. Richardson, Terrence G. Oas)
【短報】
Pages 1196-1203:転写因子Est1において、PNTドメイン近くの天然変性領域がリン酸化されると、コンフォメーションがTAZ1タンパク質との結合に適合する方向へと変化する(Jennifer M. Bui, Jorg Gsponer)
Pages 1204-1209:E. coli外膜のタンパク質W(OmpW)のポリペプチド骨格コンフォメーションのNMR解析 (Reto Horst, Pawel Stanczak, Kurt Wuthrich)
Pages 1210-1218:酵母の80S-tRNAの複合体構造:大サブユニットに対して小サブユニットが回転している場合と回転していない状態 (Egor Svidritskiy, Axel F. Brilot, Cha San Koh, Nikolaus Grigorieff, Andrei A. Korostelev)
Structure8月号Webサイト→ Structure Volume 22, Issue 8, Pages 1071-1218 (5 August 2014) -
電子線トモグラフィーによるタンパク質構造解析サービス提供を目指す沖縄科学技術大学院大学発ベンチャー設立
沖縄科学技術大学院大学(OIST)は7月30日に、大学の研究成果を活かす初のベンチャー企業「沖縄プロテイントモグラフィー(株)」の設立を発表した。同社は、OIST構造細胞生物学ユニット代表のウルフ・スコットランドが独自に開発した電子顕微鏡像からの3次元再構成プログラム(COMET)を含む電子線トモグラフィー技術(プロテイントモグラフィー技術)の移転を受けて、受託解析を行う。プロテイントモグラフィー技術によって、タンパク質を結晶化することなく、1分子レベル、分解能最大約1.5nmで、タンパク質の3次元構造を可視化できるとされている。今回のベンチャー設立は、平成24年度文部科学省大学発新産業創出拠点プロジェクト(START)「分子分解電子線トモグラフィーによる巨大分子の3次元可視化」課題の成果でもあり、おきなわ新産業創出投資事業有限責任組合(無限責任組合員バイオ・サイト・キャピタル株式会社(BSC))が出資している。
プレスリリース→ 沖縄科学技術大学院大学. OIST 発ベンチャー第一号の誕生-創薬に新しい基盤技術を. 2014年7月30日 -
代謝型グルタミン酸受容体の一つであるmGluR5の膜貫通領域の構造と機能が明らかにされた
Gタンパク質共役受容体(GPCR)のクラスCに属する代謝型グルタミン受容体(metabotropic gultamate receptor: mGluR)は記憶や学習に関わるとされ、創薬のターゲットとされている。なかでも、mGluRのグループ1に属する受容体の一つmGluR5については、その活性を抑制する(負の)アロステリック調節因子が脆弱X症候群、鬱病、不安症、依存症および運動障害の治験薬として研究が進められている。また、活性を亢進する(正の)アロステリック調節因子は統合失調症や認知障害の治療薬になり得るとされている。一方で、mGluR5の細胞外N末端側の大きなリガンド結合領域の構造解析は行われたが、活性部位が存在するとされている膜貫通領域の構造は不明であった。今回、GPCRをターゲットとした創薬を目指しているHeptars Therapeutics Ltd. のFiona H. Marshall等は、薬理作用を維持したまま少数の変異を導入して安定な結晶を得るStaR®プラットフォームによって、mGluR5の膜貫通領域と脆弱X症候群の治験薬mavoglurant(AFQ056)との複合体を得て、X線解析によって構造を解き、GPCRクラスAに相当するロドプシンならびにGPCRクラスBに分類されているCRF1の構造と比較しながら、薬剤として機能する可能性があるアロステリック調節因子の結合やシグナル伝達を調節するマイクロスイッチの機構を明らかにした。
【注】本論文査読中に、mGluR1Rと負のアロステリック調節因子FITMとの複合体の構造がScience誌に発表された。全体の構造は酷似していたが、アロステリック結合部位の配置・構造に違いがみられた(→ 参考文献)。
論文→ Dore AS. et al. Structure of class C GPCR metabotropic glutamate receptor 5 transmembrane domain. Nature Jul 31;511(7511):557-62. Published online 6 July 2014.
構造→ 4OO9: Structure of the human class C GPCR metabotropic glutamate receptor 5 transmembrane domain in complex with the negative allosteric modulator mavoglurant (分解能2.6Å)
参考文献→ Wu H. et al. Structure of a class C GPCR metabotropic glutamate receptor 1 bound to an allosteric modulator. Science 2014 Apr 4;344(6179):58-64. Published online 6 March 2014.
構造(参考文献)→ 4OR2: Human class C G protein-coupled metabotropic glutamate receptor 1 in complex with a negative allosteric modulator -
創薬等支援技術基盤プラットフォーム公開シンポジウム開催まであと3週間
情報拠点が参画している創薬等支援技術基盤プラットフォーム事業は、タンパク質の生産・解析技術、アカデミア化合物ライブラリー、バイオインフォマティクス・データクラウドなどのサービスを広く提供するとともに、高度化を継続してサービスに還元することを目指しています。事業発足から3年目にはいり、広く一般にこれまでの成果を公開する講演会・ポスター発表・交流会を、2014年8月27日(水曜日)10:30から20:00の予定で、都内よみうり大手町ホールで開催致します。講演会の講師・演題を以下にご紹介いたします:
・「医療分野の新たな研究開発体制について」菱山 豊(内閣官房健康・医療戦略室次長)
・「生活習慣病の分子基盤と創薬戦略」門脇 孝(東大院・医・教授、東大医附属病院長)
・「膜輸送体の分子機構とペプチド創薬」濡木 理(東大院・理・教授)
・「創薬等支援技術基盤プラットフォームの展開」吉田賢右(推進副委員長)
・「構造生命科学を推進する技術開発とその成果」千田俊哉(解析拠点 / 高エネ機構)
・「アカデミア創薬の大展開─創薬研究例の紹介とともに─」長野哲雄(制御拠点代表 / 東大、医薬品機構)
・「データクラウドを用いた構造生命科学:その開発と利用」由良 敬(情報拠点 /お茶大院・人間文化)
・「機能ゲノミクスの展望」菅野純夫(推進委員/ 東大院・新領域)
会場定員500名のところ、8月5日時点で空席30名となっておりますが、時間帯によって出入りがあるかと思います。また、待機していただけるサテライト会場も用意されております。参加お申込みはこちらから→
ポスター→ 公開シンポジウム「知って、使って、進むあなたの研究」 -
新たな膜タンパク質ディスプレイ法を工夫して、クライオ電子顕微鏡試料を調製し、3次元像の再構成に成功した
膜タンパク質は構造生物学者にとってやっかいな研究対象である。多大な労力と経費をかけて試料調製を試みても、結晶の収量が極めて少量であったり、本来の機能が失われていることが多い。今回、Oxford大学のKay Grunewald等は、小胞にディスプレイした膜タンパク質を集積する新たな膜タンパク質試料調製法を工夫して、生体脂質二重膜の融合をもたらす膜タンパク質fusogenの構造と膜融合の動態を解明した。
具体的にはCaenorhabditis elegansのfusogenのEFF-1の遺伝子を導入・発現させたハムスター腎由来細胞株BHK-21を培養し、培養液から遠心分離を経て細胞外の小胞を集積した。小胞の表面は、およそ12から14nmの厚さのEFF-1の層で覆われていた。このように調製した試料をクライオ電子顕微鏡で解析した結果、EFF-1はクラスIIウイルスの膜融合タンパク質と相同な構造をしているが、膜と融合する前の構造と融合をもたらす機構についてはウイルスのタンパク質と異なることを見出した。すなわち、EFF-1は、融合前は単量体であり細胞膜から直立しており、融合する膜の双方に存在するEFF-1が相互作用することによって融合するbilatreralでhomotypicな機構で膜融合をもたらすこが明らかになった。
Research Highlights→ Tools in Brief. Displaying membrane proteins for cryo-EM Nature Methods 2014 July; 11(7)714 Published online 27 June 2014
論文→ Zeev-Ben-Mordehai, T. et al. The full-length cell-cell fusogen EFF-1 is monomeric and upright on the membrane. Nat. Commun. 2014 May 28;5:3912.. Published online DD MM YYYY
構造→ 4CYL: Tomographic subvolume average of EFF-1 fusogen on extracellular vesicles 分解能2.2Å
構造→ EMD_2530: Epithelial fusion failure 1 (EFF-1) Isoform A on extracellular vesicles
構造→ EMD_2531: Segmented membrane from epithelial fusion failure 1 (EFF-1) Isoform A on extracellular vesicles
構造→ EMD_2532: Epithelial fusion failure 1 (EFF-1) Isoform A on extracellular vesicles -
タンパク質複合体の表面を分子染料で塗りつぶすと、界面に隠れていたドラッグターゲットが見えてくる:Protein-painting法
生命システムの鍵を握っているタンパク質相互作用については、創薬のターゲットの観点からも徐々に解明が進んでいる。これまで明らかにされたタンパク質相互作用の界面のほとんどに、相互作用に決定的役割を果たす極めて限られた残基(ホットスポット)が存在することも知られてきた。このホットスポットは創薬ターゲットとして有望であるが、界面深くに位置しO-ringと呼ばれる領域によって溶媒から隔離されているために、溶液中でそのままの状態で特定する事が困難であった。今回、米国George Mason大学のAlessandra Luchini等は、小分子を染料として(molecular paints; 分子染料)溶媒にさらされているタンパク質表面を塗りつぶす前処理を施したのちに質量分析を行うprotein painting法を開発し、その有用性を示した。
分子染料は、炭酸脱水酵素(CA-II)をモデルとして選別した有機系染料を含むアリル炭化水素であり、タンパク質間相互作用の10?100倍の速さでタンパク質表面に限って強固に非共有結合し、タンパク質を変性させても剥離せず、トリプシン消化からタンパク質を保護する。したがって、分子染料で塗りつぶした複合体を分離し、トリプシンで分解し、質量分析すると、ホットスポット由来のペプチドだけが検出されることになる。
著者等はこのprotein painting法を、広範な疾患に関連するIL1βリガンド、IL1RI受容体およびアクセサリータンパク質のIL1RAcPの3者から成る複合体の解析に適用し、ホットスポットを新たに特定することができ、その結果にもとづいて設計したペプチドと抗体によってIL1βシグナル伝達系を実際に阻害できることを示した。また、従来の手法、cross-linking法、水素-重水素交換質量分析(hydrogen/deuterium exchange:HDX)法ならびにレーザー誘起蛍光法によるOHラジカル測定(hydroxyl radical footprinting)法と比較対照して、protein painting法が高精度かつ簡便な優れた方法であるとした。
論文→ Luchini A, Espina V, Liotta LA. Protein painting reveals solvent-excluded drug targets hidden within native protein-protein interfaces. Nat Commun. 2014 Jul 22;5:4413 -
微細な細胞空間におけるタンパク質間相互作用の超高分解能可視化を実現するBiFC-PALM法
生命現象の鍵を握るタンパク質間相互作用を理解するためには、その空間的時間的動態を把握する必要がある。しかし、生体分子が密集しまた一つのタンパク質が多数の因子と相互作用している微細な細胞空間において、バックグラウンドのノイズの中から目的とするタンパク質間相互作用を可視化することは、STORM(stochastic optical reconstruction microscopy)、PALM(photoactivated localization microscopy)、FRET(Forster resonance energy transfer)など、これまでの技術だけでは困難であった。今回、北京大学のYujie Sun等は、BiFC(bimolecular fluorescence complementation:二分子蛍光補完法)とPALM(光活性化局在顕微鏡法)とを組み合わせたBiFC-PALM法を開発した。BiFCに使用する蛍光タンパク質としては、候補蛍光タンパク質を超高分解能実現の観点から比較評価した上で、mEos3.2を選択した。
著者等は、このBiFC-PALM法をEscherichia coliのMreBタンパク質と伸張因子EF-Tuの相互作用解析に適用し、MreB、EF-TuおよびMreb-EF-Tuそれぞれの一分子追跡も行って、これまで観測されていなかったEFTu-MreBの分布と多様な動態を見出した。また、MreBとEF-Tuの中で相互作用しているタンパク質の分布と動態が相互作用していない状態のタンパク質と異なっていることは、MreBとEF-Tuが互いに制御している可能性を示唆しているとした。今後、BiFC-PALM法は、多色の蛍光タンパク質を導入や、真核生物への適用へと発展していくであろう。
論文→ Liu Z. et al. Super-resolution imaging and tracking of protein-protein interactions in sub-diffraction cellular space. Nat Commun. 2014 Jul 17;5:4443 -
次世代タンパク質変異導入スキャニング法"deep mutational scanning"
米国ワシントン大学のDouglas M FowlerとStanley Fieldsの手になるdeep mutational scanning(以下、DMS)のレビューが7月30日Nature Protocolオンライン版に掲載された。DMSは、タンパク質の変異誘発実験とハイスループットDNAシーケンシング(HTS)を融合させて、タンパク質の機能解析を画期的にスケールアップする技術である:(1)解析対象とするタンパク質の変異体を網羅的にディスプレイする(2カ所以上への変異導入も想定);(2)タンパク質が有すると思われる種々の機能で(1)のライブラリーにセレクションをかける(適合したタンパク質は増加し不適合なタンパク質は減少する);(3)前項(1)と(2)双方のライブラリーにおける変異体すべてについて、コードしているDNA配列をHTSにて決定する;(4)HTSからの出力(配列数)から、変異体ごとの濃縮度を計算する;(5)濃縮度を各変異体の適応度と見なして、変異と機能の相関を分析する。著者らは、WWドメインのリガンド結合機能の解析(?47,000種類の変異体)や、E3ユビキチンリガーゼの酵素活性(?100,000種類の変異体)研究におけるDMSの成功例を紹介するとともに、DMS法の今後の発展に必要な技術開発についても論じている。
Review→ Fowler DM & Fields S. deep mutational scanning: a new style of protein science. Nature Methods Published online 30 July 2014
参考文献→ Araya CL & FOWLER DM. Deep mutational scanning: assessing protein function on a massive scale. Trends Biotechnol. 2011 September;29(9):435-442. -
英国David Cameron首相は2017年までに英国民10万人のゲノム解析(以下、100Kプロジェクト)を完了すると公約していたが、2014年8月1日に、「これから4年間にわたり、診断と治療に革新をもたらすゲノム解析に3億ポンド(?516億円相当)を投資することに決した」と発表した。また、英国政府が全額出資したGenomics Englandが Illuminaと共同で100Kプロジェクトに取り組んでいく事を明らかにした。この共同プロジェクトで Illuminaは7.8千万ポンドを得て全ゲノム配列決定のインフラを提供するとともに、英国でのゲノム解析事業に4年間にわたり1.62億ポンドを投資する。
これまでゲノム解析に多大な貢献をしてきた英国機関も100Kプロジェクトに協力する。The Wellcome Trust財団は、ゲノム研究にこれまでに1兆ポンド以上を投じてきたが、今回、ケンブリッジ郊外のGenome CampusにおけるGenomics EnglandとWellcome Trust Sanger Instituteによるゲノム解析に2.7千万ポンドを投じる。このGenome Campusではバイオインフォマティクス分野で世界的貢献をしてきたThe EMBL-European Bioinformatics Institute(EMBL-EBI)も活動している。英国医学研究審議会(Medical Research Council)は、2.4千万ポンドを100Kプロジェクトのための計算機資源に投じる。英国の国民保健サービス(National Health Service: NHS)は、癌や希少疾患の患者を受け入れてゲノム医学研究を行う初のNMSゲノム医学センターの設立を目指して候補機関を公募している。NHSはこの研究センターに2千万ポンドまでを保証している。
100Kプロジェクトの成果は4万人のNHS患者に還元され、いずれは、NHSを介してゲノム医学が臨床現場で広く活用されていくことになろう。
Press release→ 英国総理府. Human genome: UK to become world number 1 in DNA testing. Published 1 August 2014 -
分子プロファイリングによる胃癌のサブタイプ4種類が定義され、これまでよりきめ細かな治療が可能に
(本記事は、7月31日掲載版に、肺腺がんの包括的分子プロファイリングの論文を参考文献として付け加えたものに当たります)今回、The Cancer Genome Atlas (TCGA) Research Networkは、化学療法も放射線治療も受けていない295名の胃癌患者の血液と胃粘膜の正常な細胞をサンプルとして、6種類の分子プロファイリング(molecular profiling) を行い、その結果を統合して、胃癌の4種類のサブタイプを定義し、また、各サブタイプを特徴づける分子プロファイルを特定した。この研究成果によって、サブタイプごとに創薬のターゲットを選択し、また、従来の均一な治療法から脱却して患者のサブタイプに適合した治療法が選択されるようになり、胃癌の治癒率が向上していくであろう。
【6種類の分子プロファイリング】測定のプラットフォームは、コピー数多型測定、全エクソーム配列決定、DNAメチル化測定、mRNA配列決定、マイクロRNA配列決定ならびにタンパク質リン酸化測定
【サブタイプ名:患者の割合:特徴】
1) EBV(EBウイルス感染):9%:PIK3CA遺伝子パスウエイの変異、極めて高頻度なCpGアイランドメチル化(CIMP)、PD-L1/PD-L2の過剰発現、CDKN2Aサイレンシング;胃体部と胃底部に多い、患者の81%が男性
2) MSI(microsatellite instability):22%:DNA修復機構の毀損による高頻度な変異、CIMP高頻度、MLH1サイレンシング、有糸分裂パスウエイ活性化;患者の平均年齢72歳
3) CIN(chromosomal instability):50%:遺伝子や染色体における多様な重複や欠損、TP53変異、RTK-RAS活性化;比較的胃食道接合部/噴門に多い
4) GS(genomically stable):20%:CDH1変異、RHOA変異、CLDN18-ARHGAP融合、細胞接着パスウエイ活性化;びまん浸潤型(diffuse-type)の胃癌に多い、患者の平均年齢59歳
【注1】胃癌の4つのサブタイプをまとめた図はこちら→
【注2】データ入手先:Data Coordinating Center
【注3】TCGA Research Networkは、230例の肺腺がん標本について分子プロファイリングを行った結果を、2014年7月9日にNatureオンライン版に発表している(→ 参考文献)。
論文→ The Cancer Genome Atlas Research Network. Comprehensive molecular characterization of gastric adenocarcinoma. Nature Published online 23 July 2014.
参考論文→ The Cancer Genome Atlas Research Network. Comprehensive molecular profiling of lung adenocarcinoma. Nature 2014 July 31;511(7511):543-550. Published online 09 July 2014 -
癌は、somatic evolutionによって不均一なサブクローン(sub-clone)が発生する過程を経て、発症する。しかし、不均一なサブクローンが共存する機構とその共存がもたらす生物学的意味については、理解が進んでいなかった。今回、Dana-Farber Cancer InstituteのKornelia Polyak等は、ヒト乳がん由来細胞から比較的増殖速度が遅い細胞(MDA-MB-468)を選別した上で、腫瘍進行に関連するとされている因子または乳がんで高発現している因子18種類をそれぞれ過剰発現させたサブクローン群を用意し、MDA-MB-468と各サブクローン(18:1の比率)、または、複数のサブクローンのセットをマウスに異種移植し、その影響を解析する実験系を構築して、研究を進めた。
サブクローンごとの実験から、腫瘍増殖は、ケモカインCCL5(CCL5)またはインターロイキン11(IL11)のサブクローンを移植した場合にだけ起きることを見出した。また、前者では細胞自律的(cell autonomous)に起こり、後者では、MDA-MB-468の増殖も伴って非細胞自律的に起こることを見出した。これらのサブクローンに起因する腫瘍は転移性を示さなかったが、他のサブクローンと混在させた場合は転移が見られた。さらに、L11サブクローンについては、微小環境の制約を緩和して腫瘍の増殖を促進することによると思われる現象を見出した。異種移植の実験と共に、数理モデルを構築して、腫瘍増殖の機序の推定と医療で想定されるような長期間にわたるサブクローンの動態の予測を試みた。数理モデルによると、IL11非存在下では、増殖速度が速いサブクローンが他のサブクローンを圧倒し、クローンの不均一性が失われた。また、IL11サブクローンと比較的増殖速度が速いLOXL3サブクローンを移植したモデルマウスでは、後者が前者を圧倒しIL11サブクローンが検出されなくなり、細胞死に至ったと思われる実験結果を得た。以上、実験と数理モデルによる解析の結果、腫瘍の進行をドライブするのは、ある時点で腫瘍の中で大きな部分を占めているサブタイプではなく、微小環境を改変して他のサブクローンも増殖させる(いわば共存共栄する)比較的小さな細胞集団がドライブすると考えられる。この知見は、癌治療のターゲットとするサブタイプ特定に、新たな視点をもたらす。
論文→ Marusyk A. et al. Non-cell-autonomous driving of tumour growth supports sub-clonal heterogeneity. Nature Published online 30 July 2014
腫瘍細胞不均一性モデル参考文献→ Dick JE. Stem cell concepts renew cancer research (Figure 2). Blood 2008 Dec 15;112(13):4793-807. -
新たな高精度シングルセル解析法によって、乳がん細胞における遺伝的不均一性を明らかにした
乳がんコホートの配列解析によって、多くの遺伝的変異が同定されてきたが、腫瘍内のゲノム多様性に関する知見は限られている。今回、テキサス大学Anderson Cancer CenterのNicholas E. Navin等は、ゲノムが倍化するG2/M期のDNAを調整する手法を確立して、従来に無い高精度でゲノム配列ならびにエクソーム配列を決定することを可能にし、この新しい実験手法"nuc-seq"によって、乳がん細胞におけるクローンの進化について新たな知見を得た。
具体的には、正常細胞、エストロゲン受容体陽性(ER+)(ERBC)乳がん由来細胞、および腫瘍マーカー3種が陰性(triple-negative)の乳管癌細胞(TNBC)から分離した核を対象として、"nuc-seq"による全ゲノムとエクソーム解析、および、シングルセルのコピー数解析と腫瘍丸ごとを対象としたdeep-sequencingも行った。その結果、腫瘍の進化過程の初期に異数性の染色体再編成が発生し、腫瘍が増殖する間安定に保たれる一方で、点突然変異が徐々に増加することによって、不均一なサブクローンが発生すること事を見出した。
ERBCにおいては4,162の一塩基変異(SNV)を同定したが、そのうち12の非同義置換のいくつかは、PIK3CAなど癌遺伝子に存在していた。TNBCでは、374の非同義置換を同定したが、その多くはPTENなどの癌遺伝子に存在していた。これら多様な変異の多くは低頻度(<10%)であり、腫瘍細胞に共通な変異、特定のサブクローンに特異的な変異、さらには、特定の一細胞に特異的な変異、が存在した。細胞分裂ごとの変異率は、数理モデルによると、ERBCは正常細胞と同程度であったが、TNBCの変異率は正常細胞の13.3倍となった。
著者等は、考察において"no two single tumour cells are genetically identical"と記し、化学療法によって変異が起こるのではなく、化学療法前から多様な変異が存在していると主張している。
【注】本論文と同日、Natureオンライン版にて、もう一報、乳がんのクローン不均一性に関する論文が公開されている。
論文→ Wang Y. et al. Clonal evolution in breast cancer revealed by single nucleus genome sequencing. Nature Published online 30 July 2014// http://dx.doi.org/10.1038/nature13600 -
黄斑モザイクウイルスのtRNA様構造の精密構造を決定し、機能の多様性が依って来るところを明らかにした
黄斑モザイクウイルス(TYMV)のtRNA様構造(transfer RNA-like structures:TLS)の3'末端にはCCAの塩基配列が存在し、TLSはtRNAと同様にアミノアシル化され、真核生物の伸長因子α1(eEF1A)に結合し、tRNA修飾酵素の基質となる。一方で、ウイルス感染過程でリボソームとレプリカーゼの活性を調節するといった働きもする。今回、コロラド大学のJeffrey S. Kieft等は、TYMVのTLSの構造を分解能2Åで決定し、分解能1.93Åで決定されていた酵母のフェニルアラニンtRNAの構造と対照させて、TLS独特の構造と機能を解明した。全体としてL型をとっている構造はTLSとtRNAと非常に良く似ているが、その構造を維持している分子内相互作用は全く異なっていた。tRNAでは、Vループ(variable loop)がDアームとの相互作用によって構造が維持されているのに対して、TLSでは、Vループが5末端とシュードノットと相互作用することで構造が維持されている。TLS独特の分子内相互作用によってTLSの構造と機能は可塑性を得、TLSには、tRNAを"擬態して"アミノアシル化を駆動する面と、tRNAは多様な分子と結合して多様な機能を発揮する面の二面が共存する。そして、TYMVの3'末端全体が、リボソーム内部に結合することから、TLSは、翻訳を促進し、RNAゲノムの3末端を保護する働きもすると考えられる。
論文→ Colussi TM. et al. The structural basis of transfer RNA mimicry and conformational plasticity by a viral RNA. Nature Jul 17;511(7509):366-9. Published online 08 June 2014
構造→ 4P5J: Crystal structure of the tRNA-like structure from Turnip Yellow Mosaic Virus (TYMV), a tRNA mimicking RNA (分解能2.0Å) -
遺伝子診断会社23andMe、米国NIHから2年間140万ドルの資金を得てデータベースを拡充・公開
遺伝子解析サービスの草分けである23andMeは、すでに70万人以上の顧客の遺伝型を蓄積し、そのおよそ80%について表現型に関わる情報も蓄積しているとされている。遺伝子解析サービスの中で、254種類の疾病のリクスを推定するPersonal Genome Sercive (PGS)は、2013年11月のFDAからの警告によって中止され、現在は、遺伝型の生データと祖先に関する解析結果をサービスするに止めている。一方で、23andMeは、4,000人の患者群と62,000人の対照群の情報をパーキンソン病の病因遺伝子を探索する大規模な国際共同研究プロジェクトに提供し、7月27日にNature Geneticsオンライン版に発表されたパーキンソン病に相関する新たな遺伝子領域6カ所を特定した論文に共著機関として加わった。各種オンラインニュースによると、偶然にもその2日後の7月29日、23andMeは、「NIHから新たに資金を得て、健康・疾病と遺伝型の相関を解析する研究に貢献することを目指して、表現型情報の収集方法という入り口からResearch Acceleratorを進化させるという出口までのシステムを洗練させて、匿名化したデータベースを23andMe外の研究者にも提供する」と発表した。
【注】23andMeは過去3年間に16報を査読付きジャーナルに発表してきた。
News→ Bio-IT World. 23andMe Gets $1.4m from NIH, Publishes Parkinson's Research. Published online July 29, 2014
Newws→ REUTERS (Farr, C. and Craft, D.). 23andMe lands $1.4 million grant from NIH to detect genetic roots for disease. Published online 29 July 2014 -
ヒトのアミノアシルtRNA合成酵素の選択的スプライシングから生成される変異タンパク質は、酵素活性を失うが、多様な機能を新たに獲得する
ヒトを含むいわゆる進化した生物種では、選択的スプライシング(alternative splicing: AS)の仕組みによって、一つの遺伝子から多数の転写物ひいてはタンパク質を生成する。今回、Scripps Research InstituteのPaul Schimmelが率いる米国と香港の産学研究チームは、選択的スプライシングがもたらす変異タンパク質の構造と機能を包括的に明らかにするために、全生物に存在し、生物進化の過程における最古のタンパク質と思われるアミノアシルtRNA合成酵素(aminoacyl-tRNA synthetase: AARS)ファミリーを対象とするトランスクリプトーム解析を行った。具体的には、ヒトの6種類の組織(胎児脳、成人脳、初代白血球細胞、継代白血球細胞(Raji B細胞株、Jurkat T細胞株、THP1単球細胞株))において、細胞質とミトコンドリアに存在する37種類のAARSsの全mRNAについてdeep sequencingを行い、さらに、変異タンパク質の発現、ドメイン構造、そして機能の解析を行った。
今回の解析によって、既知の61種類の転写物に加えて、新たに248種類の転写物が発見された。また、配列データから見ると、多くの転写物は活性部位の毀損・欠損によって本来の酵素活性を失った(catalytic nulls: CNs)と思われる一方で、新たに、高等生物に見られる13種類のタンパク質ドメインを持つに至った転写物も存在し、タンパク質として新たな機能を獲得していることを思わせた。事実、CNのうち48種類については、ポリソームとの結合が見られ、ウエスタンブロッティングや質量分析の結果、CNがタンパク質を形作ることが確認され、組み換えAARSの発現と細胞レベルでのアッセーによって、例えば、骨格筋芽細胞の形成を促すなどの全く新しい機能を発揮することが見出された。著者等は、元々の酵素活性とは直交する調節機能を有する変異タンパク質"Physiocrines"は、AARSsファミリーに限らず、酵素全般について普遍的存在であり、創薬の新たなターゲットになりうると考えている。
【注】"Physiocrines"は、共著機関の一つaThy Pahrmaによる命名
論文→ Lo WS. et al. Human tRNA synthetase catalytic nulls with diverse functions. Science 2014 Jul 18;345(6194):328-32 -
20万人規模のゲノムワイド関連解析をもとに、パーキンソン病の発症リスクを高めるリスク座位を新たに6つ同定した
近年、ありふれた疾病(common disease)の発症リスクは、ありふれた変異(common variant)の重なりによって高まることを示すデータが蓄積されて来ているが、ゲノム解析の規模が拡大するごとに、新たなリスク関連変異が発見される傾向にある。7月27日、多くのゲノムワイド関連解析(GWAS)のデータを総合したメタ解析によって、新たに6種類のパーキンソン病(Parkinson's disease)関連遺伝子を発見した報告が、アメリカ国立老化研究所のAndrew B Singletonをシニア・オーサーとしてNature Genetics誌に掲載された。論文の共著者は、欧米7ヶ国の45の大学・研究所等と12のコンソーシウムにわたっており、そこには、23andMe、deCODE、The Michael J. Fox Foundation for Parkinson's Researchといった民間も含まれている。
論文によれば、一次メタ解析において、13,708人の患者群と95,282人の対照群(健常人)のデータから7,893,274のcommon variantsを同定し、その中で、ゲノムワイドで有意な相関を示す26のlocus(座位)を特定した。次に再現解析として、一次解析の対象群とは独立な5,353人の患者群と5,551対照群について、神経変性に関連した26万強の変異を網羅した遺伝型アレーNeuroXによる解析を行って、一次メタ解析で見出された座位のうち22の座位が発症リスク関連として再確認され、そのうち6つの座位が新奇であった。一次メタ解析では検知されなかった既報の6つの座位についてもこの再現解析を行ったところ、2つが再確認された。加えて、1次メタ解析で得た26の座位について、多重なリスクアレルの有無を解析して、2次的に新たに4種類のリスク座位を同定し、計28のリスク座位を特定するに至った。また、各変異のリスクは小さいが累積によってParkinson病が発症するリスクが有意に高まることを示し、脳における遺伝子発現やDNAメチル化と相関する座位についても論じた。
【注】患者群も対象群も全てヨーロッパ系である。
論文→ Nalls MA. et al. Large-scale meta-analysis of genome-wide association data identifies six new risk loci for Parkinson's disease. Nat. Genetics Published online 27 July 2014.
NIH NEWS & EVENTS→ NIH scientists find six new genetic risk factors for Parkinson's: Study shows power of combining big data analysis with cutting-edge genomic techniques. July 27, 2014. -
7月27日のウオールストリートジャーナルの報道によると、Googleは数千人の生体情報を集積する"Baseline study"計画を打ち上げた。今夏には、175名から尿、血液、唾液、涙などの体液を集めて解析を開始する。試験項目は明らかにされていないが、このプロジェクトのリーダーは、先進的遺伝子検査サービスを展開して来たAndrew Conradであり、すでに、Googleの戦略的研究開発部門であるGoogle Xに生理学、生化学、分子生物学、画像解析などの専門家70-100名規模のチームを組織している。また、GoogleX Life Scienceグループが開発して来た血糖値測定を可能にするスマートコンタクトレンズはノバルティスを介して商品化される見込みであり、グループはさらに拍動や呼吸を測定可能にするウエアラブル機器も開発中である。したがって、GoogleのBaselineには、ゲノムから表現型まで、静的データから動的データまで、個人まるごとの生体情報が集積されていくことを容易に想像できる。
Googleは、匿名化(anonymous)した上でデータをGoolge自身で利用するとともに、医学・医療・健康管理を目的とする外部の研究者にも提供するが、保険会社には提供しないとしている。また、本格運用に至った時点で、Duke大学とStanford大学の専門家で組織された委員会がデータの扱いをコントロールするとしている。ありとあらゆる情報を集積・組織化して誰でもが利用可能にするというGoogleにとって、個人の人体情報も例外でないと言えば、その通りであるが、健康医療産業は2017年には年に10.8兆円の規模に達すると言われており、Googleはこの産業へ進出する戦略的「地図」を入手することになるとも言える。
ニュース→ Barr A. Google's New Moonshot Project: the Human Body: Baseline Study to Try to Create Picture From the Project's Findings. The Wall Street JournalPublished online July 27, 2014. -
リボソームがコドンを翻訳する過程において2種類の変異が重なると神経変性が発症する
今回、Jackson研究所、Scripps研究所ならびに熊本大学の研究チームは、神経変性の原因となるmRNAの品質管理機構の異常を特定した。始めに、C57BL/6Jマウスにおいて、神経変成に関連するGTPBP2タンパク質が、コドンに対応するアンチコドンを有するtRNAをリクルートできないなどの原因でmRNA上で立ち往生(stall)したリボソームを、Dom34と相同なリボソームリサイクリング因子"pelota"と結合することによって、mRNAから解放する因子(リボソームレスキュー因子)であると特定した。次に、GTPBP2変異による神経変性は、実は、特定のtRNAの変異も存在した場合に限って発生することを見出した。すなわち、アルギニンのコードの一つAGAに対応するアンチコドンを有するtRNAArgUCUの5種類のisodecodersの一つn-Tr20の変異である。tRNAArgUCUのisodecoders全般に、他の組織に比べて中枢神経系での発現が高いが、n-Tr20は中枢神経系だけに発現していた。続いて、n-Tr20の変異によってリボソームがmRNAのAGAコドンで立ち往生することを確認し、GTPBP2因子が変異あるいは欠損しているとmRNAの品質管理が破綻するために、神経変性が発生するとした。
【注】Science誌のPerspectiveは、この研究成果を受けて、これまで野生型とされてきたマウスC57BL/6J系統のタンパク質合成過程に潜在する「変異」について注意を喚起している。
論文→ Ishimura R. et al. RNA function. Ribosome stalling induced by mutation of a CNS-specific tRNA causes neurodegeneration. Science 2014 Jul 25;345(6195):455-9
Perspective→ Darnell JC. Ribosome rescue and neurodegeneration. Science 2014 Jul 25;345(6195):378-9. Published online 2014 Jul 24. -
銅含有亜硝酸還元酵素の活性は、 活性中心からほぼ12Åの位置にあるアミノ酸変異によって、調節される
この20年の間に、高分解能の立体構造と酵素活性のデータ蓄積によって、天然物由来の酵素に対する変異導入効果の予測精度が大幅に向上した。しかし、触媒反応に多くの分子が相互に関連する複合体酵素における分子機序の解明は不十分であり、人工酵素を精度良く設計することは未だ困難である。今回、リバプール大学のS. Samar Hasnain等は、活性中心から比較的遠い位置にあるアミノ酸変異が酵素活性に影響する事を、銅含有亜硝酸還元酵素(copper nitrite reductase: CuNIR)において示した。
CuNIRは3量体構造をとり、各モノマーにはタイプ1銅(T1Cu)とタイプ2銅(T2Cu)の2つの銅イオンが含まれている。T1Cuが生理的電子供与体から受容した電子を活性中心のT2Cuに伝達する(以下、分子内電子伝達)とされ、T2Cuは、隣り合うモノマーの間隙、タンパク質の表面からおよそ12Åの深さ、に存在している。Hasnain等は、T2Cuへのチャネルの入り口にあり酵素の表面に露出しているフェニルアラニンをシステインに変異させた変異体と野生型のCuNIRの構造・機能を比較した。変異体では、野生型の不活性状態ではT2Cuイオンに配位している水1分子にさらに新たな水1分子が水素結合し、また、入り口付近にあるMet135の配置がチャネルを広げる方向へと変わっていた。こうした構造変化に対して、変異体では、NO生産に関するミカエルス・メンテン定数が50分の1に減少し、分子内電子伝達速度が低下していた。野生型と異なり変異体ではこの分子内伝達速度が触媒活性の律速段階になっていた。
論文→ Leferink NG. et al. Impact of residues remote from the catalytic centre on enzyme catalysis of copper nitrite reductase. Nat Commun. 2014 Jul 15;5:4395.
構造→ 4CSP: Structure of the F306C mutant of nitrite reductase from Achromobacter xylosoxidans (分解能1.7Å)
構造→ 4CSZ: Structure of the F306C mutant of nitrite reductase from Achromobacter xylosoxidans with nitrite bound (分解能1.75Å) -
筋萎縮性側索硬化症のモデル細胞において、オートファジーがTDP43タンパク質の代謝を改善し、細胞死を抑制することを見出した
筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis: ALS)と前頭側頭葉変性症(frontotemporal lobar degeneration: FTLD) はかって独立な疾病とされていたが、共に、ニューロンとグリア細胞の細胞質にタンパク質TDP43(TAR(transactivation responsive region) DNA-binding protein of 43kDa) が蓄積されることが知られてきた。また、ALSとFTLDを引き起こすTDP43遺伝子の変異が30種類以上が同定されてきている。このTDP43の蓄積を抑制する可能性があるオートファジーの効果について、これまで相反する結果が報告されてきたが、今回、米国Gladstone InstituteのSteven Finkbeiner等は、オートファジーを誘導するとTLD43の分解が促進され神経変性が抑制されることを見出した。
始めに、マウスの一次ニューロンに野生型と変異型のTDP43を導入し、導入量によってTDP43の毒性が急速に高まることを見出した。次に、従来のパルスチェース法に代えて「TDP43を光変換型蛍光タンパク質ベクターDendra2を使ってパルス標識し蛍光顕微鏡で追跡する」一細胞測定法を開発した。この新たなパルスチェース法"OPL(Optical Pulse Labeling)"に拠って初めて、TDP43の半減期測定結果に対する細胞毒性とタンパク質凝集の影響を判別することができ、その結果、ニューロンごとに半減期が異なるが、変異タンパク質の半減期が実は野生型よりも短縮される事を見出した。さらに、化合物ライブラリーから予め選別した化合物によって誘起したオートファジーによって、TDP43の野生型も変異型も分解が進み、TDP43の代謝が改善されることを見出した。また、家族性ALS患者からのヒトiPS細胞由来の運動ニューロンとアストロサイトにおいて、オートファジーが変異型TDP43の毒性ひいては細胞死を抑制することも見出した。
論文→ Barmada SJ et al. Autophagy induction enhances TDP43 turnover and survival in neuronal ALS models. Nat Chem Biol. 2014 Aug;10(8):677-85. Published online 2014 Jun 29. -
Whole Genome Sequencingで特定したde novo変異によって、重度知的障害の遺伝子診断が可能になった
新生児の0.5%に見られるIQが50未満の重度の知的障害(intellectual disability: ID)は主として遺伝子変異に因ると考えられ、マイクロアレー解析とエクソーム解析に拠ってde novoのコピー数多型(CNV)と一塩基変異(SNV)の寄与が明らかにされてきたが、大半の症例については分子診断(molecular diagnostics)するに至っていなかった。今回、オランダRadboud University Nijmegen Medical CentreのJoris A. Veltman等は、Complete Genomicsと共同で、重度IDの患者50名と、IDではないその両親の全ゲノム配列決定(whole genome sequencing: WGS)を実施し、84個のde novo SNVsと、単一エクソンの欠失、エクソン内の欠損、染色体間重複などに起因する8個のde novo CNVsを同定し、これらの結果から、50名のうち21名の患者について遺伝子診断を下すことができた。この62%のうち39%がde novo SNVs、21%がde novo CNVs、残る2%(1名)が劣性遺伝によるものであった。
論文→ Gilissen, C. et al. Genome sequencing identifies major causes of severe intellectual disability. Nature 2014 July 17;511(7509):344-347. Published online 04 June 2014 -
患者家族が行動を起こすことで、新奇希少疾患の遺伝子診断が可能になった
7月21日のThe New Yorkerで紹介された患者家族の戦いを辿ってみる。
診断の迷路: 2007年12月9日 Matt MightとCristina Casanova夫妻に長男Bertrand誕生。数週間のうちに身体を震わせ苦痛を感じ、また、涙が出ないという異常に両親は気づいたが、当初小児科医は正常な発育の範囲内と診断し、6ヶ月検診になって異常を認めた。その後1年半近く、脳の障害とする診断がMRI検査で棄却され、毛細血管拡張性運動失調症の診断が遺伝子診断で棄却され、尿検査の結果から疑われた旧来の先天性代謝異常症の診断も精密検査で棄却される、ということを繰り返した。
エクソーム解析の手がかり: 2009年4月に神経系損傷による発作的スパイクが脳に影響していると診断したDuke UniversityのVandana ShashiとDavid Goldstein等が2010年になって、Might家にエクソーム解析プロジェクトへの参加を求めた。このプロジェクトでは、知的障害などさまざまな症状を示す12人の患者を対象に親子トリオ解析が行われ、10数の候補遺伝子が特定され、Bertrandの場合は、NGLY1遺伝子が病因遺伝子として想定された。NGLY1は、ミスフォールドした糖タンパク質を分解する酵素の遺伝子である。Goldsteinは、その変異がこれまで知られていなかったタイプの糖鎖形成異常を引き起しているという仮説をたて、2011年9月にcongenital disorders of glycosylation(CDG)の権威であったSanford-Burnham Medical Research InstituteのHudson FreezeにBertrandの細胞を送って検証を依頼したところ、仮説は支持された。
もっとデータを: 2012年5月3日、Sashiは両親に、MattとCristinaがそれぞれNGLY1の異なる変異遺伝子を持っており、Bertrandはその双方を受け継いだことによって発症していることを告げた。Goldsteinは、診断の確定のため、また、治療薬の開発を促すために、同様の症状を示す患者の遺伝子診断が必要であることを告げたが、現実には、国内には10-15人程度と極めて少数と思われる患者とそのデータを把握することは簡単ではなかった。数百の雑誌の一つに発表された論文に臨床医が気づくとは限らず、研究者は論文が出るまではデータを公開することはなく、患者の個人情報保護を過度に意識あるいは口実にして論文公開後もデータ公開に後ろ向きであり、データ提供側とデータ利用側が研究成果のクレジットの扱いについて合意しない、などデータ共有を阻害する要因が多々ある。こうした状況を認識したNIHは、Undiagnosed Diseases Programを開始してデータ共有の文化を広げようとしている。しかし、当時Bertrandの余命は数ヶ月とされ、Might一家は研究社会の文化が変わるのを待ってはいられなかった。
ネットワーキング: 当時、プログラマーおよびブロガーとしてインターネットで存在感を示すようになっていたMattは、5,000語を超す記事"Hunting Down My Son's Killer"を自らのWebサイトに掲載した。2012年5月29日のことである。その記事は「息子の命を奪うものを突き止めた。3年を費やしたが、やり遂げた。息子は今生きている。しかし、妻のCristinaと私は、彼の死の責任が自分たちにあることを知っている」と始められていた。この記事は、掲載後30分後にはTwitterで取り上げられ始められ、その日のうちにRedditのトップストーリーになり、翌朝Gizmodoが再掲の許可を求めるなど、インターネットに一気に拡散して行った。それから1年のうちに、記事に記載されていたBertrandの症状や遺伝子変異などを手がかりにして、トルコ人の患者をゲノム解析した米国研究者、イスラエルの研究者、ジョージアの患者家族、デラウエアの医師、インド在住のドイツ人患者家族、患者家族から相談を受けた若手研究者から、Bertrandと同じ変異を有する患者の情報が集まってきた。その中には、ミトコンドリア病と誤診されていた患者や、この機会に初めてNGLY1変異と診断された患者が含まれていた。
それからとこれから: 遺伝子診断が確定したことによって、Bertrandは、実は不適切であった食事制限やステロイド剤投与のなど副作用を伴う療法を止めてより適切な治療法を受けるようになり、現在では、運動能力や表現力に改善が見られるとのことである。Might一家は、患者コミュニティーの活動とともに、NGLY1に関連した研究のために、2012年以来毎年10万ドル以上をFreeze研究室に寄付し、ミトコンドリア病の誤診から救われたWilsey一家も同様に200万ドルの国際研究支援をしている。また、Matt MightとMatt WilseyはNGLY1患者の症状を2014年1月のGenetics in Medicineに発表し、Shashi、Freeze、Goldsteinを含む33名の共著によるNGLY1疾患の論文も2014年3月に同誌から発表された。こうした動向の中で、NIHも2014年の春から、Bertrandを第一号として、NGLY1患者の検診を受け入れ、関連研究を開始し、NGLY1患者はウイルス感染症に抵抗性を示すという仮説も論じられ始めた。
【注】2013年当時、7,000人規模のBaylorゲノムデータベースには、NGLY1の二重変異の事例が存在しなかった。
記事→ Mnookin, S. One of a Kind - What do you do if your child has a condition that is new to science? THE NEW YORKER Published online 21 July 2014
論文→ Enns GM. et al. Mutations in NGLY1 cause an inherited disorder of the endoplasmic reticulum-associated degradation pathway. Genet Med. Published online 20 March 2014 -
米国の慈善家が6.5億米ドルの研究資金提供をBroad Instituteに約束:精神疾患研究を活性化し、分子機序に基づいた治療法を実現するために
Broad Institute(以下、B.I.)は、米国の慈善家Ted Stanleyから存命中および死後も毎年、総額6.5億米ドルを超えると思われる研究資金を約束されたことを、7月22日に発表した。この規模は、オバマ政権のBrain Research through Advancing Innovative Neurotechnologies (BRAIN) イニシアティブの年間予算のほぼ6倍に相当するかってないスケールの科学研究支援であり、即日、ScienceからThe New York Times まで、多くのメディアによって報道された。
Ted Stanleyと故Vada Stanley夫妻は、既にこれまでにB.I.に1.75億ドルを提供し、それによってB.I.に精神疾患の研究を目的とするStanley Center for Psychiatric Research(以下、SCPR)が設立・運営されてきた。今回の寄付を受けて、SCPRは、B.I.所属の150名以上の研究者と関連研究所と連携のもと、ゲノム解析を基盤として、次の4つの目標達成を目指す:
(1) 統合失調症、双極性障害、自閉症を含む重篤な精神疾患に関与する遺伝子のカタログを完成する。このため当初2年間で10万サンプルについてゲノム解析を行う。
(2) 項目(1)の遺伝子が機能する場としての脳神経パスウエーを明らかにする。各遺伝子が、何処で、何時、どのように作用しているか、幹細胞から分化させた神経細胞を含む生きた細胞での測定技術を開発して明らかにする。
(3) ゲノム編集技術などの最先端技術を駆使して、ヒト患者における遺伝的変異と生化学を忠実に再現する細胞モデルと動物モデルを開発する。
(4) B.I.のTherapeutics Platformを活用して、項目(2)のパスウエーを調節可能であり治療薬のリードになる可能性がある小分子を発見する。
かってメルク社に籍を置き、最近Stanley Centerの所長を務め、現在もセンターの中核的研究者であるEdward Scolnickは、「ゲノム解析の成果を実用化できる日が思っていたより早く近づいており、5年以内に、(あまりの複雑さ故に)精神疾患治療薬開発への取り組みを諦めてしまった製薬企業が戻ってくるであろう」と述べている。
【注1】Ted Stanleyは記念コインなどの趣味収集品の企画販売で巨富を成した。Stanley夫妻が慈善事業の焦点を精神疾患の研究支援にあて始めた契機は、大学時代に双極性障害を発症した息子が、幸いにして当時新薬であったリチウムに反応し快復した一方で、快復の見込みのない精神疾患の患者とその家族を目の当たりにしたことと言われている(The New York Times ニュースより)。
【注2】Broad Insituteを含むSchizophrenia Working Group of the Psychiatric Genomics Consortiumは、統合失調症のGWAS解析の成果を7月25日Natureオンライン版で発表した。
プレスリリース→ Broad Institute. $650 million commitment to Stanley Center at Broad Institute aims to galvanize mental illness research. 22 July 2014
ニュース→ Under W. Broad Institute receives $650 million for psychiatric research. Science Published online 22 July 2014
ニュース→ Zimmer C. and Carey B. Spark for a Stagnant Search- A $650 Million Donation for Psychiatric Research. The New York Times JULY 22, 2014 -
統合失調症をターゲットとした15万人規模のゲノムワイド関連解析
統合失調症についてはさまざまな論議が続いてきたが、近年では、ゲノムワイド関連解析(Genome Wide AssociationStudy:GWAS)によって検出が可能な一つ一つの遺伝的リスクは小さいありふれた(common)遺伝子座を含む多数の遺伝子座の組み合わせに拠る遺伝性疾患が疑われている。今回、25カ国80機関の500名以上の研究者からなるSchizophrenia Working Group of the Psychiatric Genomics Consortiumは、36,989名の患者群と113,075名の対照群というこれまでにない大規模なGWASを行った。GWASで検出した950万種類の変異を解析して、これまで知られていなかった83カ所を含む108の遺伝子座に、統合失調性との相関に有意性を示す128種類の連鎖不平衡独立なSNPsが存在することを見出した。108の遺伝子座の80%はタンパク質をコーディングしている遺伝子を含み、8%は遺伝子から20kbの範囲内であった。同定した疾患感受性遺伝子の多くが脳で機能する遺伝子であったことから、今回の解析は生物学的に妥当と考えられ、従来からの定説や仮説を裏付ける結果も得られた。すなわち、ドーパミン受容体DRD2、グルタミン酸作動性の神経伝達とシナプス可塑性、電位依存性カルシウムチャネル、MHCを含む獲得免疫などに関する遺伝子が疾患感受性遺伝子として同定された。また、今回GWASで同定した遺伝子座に既知の稀な(rare)変異が乗る例や、他の精神疾患の感受性遺伝子が含まれている例があった。さらに多様な民族を含む大規模なGWASによって、統合失調症の病因におけるありふれた遺伝子変異と稀な遺伝子変異の相補性を明らかにし、多様な神経疾患の病因遺伝子を絞り込んでいくことができるであろう。
【注】GWASの結果をPsychiatric Genomics ConsortiumのWebサイトからダウンロード可能であり、Ricopiliというツールを使って可視化も可能。遺伝型データの利用はNIMH Genetics Repositoryに申し込みが必要。
論文→ Schizophrenia Working Group of the Psychiatric Genomics Consortium. Biological insights from 108 schizophrenia-associated genetic loci. Nature Published online 22 July 2014
NIHニュース→ National Institutes of Health. Schizophrenia's genetic skyline rising: Suspect common variants soar from 30 to 108 ? NIH‐funded study
Natureニュース→ Flint, J and Munafo, M. Schizophrenia: Genesis of a complex disease. Nature Published online 22 July 2014
Natureニュース→ Reardon, S. Gene-hunt gain for mental health. Nature 2014 July 24;511(7509):393 Published online 22 July 2014 -
CRISPR-Cas9で実現可能性が高まったgene drive技術の健全な発展を目指す
Gene driveの実用化に関する論説が7月17日号のScienceとeLIFEに掲載された。Gene driveは、英国Imperial CollegeのAustin Burtの手になる2003年の論文"Site-specific selfish genes as tools for the control and genetic engineering of natural populations"を端緒として広がったコンセプトである。具体的には、非メンデル遺伝する利己的遺伝子に倣って、有性生殖する特定の生物集団をターゲットとして、世代交代を重ねる中で特定の遺伝子を有する集団へと置き換えていく戦略である。Gene driveをコントロールする技術によって、感染症を媒介する生物や駆除剤に抵抗性を得た害虫や雑草への対処や、外来侵入種の絶滅が可能になる。例えば、ハマダラカのゲノムを編集して、マラリア原虫に抵抗性を持った集団に置き換えることによって、マラリアを終息させる戦略が考えられる。いうまでもなく、gene driveの実用化には、ターゲットとする生物種に意図せざる形質が現れず、また、ターゲット以外の生物種には影響しないといった安全性が保証される事が前提である。Austin Burtの論文から10年、新たなゲノム編集技術"CRISPR-Cas9"によるgene driveの具現化について、MITのKenneth A. Oye等とHarvard Medical SchoolのGeorge M Church等が、研究開発の将来を展望し、安全性と規制について論ずるとともに、社会的受容を得ながらこの新しい技術の研究開発を進めていく事が肝要であると提言した。
科学政策(投稿)→ Oye KA, Esvelt K, Appleton E, Catteruccia F, Church G, Kuiken T, Lightfoot SB, McNamara J, Smidler A, Collins JP. Regulating gene drives. Science 2014 Jul 17. pii: 1254287.
レビュー→ Esvelt KM, Smidler AL, Catteruccia F, Church GM. Concerning RNA-guided gene drives for the alteration of wild populations. eLIFE 2014 Jul 17:e03401. -
サリドマイドとユビキチンリガーゼの構成因子セレブロンとの複合体の構造から、サリドマイドの二面性を読み解く
サリドマイドは、1950年代に鎮静剤として広く用いられていたが、1961年に催奇性が報告され販売中止・回収に至った。1990年代に入ると、ハンセン病、多発性骨髄腫、5番染色体長腕部欠失を伴う骨髄異形成症候群(5q-症候群)に対して薬効を示すことが明らかになり、現在では、サリドマイドとその誘導体が免疫調整薬(immunomodulatory drugs: IMiDs)として臨床に用いられている。また、IMiDsがE3ユビキチンリガーゼであるCUL4?RBX1?DDB1?CRBN(CRL4CRBN)のCRBN(Cereblon)をターゲットとすることや、骨髄腫において、IKAROSファミリーのIKZF1(IKAROS)とIKZF3(AIOLOS)をユビキチン化し分解することも明らかにされてきた。
今回、Friedrich Miescher Institute for Biomedical ResearchのNicolas H. Thoma等のスイスと米国の研究チームは、E3ユビキチンリガーゼの構成因子DDB1-CRBNとIMiDs(サリドマイドならびにその誘導体であるレナリドマイドとポマリドマイド)の3種類の複合体の構造解析と機能解析を行い、IMiDとCRBNの結合と、タンパク質のユビキチン化との間を結び付ける分子機構のモデルを提示した。
CRBNは、N末端ドメイン(NTD) 、中央部のαヘリックスからなるドメイン(HBD)およびC末端ドメイン(CTD)からなり、HBDがDDB1のくぼみに入り込んでDDB1と結合し、CTDにはIMiDsがエナンチオ選択的に結合するポケットが存在していた。E3ユビキチンリガーゼにおいてCUL4はDDB1の周囲150°にわたり回転することで、リジンをターゲットとするユビキチン化を広い空間にわたって実現する。さて、CRBNの基質は本来IMiDsだけではない。Nicolas H. Thoma等は、ヒトタンパク質のマイクロアレー(タンパク質数9,000規模)を使ったスクリーニングから、CRBNが結合する内在性基質としてホメオボックス転写因子MEIS2を同定した。
IMiDsとMEIS2のCRBNへの結合は相互排他的であり、IMiDが誘導するIKAROS転写因子のユビキチン化と分解は、同時に、MEIS2のような内在性基質のCRL4CRBNへのリクルートひいてはユビキチン化に干渉する。CBRN-IMiD-IKAROS複合体の構造解析によってこうした結合の分子機序がより深く理解できることになるが、IMiDsの催奇性と薬効の二面性は、IMiDsのCRL4CRBNを介したタンパク質制御の様式として、下方制御(downregulate)と上方制御(upregulate)が共存していることによると考えられる。
論文→ Fischer, ES. et al. Structure of the DDB1?CRBN E3 ubiquitin ligase in complex with thalidomide Nature Published online 16 July 2014
構造→ 4CI1: Structure of the DDB1-CRBN E3 ubiquitin ligase bound to Thalidomide (分解能3.0Å)
構造→ 4CI2:Structure of the DDB1-CRBN E3 ubiquitin ligase bound to Lenalodomide (分解能3.0Å)
構造→ 4CI3: Structure of the DDB1-CRBN E3 ubiquitin ligase bound to Pomalidomide (分解能3.5Å) -
ヒトCOP9シグナロソーム(CSN)の結晶構造を解き、そのユビキチンリガーゼ調節の分子機構を明らかにした
ユビキチンは、文字通り生体内のさまざまな場において他のタンパク質を修飾し生命現象において多彩な役割を担っている。このため、その活性は多段階の分子機構によって精緻に調節されている。例えば、Cullin-RING E3ユビキチンリガーゼ(CRLs)の活性は、8つのサブユニットで構成されるCOP9シグナロソーム(CSN)によって調節されている。CSNは、CRLsに共有結合しているユビキチン様タンパク質NEDD8をCRLsから解離してCRLsを不活性化するとともに、CRLsに結合して不活性状態に保つ。CSNによるNEDD8の解離は、CSNのサブユニットの一つでZn2+依存性のイソペプチダーゼ"CNS5"によって触媒される。CNS5におけるJAB1/ MPN/MOV34 (JAMM)ドメインがその活性部位であるが、CSN5単独では活性を示さない。今回、Friedrich Miescher Institute for Biomedical ResearchのNicolas H. Thoma等の研究チームは、およそ350-kDaのヒトCSNホロ酵素の結晶構造を分解能3.8Åで決定し、この複合体の分子機構を詳らかにした。
CSNは全体として指を広げた手の形をしており、掌にあたる部分には3つの構造が複雑に重なっていた:(1)8つのサブセットのうち「指」にあたるCSN1, CSN2, CSN4, CSN7, CSN8, CSN3の6つのプロテアソームの付け根の部分"lid-CSN-initiator factor 3(PCI)ドメインが集合した馬蹄型のリング構造";(2)CSN1からCSN8までの全てのサブユニットのC末端αヘリックスの束が集中した"box"構造;(3)CSN5とCSN6のヘテロダイマー。基質に結合していない状態のCSNにおいては、CSN5には自己抑制がかかっており活性を示さない。NEDD8と結合している状態のCRLがCSNに結合すると、CSN4のコンフォメーションが変わり、CSN6-CSN5のコンフォメーションの変化を引き起こし、それによってCSN5が活性化して、NEDD8をCRLから解離する(deneddylase)に至る。基質との結合がきっかけとなるCSN5の活性化の分子機構は、他のJAMMドメインを有する酵素の活性化機構にはないCSB5に特異的な機構である。
【注】"シグナロソームとは、細胞外のシグナルが細胞内に伝わる際に特異的受容体とシグナル伝達機構が集積する情報変換装置のことをさす"(平成22-26年度新学術領域研究「修飾シグナル病 - COP9シグナロソームを介した脱Nedd8化によるシグナル伝達と発がんの理解」課題(研究代表者:奈良先端大加藤順也)Web頁より)
論文→ Lingaraju, GM. et al. Crystal structure of the human COP9 signalosome. Nature Published online 16 July 2014
Nature News & Views→ Deshaies, RJ. Structural biology: Corralling a protein-degradation regulator. Nature Published online 16 July 2014
構造→ 4D10: Crystal structure of the COP9 signalosome
構造→ 4D18: Crystal structure of the COP9 signalosome
構造→ 4D0P: Crystal structure of human CSN4 -
タンパク質分解と転写の双方に寄与するE3ユビキチンリガーゼの設計原理を数理モデルで探った
E3ユビキチンリガーゼは、ユビキチン-プロテアソーム系(ubiquitin-proteasome system:UPS)において、基質を認識してユビキチンを転移し、ターゲットのタンパク質の分解に寄与する。一方で、最近、E3ユビキチンリガーゼが転写の活性化にも寄与することが分かって来た。今回、KAISTのKwang-Hyun Cho等は、タンパク質分解と転写という一見相反する機能を示すE3ユビキチンリガーゼの設計原理を探るべく、integrated transcription and UPS-dependent degradation (ITUD)と名付けた数理モデルを開発した。ITUDは、細胞外からのシグナルや細胞内の生体高分子(S)、産物(P)とPの遺伝子発現を促進する転写因子(T)、ポリユビキチン化された転写因子(ubT)、そして、Tの分解と同時にTの転写を促進するE3ユビキチンリガーゼ(E3)の5要素で構成され、また、E3はTによってトランス活性化されると設定された。ITUDの出力(すなわちP)は、E3に対するノックダウンから過剰発現までの擾乱に対して二相性を示したが、その由来を、E3に関する単量体と二量体、細胞質と核との間のシャトル輸送と局在、リン酸化と脱リン酸化の観点から論じた。その上で、E3がタンパク質分解と転写活性化の一見相矛盾する働きを有しているのは、E3が不安定になっても細胞機能の過剰な活性化が起こらないようにする安全インターロックの設計原理に対応するものとした。また、ITUDモデルを使って、E3ユビキチンリガーゼをターゲットとする抗がん剤の評価も試みた。
論文→ Lee D, Kim M, Cho KH. A design principle underlying the paradoxical roles of E3 ubiquitin ligases. Sci Rep. 2014 Jul 4;4:5573. -
甘味受容体のT1r2とT1r3の細胞内膜輸送の仕組みが、ヒトとマウスで異なっていた
食品開発において味の評価は必須であり、専門家による官能評価が行われているが、より簡便かつ客観的評価法が求められている。味を認識するに至る分子機序については、甘味、苦味、酸味、塩味、うま味の基本味の元になる分子が味覚受容体に結合し、そのシグナルが脳に伝達されることで味として認識される仕組みは、マウス等のモデル動物によって解明されてきており、また、食品の味の評価にもマウスが使われてきたが、生物種によって味感受の分子機序が異なるという報告もなされるようになってきた。今回、農研機構、理化学研究所ならびに岡山大学は、ヒトとマウスの甘味受容の分子機序に違いがあることを明らかにした。
ヒトとマウスの甘味受容体はいずれも、二種類のタンパク質"T1r2"と"T1r3"が結合したヘテロダイマーとして細胞膜において機能する。しかしそれぞれが細胞膜へ移動する仕組みにはヒトとマウスの間で大きな違いがあった。マウスの場合、T1r3単独で細胞膜に移動するのに対して、ヒトの場合は、T1r3の細胞外領域にT1r3の細胞膜への移動を妨げる部位があるために、T1r2が共存してはじめてT1r3が細胞膜に移動できる。ヒトの甘味受容体のこの新奇な輸送機構は興味深い。また、今回の成果をもとに、これまでの官能検査に匹敵する味覚検査をヒトのタンパク質とヒト細胞によって実現していくことが考えられる。(本稿は、主として農研機構のプレスリリースを編集したものであるが、文責は構造生命科学ニュースウオッチ欄にある)
【注】本研究の一部は文部科学省ターゲットタンパク研究プログラム課題「新規味物質・味評価法開発に重要な味覚受容体の構造・機能解析」によって支援された。
論文→ Shimizu, M. et al. Distinct Human and Mouse Membrane Trafficking Systems for Sweet Taste Receptors T1r2 and T1r3. PLoS ONE 2014;9(7):e100425. Published online 2014 July 16
農研機構プレスリリース→ ヒトとマウスの甘味受容体の機能の違いを解明 - ヒトの客観的な味覚評価法の構築に向けて - 2014年7月17日 -
WHOによると妊娠高血圧腎症(preeclampsia: PE)によって年間およそ63,000人の妊婦が死亡している。特に、低所得から中所得の国々での症例が多い。PEの病因が不明であり、発症前診断が困難であり、発作が起きた場合の唯一の治療法は医師による早産である。このため、簡易な早期診断法の開発が待たれていた。今回、米国オハイオ州のNationwide Children's HospitalとOhio State University College of MedicineのIrina A. Buhimschi等の米国チームは、PEと特定のタンパク質のミスフォールディング・凝集とが相関している事を明らかにし、尿検査による発症前診断への道を拓いた。
PE患者と健常者の計662人の尿検査の分析によって、患者の尿に限り、Congo red染色でアミロイドの凝集を示す色に染まる(congophilia)ことを見出し、また、congophiliaの程度と症状の間に相関があることを見出した。したがって、簡便なCongo red dot testによって、PEの発症前と症状悪化の診断が可能になると考えられる。さらに、染色されたターゲットは、アルツハイマーに関連するβアミロイドの他に、セルロプラスミン、免疫グロブリン遊離L鎖、SERPINA1、アルブミン、インターフェロン誘導タンパク質6-16を含んでいた。一方で、ヒトの胎盤ではアミロイド前駆体タンパク質(APP)とAPPを切断する酵素が多量に発現しており、酵素の中で、αセクレターゼのADAM10、βセクレターゼのBACE1とそのアイソフォームBACE2、ならびにγセクレターゼのプレセニリンの全ての発現が上昇していた。また、PE患者の胎盤にはβアミロイドが凝集し胎児の成長が制限されることから、PEはタンパク質凝集と明らかに相関するフォールディング病のカテゴリーに属すると考えられる。タンパク質の凝集がPEの原因か結果かには議論の余地があるが、本研究によって、間違いなくPEの早期診断法と治療法の開発に新たな観点が加えられた。
論文→ Buhimschi, IA. et al. Protein misfolding, congophilia, oligomerization, and defective amyloid processing in preeclampsia Sci. Transl. Med. 2014 July 16;6(245):245ra92. -
PCBを無害化するバクテリアを分離・培養し、脱塩素化する酵素遺伝子を特定した
ポリ塩化ビフェニール(PCB)製品の生産は1970年代に禁止されたが、湖、川そして港の沈殿物に含まれるPCBの問題は未解決であり、米国ではPriority List of Hazardous Substancesにリストされたままである。化学工学によるその場での(in situ)PCBの無害化が行き詰まっている中で、20年以上にわたりPCBを分解する微生物を利用したバイオレメディエーションが試みられてきたが、PCB分解菌の培養が困難であったことから、実用に至らなかった。今回、シンガポール国立大学のJianzhong Hea等はモンサント社のPCB製品Aroclor1260を脱塩素(dechlorination)して無害化する微生物株"Dehalococcoides mccartyiの菌株CG1, CG4そしてCG5の3種類"を初めて分離・培養することに成功し、その結果、PCBの脱塩素化を触媒する還元性ヒドロゲナーゼ(reductive dehalogenases: RDases)の遺伝子を特定することができた。
始めに、ハイスループットのメタゲノム解析と伝統的な培養技術を組み合わせて、テトラクロロエチレン(tetrachloroethene: PCE)で培養すると、Dehalococcoides菌の密度をPCBで培養したときの20倍以上に上げることができ、また、PCEで10回継代培養することで、脱塩素化能を失う事無く、3種の菌株をほぼ純粋培養することができた。次に純粋培養についてのトランスクリプトーム解析、混合培養についてのメタトランスクリプトーム解析ならびにqPCRによって、PCBの脱塩素化もPCEの脱塩素化も共通のPCB-RDase遺伝子によって行われている事が明らかになった。また、このPCB-Rdase遺伝子の転写量は、ゲノム全域の遺伝子の転写量の平均値の5-20倍であった。今回、純粋培養が可能になった菌株を利用してPCBをin situで無害化できる可能性があり、また、今回同定した遺伝子を、PCBのバイオレメディエーションのモニタリングのバイオマーカーとして利用することも可能である。
論文→ Wang S. et al. Genomic characterization of three unique Dehalococcoides that respire on persistent polychlorinated biphenyls. Proc Natl Acad Sci U S A. Published online before print July 15, 2014 -
進化分子工学は、変異と淘汰そして増殖を繰り返すダーウイン進化を模して、核酸やペプチド/タンパク質をin vitroで人工進化させ、有用な生体高分子を得ることを目指している。ペプチド/タンパク質の人工進化には、変異させた多数の遺伝子をタンパク質として発現させるシステムが必須であり、これまでにファージディスプレー法とリボソームディスプレー法などが開発・利用されてきた。大阪大学の四方哲也等は、2013年10月に新たな手法"リポソームディスプレー"法によって水溶性タンパク質に限らず膜タンパク質"α-ヘモリシン"の人工進化が可能なことを報告したが、今回、その実験プロトコルの詳細を33ステップにわたって、Nature Protocol7月号にて紹介した。
α-ヘモリシンは、Staphylococcus aureusの α毒素であり、細胞膜に孔(膜孔)を形成する。このα-ヘモリシンの人工進化は次の操作の繰り返しによって実現された:(1)α-ヘモリシンのDNA、PUREシステム、HaloTagタンパク質ならびにリポソームのサイズ測定用の蛍光プローブの混合溶液を用意する;(2)溶液をリポソームに封入し、リポソーム内でα-ヘモリシンを合成する;(3)α-ヘモリシンの活性(リポソームの膜にあけた孔の数)を見るために、HaloTagの蛍光リガンドをリポソーム外から与えてタグタンパク質と反応させる;(4)再現性を高めるために蛍光プローブによって一定の範囲の大きさのリポソームを選別し、蛍光活性化セルソーター"FACS"で最も活性の高いα-ヘモリシンを判別し(淘汰)、そのDNAを回収してリポソームで合成する。
α-ヘモリシンの場合は、リポソームディスプレー法のサイクルを20回繰り返して、孔を開ける性能が野生型の約30倍に達する変異体を得ることができたが、α-ヘモリシン以外の膜タンパク質もリポソームディスプレー法によって合成可能であり、ターゲットのタンパク質に適した判別法を用意することによって、多くの膜タンパク質を人工進化させることが可能と考えられる。
論文→ Fujii S. et al. Liposome display for in vitro selection and evolution of membrane proteins. Nat Protoc. 2014 Jul;9(7):1578-91. Published online 05 June 2014
参考文献→ Fujii S. et al. 1314585110. Epub 2013 Sep 30. In vitro evolution of α-hemolysin using a liposome display. Proc Natl Acad Sci U S A. 2013 Oct 15;110(42):16796-801. Published online September 30, 2013 -
NMDA受容体(NMDAR)は記憶を担う分子機械とされ、構造解析への挑戦が続いていた。2014年5月30日、NMDARのサブタイプGluN1-GluN2B受容体の構造が、コールド・スプリング・ハーバー研究所の古川研究室によってラットについてScience誌に発表され、6月22日にはオレゴン健康科学大学のGouaux研究室によってアフリカツメガエルについてNatureオンライン版に発表された(ご参考:本ニュースウオッチ欄6月3日と30日の記事)。7月9日になって、両研究室の成果がNature NEWS & VIEWS欄の"A structure to remember"に手際よくまとまられ、また、発展課題が提示された。
今回解かれた構造は、X線結晶解析において十分な分解能を得るために、細胞外のアミノ末端ドメイン(ATD)の立体配座可動性(conformational mobility)を制限した構造であり、不活性または脱感作した状態の構造である。今後、リガンド結合ドメイン(LBD)との相互作用によって動きが制限されていると思われるATDが、不活性状態と活性状態の間で大きく動く分子機構の解明、すなわち、マルチドメイン受容体の構造の可塑性とドメイン間の機能的結合の機構解明への展開が待たれる。
NEWS & VIEWS→ Stroebel D, Paoletti P. Neuroscience: A structure to remember. Nature 2014 July 10;511(7508):162-163. Published online 09 July 2014 -
膜内タンパク質分解酵素であるγセクレターゼは、活性部位を有するプレセニリン(presenilin: PS1)と3種類のコファクターPEN-2、APH-1ならびにニカストリン(nicastrin: NCT)で構成されることが知られている。また、βセクレターゼがアミロイド前駆体タンパク質(APP)を細胞外で切断したAPP-C99を、γセクレターゼが細胞膜内部で切断して、アルツハイマーの原因と言われているアミロイドβタンパク質(Aβ)が生成されることが知られている。このため多くの研究者が機能解析と構造解析に取り組んできたが、γセクレターゼの全体構造の解明は進んでいなかった。今回、清華大学のYigong Shi等とMRC分子生物学研究所のSjors H. W. Scheres等の中英研究チームは、発現、精製、結晶化ならびに溶媒を工夫し、高感度な検出器を備えたクライオ電子顕微鏡単粒子構成法によって、4.5Åの分解能でγセクレターゼの3次元構造を再構成することに成功し、Aβ生成の分子機構について論じた
γセクレターゼの膜貫通ドメイン(TMD)は、19本の膜貫通セグメントで形成されており、馬蹄形をしたTMDの空洞部分の上に、NCTの大きな外部ドメイン(ECD)が位置している。ECDは、グルタミン酸カルボキシペプチダーゼ"PSMA"のファミリーに共通のフォールドを有しており、基質であるAPP-C99をリクルートすると想定できる。APP-C99が結合すると思われるECDの凹みは脂質膜の40Å上に位置し、PS1の活性部位であるアスパラギン酸は脂質膜の20Å下に位置するが、この60Åの距離は、γセクレターゼAPP-C99からAβ40とAβ42を切り出すに相応する距離と考えられる。
論文→ Lu, P. et al. Three-dimensional structure of human γ-secretase. Nature Published online 29 June 2014
構造→ 4UPC: Structure of a extracellular domain of NICASTRIN (分解能 5.4Å)
構造→ EMD-2677: Three-dimensional structure of human gamma-secretase at 4.5 angstrom resolution
構造→ EMD-2678: Three-dimensional structure of human gamma-secretase at 5.4 angstrom resoltuion -
血漿中のタンパク質をマーカとして軽度認知障害症から認知症への転化を予測する
アルツハイマー症の早期発見をもたらす可能性があるバイオマーカーの中で血中バイオマーカーは、被験者に負担を与えることなく繰り返し検査できる利点がある。今回、Simon Lovestone(現オックスフォード大学)等の10ヶ国の研究者からなる国際チームは、互いに独立に行われた3件のコホート研究(注1)のデータを統合して、軽度認知障害症(mild cognitive impairment: MCI)220人、認知症(Dementia)476人、無症状の高齢者452人の計1,148人の被験者について、問診などで判定した重症度、ApoE遺伝子のSNPsならびにMRI像のデータと、26種類の血中タンパク質との間の相関を解析し、10個のタンパク質からなるパネルによってMCIから認知症への転化を87%の精度で予測可能な事を示した。今後、本解析と同等以上の規模のコホートデータによる検証を重ねることが、血中タンパク質のパネルによる診断を臨床現場で採用することにつながっていく。
【注1】AddNeuroMed、King's Health Partners-Dementia Case Register (KHP-DCR)、Genotype-Phenotype Alzheimer's disease Associations(GenADA)
【注2】論文著者にはProteome Sciences plcのスタッフとGlaxo Smith-Klineのスタッフが含まれ、S. LovestoneとProteome Sciences plcとは、今回の研究成果に関連する特許を出願している。
論文→ Hye, A. et al. Plasma proteins predict conversion to dementia from prodromal disease. Alzheimer's & Dementia In Press, Corrected Proof. Available online 8 July 2014 -
米国、アルツハイマー症シーケンシングプロジェクト(ADSP)で蓄積された大規模データの解析を開始
2012年に発足した米国NIHのAlzheimer's Disease Sequencing Project(ADSP)は、2013年3月30日の時点で111家族、584名のゲノムデータ、アルツハイマー症6,000人と無症状5,000人の計11,000人の全エクソームデータを公開した。今回、NIHはこの膨大なデータを読み解いて、アルツハイマー症(AD)発症リスクを高める、あるいは発症を抑止する遺伝的変異(以下、それぞれリスク変異と抑止変異)などを同定するプロジェクトを開始した。プロジェクトの規模は4年間2,400万ドルであり、8大学が、5つの課題に取り組んでいくことになる:
・ADSPのデータとラテンアメリカ(カリブ海)系を含む111の大家族のデータを解析して、稀なリクス変異と抑止変異を同定する。
・ADの家族を対象とする精密なゲノムマッピングを行い、各家族に固有の変異と全家族に共通な変異を同定する。人種による相違も解析する。
・ADSPその他のデータを解析して、変異APOE4を保有しAD発症リスクの高いにもかかわらずADを発症していない集団に特徴的な遺伝的変異を同定する。
・ADSPのデータとCHARGEコンソーシウムのデータを使って、年齢またはAPOE遺伝型から発症リスクが低いと見られるがADを発症した5,000人と、より高齢で無症状でありリスク変異を保有していないと思われる5,000人のデータから、リスク遺伝子と抑止遺伝子を同定する。
・ADSPのデータとCHARGEのデータを使って、AD発症とコピー数多型(copy number variations)の相関を明らかにする。
NEWS & EVENTS→ National Institute of Health. NIH funds next step of cutting-edge research into Alzheimer's disease genome. Published online July 7, 2014 -
小胞体ストレス応答からアポトーシスが誘導される分子機構の鍵はデスレセプター5が握っていた
小胞体(ER)に、折り畳みや翻訳後修飾が不全なタンパク質が蓄積されストレスがかかると(ERストレス)、細胞は小胞体ストレス応答(unfolded protein response: UPR)を起こして恒常性を保とうとする。UPRにおいて、ERストレスが限界を超えると、アポトーシス細胞死に至るが、その分子機構解明が課題であった。今回、Genentech社のAvi AshkenaziとUCSFのPeter Walter等は、バクテリア毒素SubAB、タプシガルギン(Tg) 、Brefeldin-A (BfA)などで小胞体ストレスを与えた細胞ならびにsiRNAによってUPRのシグナル伝達分子やcapaseを欠損させた細胞における関連分子の発現データに基づいて、デスレセプター5(DR5)が、UPRにおけるアポトーシスを制御しているモデルを提唱した。
DR5 mRNAの転写は、ERストレスからのPERKとその下流のCHOPによって加速される一方でERストレスからのIRE1αによって抑制される。ERストレスが継続し緩和されない細胞では、IRE1αが減衰し、PERK-CHOP経路によるDR5 mRNAの転写量が増加し続け、DR5タンパク質がERとゴルジ体に蓄積されていき、DR5の多量体化・クラスター化が進んでdeath-inducing signaling complex (DISC) 的プラットフォームが形成され、capase-8が呼び寄せられてアポトーシスを誘発する。こうして、ERストレスが限界を超えるまでは細胞死は起こらず、限界を超えると細胞死が起こることになる。
論文→ Lu M. et al. Opposing unfolded-protein-response signals converge on death receptor 5 to control apoptosis. Science 2014 Jul 4;345(6192):98-101. -
オーソログ解析によって、archeaseとDDX1がtRNAスプライシング因子であることが明らかになった
成熟tRNAの長さは比較的短いが、一部のtRNA遺伝子にはイントロンが存在する。古細菌や真核生物の前駆体tRNAは、スプライシングエンドヌクレアーゼによる切断と切り出されたエキソンをつなぐtRNAリガーゼによって触媒され、成熟tRNAに至る。オーストリアIMBAのJavier Martinez等の研究チームは、2011年にRTCB(別名はHSPC117、C22orf28、FAAPおよびD10Wsu52e)がヒトtRNAスプライシングリガーゼ複合体の必須サブユニットであることを報告した。しかし、他のサブユニット、ASW(別名C2orf49)、CGI-99(別名C14orf166)、FAM98BおよびDEAD-boxヘリカーゼ"DDX1"の役割は不明であった。今回、同研究チームは、RtcBのオーソログ(KOG3833)に注目して実験解析を行い、これまで機能不明であったタンパク質archease(略称ARCH、別名ZBTB8OS)が、tRNAエキソンのライゲーションに必須であることを見出した。すなわち、archeaseはDDX1と恊働して哺乳類のRNAライゲーションの中核を担うRTCB–グアニル酸中間産物生成を促進する。また、同研究チームは、ArcheaseとRtcBタンパク質が幅広い系統で共存していることから、両者の恊働も進化の過程で保存されて来たと主張した。
論文→ Popow J, Jurkin J, Schleiffer A3 Martinez J. Analysis of orthologous groups reveals archease and DDX1 as tRNA splicing factors. Nature 2014 Jul 3;511(7507):104-7. Published online 25 May 2014 -
2012年6月28日のScienceオンライン公開論文 " A programmable dual-RNA-guided DNA endonuclease in adaptive bacterial immunity " から、 CRISPR-Casの世界が一気に広がった。この論文のcorresponding authorsのJennifer A. DoudnaとEmmanuelle Charpentierは一部の共著者等と共同で2013年3月15日に優先日を2012年5月25日とする特許PCT/US2013/032589 (“Methods and compositions for RNA-directed target DNA modification and for RNA-directed modulation of transcription”)を、Regents of the University of CaliforniaとUniversity of Viennaから出願した。この特許は2013年11月28日に公開されたが、Nature Biotechnology7月号のNEWS欄によれば、未だ審査中である。一方で、CRISPR-Cas9システムがヒトとマウスの細胞で機能することを報告した2013年1月3日Scienceオンライン公開論文" Multiplex genome engineering using CRISPR-Cas systems. "のcorresponding authorであるFeng Zhangは、2013年10月15日にBroad InstituteとMITから優先日2012年12月12日として特許" CRISPR-Cas systems and methods for altering expression of gene products " を出願した。この特許は、出願から6ヶ月という早さで2014年4月15日に米国特許US Patent no. 8697359 として登録・公開された。発明内容は:ターゲットとする遺伝子配列の発現と関連する遺伝子産物を変更するためのシステム、方法および要素;CRISPR複合体の構成要素を一部含むベクターとベクターシステムならびにそのようなベクターを設計し使用する方法;真核生物においてCRISPR複合体形成を促す方法ならびにCRISPR-Casシステムを利用する方法(特許の要約書から仮訳)、とされている。さて、CRISPR-Cas技術で初の特許を獲得したFeng Zhangは、Jennifer A. Doudnaやゲノム解析などの指導的研究者であるGeorge Church等とともに、ゲノム編集技術の医療への応用を目指すEditas Medicineを設立している。一方で、Emmanuelle Charpentierも、RNAiの発見で2006年ノーベル生理学医学賞を受賞したCraig Mello等とともに、同じくゲノム編集技術の医療への応用を目指すCRISPR Therapeuticsを共同で創始している。Nature BiotechnologyNEWS欄は、特許取得において、" Editas Medicine社がライバルのCRISPR Therapeutics社を出し抜いた(have stolen a march on) かに見える" と評している。
【注1】Nature BiotechnologyNEWS欄には、CRISPR-Casゲノム編集技術に関する特許申請13件の表が掲載されている。
【注2】Editas Medecineば2013年11月に4,300万ドルの資金を調達し、CRISPR Therapeuticsは2014年4月に2,500万ドルの資金を調達している。
NEWS→ Sheridan C. First CRISPR-Cas patent opens race to stake out intellectual property. Nat Biotech. 2014 July;32(7):599-601. Published online 08 July 2014.
2012年Science論文→ Jinek M, Chylinski K, Fonfara I, Hauer M, Doudna JA, Charpentier E. A programmable dual-RNA-guided DNA endonuclease in adaptive bacterial immunity. Science 2012 Aug 17;337(6096):816-21. Published online 2012 Jun 28.
2013年Science論文→ Cong L, Ran FA, Cox D, Lin S, Barretto R, Habib N, Hsu PD, Wu X, Jiang W, Marraffini LA, Zhang F. Multiplex genome engineering using CRISPR-Cas systems. Science 2013 Feb 15;339(6121):819-23. Published online 2013 Jan 3. -
バクテリアのリボソーム70Sを構成する2つのサブユニットがブリッジを形成して行く過程をクライオ電子顕微鏡法で観察する
タンパク質を合成する分子機械であるリボソームは、2つのサブユニットで構成されている。バクテリアの場合、2つのサブユニット30Sと70Sが、RNA-RNA, RNA-タンパク質そしてタンパク質間相互作用を含む12のブリッジを介して対合している。翻訳開始の分子機構を理解するためには、これらのブリッジ形成の機構と時系列を明らかにする必要がある。今回、米国ニューヨーク州Wadsworth CenterのTanvir R. ShaikhとRajendra K. Agrawal等は、試料調製用にシリコン微細加工によるデバイスを開発し、時間分解クライオ電子顕微鏡法によって2つのサブユニットの対合過程を解析し、9.4ms以内に12のうち8つのブリッジが形成され、残りの4つのブリッジ形成には43ms以上を要することを見出した。すなわち、複数のブリッジは同時に形成されるのではなく、段階的に形成されることが明らかになった。本手法は、任意の2成分の混合過程の観察に利用可能であるが、反応における中間体を高精度に解析可能にするためには、電顕グリッド上における微小滴(microdroplet)形成の効率や均一性を向上させる必要がある。
【注】今回新たに設計したデバイスは、0.4ms以内での2成分の混合、インキュベーションそして電顕用グリッドへのスプレーまでが一体化されており、混合開始から試料の低温固定(cryofixation)までを最短9.4msで実現できる。2成分のより長い反応時間も、デバイスに加工する経路の形状によって調節できる。
論文→ Shaikh TR et al. Initial bridges between two ribosomal subunits are formed within 9.4 milliseconds, as studied by time-resolved cryo-EM. Proc Natl Acad Sci U S A. 2014 Jul 8;111(27):9822-9827. Published online June 23, 2014 -
タンパク質をコードしているヒト遺伝子数改訂19,000へ:Ensemblに反映される予定
ヒト遺伝子数は、ヒトゲノム解読以前は40,000〜100,000と言われていたが、2004年のヒトゲノム解読完了論文では20,000〜25,000とされ、2007年にはEric S. Lander等が、進化過程での保存性の解析に基づいて、20,500とした。今回、ENCODE(Encyclopedia Of DNA Elements)とGENCODEプロジェクトに参加しているスペイン国立癌研究センター(CNIO)のAlfonso ValenciaとMichael L. Tress等の国際チームは、タンパク質をコードしている遺伝子を再検定するために、GENCODEにおいてアノテーションされている遺伝子と、質量分析による大規模なプロテオーム解析7件(注)で得られたペプチドを照合したところ、ペプチドをマッピングできた遺伝子はほぼ60%であった。ペプチドがマッピングされた遺伝子は、生物種間での保存性が高く、また、その96%以上が左右相称動物以前から存在していた。一方で、ペプチドがマッピングされない遺伝子は、霊長類が分岐して以後に出現した遺伝子、タンパク質たる特徴を持たない遺伝子、ならびに、生物種間での保存性が低い遺伝子であった。ペプチド非検出は必ずしもタンパク質非存在を意味しないが、ペプチドのマッピング結果に加えて、APPRISデータベース、UniProt Knowledgebase、Ensembl、GENCODEを参照して用意したタンパク質をコードしない特徴19項目で遺伝子を再評価し、タンパク質をコードする遺伝子数を19,000と見積もった。この結果は、GENCODE、ENCODEおよびEnsemblへも反映されていく予定であり、ヒトゲノムアノテーションへの影響が大きいものと考えられる。
【注】PeptideAtlas、NIST、Geiger等、Munoz等、Nagaraj等、Neuhauser等ならびにCNIO(著者等)
論文→ Ezkurdia I et al. Multiple evidence strands suggest that there may be as few as 19 000 human protein-coding genes. Hum Mol Genet. ddu309v2 Published online June 16, 2014. -
PAN-orama: 真核生物における脱アデニル化の分子機構
真核生物のmRNAは転写後、3'末端におけるポリA鎖の付加・伸張(ポリアデニル化)と短縮(脱アデニル化)の調節を受け、ひいては遺伝子発現が精妙に調節される。脱アデニル化は、ポリA結合タンパク質(PBAP)依存性の酵素複合体PAN2-PAN3の作用とそれに続くCCR4-NOT酵素複合体の作用の2段階で起こるとされていた。これまでCCR4-NOTについては比較的解明が進んでいたが、最近、3つの研究チームがそれぞれPAN2-PAN3の構造と機能を詳細に解析し、これまでの想定を覆す結果も得て、その成果を相次いで論文発表した(Jonas論文;Schafer論文;Wolf 論文)。今回、ケース・ウェスタン・リザーブ大学RNA分子生物学センターのSophie MartinとJeff Collerは3研究チームの成果を集約して、Nature Sructural & Molecular Biology誌7月号NEWS & VIEWS欄に、"PAN-orama"と冠した記事を掲載した:
・poly(A)-binding protein(PABP)は、PAN2-PAN3による脱アデニル化を加速するが脱アデニル化に必須ではない。
・PAN3は、N末端からC末端へ、ジンクフィンガードメイン(ZnF)、PABP interacting motif-2(PAM2)を有するlow-complexity領域、そして、偽キナーゼドメイン、コイルドコイルとC末端ドメイン(CTD)からなるユニット"PKC"で構成される。
・PAN3は、PABPを介して間接的にポリA鎖に結合する事に加えて、直接的に、ZnFドメインを介してポリA鎖に対して選択的に高親和性で結合すると共に、PKCを介してポリA鎖に限らずRNAに対して非選択的に低親和性で結合する。
・PAN2は、N末端からC末端へ、WD40ドメイン、リンカー、偽ユビキチンC末端ヒドロラーゼドメインおよびエキソリボヌクレアーゼ(exoRNase)で構成される。
・PAN2単独では、脱アデニル化は殆ど進まない。
・PAN3ホモダイマーのPKCとPAN2のWD40との接触ならびに、PAN2におけるWD40に続くリンカーがPAN3ホモダイマーの一方のサブユニットに巻き付くような接触によって、PAN2-PAN3複合体が構成される。PAN3とPAN2の化学量論的組成は2:2ではなく2:1である。
・ポリA鎖の消化が進みPAN3のZnFドメインが3'UTRの近傍に至ると、PAN2-PAN3複合体はRNAに対して非選択的な弱い親和性でのみ結合するようになり、脱アデニル化の効率が低下する。
PAN2-PAN3の構造と機能への理解が深まったことを受けて、次は、PAN2-PAN3とCCR-NOTの連携による脱アデニル化の全体像が詳らかにされていくことが期待される。
NEWS AND VIEWS→ Martin, S and Coller, J. PAN-orama: three convergent views of a eukaryotic deadenylase. Nat Struct Mol Biol. 2014 July;21(7);577?578. Published online 03 July 2014
Jonas論文→ Jonas S. et al. An asymmetric PAN3 dimer recruits a single PAN2 exonuclease to mediate mRNA deadenylation and decay. Nat Struct Mol Biol. 2014 Jul;21(7):599-608. Published online 01 June 2014
構造→ 4CZV: Structure of the Neurospora crassa Pan2 WD40 domain (分解能 2.1Å)
構造→ 4CZW: Structure of the Neurospora crassa Pan2 catalytic unit (protease and nuclease domain) (分解能 2.6Å)
構造→ 4CZX: Complex of Neurospora crassa PAN2 (WD40) with PAN3 (C-TERM) (分解能 1.9Å)
構造→ 4CZY: Complex of Neurospora crassa PAN2 (WD40-CS1) with PAN3 (pseudokinase and C-term) (分解能 3.4Å)
構造→ 4D0K: Complex of Chaetomium thermophilum PAN2 (WD40-CS1) with PAN3 (C-term) (分解能 1.9Å)
Schafer論文→ Schafer IB. et al. The structure of the Pan2-Pan3 core complex reveals cross-talk between deadenylase and pseudokinase. Nat Struct Mol Biol. 2014 Jul;21(7):591-8. Published online 01 June 2014
構造→ 4Q8J: Structure of the Saccharomyces cerevisiae PAN2-PAN3 core complex (分解能 3.8Å)
構造→ 4Q8G: Structure of the Saccharomyces cerevisiae PAN2 pseudoubiquitin-hydrolase (分解能 2.1Å)
Wolf 論文→ Wolf J. et al. Structural basis for Pan3 binding to Pan2 and its function in mRNA recruitment and deadenylation. EMBO J. Published online 28 May 2014
構造→ 4CYI: Chaetomium thermophilum Pan3 (分解能 2.4Å)
構造→ 4CYJ: Chaetomium thermophilum Pan2:Pan3 complex (分解能 2.6Å)
構造→ 4CYK: Structural basis for binding of Pan3 to Pan2 and its function in mRNA recruitment and deadenylation (BMRB Entry 19959 ) -
Nature Publishing Group(NPG)は、"データの共有には数々の大きな障害が残っています。最大の障害の1つは、研究者をデータ共有に駆り立てる要因が少ない点で、--- より詳しい研究データの共有の実現に熱心に取り組む研究者に報いる手立てはほとんどないのです。" という認識のもと"自らのデータを公開して、その内容を説明する研究者がクレジットを得られる出版"の場として、Scientific Dataを創刊した。Scientific Dataの主たるコンテンツは、"データセットの作成や実験手順に関する情報を網羅し、その結果として得られたデータファイルへのリンクが設定"されたData Descriptorであり、"新たな科学的仮説の検証や新たな科学的知見を提供することを目的とした詳細な分析、全く新しい科学的手法の記述は含めない"とされている。Data Descriptorは、表題、抄録、研究背景と抄録、方法、データ記録、技術的な検証、利用注釈、図ならびに表で構成され、ISA metadataのTAB形式でダウンロード可能になる。Data Descriptorと既存のデータベースのメタデータとの実務上の調和が若干懸念されるところであるが、研究コミュニティーとともにScientific Dataが所期の目的を達成していく事を期待する。
【注】Scientific Dataはオープンアクセスジャーナルであり、NPGはJoint Declaration of Data Citation Principlesに賛同している。
EDITORIAL→ More bang for your byte. Scientific Data 1 Article number: 140010. Published online 27 May 2014
FAQ→ Scientific Data よくあるご質問 -
医療記録のビッグデータを病気の進行経過を示すネットワーク図へ落とし込む
今回、デンマークのCenter for biological Sequence AnalysisのSøren Brunak等と米国、スエーデンの国際チームは、膨大な医療記録から、疾患から疾患への遷移の経路(temporal disease progression (trajectories))を探り出す解析を行った。ここで言うビッグデータは、デンマーク国民を対象として、1996年から2010年の14.9年間に620万人の患者が外来、入院または救急の形で6,500万回診療を受けた診療記録であり、1億件あまりの診断に国際疾病分類のICD-10のコードが付与され、Danish National Patient Registry(NRR)に蓄積されていたデータである。
始めに、ある疾患とそれから5年以内に発症した別の疾患の1,194,343組を洗い出し、負傷など疾患とは関連しないICD-10のコードを除き、10回以上記録されている4,014組を出発点として、最終的に、1,171 trajectoriesを組み上げた。それらをクラスター分析したところ15のクラスターを識別でき、前立腺、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、脳血管疾患、循環器疾患、糖尿病に関するtrajectoriesが大きなクラスターを形成することを見出した。また、各trajectroiesにおいて、例えば、COPDや痛風のように経路のハブとなる診断が存在することを見出した。
著者等は、trajectriesの同定にはデータを年齢、性別に加えて、入院・外来・救急の別についても層別化して解析することが必要であり、それゆえにtrajectoriesを個別化医療の手がかりとできること、また、trajectoriesが疾患の進行を予測して適切な予防医療を施していく手がかりになると主張している。
論文→ Jensen AB. et al. Temporal disease trajectories condensed from population-wide registry data covering 6.2 million patients. Nat Commun. 2014 Jun 24;5:4022. -
米国NIH、疾病・病因を特定できない症状を診断するUndiagnosed Diseases Programを拡張へ
米国NIHは2008年からUndiagnosed Diseases Program(UDP)を開始しこれまでに、応募者のうち100名について、メリーランド州ベセスダのNIH Clinical Centerにおいて、患者の背景と症状ならびに臨床検査とゲノム解析の結果を、内分泌学、免疫学、腫瘍学、皮膚科学、歯学、心臓病学、遺伝学の専門家集団が総合的に判断して、2種類の新奇疾患と、15種類の新奇原因遺伝子を特定した。2014年7月1日にNIHはこのUDPの実績の上にたって、UDPを、ハーバート大学医学大学院を調整センターとしベセスダを含む6カ所の拠点を臨床サイトとするUndiagnosed Diseases Network(UDN)へと拡張することを発表した。このプロジェクトの規模は4年間・総額4,300万ドルで、各サイトは2017年まで毎年50名の新規患者を受け入れて行く計画である。UDNに参加する臨床医は、ゲノム情報を含む高品質な臨床データと実験データ、患者の背景と症状を集積・共有し、UDNは、患者の観察から診断までの標準的プロトコルを整備していく。UDNによって、希少疾患、新奇な疾患、あるいは、既知の疾患ではあるがその稀な症状について、的確な診断を下せる手法が確立・普及されていくことが期待される。
【注】6カ所の拠点:Baylor College of Medicine(Houston); Boston Children's Hospital, Brigham and Women's HospitalとMassachusetts General Hospital(Boston); Duke University(Durham); Stanford University (Stanford); University of California(Los Angeles); Vanderbilt University Medical Center(Nashville)
NIH News→ NIH Division of Program Coordination, Planning, and Strategic Initiatives (DPCPSI) & National Human Genome Research Institute (NHGRI). "NIH names new clinical sites in Undiagnosed Diseases Network. " Published online 1 July 2014 -
体内を循環する赤血球を使って分子を体内各所へ送達する試みがなされてきたが、従来の手法には、機構的あるいは時間的な安定性、送達可能な分子、安全性などに問題があった。今回、Whitehead InstituteのHidde L. PloeghaとHarvey F. Lodish等の研究チームは、赤芽球(erythroblast) におけるタンパク質の操作とペプチド転移酵素Sortaseの機能を組み合わせて、赤血球に運び屋としての能力を発揮させることに成功した。Sortaseは、LPXTG (Leu-Pro-any-Thr-Gly)のアミノ酸配列を認識して(タグとして)、TとGの間で切断し、N末端にグリシン(G)を有するペプチドまたはタンパク質を連結する。
本研究では:赤血球表面に存在するKellのC末端あるいはGPA(glycophorin A)のN末端にSortaseタグを付加した組み換えタンパク質を赤芽球で発現させ、Sortaseとグリシンペプチド(GGG)を付加したビオチンと混合し、Sortaseの連結機能を介して赤芽球の表面がビオチンで標識され、さらに、赤芽球から分化した赤血球の表面もビオチンで標識されたままであること、さらに、マウスの体内に注入した後も少なくとも28日間は標識赤血球が検出され、しかも、マウス個体に障害を起こさなかった。
本手法によって、赤血球の「宛先」を指定可能な事も示された。ネズミのB細胞が提示するMHC calss IIに対する抗体VHH7にLPETGのタグを付与して、グリシンペプチドを付加したGPAを発現させた赤血球とインキュベートした結果、赤血球がB細胞が結合していた(野生型の赤血球とB細胞の組合わせ、加工した赤血球とMHC class IIをノックアウトしたB細胞の組合わせ、いずれの場合も両者の結合は起こらない)。また、本手法はヒト細胞にも適用可能なことも示された。
本報告におけるビオチンはプローブの一種であり、赤芽球において膜表面タンパク質にSortaseタグを付与し、in vitoroで赤血球に分化させ、Sotaseとプローブをインキュベートする手法は、ビオチンに限らずペプチド、タンパク質、脂質、炭水化物、小分子などに適用でき、汎用性、安定性、安全性、特異性を兼ね備えていることから、基礎研究のための可視化から診断や治療まで、実用化が待たれる。
論文→ Shi J. et al. Engineered red blood cells as carriers for systemic delivery of a wide array of functional probes. Proc Natl Acad Sci U S A. Published online before print June 30, 2014.
News→ Williams SCP. Turning red blood cells into cargo ships. Science Published online 30 June 2014 -
X線自由電子レーザーを使って放射線損傷を受けていない状態のタンパク質結晶構造決定に成功
Nature Methods2014年7月号に、理化学研究所、兵庫県立大学、高輝度光科学研究センター、大阪大学ならびに岡山大学の研究チームによる研究開発成果である「フェムト秒X線レーザー結晶構造解析法」の短報が掲載されている(オンライン版では5月11日に掲載済)。本手法では、RIKENとJASRIが共同で建設したSACLA(SPring-8 Angstrom Compact free electron LAser)のX線自由電子レーザー(X-ray free electron later: XFEL)からの微細なレーザーX線を10フェムト秒という極めて短時間、X線に対する結晶の位置を僅かに変えながら、繰り返し照射して、回折像を記録・解析する。結晶が放射線を受けて損傷するまでにはピコ秒を要するが、10フェムト秒はその100分の1に過ぎず、また、X線が常に結晶の未損傷部分に照射されることから、本手法によって、放射光由来のX線では回避できなかった放射損傷を受けていない結晶からの回折像を得ることができる。研究チームは、分子量420-kDaと大きなタンパク質であるウシの心臓由来のチトクロムc酸化酵素の完全な構造を分解能1.9Åで決定し、放射線損傷の影響を特に受けやすい活性部位の詳細な構造も報告した。本手法によって、X線の損傷を受けやすいタンパク質の構造決定はもとより、将来、細胞内でダイナミックに相互作用するタンパク質の振る舞いをリアルタイムで精密に観測することが可能になるであろう。
短報→ Hirata K. et al. Determination of damage-free crystal structure of an X-ray-sensitive protein using an XFEL. 2014 Jul;11(7):734-6. Published online 11 May 2014
プレスリリース→ SPring-8プレスリリース. 「SACLAが、放射線損傷のない正確な結晶構造の決定に、タンパク質で初めて成功-世界結晶年2014年、レーザーX線が拓く次の世紀へのマイルストーン-」 2014年5月12日
結晶構造→ 3WG7: A 1.9 angstrom radiation damage free X-ray structure of large (420KDa) protein by femtosecond crystallography -
Nature誌2014年7月2日のオンライン版によると、STAP幹細胞に関するArticleとLetterそれぞれの著者は、理化学研究所の調査委員会が認定した不正行為(misconduct)と著者等が見出した5件の過誤をあげて、2報を取り下げるとした。
【注】構造生命科学ニュースウオッチ関連記事
取り下げ記事→ Obokata H, Sasai Y, Niwa H, Kadota M, Andrabi M, Takata N, Tokoro M, Terashita Y, Yonemura S, Vacanti CA and Wakayama T. Retraction: Bidirectional developmental potential in reprogrammed cells with acquired pluripotency. Nature 2014 July 3;511(7507):112-112. Published online 02 July 2014
取り下げ記事→ Obokata H, Wakayama T, Sasai Y, Kojima K, Vacanti MP, Niwa H, Yamato M, Vacanti CA. Retraction: Stimulus-triggered fate conversion of somatic cells into pluripotency. Nature 2014 July 3;511(7507):112-112. Published online 02 July 2014
理化学研究所プレスリリース→ STAP細胞に関する研究論文の取り下げについて 2014年7月2日 -
COX-2阻害剤の併用によって血管新生阻害剤の効果が高まり癌の転移が抑制される
COX-2(シクロオキシゲナーゼ-2)は炎症や癌細胞において高発現し、プロスタグランジンE2(PGE2) の産生を亢進するが、非ステロイド性消炎・鎮痛薬(Non-steroidal anti-inflammatory Drugs:NSAIDs)であるセレコキシブのようなCOX-2選択的阻害剤によって発現が抑制される。また、大規模な疫学調査によってNSAIDの継続的服用が癌化リスクを低減することが知られている。今回、米国がん研究所のBrad St. Croix等は、それぞれ大腸癌ならびに乳癌の前臨床モデルであるCT26とHCT116ならびに4T1において、セレコキシブと血管内皮成細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor; VEGF)阻害剤のアキシニチブを併用すると、血管新生が効果的に抑制され、また癌の転移も抑制されることを見出した。これまで、VEGF阻害剤には、効果が低いことや反応しない癌が存在するなどの問題があった。癌治療法としては、VEGFの細胞内情報伝達経路に加えて、PGE2の経路も阻害する必要があったことになる。
論文→ Xu L. et al. COX-2 Inhibition Potentiates Antiangiogenic Cancer Therapy and Prevents Metastasis in Preclinical Models. Sci Transl Med. 2014 Jun 25;6(242):242ra84. -
わずか1対のG•U塩基対がアミノアシルtRNA合成酵素の厳密なtRNA選択性を規定する謎を解く
遺伝暗号はtRNAを介してアミノ酸へ翻訳されるが、tRNAとアミノ酸を対応づけるのがアミノアシルtRNA合成酵素 (aminoacyl-tRNA synthetase; ARS) である。ARSの一つであるアラニルtRNA合成酵素(AlaRS)は、アラニンに対応する"tRNAAla"のアクセプターステムの中央部分に存在するG3とU70のゆらぎ塩基対(wobble塩基対)を認識して、アラニンとtRNAAlaを結び付ける。
今回、理化学研究所の横山茂之等の日米研究チームは、アーケアのArchaeoglobus fulgidus由来のAlaRSと野生型のtRNAAla/GUとの複合体構造ならびにwobble塩基対をWatson-Crick塩基対"A3とU70"に置き換えた変異型のtRNAAla/AUとの複合体構造の解析と生化学実験から、アミノ酸が結合する3末端から遠い位置に存在するたった一組のwobble塩基対が選択性の鍵を握っているという謎を解いた。
構造解析からは、wobble塩基対部分の局所的構造の特徴がアクセプターステムを介して、アミノ酸が結合する3末端の配置に影響を与えていることが明らかになった。tRNAAla/GUの場合、3末端ドメインが直線状であり一本鎖のアミノ酸配列CCAの先がAlaRSのアミノアシル化ドメインまで伸びていた。一方で、tRNAAla/AUの場合、3末端ドメインがAlaRSのアミノアシル化ドメインから離れる方向へ曲がっていた。また、AlaRSにおける3つ連続したグリシンの並びとグルタミン酸で構成される部分構造(route separator)によって曲がった状態から直線状への構造変化が抑止されていた。生化学実験によって得た1分子あたり1秒間に何個の基質を触媒するかを示す分子活性kcatの値でみると、tRNAAla/GUはtRNAAla/AUの100倍であったが、産生量と親和性で見ると両者の違いは2倍程度であった。したがって、AlaRSの特異性は、アクセプターステムが直線状の活性状態と、曲がった状態の不活性状態の差異に拠ると考えられた。こうして一つの大きな謎が解けたが、G•U wobble塩基対を持たないミトコンドリアのtRNAAlaの識別機構、アラニン以外のアミノ酸が3末端に結合した場合の校正機構(editing system)、今回明らかになった機構の普遍性など新たな謎が浮かび上がってくる。
NEWS & VIEWS→ Vargas-Rodriguez, O. & Musier-Forsyth, K. et al. Structural biology: Wobble puts RNA on target Nature 2014 June 26;510(7506):480-481. Published online 11 June 2014
論文→ Naganuma, M. et al. The selective tRNA aminoacylation mechanism based on a single G•U pair Nature 2014 June 26;510(7506):507-511. Published online 11 June 2014
結晶構造→ 3WQY: Crystal structure of aminoacyl-tRNA synthetase in complex with a tRNA (分解能 3.3Å)
結晶構造→ 3WQZ: Crystal structure of aminoacyl-tRNA synthetase in complex with a tRNA variant (分解能 3.5 Å) -
NMDA受容体の結晶構造を解き、サブユニットの配置とポアの構造を明らかにした
N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体はHebbの学習則に準じた記憶活動の分子機構を担っており、神経障害の治療薬のターゲットとなっている。これまでに、NMDA受容体がGluN1(従来、NR1)とGluN2A-D(従来、NR2)の2種類のヘテロ二量体2セットを中心とするヘテロ四量体であり、3つの条件(注1)が揃うとイオンチャネルとして活性化することが知られていたが、その全体構造は解かれていなかった。今回、 オレゴン健康科学大学のEric Gouaux等は、X線結晶解析によって、アフリカツメガエルのGluNIとGluN2BのサブユニットからなるNMDA受容体にリガンドが結合した複合体の構造を解いた。
NMDA受容体は全体として2回転対称であり、対称軸の上方向から見ると、GluN1のサブユニットがAとCの位置を占め、GluN2BのサブユニットがBとDの位置を占める関係にあった。また、横方向から見ると、細胞外領域のアミノ末端ドメイン(ATD)の層、続いてグリシンとグルタミン酸が結合するリガンド結合ドメイン(LBD)の層、そして膜貫通ドメイン(TMD)の層を形作っていた。この層構造の中で、ATDのローブ部分がLBDに入り込んで密に相互作用していることによって、アロステリック効果がATDの配向の変化を介してLBD層に伝わり、イオンチャネルのゲートを調節すると考えられた。アロステリック効果を有するアンタゴニストが結合したGluN1-GluN2Bの構造が明らかになったことで、今後、非活性状態での構造やマグネシウムイオンや阻害剤の結合部位の特定といった基礎的な解析やNMDA受容体の不全に起因する神経障害の治療薬の開発が進んでいくであろう。
【注1:3条件】グリシンがGluN1に結合し、グルタミン酸がアロステリックサイトを有するGluN2に結合し、脱分極によって細胞外マグネシウムイオンによるブロックが外れる。
【注2:リガンド】GluN2Bに対するアロステリック阻害剤(Ro 25-6981)、GluN1とGluN2Bそれぞれに対するパーシャルアゴニスト、ならびに開口チャンネル阻害剤(MK-801)。
論文→ Lee, Chia-Hsueh et al. NMDA receptor structures reveal subunit arrangement and pore architecture. Nature Published online 22 June 2014
構造→ 4TLL: GluN1-GluN2B K216C receptor(structure 1) (分解能3.7Å)
構造→ 4TLM: GluN1-GluN2B K216C receptor(structure 2) (分解能3.9Å) -
Gタンパク質共役受容体にアレスチンが結合する分子機序を明らかにした
Gタンパク質共役受容体(GPCR)は細胞外からの刺激を細胞内へ伝える7回膜貫通タンパク質であり、多様な疾患に関連しているために、GPRCをターゲットとした医薬品の研究開発が盛んに行われてきた。β-アレスチンはGPCRを制御するタンパク質であり、GPCRに結合してGPCRの過剰な活性化を抑制する一方で、GPCR非依存的細胞内シグナル伝達を活性化する。しかし、GPCRとβ-アスレチンの複合体の構造解析が困難であったため、β-アスレチンによるGPCR制御の分子機構は不明であった。今回、2012年のノーベル化学賞を共同受賞したスタンフォード大学のBrian K. Kobilkaとデューク大学のRobert J. Lefkowitz等は、ミシガン大学のGeorgios Skiniotis等と、ヒトのGPCRの一種であるβ2ARとβ-アスレチン1との複合体の結晶化と精製に成功し、単粒子負染色電子顕微鏡法で構造を可視化し、水素/重水素交換質量分析法(HDX-MS)と化学的架橋実験によって両者の相互作用を分析した。その結果は、β-アスレチン1とβ2ARの結合は二相性反応であることを示唆した。第1に、細胞質内に長く伸びていて柔軟であり釣り糸のように広い空間を高速で探索可能と考えられるリン酸化されたC末端のテールに、β-アスレチン1のN末端ドメインが結合する。第2に、β-アスレチン1の指状のループ(finger loop)がβ2ARの7回膜貫通のコア部分に入り込んで、β-アスレチンとβ2ARが密着する。この機構によって、GPCRへのGタンパク質へテロ三量体の結合が妨げられ、GPCRのシグナル伝達が阻害され脱感作が起きると考えられる。
論文→ Shukla, Arun K. et al. Visualization of arrestin recruitment by a G-protein-coupled receptor Nature Published online 22 June 2014
Press release→ Harrison R. Architecture of signaling proteins enhances knowledge of key receptors. Duke University Medical Center, Published online 22 June 2014
参照構造→ 4JQI: Structure of active beta-arrestin1 bound to a G protein-coupled receptor phosphopeptide
参照構造→ 3SN6: Crystal structure of the beta2 adrenergic receptor-Gs protein complex -
2012年以来、欧州医薬品庁(European Medicines Agency; EMA)は、ダウンロード可能にする方向で、治験データを中央のデータベース"European Clinical Trials Database (EudraCT)"に登録する制度を2014年7月に発足させることを目指していた。ところがこの5月にEMAは方針を転換して、EudraCTの利用をディスプレー上での閲覧に限定することにした。この方針転換に対して、製薬企業は、少なくとも名目的には、患者の個人情報保護の観点から賛成した。一方で、この方針転換への反対の声もあがった。欧州オンブズマンは、当初の目的である治験データの透明性確保の観点から懸念を表明し、それを受けて、ドイツのInstitute for Quality and Efficiency in Healthcare (IQWiG)も、当初の理念からの後退であると指摘し、制度への懸念を表明した。
その後、EMAは方針転換を取り止め、学術研究・非営利研究には、データのダウンロード、ローカルな保存およびプリントを認めると表明した。また、このデータ提供様式が「EMAの欧州における薬品行政において透明性を確保する重要な第1歩であり、EMAの法的責務を超えたサービスであるが新薬における意思決定に必要なデータへのかってないレベルのアクセスを可能にする」とした。なお、製薬企業が商業上秘匿することが必要な情報を保護するために、データベースの利用者が有資格者であることを確認するシステムが必要なことは、明らかである(現状は、電子メールアドレスだけで利用登録可能)。
News→ Solon, O. EU clinical trial data must be made available to download. wired.co.uk Published online 24 June 2014
EMAによる経過報告→ European Medicines Agency. Publication and access to clinical-trial data: an inclusive development process. (随時更新) -
5年の期間で1,000万ポンドの規模を想定しているLongitude Prize 2014の委員会は、2014年5月22日に英国放送協会BBCの科学番組Horizonで、対象とする候補分野として、環境、食糧、抗生物質、中風、飲み水、ならびに認知症の6種類をあげ、英国市民に投票を呼びかけていた。6月25日になってBBCは、投票の結果、対象課題が抗生物質耐性菌の問題解決に決定したことを放映した。今後、Longitude Committeeが詳細な募集要項を用意し、抗生物質耐性菌の拡大を抑制する革新的手法をテーマとする国際公募が今秋行われる予定である。本課題に関心がある方々は、Webサイトの”GOT AN IDEA?”欄に姓名とメールアドレスを登録しておけば、募集開始のアラートを受け取ることができる。
Longitude Prizeは1714年に英国政府が実施した「経度(longitude)測定によって洋上での船の位置を特定可能にせよ」を課題とした総額2万ポンドの開発コンペティションであった。このコンペティションを契機としてヨークシャーの時計師John Harrisonによって開発された航海時計は、その後の航海の安全性向上に貢献した。それから300年、同コンペティションを英国Technology Strategy Boardが復活し、慈善団体"Nesta"が運営している。
News→ Enserink M. How to win £10 million with your research. Science Published online 26 June 2014
News→ Nesta. Antibiotics wins public vote to become Longitude Prize 2014. Published online 25 June 2014 -
機能不全を起こした損傷ミトコンドリアはオートファジーによって分解される(マイトファジー):ミトコンドリに局在するセリンスレオニンキナーゼPINK1は、ミトコンドリアの損傷を感知すると、細胞質のユビキチン転移酵素Parkinを活性化し、損傷ミトコンドリアへ呼び寄せる;損傷ミトコンドリアはParkinによってユビキチン化され、そのユビキチンが目印となってマイトファジーへ誘導され、分解される。今回、Genentech社の研究チームは、この目印を外すことで損傷ミトコンドリアの分解にブレーキをかける分子が脱ユビキチン化酵素USP30であることを特定し、ラットの神経細胞、ショウジョウバエのパーキンソン病モデル、ヒト培養細胞において、USP30の活性低下や遺伝子ノックダウンがマイトファジーの不全を補償することを見出した。したがって、USP30の阻害によってパーキンソン病を治療できる可能性が出てきた。研究チームはまた、ミトコンドリア膜輸送体のサブユニットTOM20のユビキチン化がマイトファジーに必要なことも見出しており、ユビキチン化からマイトファジーに至る機序解明への展開が期待される。
NEWS & VIEWS→ Alban Ordureau & J. Wade Harper. Cell biology: Balancing act Nature 014 June 19;510(7505):347?348. Published online 04 June 2014
論文→ Bingol, Baris et al. The mitochondrial deubiquitinase USP30 opposes parkin-mediated mitophagy Nature 2014 June 19;510(7505):370?375. Published online 04 June 2014 -
抗生物質を分解する酵素を強力に阻害する天然物を発見、多剤耐性菌の難題解決なるか
多剤耐性菌は医療に深刻な問題をもたらしている。6月26日のニュースウオッチ欄では、放線菌におけるポリケタイド合成酵素のモデルを提示し抗生物質の新たな設計・合成法の可能性を感じさせる論文(6月18日オンライン公開)を取り上げた。今回(6月27日)は、真菌由来の天然物アスペルギロマラスミンA(aspergillomarasmine A; AMA)が、抗生物質最後の切り札といわれているカルバペネム系抗生物質に対して耐性を獲得したグラム陰性病原菌に対抗する武器になることを見出した論文(6月25日オンライン公開)を紹介する。
カルバペネム耐性腸内細菌(Carbapenem-resistant enterobacteriaceae; CRE)は、β-ラクタム系抗生物質を加水分解する酵素”メタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)”を獲得したことによって抗生物質を無力化する。カナダMcMaster大学のGerard D. Wright等の加英の研究チームは、環境微生物由来抽出物のスクリーニングにより、真菌の一種Aspergillus versicolor由来の天然物AMAが、ニューデリー・メタロ-β-ラクタマーゼ(New Delhi metallo-beta-lactamase; NDM-1)とともにVIM(Verona integron-encoded metallo-β-lactamase)-2も強力に阻害することを発見した。また、AMAが、MBLを獲得したAcinetobacter spp.、Pseudomonas spp.そしてKlebsiella pneumoniaeの病原細菌に対して、カルバペネム系抗生物質の1種”メロペネム”の活性を回復させることを確認した。したがって、カルバペネム系抗生物質のアジュバントとしてAMAを併用する治療法が、MBL陽性耐性菌の難題を解決すると考えられる。
Cover Story→ RESISTANCE FIGHTER Nature 2014 June 26;510(7506)
NEW & VIEWS→ Meziane-Cherif D. & Courvalin P. Antibiotic resistance: To the rescue of old drugs. Nature 2014 June 26;510(7506):477-478. Published online 25 June 2014
論文→ King, Andrew M. et al. Aspergillomarasmine A overcomes metallo-[bgr]-lactamase antibiotic resistance. Nature 2014 June 26;510(7506):503-506. Published online 25 June 2014 -
ポリケタイド合成酵素のモジュール全体構造とモジュールを構成するドメインの動きのモデルが提示された
複数のモジュールで構成されている長大なI型ポリケタイド合成酵素(PKS)は、医薬品の3分の1が由来すると言われている多様なポリケタイドの組み立てラインである。今回、シカゴ大学のGeorgios Skiniotis等の研究チームは、Nature誌に掲載された2つの論文で、「クライオ電子顕微鏡に拠って、Streptomyces venezuelae由来の抗生物質ピクロマイシンのPKSの6つのモジュールのうち5番目のモジュールPikAIIIについて、全体構造(分解能7-10Å)ならびにポリケトタイド鎖伸長反応の過程におけるPikAIII構成ドメインのダイナミックな動き」を報告し、これからの抗生物質合成ラインの設計に示唆を与えた。
PKSのモジュールはいずれも、スターター基質や伸長鎖基質と結合し運搬するアシルキャリアープロテイン (ACP)、伸長鎖基質の縮合反応を触媒するケトシンテース (KS)、そして、スターター基質や伸長鎖基質をACPへと移すアシルトランスフェレース (AT)のドメインを持っている。また、モジュールによっては、ポリケトメチレン鎖のケトン基を還元するケトリダクテース (KR)、ケトン基を還元することによって生じた水酸基を脱水するデハイドラテース (DH)あるいは、生じた二重結合を還元するエノイルリダクテース (ER)を持っている。今回、PikAIIIは予測通り頭-頭結合と尾-尾結合のホモダイマーであったが、意外にもPKSと相同な脂肪酸合成酵素とは異なって各ドメインの活性部位が内側に向いているチャンバーが一つだけであることが明らかになった。また、上流(4番目のモジュール)からのACPはKSの側方の入り口に結合し、モジュール内のACPはKSのチャンバー内側の入り口に結合することが明らかになった。さらに、基質の結合によって、ACP、KRおよびATドメインの位置と向きが変化することが明らかになった。
【注】
NEWS & VIEWS→ Leadlay PF. Structural biology: Enzyme assembly line pictured. Nature Published online 18 June 2014
論文→ Dutta S. et al. Structure of a modular polyketide synthase. Nature Published online 18 June 2014
構造→ EMD-5647: Cryo-EM structure of holo-PikAIII conformation 1
構造→ EMD-5648: Cryo-EM structure of holo-PikAIII conformation 2
構造→ EMD-5649: Cryo-EM structure of PikAIII/delta ACP5
構造→ EMD-5651: Cryo-EM structure pentaketide-ACP4-PikAIII/C209A/delta ACP5
構造→ EMD-5653: Cryo-EM structure of MeMal-PikAIII
構造→ EMD-5662: holo-ACP4-PikAIII/C209A/delta ACP5 (no pentaketide)
論文→ Whicher JR. et al. Structural rearrangements of a polyketide synthase module during its catalytic cycle. Nature Published online 18 June 2014
構造→ EMD-5663: Cryo-EM structure of Pentaketide-KS5-PikAII
構造→ EMD-5664: Cryo-EM structure of beta-ketohexaketide-PikAIII
構造→ EMD-5665: Cryo-EM structure of beta-hydroxyhexaketide-PikAIII conformation 1
構造→ EMD-5666: Cryo-EM structure of beta-hydroxyhexaketide-PikAIII conformation 2
構造→ EMD-5667: Cryo-EM structure of beta-hydroxyhexaketide-PikAIII conformation 3 -
2つの研究チームがそれぞれ、LptD-LptE複合体の構造を解き、リポ多糖の輸送と細胞表層構築の過程について整合性あるモデルを提唱した
グラム陰性細菌の細胞は、脂質リピドAと糖鎖(コアオリゴ糖とO側鎖多糖(O抗原))からなるリポ多糖(LPS)で覆われている。このLPSは、タンパク質7種類(LptA–LptG)の協調作業によって細胞内膜のペリプラズム側で組み立てられ細胞外膜へと輸送され、細胞表層を構成するに至る。今回、二つの研究チームがLptD-LptEの複合体構造とそれに基づくLPS輸送の最終段階のモデルを、Nature誌オンライン版(2014年6月18日)で報告した。この成果を足がかりに、グラム陰性病原菌の多剤耐性を、細胞外膜をターゲットとする抗生物質によって回避する戦略を描いていくことができる。
【注】 LPSは、LptF、LptGそして2つのLptBで構成されるABCトランスポーター複合体、LptC、そしてLptAを介してLptDヘ到達する。今回明らかにされたLptDの構造は、細胞外膜からペリプラズムへと伸びるβゼリーロールと、細胞外膜を貫通する26本のβストランドからなるβバレルの2つのドメインを持っていた。βゼリーロールはLptAに連なり、βバレルには腎臓形のポアがありそこにLptEのほとんどが入り込んでいた。こうした構造から、LptAから輸送されてきたLPSは、LptEに拠って糖鎖が細胞膜の外に突き出す向きに回転し、βバレル中で比較的水素結合数が少ない一組のβストランド(β1とβ26)の部分をゲートとして、βバレルから横方向に細胞外膜へと抜け出し、細胞表層を構築して行く、と考えられた。今後、LPSが結合した状態のLptD-LptEの複合体構造を解くなどして、横方向ゲートの動的構造と機序を明らかにしていく必要があるが、今回の報告は抗生物質の設計に新たな方向性をもたらすものである。
【注】英国Norwich Medical SchoolのChangjiang Dong等の英中チームと中国科学院生物物理研究所のYihua Huang等の中国チームが、それぞれ独立に、Salmonella enterica subsp. enterica serovar TyphimuriumとShigella flexneriのLptD-LptE複合体の構造を明らかにし、LPSの輸送過程について考察を加えた。
NEWS & VIEWS→ Bishop RE. Structural biology: Lipopolysaccharide rolls out the barrel. Nature Published online 18 June 2014
論文→ Dong H. et al. Structural basis for outer membrane lipopolysaccharide insertion Nature Published online 18 June 2014
構造→ 4N4R: Structure basis of lipopolysaccharide biogenesis (分解能2.8Å), Salmonella enterica subsp. enterica serovar Typhimurium
論文→ Qiao S. et al. Structural basis for lipopolysaccharide insertion in the bacterial outer membrane Nature Published online 18 June 2014
4Q35: STRUCTURE OF A MEMBRANE PROTEIN (分解能2.4Å), Shigella flexneri→ http://pdbj.org/mine/summary/4q35 -
ジャーナルStructure6月号の論文・短報のタイトル和訳一覧
本稿は、Structure誌6月号の論文・短報のタイトルを和訳したものです。一部、意訳を含みます。
論文→ クラスリン被膜の安定の鍵となる相互作用(819-829頁):Till Bocking et al.
論文→ バクテリオファージP22のコートタンパク質のアクセサリ挿入ドメイン(I-domain)の多機能性を、NMR構造解析とクライオ電顕モデルによって明らかにした(830-841頁):Alessandro A. Rizzo et al.
論文→ グアニン四重鎖(G-quadruplex )を形成するテロメアDNA3'末のオーバーハングの長さによって、テロメアDNAとテロメラーゼならびにテロメラーゼ非依存性テロメア維持(ALT)タンパク質との結合が制御されている(842-853頁):Helen Hwang et al.
論文→ 天然変性領域によって形がフレキシブルな抗毒素PaaA2のコンフォメーションのアンサンブルを、NMR解析とX線小角散乱(SAXS)解析によって絞り込んだ (854-865頁):Yann G.J. Sterckx et al.
論文→ レプチン受容体と野生型レプチンまたは拮抗性変異体のレプチンとの複合体の比較研究から、レプチンによるシグナル伝達機構の鍵となる構造が明らかにした(866-877頁):Kedar Moharana
論文→ 宿主細胞タンパク質のユビキチン化を阻害するShigellaエフェクターキナーゼOspGの機序を構造から探る(878-888頁):Andrey M. et al.
論文→ 定向進化させたEGFP(enhanced GFP)のライブラリーを使い、EGFPが様々な部位におけるアミノ酸一残基の欠失に対して耐性を示し、欠失によっては蛍光強度が高まることを見出した(889-898頁):James A.J. Arpino et al.
論文→ ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)のミカエリス複合体モデルの低温における結晶構造のコンフォメーションは常温のそれと異なる(899-910頁):Daniel A. Keedy et al.
論文→ クライオ電子顕微鏡法を利用して触媒反応におけるピルビン酸カルボキシラーゼのコンフォーメーションの変化と機能の対応関係を明らかにした(911-922頁):Gorka Lasso et al.
短報→ 翻訳開始因子eIF3b のWD40ドメインは9枚のβプロペラであり、40Sリボソームサブユニットと相互作用する(923-930頁):Yi Liu et al. -
家庭や診療・看護の現場で、患者・医師・看護士などが自ら行う検査「ポイント・オブ・ケア検査(point-of-care testing; POCT)」は、血圧や血糖値のモニタリングについては実現・普及している。それでは、投与量の微妙なコントロールが必要とされる治療薬物の血中濃度モニタリング(TDM)のPOCTは実現可能であろうか。今回、スイスEPFLのKai Johnsson等のスイスと米国の研究チームは、機能分子であるLUCiferase-based Indicators of Drugs (LUCIDs)を開発し、6種類の免疫抑制剤、抗てんかん剤、抗がん剤ならびに抗不整脈薬についてPOCTを実現可能なことを示した。
この機能分子は、検査のターゲットとする薬剤の受容体タンパク質、発光酵素ルシフェラーゼならびにフルオロフォアと受容体タンパク質のリガンドで構成される。この機能分子は、治療薬物が存在しない血液中では分子内で結合している受容体タンパク質とリガンドが結合して閉じた形になっているが、治療薬物が存在する血液中では結合が外れてルシフェラーゼとフルオロフォアの距離が遠くなり、治療薬物の濃度に応じて発光が赤色から青色へと遷移していく。LUCIDは治療薬物や濃度範囲に合わせて設計できる汎用性があり、また、論文では、ろ紙に落とした一滴の血液にこの機能性分子を加え、その発光を一般商品のデジカメで撮影しソフトウエアで治療薬物の濃度を数値化したが、小型の一体型機器にまとめあげる事ができる。
論文→ Griss R. et al. Bioluminescent sensor proteins for point-of-care therapeutic drug monitoring. 2014 Jul;10(7):598-603. Published online 08 June 2014
News→ Swiss National Centre of Competence in Research. “New molecule enables quick drug monitoring” 14 June, 2014 -
2種類のサブユニット24個からなるタンパク質ナノケージの自己組織化を設計することに成功した
タンパク質は、生体内でしかるべき形へと自己組織化して、しかるべき機能を発揮するナノ分子機械である。これを模して、合目的にナノ生体材料を設計することは可能であろうか。2012年、ワシントン大学のDavid Baker等は、タンパク質の構成単位(サブユニット)を特定の対称軸に配置し、対称軸に対する回転と並進を許した上でドッキングさせ、サブユニット間の界面の自己組織化スコアを計算する手法によって、1種類の3量体を24個組み合わせた8面体対称のタンパク質(13nm径)と12個組み合わせた4面体対称のタンパク質(11nm径)を自己構築させることに成功した。今回、その手法が2種類のサブユニットで構成されるタンパク質の自己構築へと展開された。相互作用する残基数が多くなるようなドッキングにおいて、2種類のサブユニットの複合化が進むように、界面に位置するアミノ酸残基を再設計した。その結果、コンピュータで設計した24個のサブユニットで構成される5種類のケージ(かご)の形をしたタンパク質のモデル構造と、実験的に作成した結晶構造とが原子レベルで良く一致した。本手法によって、選択した対称性を持ち、多成分からなるタンパク質の自己構築が可能になった。また、自然界には存在しない合成サブユニットを組み込むことも可能であり、望みの機能を有する精密なナノ分子機械を設計する道が拓けた。
【注】コンピュータモデリングは、Baker研究室で開発されてきたRosettaパッケージを拡張しながら行われた。
論文→ King NP. et al. Accurate design of co-assembling multi-component protein nanomaterials. Nature 2014 Jun 5;510(7503):103-8. Published online 25 May 2014
News→ University of Washington. “Self-assembling nanomachines start to click” June 4, 2014
結晶構造→ 4NWN: Computationally Designed Two-Component Self-Assembling Tetrahedral Cage T32-28 (分解能4.5Å)
結晶構造→ 4NWO: Computationally Designed Two-Component Self-Assembling Tetrahedral Cage T33-15 (分解能2.8Å)
結晶構造→ 4NWP: Computationally Designed Two-Component Self-Assembling Tetrahedral Cage, T33-21, Crystallized in Space Group R32(分解能2.1Å)
結晶構造→ 4NWQ: Computationally Designed Two-Component Self-Assembling Tetrahedral Cage, T33-21, Crystallized in Space Group F4132 (分解能2.8Å)
結晶構造→ 4NWR (T33-28): Computationally Designed Two-Component Self-Assembling Tetrahedral Cage T33-28y Designed Two-Component Self-Assembling Tetrahedral Cage, T33-21, Crystallized in Space Group F4132 (分解能3.5Å) -
タンパク質のナノワイヤを、タンパク質薄膜のイオンビーム加工によって形成
極めて細いタンパク質ナノワイヤは、薬物送達の担体、細胞接着の足場、高感度な測定・診断機器への応用を期待され、タンパク質の自己構築性に拠る形成法が試みられて来た。それに対して今回、大阪大学の関修平等は、タンパク質の膜に高エネルギーのイオンビームを照射し、その飛跡に沿って発生する架橋反応を利用する単一粒子ナノ加工法(single particle nano-fabrication technique; SPNT)によって、半径10nm前後でアスペクト比1,000に達する均一なナノワイヤを形成することに成功した。
具体的には、ヒト血清アルブミン(HSA)、ウシ血清アルブミンならびにオボアルブミンのナノワイヤを形成したが、一方で、アビジンの場合は形成不良であった。しかし、HSAのナノワイヤをビオチン化しアビジンを結合させたナノワイヤを形成することができた。また、ストレプトアビジンを介して、ビオチン化HSAのナノワイヤに、蛍光やペルオキシダーゼ活性を持たせる事ができた。SPNTによって、ナノワイヤを高密度に形成することや、タンパク質と機能性合成ポリマーのナノワイヤを形成することが可能であり、SPNTは、広大かつ多様な生理活性面を有するタンパク質ナノ材料を創出可能とする技術である。
論文→ Omichi M. et al. Fabrication of enzyme-degradable and size-controlled protein nanowires using single particle nano-fabrication technique. Nat Commun. 2014 Apr 28;5:3718.
プレスリリース→ 大阪大学・日本原子力研究開発機構・阿南工業高等専門学校. 『莫大な表面積を持つ世界一細いタンパク質の“ひも”の形成に成功!! -さまざまな酵素を自由に固定し、超高感度診断素子の実現へ-』 2014年4月28日 -
患者コミュニティーPatientLikeMeとアカデミア研究センターCATCHとの連携が始まる
PatientsLikeMeは、筋萎縮性側索硬化症 (ALS)患者間での情報共有・相互支援を目的として、2004年にALS症患者の家族と知人が立ち上げたコミュニティーかつ営利企業(注1)であり、2014年4月の時点で25,000人のメンバーを擁し、ALSに限らず多様な疾病2,000種類について700万件の治療情報を共有可能としている。CATCH(Center for Assesment Technology and Continuous Health)はマサチューセッツ総合病院とマサチューセッツ工科大学の共同センターであり、健康状態(注2)(表現型)を定量的かつ継続的に取得する技術開発を進めながら、表現型、遺伝型そして臨床結果の統合解析を可能とするプラットフォームの開発を進めている。
今回の連携によって、CATCHは、研究開発の成果をアカデミアだけでは実現が困難な大規模な臨床現場のデータともとに検証することが可能になり、PatientsLikeMeは、健康モニタリングや診断のための新しい技術を患者と臨床医にいち早く提供することが可能になる。
【注1】営利企業:PatineLikeMeは、匿名化した情報を製薬会社や機器開発会社に販売することで、情報の記録・共有サービスを会員患者に無料で提供してる。
【注2】CATCHのWebサイトには、”patient”を明示的に打ち消して”people”に修正した概念図が掲載されている。
ニュース→ patients like me newsroom. “PatientsLikeMe and CATCH to Accelerate Testing and Adoption of New Disease Diagnostics and Phenotypes - See more at: http://news.patientslikeme.com/press-release/patientslikeme-and-catch-accelerate-testing-and-adoption-new-disease-diagnostics-and-p#sthash.udTozglM.dpuf“ Publised online 12 June 2014. -
ゲノム編集技術に独自手法を加えて血液幹細胞の遺伝子修復を実現
40年以上前に遺伝子治療の未来が謳われて以来、細胞に正常な遺伝子を送り込み追加する手法が試みられてきたが重篤な副作用を伴う問題があった。その間、変異遺伝子だけを狙って修復する手法の研究も行われてきたが、ヒト造血幹細胞(HSCs)への適用は困難であった。今回、San Raffaele Telethon Institute for Gene Therapy (TIGET)のLuigi Naldini等の国際チームは、細胞の前処理などを工夫したジンクフィンガーヌクレアーゼ によるゲノム編集技術を使って、HSCsの遺伝子修復を実現した。細胞をサイトカインで刺激して、ヌクレアーゼに対する細胞の毒性感受性を低減し、通常細胞周期の静止期にある幹細胞を相同組み換えが起こるS/G2期へ誘導し、加えて、細胞をdmPGE2とSR1で刺激し、HSCsの分化を抑制した。その結果、免疫不全症SCID-X1の原因遺伝子であるIL2RG遺伝子の変異を修復した細胞が、移植した免疫不全モデルマウスにおいて18週間生存し、それをさらに移植する事が可能であった。また、新手法をSCID-X1患者由来のHSCsに適用したところ、血液前駆細胞とそこから分化したミエロイド細胞における修復率は3-11%であった。この遺伝子修復の副作用については、前がん性細胞でテストしたところではほとんど発生しなかった。
今後この新手法を、SCID-X1よりも複雑な血液遺伝病の治療に適用していくためには、ターゲット遺伝子を特定するヌクレアーゼの性能向上やゲノムを編集した細胞の効率的増殖によって、修復率を上げる必要がある。近年、安全性を高めてきた正常遺伝子を付加する手法との競争が続くと思われるが、患者由来の細胞をリプログラムした幹細胞を対象とする遺伝子修復技術は魅力的であり、発展が待たれる。
NEWS &VIEWS→ Fischer A. Gene therapy: Repair and replace. Nature Jun 12;510(7504):226-7. Published online 28 May 2014
論文→ Genovese P et al. Targeted genome editing in human repopulating haematopoietic stem cells. Nature 2014 Jun 12;510(7504):235-40. Published online 28 May 2014 -
CRISPR-Cas9システムに拠るマラリア原虫のゲノム編集
Science誌2012年ブレークスルーの一つとして取り上げられたゲノム編集技術"CRIPSR/Cas9"の適用例が広がっている。2013年にはヒト細胞のゲノム編集の報告がなされ、2014年に入ってから遺伝子操作サルの誕生や疾患モデルマウスの遺伝子治療の報告も出てきた。2014年2月に南京医科大学のJiahao Sha等の中国の研究グループは、CRISPR/Cas9技術を利用して狙った遺伝子だけを複数欠損させた遺伝子操作カニクイザルを誕生させた。2014年3月にMITのDaniel G Anderson等の研究グループは、肝障害を起こすヒトのチロシン血症のモデルマウスに、フマリルアセト酢酸ヒドラーゼ(Fah)の変異を補償するフラグメントの一本鎖DNAをCas9とsmall guide RNA(sgRNA)とともに尾静注することで、肝細胞が正常に戻り始め、投薬が不要な程度まで肝臓が回復することを報告した。また、2014年6月にパスツール研究所のArtur Scherf等は、CRISPR-Cas9システムを用いて、熱帯熱マラリア原虫Plasmodium falciparumの遺伝子ノックアウトと一塩基置換を効率的に実現し、また、アルテミシニン抵抗性の系統も樹立して、CRISPR/Cas9システムが真核病原体の研究にも有用であることを報告した。このように、CRISPR-Cas9システムはゲノム編集技術に文字通りブレークスルーをもたらしたものであり、今後、バイオ分野の研究室において日常的に利用される技術になっていくものと思われる。
Science誌2012年ブレークスルー→ NEWS "BREAKTHROUGH OF THE YEAR: The Runners-Up; Genomic Cruise Missiles" Science 2012 Dec 21;338(6114):1525-32
ヒト細胞のゲノム編集→ Mali P. et al. RNA-guided human genome engineering via Cas9. Science 2013 Feb 15;339(6121):823-6.
遺伝子操作サルの誕生→ Niu Y. et al. Generation of gene-modified cynomolgus monkey via Cas9/RNA-mediated gene targeting in one-cell embryos. Cell 2014 Feb 13;156(4):836-43.
疾患モデルマウスの遺伝子治療→ Yin H. et al. Genome editing with Cas9 in adult mice corrects a disease mutation and phenotype. 2014 Jun;32(6):551-3. Nat Biotechnol.
CRISPR/Cas9システムが真核病原体の研究にも有用→ Ghorbal M. et al. Genome editing in the human malaria parasite Plasmodium falciparum using the CRISPR-Cas9 system. Nat Biotechnol. Published online 01 June 2014 -
オープンサイエンス・オープンデータが3次元へと広がる:バイオサイエンス推進を目指す3Dプリンター用データファイルの共有サイトお披露目
2014年6月18日、第1回ホワイトハウスもの作りフェア(White House Maker Faire)初日に合わせて、米国NIHは3Dプリンター用データファイル共有のためのWebサイト"NIH 3D Print Exchange"を一般公開した。Webサイトのトップには、発見・共有・創造・学習・関与の5種類の明快なアイコンが並んでいる。このWebサイトを使って、人体の解剖モデル、測定機器モデル、タンパク質などの生体高分子のモデル、ウイルス・バクテリア・細胞などのモデルのデータファイルをダウンロード・アップロード・編集・構築して、3Dプリンターで"印刷"することができる。また、チュートリアルや情報交換の場も用意されている。
3D Print ExchangeはNIHの中のNational Institute of Allergy and Infectious Diseasesのリーダーシップのもと、 Eunice Kennedy Shriver National Institute for Child Health and Human DevelopmentとNational Library of Medicineが共同で構築・運用している。
News & Events→ National Institutes of Health. "NIH launches 3D print exchange for researchers, students - Public website promotes health and science applications of 3D printing" Published online 18 June 2014
NIH 3D Print Exchange紹介動画→ http://goo.gl/PeUZsm -
タンパク質間相互作用における予測プログラムの評価にあたり、タンパク質のサイズに依存する補正が必要である
複雑な生命系を理解するために、タンパク質間相互作用(PPI)の界面における結合部位の推定が試みられてきた。これまでの予測法のほとんどは、界面を構成するアミノ酸残基数とタンパク質の表面に露出している残基数との比率(Finterface)を一定としてきたが、その一方で、Finterfaceがタンパク質の大きさと逆関係にあり、タンパク質のサイズが小さいほどFinterfaceが大きいという傾向があることが知られていた。今回、リヨン大学のJuliette Martinは、大小のタンパク質の複合体を含むDocking Benchmark 4.0のセットのうち、抗原抗体反応を除く150種類の複合体とそのタンパク質300種類のサブセットを使って、Finterfaceのサイズ依存性を考慮しない場合は界面予測プログラムの性能を過大評価することになることを示し、サイズ依存性の検出法と補正法を提案した。その上で、既存の予測法8種類を評価して、それらの最適な線形結合からなるメタ予測システムを提案した。
論文→ Martin J. Benchmarking protein-protein interface predictions: Why you should care about protein size. Proteins 2014 Jul;82(7):1444-52. Published online 12 FEB 2014 -
小胞体ストレス応答がストレス下にある造血幹細胞プールの完全性を管理する
造血幹細胞(haematopoietic stem cells; HSCs)は、活性酸素、栄養飢餓、DNA損傷などのストレスに抗して完全性を維持し自己複製を繰り返している。今回、トロント大学のJohn E. Dick等のカナダ・英国チームはHSCsのストレス応答の機序を明らかにした。
ストレスを受けたHSCsはその前駆細胞に比べて、小胞体ストレス応答(unfolded protein response; UPR)のPERK経路が強く活性化されて細胞死へと誘導されるが、前駆細胞は適応応答して細胞死を免れ新たなHSCsへと分化して行く。また、ヒトの臍帯血を免疫不全マウスに移植した実験において、シャペロン補助因子ERDJ4 (別名DNAJB9)を過剰発現させるとタンパク質の折りたたみが進行してHSCsの増加をもたらすことから、UPRとHSCsの完全性が関連していることは明らかである。本研究から、HSCsのプールは、ストレスを受けて変性タンパク質が蓄積したHSCsをプールから排除することによって、血液系を長期にわたり維持していると考えられる。
論文→ van Galen P. et al. The unfolded protein response governs integrity of the haematopoietic stem-cell pool during stress. Nature 2014 Jun 12;510(7504):268-72. Corrected online 11 June 2014 -
2013年の米国最高裁の判決は、Myriad Genetics社(ミリアッド社)による乳がん/卵巣がんの発症に関連する遺伝子(BRCA1 /BRCA2)診断の独占に終止符を打ったが、その後も、ミリアッド社は、専有する膨大な臨床検査データ拠る優位性を保っている。一方で、遺伝的変異と健康・疾患との相関データをアーカイブしている公的データベースClinVarに、BRCA変異に関するデータがこれまでに5,752件蓄積され、さらに増加している。(ミリアッド社は16,000件のデータを専有していると言われている)。
遺伝的変異・臨床のデータ共有は、アカデミアの間でも簡単には進んで来なかった。本来の研究の他に手間とコストを要する実務的問題、患者のプライバシー保護の課題、提供したデータが他の研究者の成果に使われてしまうという恐れ、がそうさせていた。こうした状況を打開するために、Sharing Clinical Reports Projectが立ち上げられて、ミリアッド社の遺伝子診断試験を使ったデータも含めてClinVarへのデータ登録が推進されてきた。さらに、各国大学・研究所と共に企業もメンバーになっている公的国際組織Global Alliance for Genomics and Healthは、2014年4月にWorking Groups Prioritiesの一つとしてBRCA Challenge計画を取り上げた。BRCA Challengeは、当面、ClinVarやLeiden Open Variation Databaseなどの主要な変異データベースの相互運用を目指す。健康にかかわるデータの公的共有が広がることは、健康人にとっても患者にとっても福音である。
NEWS→ Hayden EC. Cancer-gene data sharing boosted. Nature 2014 Jun 12;510(7504):198. -
Nature誌6月5日号の記事"Hepatitis C: Treatment triumphs"に、C型肝炎治療の進歩と展望が簡潔にまとめられている。1980年当時A型でもB型でもないウイルスによる肝炎の治癒率は5%程度であった。1989年にC型肝炎ウイルス(HCV)が同定されて本格的な診断法と治療法の研究開発が始まった。2002年には、ポリエチレングリコール分子を結合したインターフェロン(ペグインターフェロン: PEG-IFN)とリバビリンを併用する療法によって治癒率がおよそ50%に達した。その後、HCVのセリンプロテアーゼ(NS3-4A)、RNAポリメラーゼ(NS5B)、あるいは、酵素活性は持たないがHCVに必須のタンパク質(NS5A)それぞれ直接作用する抗ウイルス剤(Direct-acting Antiviral Agents: DAAs)の研究開発が進んだ。2011年には、NS3-4Aの阻害剤、PEG-IFN、リバビリン3剤併用療法が認可され、治癒率も70%以上にあがったが、重篤な副作用と薬剤耐性の問題を伴っていた。2013年になって、インターフェロンを使わない、NS5B阻害剤とリバビリンの2剤併用療法への期待が高まっている。この療法は治験において、経口投与、短期間(12週以下)投与、肝硬変などの症状を選ばない、治癒率95%、副作用が軽微、という特長を示しており、近い将来認可されるであろう。
HCV根絶に向けては、NS5B阻害剤(中でもsofosbuvir)の薬剤耐性は極めて起こりにくいが、それでも薬剤耐性は解決しなければならない課題であり、10種類以上知られている遺伝子型による薬効の相違を確認する必要もある。また、感染後長年にわたり自覚症状を呈さないHCVを早期に発見できる仕組み、現時点では極めて高額(米国では8万ドル)な最先端療法の低廉化と普及、HCVが検出されなくなった後も肝臓の経過観察を継続可能にする保健医療システムが、HCV感染者数が185万人に達しさらに増えている世界には必要である。
NEWS & VIEWS→ Rice CM, Saeed M. Hepatitis C: Treatment triumphs Nature 2014 June 5;510(7503):43-44. Published online 04 June 2014 -
インフルエンザウイルス感染に対するI型インターフェロンの功罪
I型インターフェロン(IFNαβ)の抗インフルエンザ性についてこれまで相反する結果が報告されている。今回、英国MRCのAndreas Wack等は、モデルマウスを使って、インフルエンザウイルスにおける罹患率ならびに死亡率と高レベルIFNαβとの相関を明らかにした。
驚くべきことに、インフルエンザウイルスを感染させた129系統のマウスは、高レベルのIFNαβを示すにも関わらず、C57BL/6マウスよりも肺の損傷度、罹患率ならびに死亡率が高かった。また、インフルエンザウイルス感染C57BL/6マウスにINFαを投与すると罹患率が上がった。INFαβ受容体を欠損させた129マウスではインフルエンザの症状と要因が軽減された。
この機序が、「129マウスでは、樹状細胞のサブセットである反応亢進性の形質細胞様樹状細胞 (plasmacytoid dendritic cell, pDC)が増加し、誘導されたINFαβが高レベルの炎症性サイトカインとケモアトラクタントをもたらし、大量の炎症細胞がリクルートされ、単球上に腫瘍壊死因子関連アポトーシス誘発リガンド(TRAIL)が発現し、上皮細胞にデスレセプター5(DR5)が発現して、肺組織の損傷に至る」ことが明らかにされた。モデルマウスで明らかになった「インフルエンザウイルス感染に応答して産生された過剰なINFαβがTRAIL-DR5経路によって上皮細胞に死をもたらす機構」をもとに、今後、インフルエンザの症状に応じた療法を検討する必要がある。
論文→ Davidson S, Crotta S, McCabe TM, Wack A. Pathogenic potential of interferon ab in acute influenza infection. Nat Commun. 2014 May 21;5:3864. -
アセチルトランスフェラーゼによる微小管アセチル化の分子機構を構造から解明する
微小管には短時間で生成・消滅する集団と長時間安定している集団が存在し、細胞内輸送や細胞分裂等の多様な過程において、それぞれに必要な微小管が選別される。今回、米国立神経疾患・脳卒中研究所のAntonina Roll-Mecak等は、X線構造解析、電子顕微鏡法、生化学分析、一分子蛍光分析ならびにモデリングによって、その選別の分子機構を明らかにした。
細胞が安定な微小管を選択する目印は、チューブリン・アセチルトランスフェラーゼ(TAT)によるαチューブリン内腔側Lys40(残基40番のlysine)のアセチル化である。A. Roll-Mecak等は始めにチューブリン・ペプチドならびにアセチルCoAの二基質アナログとTATとの複合体構造を解いた。TATは、微小管のプロトフィラメントとの接触で刺激されて、微小管内腔表面を双方向拡散しLys40を探索し確率的にアセチル化する。しかし、Lys40が結合するTATのサイトは、アセチル化に最適なサイトではなく、アセチル化はゆっくりと進む。TATの触媒反応は、拡散速度ではなく、アセチル化の反応速度によって律速され、寿命が短い微小管はアセチル化が達成されないことから、結果的に細胞による比較的長時間安定な微小管の認識が実現する。
【注】論文では、TATの機能をenzymatic timer for microtubule lifetimesと称している。
論文→ Szyk A. et al. Molecular Basis for Age-Dependent Microtubule Acetylation by Tubulin Acetyltransferase. Cell 2014 Jun 5;157(6):1405-15
結晶構造→ 4PK2
結晶構造→ 4PK3 -
メンブレイントラフィキングに重要な役割を果たすリン脂質リン酸化酵素の結晶構造
ホスファチジルイノシトール-4-キナーゼ(PI4K)の一つPI4KⅢβは主としてゴルジ体に局在し、ゴルジ体の形成とメンブレイントラフィッキングの機能に必須のリン脂質リン酸化酵素である。今回、MRC Laboratory of Molecular BiologyのRoger L. Williams等の英米の研究チームは、PI4KⅢβと低分子量GTPアーゼの一つであるRab11aとの複合体、ならびにこの複合体にさらにRab11のエフェクターFIP3が結合した複合体、の2種類の構造を解き、PI4KⅢβとRab11aとの独特の結合様式を明らかにした。その上で、PI4KⅢβが、Rab11aとそのエフェクターを同時にホスファチジルイノシトール4-リン酸(PI4P)を含む膜にリクルート、細胞分裂の際に膜の膨張やリモデリングをもたらす機構を推定した。この結果は、マラリア原虫PlasmodiumのPI4KⅢβ阻害によるマラリアの治療戦略にタンパク質の構造と結合様式の観点からの根拠を与える事になった。
論文→ Burke JE. et al. Structures of PI4KIIIβ complexes show simultaneous recruitment of Rab11 and its effectors. Science 2014 May 30;344(6187):1035-8. Published online DD MM YYYY
結晶構造→ 4D0L: Phosphatidylinositol 4-kinase III beta-PIK93 in a complex with Rab11a- GTP gammaS (分解能 2.9Å)
結晶構造→ 4D0M: Phosphatidylinositol 4-kinase III beta in a complex with Rab11a-GTP- gamma-S and the Rab-binding domain of FIP3 (分解能6Å) -
中枢神経系の主要な抑制性神経伝達物質GABAのイオンチャネル型受容体であるGABAA受容体(GABAAR)は、神経障害の治療薬や麻酔薬のターゲットにされてきたが、全体の結晶構造は不明なままであった。今回、オックスフォード大学構造生物学部門のPaul S. MillerとA. Radu Aricescuは初めて、β3サブユニットで構成されるホモ五量体型のヒトGABAA受容体(GABAAR β)の結晶構造を解いた。結晶化は、新奇なアンタゴニストとなるベンズアミジンを結合させることで実現した。
GABAAR βは、高さ110Å、幅60-80Åの円柱型であり、N末端側のαヘリックスと10本のβ鎖が細胞外に65Å程度突き出していた。予想外にも、各サブユニットに存在するN-結合型糖鎖が受容体の構造維持と受容体内のシグナル伝達に寄与していると考えられた。受容体のポアは5本のヘリックスで形作られ、細胞内膜へ向かって徐々に狭まり、最も狭い部分は半径3.15Åであり、Cl-イオンに対しては閉じたゲート状態であった。今回明らかにされたのは、GABAAR βホモ五量体の構造であったが、αサブユニット、βサブユニットあるいはγサブユニットで構成されるGABAARのヘテロ五量体の構造と機能の因果関係をより深く理解し新たな治療薬を開発していく助けとなる。
論文→ Miller PS, Aricescu AR. Crystal structure of a human GABAA receptor. Nature Published online 08 June 2014
結晶構造→ 4COF: CRYSTAL STRUCTURE OF A HUMAN GAMMA-AMINOBUTYRIC ACID RECEPTOR, THE GABA(A)R-BETA3 HOMOPENTAMER (分解能3Å) -
DNA修復タンパク質に共通に存在する核酸結合ドメインの構造と機能
SMARCAL1はDNA複製時にssDNAが過剰になると複製フォークを後退させて正常な複製を再開に導きゲノムの完全性を維持するDNAリモデリングタンパク質であり、その変異は、シムケ免疫性骨形成不全などの疾患を引き起こす。SMARCAL1の触媒ドメインはATPase(ATPアーゼ)と機能未知のHARPドメインで構成されている。今回、米国Vanderbilt大学のF. Eichman等は、X線小角散乱法によってHARPドメインの構造を解きその機能を解析した。
HARPドメインは、DNAミスマッチ結合タンパク質MutSとヌクレオチド除去修復ヘリカーゼXPBの基質認識ドメインならびにT4ファージのヘリカーゼUvsWの想定DNA結合モチーフと構造的に相同であった。HARPドメインにおいてDNA結合部位に変異を入れると、SMARCAL1の修復機能が低下する一方で、相同ドメインを欠損したUvxWの活性がHARP-UvsWキメラでは回復した。SMARCAL1のHARPドメインのようにDNA修復酵素の間で保存されているHARP基質認識ドメインがATP加水分解とDNAリモデリングを結びつけ、複製フォークの安定性とゲノム完全性を保証していると考えられる。
論文→ Mason AC. et al. A structure-specific nucleic acid-binding domain conserved among DNA repair proteins. Proc Natl Acad Sci U S A. 2014 May 27;111(21):7618-23.Published online before print May 12, 2014
結晶構造→ 4O66: Crystal Structure of SMARCAL1 HARP substrate recognition domain(分解能1.9Å) -
動物実験を代替するヒト細胞に拠るBioMAPシステムの提案と検証
動物実験による医薬・医薬外部品の毒性・安全性検査は科学的および社会的課題を伴っており、ヒト細胞材料のin vitro実験などの代替法の開発研究が続いてきた。今回、米国環境保護庁(EPA) の計算毒性学(computational toxicology)センターのKeith A. Houck等は、ヒト初代培養細胞(primary cell)のセットに拠る試験法「BioMAPシステム」を開発した。
8種類の細胞からなるBioMAPシステムによって、641種類の環境化合物と製薬会社から入手した新薬に至らなかった化合物135種類について、濃度を代えながら、のべ87種類のバイオマーカーを測定し、306,240点の測定データを取得した。このデータベースから、相関解析、クラスター分析、自己組織化、サポートベクターマシンのデータ解析手法を駆使して、化合物の活性と作用機構を分析し、既知のin vivo実験結果と良く一致する結果を得、また、これまで知られていなかった毒性を見出した。
BioMAPシステムは、EPAの依頼を受けて全米研究評議会(US NRC)が取りまとめた報告「Toxicity Testing in the 21st Century: A vision and a Strategy」を受けてEPAが進めているToxCastプログラムの一手法であり、他の手法と相補して毒性・安全性試験の効率化・精密化ならびに動物事件の低減に貢献することが期待される。
【注】本記事が参照したNature Biotechnology誌NEWS & VIEWSの著者は毒性・安全性試験を必要とする製品を製作・販売しているユニリーバの社員である。
NEWS AND VIEWS→ Westmoreland C, Carmichael PL. Nat Biotechnol. 2014 Jun 9;32(6):541-3. Published online 09 June 2014
論文→ Kleinstreuer NC. et al. Phenotypic screening of the ToxCast chemical library to classify toxic and therapeutic mechanisms. Nat Biotechnol. 2014 Jun;32(6):583-91. Published online 18 May 2014
US NRC報告のレビュー→ Krewski D. et al. Toxicity testing in the 21st century: a vision and a strategy. J Toxicol Environ Health B Crit Rev. 2010 Feb;13(2-4):51-138. -
マウスES細胞の原始内胚葉への分化は一組のタンパク質間相互作用で制御されている
細胞の振る舞いとして表現されるシグナル伝達の実体は、タンパク質間相互作用(PPI)のネットワークである。タンパク質の結合は多対多の関係にあり、このネットワークは、理解可能な形で図示するのが困難なほど複雑である。今回、シカゴ大学の小出昌平等は、細胞内相互作用ネットワーク再構築法(Directed Network Wiring)を開発して、マウス胚性幹細胞(ES細胞)の原始内胚葉(primary emdiderm)への分化の鍵を握るPPIの絞り込みに成功した。
Grb2アダプタータンパク質はそのSH2ドメインを介して、チロシンリン酸化モチーフ(pYXNX)を有する膨大な種類のタンパク質と結合する。小出等はGrb2のSH2ドメインを、affinity clampingの手法によって 単一のpYXNXモチーフにだけ結合するように分子進化させた、pY-clampと呼ぶ人工タンパク質をいくつも作成した。マウスES細胞のGrb2を、これらのpY-clampを組み込んだGrb2変異体で置換することにより、Grb2 SH2と標的モチーフの結合一つだけを再生させ、原始内胚葉への分化に及ぼす影響を判定した。その結果、驚くことに、数あるGrb2 SH2結合モチーフの中で、チロシンホスファターゼのPtpn11との相互作用がありさえすれば、分化が起きることが明らかになった。本手法は汎用的であり、例えば、癌細胞におけるPPIネットワークの精密な分析ひいては薬剤ターゲットのPPI特定に貢献していくことを期待できる。
【注1】本記事の文責はニュースウオッチ欄にありますが、和文用語「細胞内相互作用ネットワーク再構築」は小出昌平教授のご提案によるものです。
【注2】pYXNXのXは任意のアミノ酸を意味する。
プレスリリース→ Newsroom, The University of Chicago Medicine. New method reveals single protein interaction key to embryonic stem cell differentiation. June 5, 2014.
論文→ Yasui N. et al.. Directed Network Wiring Identifies a Key Protein Interaction in Embryonic Stem Cell Differentiation. Molecular Cell 2014 Jun 19:54;1-8. Available online 5 June 2014
Affinity clamping 参考文献→ Koide S, Huang J. Generation of high-performance binding proteins for peptide motifs by affinity clamping. Methods Enzymol. 2013;523:285-302.
結晶構造→ 4JMG: Crystal structure of the synthetic protein in complex with pY peptide/Clamp Ptpn11_pY580, Tyrosine-protein phosphatase non-receptor type 11 (E.C.3.1.3.48) (分解能 1.4Å)
結晶構造→ 4JMH: Crystal structure of the synthetic protein in complex with pY peptide/Clamp Shc1_pY239/240, SHC-transforming protein 1 (分解能 1.4Å) -
Google Earthで地球を俯瞰し、Google Genomicsでゲノムを俯瞰する時代
2014年2月に、Mountain Viewは、容易にゲノムデータの入手・保管・検索・解析をWebベースで実現できる環境を目指したGoogle Genomicsを立ち上げて医療分野に進出した。また、Googleは、安全で効率的なゲノムデータの共有を目指す共通のプロトコルの設計と実装を介して医療を革新することを目的とし、各国から175機関が参加しているGlobal Alliance for Genomics and Healthに加盟した。Goole Genomicsは、Googleのインフラを使って、巨大なゲノムデータを蓄積・処理・活用するソフトウエアの開発を進め、5月にAPI(Application Programming Interface)のプレビューを開始した。米国NCBIと欧州EBIも、Googleとともに、試行版APIを導入して、テストを進めている。
Googleはまた、ハーバード大学のGeorge Church教授に協力して、100万人のゲノム配列と病歴を検索可能にするPersonal Genome Projectに取り組んでいる。
【注】本稿は、Nature Biotechnologyの6月9日号のニュースの簡訳にあたります。内容に齟齬がありました場合は、ニュースウオッチ欄の責任となります。
News→ Gruber K. Google for genomes. Nature Biotechnology 2014 June 09;32:508. -
マウスES細胞の多分化能は、12種類の転写因子とその16種類の相互作用で維持される
多能性ES細胞は自発的に分化しやすい細胞であり、分化多能性の状態を保ったままの継代には非常に注意を要する。今回、Cambridge Stem Cell InstituteのA. G. Smith等は、英国Microsoft ResearchのBiological Computingグループと共同で、遺伝子発現データ解析とコンピュータモデルを組み合わせて、分化多能性を維持するには、Oct4とSox2を含む僅か12種類の転写因子とそれらの間の16種類の相互作用で形成される遺伝子制御回路(cicuitry)で十分なことを示した。このモデルは、マウスのES細胞が分化多能性を維持することができる23種類の培養条件における転写因子17種類の発現データの相関をもとに構築したブーリアンネットワークを、公共の(第三者の)マイクロアレイとChip-seqのデータとも適合するよう改訂したモデルである。このモデルを使って転写因子ノックダウンの影響を予測したところ、37例のうち26例については、ウエット実験で予測結果を再現することができた。すなわち、多数の遺伝子が存在しその複雑なネットワークが存在すると見られるES細胞において、多分化能を維持するに必要最小限の遺伝子制御回路が存在することを示した。
論文→ Dunn SJ, Martello G, Yordanov B, Emmott S, Smith AG. Defining an essential transcription factor program for naive pluripotency. Sciene 2014 Jun 6;344(6188):1156-60. -
SGCとCHDI財団はオープンアクセスに拠ってハンチントン病への取り組みを加速する
2014年6月、カナダのトロント大学ならびに英国オックスフォード大学に本拠を置く非営利組織「構造ゲノミクスコンソーシウム」(Structural Genomics Consortium; SGC)とハンチントン病(Huntington's disease; HD)の治療法開発を推進している米国のCHDI財団は、構造生物学とケミカルバイオロジーを駆使して、HD治療薬の新しいターゲットの発見と解析を目指して共同プロジェクトに乗り出すことを発表した。この共同プロジェクトはオープンアクセスであり、両者は成果について特許申請することなく、試薬や知見を製薬会社、バイオテクノロジ企業、学術研究グループなど研究社会へ広く無条件で提供する。共同プロジェクトの一環として、例えば、CHDIはSGCによるHD治療薬候補の構造解析を支援する。また、SGCが有しているエピジェネティクス経路における新奇な阻害剤をCHDIの科学者や臨床医へ提供する。ニュースの中で、2012年にSGCに出資・参加した武田薬品の丸山哲行(旧名 Paul Chapman)氏は、「このオープンアクセスを歓迎し、また、HDに対する製薬会社の関心がたかまることを示唆する」という趣旨のコメントを述べている。
News→ CHDI Foundation. Structural Genomics Consortium and CHDI Foundation announce open-access collaboration to discover new drug targets for Huntington's disease. June 5, 2014. -
これまでに、膜タンパク質のフォールディング、構造ならびに機能がその脂質環境に影響され、その特定部位に脂質が結合することが明らかになっている。今回、その調節機構を明らかにするために、オックスフォード大学のCarol Robinson等とジョンズ・ホプキンス大学の研究チームは、始めに、イオン移動度質量分析法(ion mobility mass spectrometry; IMS-MS)によって、形、構成、機能が異なる膜タンパク質複合体3種類と脂質の結合状態ならびに気相における膜タンパク質のアンフォールディングの状態を測定し、脂質の結合が膜タンパク質の安定性に与える効果を定量化した。結核菌由来の大コンダクタンス機械刺激依存チャネル(Large conductance mechanosensitive channel; MscL)はいずれの脂質によっても安定化されたが、その中では、機械感覚(mechanosensation)に関わるとされている脂質であるホスファチジルイノシトールリン酸の安定化効果が最も高かった。大腸菌由来のアクアポリンZ(AqpZ) も脂質を選ばなかったが、カルジオリピンの安定化効果が最も高く、また、水透過性に影響を与えることが分かった。大腸菌由来のアンモニアチャネル(AmtB)は、前述の2種類の膜タンパク質と異なり、おしなべて脂質による安定化効果が低く、ホスファチジルグリセロールだけが高い効果を示した。今回決定した脂質が結合した状態の結晶構造と脂質が結合していない状態の結晶構造を比較した結果、チャネルのループの形が変化してAmtBと脂質の結合が成立していることが分かった。今後、膜タンパク質と脂質の相互関係をさらに詳らかにすることによって、薬剤による膜タンパク質の調節や薬剤送達に新たな道が拓ける可能性がある。
【注】アンモニアチャネルの構造が本論文が掲載されたNature誌の表紙を飾っている。
論文→ Laganowsky A et al. Membrane proteins bind lipids selectively to modulate their structure and function Nature 2014 June 5;510(7503):172-175. Published online 04 June 2014
結晶構造→ 4NH2: Crystal structure of AmtB from E. coli bound to phosphatidylglycerol (分解能2.3Å) -
ヒトGLUT1グルコース輸送体の構造決定と交互アクセスモデル
グルコース輸送体クラスIに属するGLUT1は、グルコースを赤血球に促進拡散し、脳などの臓器にグルコースを供給する。GLUT1の機能不全はGLUT1欠損症症候群(De Vivo病)を引き起こし、一方で、GLUT1などのグルコース輸送体の発現が癌細胞で亢進することが知られていた。今回、中国清華大学のNieng Yan等はヒトGLUT1の結晶構造を解き、疾病由来の不活性化変異を立体構造上にマッピングし、バクテリアにおけるGLUT1のホモログであるプロトン共役型キシロース共輸送体(symporter)XylE(PDB: 4GC0)の構造と対照させながら、変異の影響を詳細に議論し、GLUT1の輸送機構のモデルを提唱した。GLUT1は、MFS(major facilitator superfamily)に典型的な折りたたみ構造をとり、基質結合部位が細胞膜の両側からアクセスされる機構を備えている。この交互アクセス機構は、GLUT1が、細胞膜の外側に開口している状態、リガンドが結合し閉じた状態、細胞質側に開口している状態、リガンドが結合していず閉じている状態の間を遷移することで実現されている。本研究で決定した構造は細胞質側に開口している形であるが、今後、グルコース輸送全般の機序がより明らかにされ、De Vivo病の治療法や癌の診断法が進展することが期待される。
論文→ Deng D. et al. Crystal structure of the human glucose transporter GLUT1 Nature 2014 June 05;510(7503):121-125. Published online 18 May 2014
結晶構造→ 4PYP: Crystal structure of the human glucose transporter GLUT1 (分解能3.2A) -
小胞体から細胞質へのカルシウムリークがpH依存であることを膜タンパク質の構造から裏付けた
細胞内のカルシウム濃度は、カルシウムの貯蔵庫にあたる小胞体(ER)によるカルシウムの汲み上げとリークで調節されているが、ERにおいてカルシウムが過剰になると細胞死(アポトーシス)に至る。今回、New York Consortium on Membrane Protein Structure (NYCOMPS)のQun Liu等は、抗アポトーシス性でありERからのカルシウムリークを仲介する「膜貫通Bax inhibitor(BI)モチーフ(TMBIM)を有するタンパク質」の構造とリークの機序の解明を試みた。始めに、これまで機能が不明であったBacillus subtilisのYetJタンパク質がヒトのBI-1タンパク質のホモログであることを見い出し、単波長異常分散法(SAD)でその結晶構造を解いた。YetJは、ヘリックス7本(以下、N末端から順番にTM1からTM7)を有する7回膜貫通タンパク質であったが、TM1とTM2がTM3を挟み、TM4とTM5がTM6を挟み、これらの2セットが中央に位置するTM7を囲む、という独特な構造をしていた。また、残基171番と195番のアスパラギン酸がセンサーとしてpHの変化を感知し、TM2が配置を変えることで、YetJは、pH8でのコンパクトな閉じた形と、pH6でのポア(5Å?10Å幅)を有する開いた形の間を可逆的に遷移する。また、ほぼ生体内に相当するpH7では、閉じた形と開いた形が60:40の割合で共存する。次に、大腸菌における過剰発現実験と再構成したプロテオリポソームの生化学実験によってYetJのカルシウムリークと汲み上げがpH依存であることを確認した。さらに、hBI-1の構造をホモロジーモデリングし、そのカルシウムリークと細胞保護の機序について考察を加え、hBI-1をターゲットとしてがん細胞をアポトーシスに誘導する可能性を示唆した。
【注】X線構造解析はNational Synchrotron Light Source (NSLS) のビームラインX4AとX4Cによって行われた。【注】BsYetJの立体構造とhBI-1のホモロジーモデルの利用について特許出願されている。
News→ Newsroom, Brookhaven National Laboratory. Scientists Reveal Details of Calcium 'Safety-Valve' in Cells. June 6, 2014
論文→ Chang Y. et al. Structural basis for a pH-sensitive calcium leak across membranes. Science 2014 Jun 6;344(6188):1131-5
結晶構造→ 4PGR: Crystal structure of YetJ (closed-form) from Bacillus Subtilis at pH 8. 分解能2.0Å
結晶構造→ 4PGS: Crystal structure of YetJ (open-form) from Bacillus Subtilis at pH 6 by soaking. 分解能2.5Å
結晶構造→ 4PGU Crystal structure of YetJ (closed/open-form). from Bacillus Subtilis at pH 7 by back soaking 分解能3.4Å.
結晶構造→ 4PGV: Crystal structure of YetJ from Bacillus Subtilis at pH 8 by back soaking. 分解能2.6Å.
結晶構造→ 4PGW: Crystal structure of YetJ (open-form in C2221 lattice) from Bacillus Subtilis at pH 6 by Pt-SAD. 分解能3.6Å
特許出願→ Q.L., Y.C., and W.A.H. a patent application filed by the New York Structural Biology Center on uses of the three-dimensional structures of BsYetJ and homology models of hBI-1. -
米国における2014-2025年の脳研究のビジョンが公開された
2013年4月2日米国オバマ大統領はグランドチャレンジの一環として「”Brain Research through Advancing Innovative Neurotechnologies (BRAIN) Initiative」を発表した。これを受けて設けられたNIH所長諮問委員会のBRAIN作業部会は、2014年6月5日に”BRAIN 2025: A SCIENTIFIC VISION”と題する報告書を所長Francis S. Collinsに提出した。報告書は、BRAIN initiativeの目的を「脳神経回路のマップを作成し、電気信号と化学信号の振動するパターンを測定し、それらがどのように相互作用してヒトの認知と行動として立ち現れるかを明らかにすること」とし、目的達成のために、7つの科学的達成目標と最大限の成果を挙げるための7つの方針を設定した。また、2016-2020年の間は技術開発と評価に焦点をあてて年間5億ドルを投じ、2020-2025年の間は、先端技術を統合活用した発見を目指して年に5億ドルを投じ、2014-2025年の12年間のプロジェクトとして総額4,600億円(45億ドル)の予算を新規に措置することを提案している。
News Release, NIH→ NIH embraces bold, 12-year scientific vision for BRAIN Initiative. June 5, 2014
BRAIN 2025: A Scientific Vision→ Brain Research through Advancing Innovative Neurotechnologies (BRAIN) Working Group Report to the Advisory Committee to the Director, NIH. June 5, 2014 -
インターネット中毒(Internet Addict; IA)に陥ると衝動のコントロールが困難になることがある。今回、中国の第四軍医大学のHongbing Luと中国人民解放軍国防科学技術大学のDewen Hu等の中国チームは、その神経生物学的機序の解明を試みた。15歳前後の対照群23名とIA患者群の18名に、行動抑制課題であるGo-Stop課題を課するとともに、fMRIの解析を行って、両群の間で、Stopのシグナルに対する反応と、前頭葉と大脳基底核の間の経路に違いがあることを見出した。Dynamic causal modeling(DCM)によると、対照群では、Stopのシグナルが、前頭皮質→補足運動野前部(pre-supplementary motor area)→下前頭回→線条体という間接的経路を経由して想定されたstop反応を引き起していたが、IA群ではこの経路も代替となる経路も存在しなかった。これらの結果から、IAでは脳の領域間の結合の不全が起きていると考えられる。
【注】Go-Stop課題は、いったん始めた動作をStopのシグナルを見て止める課題;IAの診断はYoung's Diagnostic Questionnaire (YDQ)に依り、対照群については、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fourth Edition (DSM-IV)に依って2名の精神科医が診断。
論文→ Li B. et al. Impaired Frontal-Basal Ganglia Connectivity in Adolescents with Internet Addiction Sci. Rep. Published online 22 May 2014:4; Article number 5027. Published online 22 May 2014
参考文献(インターネット中毒)→ ABOUJAOUDE E. Problematic Internet use: an overview World Psychiatry Jun 2010; 9(2): 85?90. -
過剰で混沌としたシナプスが発育過程で剪定されて精緻な神経回路へと成熟する機序が明らかになった
生後直後に存在する過剰なシナプスが徐々に取捨選択されて正常な神経回路が構築される。このシナプス刈り込みは、神経伝達物質を放出するシナプス前部から受容するシナプス後部への順方向とは逆行するシグナルによって制御されている。今回、この逆行性シグナルの実体を東京大学の狩野方伸等の研究チームが明らかにした。マウス小脳の発育過程で登上繊維とプルキンエ細胞の間の刈り込みがセマフォリンのSema3AとSema7Aによって制御されていることを見出した。プルエンキ細胞の分泌型Sema3Aをノックダウンするか登上繊維におけるその受容体plexinA4をノックダウンすると、生後8日-18日の間、刈り込みが促進された。一方で、プルエンキ細胞において膜に固定さているSema7Aまたは登上繊維にある2つの受容体(Integrinβ1とplexinC1)のうち一方をノックダウンすると、生後15日以後の刈り込みが抑制された。これらの結果は、生後間もない動物のプルキンエ細胞に存在していた5本以上の弱い登上線維が、成体では一本の強力な登上線維へと変化して行く現象と符合している。
論文→ Uesaka N. et al. Retrograde semaphorin signaling regulates synapse elimination in the developing mouse brain. Science 2014 May 30;344(6187):1020-3. Published online 15 May 2014
プレスリリース→ 東京大学. シナプス刈り込みを制御する分子を明らかに:逆行性シグナルの実体を解明 2014年5月16日 -
光遺伝学によって、シナプスの可塑性と記憶との間の因果関係が細胞レベルで明らかにされた
今回、UCSDのRoberto Malinow等は、光遺伝学の手法によってシナプス間の信号伝達効率(シナプス結合強度)を制御することによって、任意に、繰り返し記憶を形成・消去・回復することに成功し、長年の仮説であった「記憶の形成・保持の実体は長期増強(long-term potentiation; LTP)である」ことを実証した。始めに、ラットの聴覚神経核に始まる扁桃体外側核(lateral amygdala)への聴覚入力となる光刺激と同時に電気的フットショックを与えることによって、光刺激だけで恐怖反応を示すようにラットを恐怖条件付けしたところ、刺激対象のシナプス結合強度が上昇した(記憶の形成)。次に、一連の低周波(1Hz)の光パスルを照射して記憶の消去を試みたところ、光刺激に対する恐怖反応を示さなくなった(記憶の消去)。さらに、一連の高周波(10Hz)光パルスを照射したところ、再度の恐怖条件付けをしないにも拘らず、再び光刺激に対する恐怖反応を示すようになった(記憶の回復)。このラウンドは繰り返し再現でき、シナプス可塑性と記憶との間に因果関係があることが明らかになった。また、記憶の回復技術は、アルツハイマー病ではβアミロイドの蓄積によってシナプス結合強度が弱まることが知られていることから、アルツハイマー病の症状改善への応用が考えられる。さらに、今回、光刺激によって特定の神経細胞を狙った条件刺激を実現できたことから、今後、細胞内プロセスと行動の相関を直接解析していくことが可能になった。
Nature|NEWS → Callaway E. Flashes of light show how memories are made. Nature News 02 June 2014
プレス発表→ LaFee S. How to Erase a Memory - And Restore It. UC San Diego News Center. June 01, 2014
論文→ Nabavi . et al. Engineering a memory with LTD and LTP. Nature 2014 June 1 advance online publication -
シナプス終末における小胞リサイクルに関わるタンパク質の動態が見える高精細3次元マップが公開された
神経細胞では、神経伝達物質を貯蔵・輸送・放出するシナプス小胞の分解と再構築が繰り返されている(シナプス小胞リサイクル)。今回、Silvio O. Rizzoli等のゲッチンゲンとベルリンの研究チームは、シナプス小胞リサイクルの各ステップに関与するタンパク質の動態を明らかに、のべ30万個のタンパク質の分布をマップしたシナプスボタン(シナプス前終末、シナプトソーム)の高精細な3次元モデルを構築した。このモデルは、ラットの大脳皮質と小脳から分離したシナプトソームを対象として、シナプス小胞リサイクルの各ステップについて、電子顕微鏡によって観察したオルガネラ、定量ウエスタンブロッティングと質量分析による絶対定量から導出したタンパク質の数、ならびに、超解像蛍光顕微鏡(Stimulated emission depletion (STED) microscopy)によっておよそ40nmの分解能で特定したタンパク質の配置のデータを統合した成果である。興味深いことに、シナプス小胞リサイクルの各ステップに関与するタンパク質のコピー数は、エンドサイトーシスに関与するタンパク質の150コピーからエキソサイトーシスに関与するSNAREの一つであるSNAP-25タンパク質の27,000コピーまでステップごとに大きく変動していたが、同一ステップに関与するタンパク質はほぼ同量であった。シナプスには多様性があるため、このモデルはあくまでもそれらの「平均的」シナプスに対応するものであるが、今後の脳神経系の研究に貢献すること大である。
【注】3次元モデルを様々な視点から見たオムニバスが2分半余りの動画にまとめられている。動画のシナリオをSupplementary Materials (27-28ページ)の「Movie S1. A view of presynaptic organization」にて確認できる。
論文→ Benjamin G. et al. Composition of isolated synaptic boutons reveals the amounts of vesicle trafficking proteins Science 2014 May 30;344(6187):1023-8.
STED 参考文献→ Figure 1 A guide to super-resolution fluorescence microscopy: Schermelleh L, Heintzmann R, Leonhardt H. A guide to super-resolution fluorescence microscopy. J Cell Biol. 2010 Jul 26;190(2):165-75.
動画→ A view of presynaptic organization -
E3ユビキチンリガーゼを構成するタンパク質PARK2が細胞周期(G1/S期)調節の指揮を執る
緻密な細胞増殖を担う細胞周期の研究が盛んに行われて来たが、その調節機構にはまだまだ謎が残っている。今回、Timothy Chan等の米国チームは、PARK2 E3ユビキチンリガーゼが、G1/S期における調節の指揮者であることを明らかにした。始めに、多様な4,934種類の腫瘍の30%においてPARK2遺伝子が欠損していることに注目し、続いて、この欠損と相互排他関係にある遺伝子の探索から、サイクリンD1とサイクリンE1ならびにそれらに結合して活性化するサイクリン依存性キナーゼ(Cyclin Dependent Kinase; CDK)に注目した。E3ユビキチンリガーゼであるPARK2をノックダウンするとサイクリンD1とE1が蓄積される一方で、野生型PARK2を過剰発現させるとD1とE1が分解されることを見出し、その機序も次のように明らかにした:PARK2がcullin-RINGを足場とするユビキチンリガーゼの新たなクラスであるPCF4とPCF7を構成し、それぞれがサイクリンD1とサイクリンE1をユビキチン化してプロテアソームへ誘導する。PARK2の変異あるいは欠損は、サイクリンD1とE1の蓄積を介したキナーゼCDK2とCDK3/CDK6の活性化異常、S期への移行を抑制するRb腫瘍抑制因子のリン酸化、過剰なDNA複製、そしてゲノムの不安定化を引き起こし、腫瘍発生・増殖をもたらすと考えられる。今回の研究成果によって、細胞周期の調節機構と腫瘍発生の機構について、次に明らかにすべきポイントが見えてきた。
NEWS AND VIEWS→ Bartek J, Hodny X. PARK2 orchestrates cyclins to avoid cancer. Nat. Genet. 2014 June;46(6):527-528.
論文→ Gong Y. et al. Pan-cancer genetic analysis identifies PARK2 as a master regulator of G1/S cyclins. Nat. Genet. 2014 June;46(6):588-594. Published online 04 May 2014
相互排他関係に関する文献→ Ciriello G, Cerami E, Sander C, Schultz N. Mutual exclusivity analysis identifies oncogenic network modules. Genome Res. 2012 Feb;22(2):398-406. Published in Advance September 9, 2011 -
インスリン分解酵素がインスリンに加えてグルカゴンとアミリンを調節していることが、DNAテンプレート有機合成した分子による阻害作用の分析から明らかになった
インスリン分解酵素(insulin-degrading enzyme: IDE)を阻害することで2型糖尿病を改善できる可能性がある。しかし、Ide欠損マウスではインスリンが増加する一方で、期待に反して糖耐性が低下することなどから、IDE阻害が引き起こす生理作用を詳らかにする必要がある。今回、ハーバード大学のAlan SaghatelianとDavid Liu等の米国チームは、DNAテンプレート有機合成法(DNA-templated organic synthesis:DTS)で合成した13,824種類の大環状分子の中から、IDEをこれまでになく強力に阻害する(IC50=50nM)分子を特定し、X線構造解析から、この阻害分子が、IDEの亜鉛活性中心から離れたポケットに結合することを見出し、他の阻害剤と相乗的に作用することを示唆した。マウスのin vivo実験からは、IDEが、インスリンだけでなく、血糖上昇をもたらすグルカゴンと血糖低下をもたらすアミリンの量と信号伝達を調節することを見出した。本研究成果によって、グルカゴン分解を低下させること無くIDEを阻害することで2型糖尿病を治療するという戦略が見えて来た。
論文→ Maianti JP. et al. Anti-diabetic activity of insulin-degrading enzyme inhibitors mediated by multiple hormones. Nature Published online 21 May 2014
結晶構造→ 4LTE: Structure of Cysteine-free Human Insulin Degrading Enzyme in Complex with Macrocyclic Inhibitor(分解能2.7Å) -
哺乳類ミトコンドリアのリボソームS28サブユニットの構造を決定し、39Sサブユニットとのドッキングモデルを構築した
哺乳類の55Sミトコンドリアリボソームの39Sサブユニットの構造は低温電子顕微鏡法によって2013年に明らかにされたが、今回、ニューヨーク州Wadsworth CenterのRajendra K. Agrawal等は、28Sサブユニット(以下、28S mito-SSU)の構造を7Åの分解能で明らかにした。これまでに、「28S mito-SSUが、12S rRNAとミトコンドリアタンパク質(mitochondrial ribosomal proteins:MRPs)で構成され、31個のMRPsのうち15個はバクテリアのMRPsと相同であり、そのうち13個のMRPsのN末端とC末端が伸長している」ことが知られていた。R. K.Agrawal等は、低温電子顕微鏡法によって、12S rRNA、伸長部分を含む15種類の相同MRPsならびにミトコンドリアリボソーム特有の16種類のMRPsの解析も試みた。その結果、これら28S mito-SSU特有の構造が、ミトコンドリア特有の5末端のリード配列を欠いているmRNAのリクルートならびにmRNAとtRNAの通路形成に寄与していることを見出し、ミトコンドリアリボソームの進化過程についても論じた。さらに、28Sと構造既知の39Sとのドッキングモデルを構築して、2つのサブユニットにおけるミトコンドリアリボソーム特有のMRPsが、両サブユニットのブリッジ15個のうち6個の形成に直接寄与しているとした。
論文→ Kaushal PS et al. Cryo-EM structure of the small subunit of the mammalian mitochondrial ribosome. Proc Natl Acad Sci U S A. 2014 May 20;111(20):7284-9. Published online 2014 May 5.
28Sの構造→ EMD-5941: Cryo-EM structure of the small subunit of the mammalian mitochondrial ribosome
12S rRNAとMRPの構造→ 3J6V: Cryo-EM structure of the small subunit of the mammalian mitochondrial ribosome -
今回、CSHLのH. Furukawa等は、イオンチャネル型グルタミン酸受容体(iGluRs)の一種であるNMDA(N-メチル-D-アスパラギン酸)型受容体を、バキュロウイルス-昆虫細胞の系で発現させ、その全体構造を初めて明らかにした(分解能4Å)。これまで、NMDA型受容体は、GluN1とGluN2の2セットからなるヘテロ四量体であり、アミノ末端ドメイン(ATD)、リガンド結合ドメイン(LBD)および膜貫通ドメイン(TMD)で構成されていることが知られていたが、ATDとLBDの細胞外部位の構造以外は不明であった。今回の構造解析によって、サブユニットとドメインの配置ならびにそれらの間の相互作用が明らかになり、非NMDA受容体に比べてATDとLBDがコンパクトに折り畳まれていることが、非NMDA受容体とNMDA受容体の差異をもたらしているとした。NMDA型受容体は、カルシウムイオンを受け入れることでシグナル伝達カスケードを駆動し、神経網の結合と可塑性を調節する機能を持っているが、その全体構造の情報は、今後、より詳細な機能解析や新たな薬剤ターゲット探索の基盤となる。
論文→ Karakas E, Furukawa H. Crystal structure of a heterotetrameric NMDA receptor ion channel. Science 2014 May 30;344(6187):992-7
結晶構造→ 4PE5: Crystal Structure of GluN1a/GluN2B NMDA Receptor Ion Channel -
バクテリアM. marinusのNavMsチャネルはヒトナトリウムチャネルの構造・機能モデル足り得る
電位依存性ナトリウムチャネルをターゲットとして、痛み、てんかん、不整脈など対する治療薬の研究開発が行われている。今回、ロンドン大学のB. A. Wallaceとハーバード大学のD. E. Clapham等の米英のチームは、Magnetococcus marinusのナトリウムチャネルNavMsが、ヒトのNav1.1チャネルと同様に、真核生物のナトリウムチャネルに対するアンタゴニストによって阻害されることを見出した。また、NavMsのポアと複数の阻害剤との複合体構造の分析と、変異体の電気生理学的解析から、アンタゴニストに共通する結合サイトを特定した。M. marinusとヒトは数百万年前に分岐し独自に進化してきたにもかかわらず、NavMsチャネルはヒトのナトリウムチャネルをターゲットにした薬剤のスクリーニングと設計に有用であると考えられる。
→ Bagneris C. et al. Prokaryotic NavMs channel as a structural and functional model for eukaryotic sodium channel antagonism. Proc Natl Acad Sci U S A. published ahead of print May 21, 2014
結晶構造→ 4CBC: Open-form NavMS Sodium Channel Pore (with C-terminal Domain) after thallium soak
結晶構造→ 4P9O: Complex of Voltage-gated ion channel in a the presence of channel blocking compound
結晶構造→ 4PA9: Structure of NavMS in complex with channel blocking compound
結晶構造→ 4P2Z: Structure of NavMS T207A/F214A
結晶構造→ 4P30: Structure of NavMS mutant in presence of PI1 compound
結晶構造→ 4OXS: Structure of NavMS in complex with channel blocking compound
結晶構造→ 4PA3: Structure of NavMS in complex with channel blocking compound
結晶構造→ 4PA4: Structure of NavMS in complex with channel blocking compound
結晶構造→ 4P9P: Structure of NavMS in complex with channel blocking compound
結晶構造→ 4PA6: Structure of NavMS pore and C-terminal domain crystallised in the presence of channel blocking compound
結晶構造→ 4PA7: Structure of NavMS pore and C-terminal domain crystallised in presence of channel blocking compound -
細胞内における分子クラウディング状況での一分子RNAのfolding/unfoldingを見た
細胞質内は多くの生体分子やイオンが込み合った分子クラウディング(molecular clouding:以下MC)状態にあり、生体分子はin vitro実験時とは異なる振る舞いをする。しかし、MCの機序は未だ良くわかっていない。今回、コロラド大学のDavid J. Nesbitta等は、RNAのGAAAテトラループ受容体とMC状態の代用となる高分子量(
) = 8,000 amu)のポリエチレングリコール(PEG)からなる系を用意し、時間相関単一光子計数(time correlated single photon counting)-共焦点1分子蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)顕微鏡法を使って、MCにおけるRNAの折り畳み(folding)について反応速度論解析と熱力学解析を行った。その結果、RNAとPEGとの共溶質(cosolute)においては、排除体積の割合が15%程度で 、自由エネルギーが2.5kcal/molまで減少し、折り畳みの平衡定数Keqが60倍以上に達することを見出し、このKeqのジャンプが、折り畳み速度が35倍に成る一方で変性(unfolding)速度の減少は緩やかである事に因るとした。また、折り畳みの温度依存性の解析からMCはエンタルピーではなくエントロピー依存であるとした。さらに、排除体積効果の単純な剛球モデルに因って、細胞質では折り畳みの自由エネルギーが5kcal/mol程度減少し、Keqが4,000倍以上になると推定した。今後、より細胞質に近い共溶質での単一分子実験と理論モデルの開発が必要である。
論文→ Dupuis NF, Holmstrom ED, Nesbitt DJ. Proc Natl Acad Sci U S A. Published online before print 2014 May 21 -
次世代シーケンサ技術を巧妙に利用して、RNAとタンパク質の結合をハイスループットで定量的に解析した
2011年に、MITのChris Burge等はIllumina社のGary Schroth等とともに、タンパク質とDNAの結合親和力をハイスループットで定量的かつ網羅的に測定することを目的として、イルミナ社のいわゆる次世代シーケンス技術を使ってフローセル上でのサンプル調整を工夫したHiTS-FLIP法を開発し、酵母のGcn4pタンパク質とDNAの事例でその性能を実証した。2014年には、HiTS-FLIP法の発想が、タンパク質・RNA結合の新たな解析2法を導いた:(1)スタンフォード大学のWilliam Greenleaf等は、フローセル上に形成するDNA二本鎖にストレプトアビジンと結合するビオチンを配置してRNAポリメラーゼを制御し、生成されるRNAとDNAの結合を維持する工夫を組み込んだmassively parallel array(RNA-MaP)法を開発し、バクテリアファージMS2の外被タンパク質とフローセル上に形成した107以上のRNAのヘアピンとの間の平衡結合定数と解離定数を測定し、結合エネルギーに対するRNAの一次構造と二次構造の寄与を分離し、RNA構造の進化過程を推定した。;(2)コーネル大学のJohn Lis等は、Gary Schroth等とともに、RNA-MaPに対して、フローセル上のDNA二本鎖のTerサイトにTusタンパク質を結合させる工夫を組み込んだhigh-throughput sequencing?RNA affinity profiling(HiTS-RAP)法を開発し、GFPとNELF-Eにそれぞれ結合するアプタマーについて、前者の結合は主としてRNAの二次構造に因り、後者の結合はRNAの一本鎖モチーフに因ることを明らかにし、また、これまでになく高い親和性のGPFアプタマー開発に成功した。2014年の2報は、蛍光物質でラベル可能な任意かつ複数の分子と、多様なRNAのライブラリーとの間の結合様式をハイスループットで定量的に解析できる道を開いた。
【注】HiTS-FLIP='high-throughput sequencing'-'fluorescent ligand interaction profiling'
NTURE METHODS|RESEARCH HIGHLIGHTS→ Nawy, T. Biochemistry: Where protein and RNAs meet Nat Meth 2014 June;11(6):605.
HiTS-FLIP法の論文→ Nutiu R. et al. Direct measurement of DNA affinity landscapes on a high-throughput sequencing instrument. Nat Biotechnol. 2011 Jun 26;29(7):659-64. Published online 26 June 2011
RNA-MaP法の論文→ Buenrostro JD. et al. Quantitative analysis of RNA-protein interactions on a massively parallel array reveals biophysical and evolutionary landscapes. Nat Biotechnol. Published online 13 April 2014
HiTS-RAP法の論文→ Tome JM. et al. Comprehensive analysis of RNA-protein interactions by high-throughput sequencing-RNA affinity profiling. Nat Methods. 2014 Jun;11(6):683-8. Published online 08 May 2014 -
非弾性トンネル分光顕微鏡によって分子構造と化学結合の実空間像を観察・解析した
カルフォルニア大学のWilson Ho等は、走査型トンネル顕微鏡(Scanning Tunneling Microscope: STM)を基盤として、COを吸着させた分子修飾深針を用いた非弾性トンネル分光(Inelastic Electron Tunneling Spectroscopy:IETS)プローブを開発して、一分子の骨格と化学結合を実空間イメージとして観察・解析できることを示した。具体的には、Ag(110)清浄表面ならびにCOまたはcobalt phthalocyanine (CoPc)を吸着させた表面を探った。 その結果、CoPc分子の骨格と、水素原子が分子内および隣り合った分子の複数の原子と結合していることを見出した。例えば、4個の水素原子が、4個の炭素原子と1個のイミン窒素と結合していた。Wilson Ho等は、本方法をitProbeと命名したが、itProbeによって、分子間相互作用にともなう分子の幾何構造変化を観測することも可能である。
論文→ Chiang CL, Xu C, Han Z, Ho W. Real-space imaging of molecular structure and chemical bonding by single-molecule inelastic tunneling probe. Science 2014 May 23;344(6186):885-8. -
ヒトのタンパク質の全体像(proteome)を把握する努力が続いている。5月29日のNature誌には、スウェーデンチームのHuman Protein Atlas(HPA)、米国・インドなど国際チームのHuman Protein Map(HPM)ならびにドイツチームのProteomicsDB(P_DB)の成果が報告されている。HPAは抗体染色法、HPMとP_DBは質量分析法に依っている。HPAの最新版には、46種類の細胞株ならびに健康な144人とがん患者216人由来の組織を対象にした150万近い高精度な染色パターン画像、ヒトタンパク質の80%および37,000の抗体が含まれている。また、RNA-seqのデータも加えられている。HPAから、例えば、およそ3,500の遺伝子が特定の組織におけるタンパク質をコードしていることが見えてきた。HPMでは、30種類の組織学的に正常なヒト試料(17種類の成体組織、7種類の胎児組織、6種類の初代培養造血細胞)について、タンパク質のプロファイルを測定し、ヒト遺伝子のほぼ84%にあたる17,294遺伝子がコードしているタンパク質が同定された。また、独自のデータ解析によって、新規なタンパク質コーディング領域多数、翻訳される偽遺伝子、ノンコーディングRNA、上流のオープンリーディングフレームを同定した。P_DBは、Swiss-Protで注釈がついている(annotated)19,629の遺伝子のうち18,097の遺伝子に対応するタンパク質、27,351個のアイソフォーム、リン酸化・ユビキチン化・アセチル化を含む945,997種類のペプチド、70,903,428種類のスペクトルのデータを、高速なアクセスが可能なインメモリデータベースから公開している。P_DBの解析から、例えば、10,000-12,000のタンパク質が組織共通に発現していること、タンパク質プロファイルは各組織に特有であること、多数のlong intergenic non-coding RNA(lincRNA)が翻訳されていることが見えて来た。また、Cancer Cell Line Encyclopediaと照合して、薬剤に対する感受性と耐性のマーカとなりうるタンパク質を特定した。さらに、mRNAの量からタンパク質の量を組織ごとに良い精度で推定可能である根拠を見出した。ゲノムマップにさらに空間と時間の分解能をもったプロテオームの4次元マップが加わることによって、生命現象の解明ひいては疾患の診断・治療法の開発が加速される。
スエーデンチーム技術報告→ Marx V. Proteomics: An atlas of expression Nature 2014 May 29;509(7502):645-9.
スウェーデンチーム論文→ Fagerberg L. et al. Analysis of the human tissue-specific expression by genome-wide integration of transcriptomics and antibody-based proteomics. Mol Cell Proteomics. 2014 Feb;13(2):397-406. Published online 2014 Feb;13(2):397-406
ドイツチーム論文→ Wilhelm, M. et al. Mass-spectrometry-based draft of the human proteome. Nature 2014 May 29;509(7502):582-7.
国際チーム論文→ Kim MS. et al. A draft map of the human proteome. Nature 2014 May 29;509(7502):575-581. -
89ヶ国からの3,000種のコメ(Oryza saliva)のゲノム配列が決定され、3,444,971個の遺伝子コード領域(CDS)が推定され、ジャポニカ種の一種である日本晴(Nipponbare)のゲノムとの比較によって1,890万個のSNPsが見出された。また、このSNPsに基づく系統解析によって、5種類の品種グループが確認された(indica, aus/boro, basmati/sadri, tropical japonica, temperate japonica)。このデータベースは、今後、バイオインフォマティクスや遺伝学を駆使して有用な形質に対応するアレルを同定し各地域におけるコメの増産につなげていくための情報基盤である。
【注】コメは世界人口の半数にとって主要な食物であり、2030年までに少なくとも25%増産する必要があるとされている。
【注】ゲノム解析は、Bill and Melinda Gates FoundationとChinese Ministry of Science and Technologyの資金を得て、フィリピンに所在する国際稲研究所と北京のBGIとChinese Academy of Agricultural Sciencesが行った。
【注】2012年にBioMed CentralとBGIが公表したGigaSciecneは、データ共有・活用の変革を目指すオープンアクセスのオンラインデータジャーナルであり、論文に対応するデータベースも提供する(GigaDB)。
論文→ The 3,000 rice genomes project. The 3,000 rice genomes project GigaScience 2014 May 28; 3:7
データベース→ The Rice 3000 Genomes Project Data -
2015年開所予定のFrancis Crick研究所は、物理学者を求めている
英国の6つの生物医学研究関連機関が連携して、2015年半ばにFrancis Crick研究所をロンドンで開所する。設立経費は6億5千万ポンドで、年間の運営費は1億ポンドを見込んでいる。研究所は医学と物理学などの異分野融合のもとに、疾患の発生機序の解明や予防・診断・治療法の開発を進める。ドイツでは2002年からMax Planck Instituteの2つのセンター(Molecular Cell Biology and GeneticsとPhysics of Complex Systems)の連携が始まっており、米国では2009年にNational Cancer Instituteが12のPhysical Sciences?Oncology Centersを設置し、異分野融合が試みられてきた。分子から細胞、組織、個体そして集団までナノからマクロまでスケールの広がりがある多層で複雑な生命現象を理解するためには、モデルの構築や大量かつ多様なデータからのパターンの発見が必要である。また、疾患の実態解明を予防・診断・治療法へ還元するためには、化合物、医用材料、機器などの開発も必要である。このような観点から、研究所は研究スタッフ1,250名のうち250名を、物理学、化学、数学、あるいは工学の専門家とした上で、各分野の専門家の間の壁を取り払って行くような運営をする。物理学者から生物学に転向して画期的な成果を上げたFrancis Crickの名を冠するに値する理念である。
Nature|NEWS→ Gibney E. Biomedical institute opens its doors to physicists. Nature 2014 May 27;509:544-545 -
HIV-1に感染した幼児においては比較的短期間で広域中和抗体が産生される
HIV-1に感染した成人は、感染後数年の間に複数のHIV-1サブタイプの感染を阻止する広域中和抗体(broadly neutralizing antibodies: bNAbs)を産生する場合がある。感染者におけるbNAbsの発生機構に習ってワクチンを開発する試みが盛んに行われている。今回、Fred Hutchinson Cancer Research CenterのJulie Overbaugh等とナイロビ大学Ruth Nduatiは、幼児においても成人の場合と同様なbNAbsが比較的短期間で産生されることを見出した。出産の時点あるいは母乳からHIV-1に感染した28人のうち20人が12-30ヶ月の間にHIV-1のサブタイプA/B/C/Dに属する8種類のウイルスに対する交差反応性中和抗体を産生した。Tier2の4種類のサブタイプ全てに対する中和抗体を産生した7人について、さらに28種類のウイルスに対する抗体を調べたところ、12-28.2ヶ月の間に複数のサブタイプのウイルスに対する中和抗体を産生していた。そのうち2人は、ウイルスの91-96%を中和する抗体を産生していた。HIV-1感染幼児を対象とする知見を蓄積することは、B細胞成熟からbNAbsの産生に至る経路の解明をさらに進展させ、ワクチン開発に寄与するであろう。
原著論文→ Goo L, Chohan V, Nduati R, Overbaugh J. Early development of broadly neutralizing antibodies in HIV-1-infected infants. Nat Med. Published online 25 May 2014
参考文献(広域中和抗体とHIV-1ワクチン開発)→ Gruell H, Klein F. Opening Fronts in HIV Vaccine Development: Tracking the development of broadly neutralizing antibodies. Nat Med. 2014 May 7;20(5):478-9. Published online 07 May 2014
参考文献(Tier)→ Seaman MS. Tiered categorization of a diverse panel of HIV-1 Env pseudoviruses for assessment of neutralizing antibodies.J Virol. 2010 Feb;84(3):1439-52. Published ahead of print 25 November 2009 -
放射線障害における骨髄毒性に対しては骨髄移植によって緩和する手段があるが、消化管毒性に対しては緩和手段が全くなかった。今回、スタンフォード大学のAmato J. Giaccia等は消化管毒性緩和の手がかりを発見した。マウスにおいて、酸素濃度感受性タンパク質であるプロリル水酸化酵素(prolyl hydroxylase:PHD)3種類をすべてノックアウトするか、小分子dimethyloxallyl glycine(DMOG)によって阻害すると、低酸素誘導因子(hypoxia inducible factor: HIF)の発現が上昇し、上皮の完全性(integrity)が増し、細胞死が減少し、血管形成が誘導された。腹部を致死量の放射線に暴露した場合、DMOGを注射しておくと、通常は10日までに死亡するマウスの70%以上が30日生存した。また、DMOGには、放射線暴露から24時間後に注射しても効力を発揮するといった特長があった。このDMOGの放射線防御および治癒機能をもたらすのは、HIFの中でもHIF2であった。一方で、DMOGはマウスに移植したヒトのがん細胞を放射線から保護することはなかった。マウスでの知見をヒトの臨床に展開するには解明しなければならない点がまだ残されているが、貧血症の治療薬として開発されているPHD阻害剤を、放射線による消化管毒性の防御・緩和に適用できる可能性が出てきた。
原著論文→ Taniguchi CM. et al. PHD Inhibition Mitigates and Protects Against Radiation-Induced Gastrointestinal Toxicity via HIF2 Sci Transl Med. 2014 May 14;6(236):236ra64 -
TLR4に依存しないインフラマソーム経路の活性化の鍵となるタンパク質が同定されカスパーゼ11活性化機構が見えてきた
グラム陰性菌の細胞壁外膜の構成成分であるリポ多糖(lipopolysaccharide:LPS)は、宿主細胞表面に存在するTLR4(Toll様受容体4)に結合して、宿主細胞のインフラマソーム経路を活性化し、炎症反応を引き起こすことが、長年知られていた。この標準的インフラマソーム経路に対して、2013年に、細胞質においてTLR4を介さずにカスパーゼ11の活性化と細胞死を引き起こす非標準的インフラマソーム経路が存在することが明らかにされた。今回、 バーゼル大学のPetr Broz等がマウスにおいて明らかにしたところによると細胞質では、グラム陰性菌を取り込んだ小胞体(pathogen-containing vacuoles: PCV)に、インターフェロンによって誘導されるGTP分解酵素のうち65-67kDaのグアニル酸結合タンパク質(GBP)群がリクルートされて、小胞体の分解が起こり、小胞体から放出された細菌のリポ多糖が宿主細胞に検知され、カスパーゼ11が活性化され、細胞死に至る。それに加えて、分解された小胞体のβガラクトシドがガレクチン-8によってdanger signalとして認識され、ポリユビキチンとp62を介してPCVごとオートファゴソームに取り込まれて、細胞質から除去される経路も存在し、この経路によってLPSが細胞質から除去されてカスパーゼ11活性化が低減する。今後、さらに詳細な分子機構を明らかにする必要があるが、非標準的インフラマソーム経路は細菌感染が引き起す敗血症治療のターゲットになりうる。
原著論文→ Meunier E.et al. Caspase-11 activation requires lysis of pathogen-containing vacuoles by IFN-induced GTPases. Nature 2014 May 15;509(7500):366-370. Published online 16 April 2014 -
ヒト常在菌の研究に2008年以後およそ50億ドルが投じられてきたが、臨床への応用例は少数にとどまっていた。また、ヨーグルトや乳酸菌飲料で身近かになったプロバイオティクスは、安全ではあるが疾患や症状を改善するだけの力はないと見られてきた。一方で、メタゲノム解析やメタボローム解析によって、腸内細菌と疾患との関連について分子レベルのデータが蓄積されてきた。例えば、マウスにおいて、腸内共生細菌が産生する酪酸が制御性T細胞の分化を誘導して炎症を抑制する機序が明らかにされ、アルギニンとビフィズス菌の投与によってポリアミン産生量が増加し炎症抑制・長寿化・記憶改善が見られ、抗生物質投与によって腸内細菌叢が「悪化」する機構なども明らかになりつつある。こうした背景のもとに2014年に入って、臨床応用を目指したマイクロバイオーム研究への投資が加速している。5月1日には、パリを本拠とするEnterome社が、腸内細菌叢の組成を使って炎症と肝臓疾患の診断法開発を目的とするプロジェクトに1千万ユーロの資金を調達したと発表した。続く5月2日には、the Microbiome Companyを標榜する米国のSecond Genome社が、Pfizer社と共同で、かって2型糖尿病を防御する変異を特定したコホートをもとに肥満を含む代謝異常の患者と対照群からなる900人のマイクロバイオーム解析に着手することを発表した。今後、腸内細菌叢由来の分子や腸内細菌叢の恒常性の分子機構を臨床応用するためのマイクロバイオーム研究プロジェクトが続くものと見られている。
【注】Microbiome(マイクロバイオーム)は「ある環境に存在する微生物のゲノム総体」を意味し、microbiota(微生物叢)は「ある環境に存在する微生物総体」を意味する。
出典→ Reardon S. NATURE|NEWS: Microbiome therapy gains market traction. Nature 2014 May 13;509(7500):269-70. -
2014年、CRISPR-Cas9によるゲノム編集ツールは次世代へと展開する
主としてバクテリアやアーケアの獲得免疫の観点からCRISPR/Casに関する報告と総説をそれぞれ2007年と2010年にScience誌に発表してきたRodolphe Barrangouが、2014年5月16日のScience誌において、CRISPR-Cas9システムの分子機序と構造解明の進捗とゲノム編集ツールとしての将来を展望している。2014年に入ってから、Sternberg等によってCas9がターゲットのDNAを3次元的に点検し、PAM(protospacer adjacent motif: NGGの3塩基)を目印にして切断部位を特定する機序が明らかにされ、西増等とJinek等によってRNA誘導型のCRISPR関連エンドヌクレアーゼCas9がヌクレアーゼ活性を担うローブと、誘導するRNAに結合してターゲットを認識するローブを有する形をしていることが明らかになった。こうした情報をもとにして、Cas9、ガイドRNA、PAMを選択あるいは設計することによって、より効率的でコンパクトかつ精密な次世代ゲノム編集技術が展けていく。2013年はCRISPR熱狂の年であった。2014年はCRISPR沸騰の年になるであろう。
展望(PERSPECTIVE)→ Barrangou R. RNA EVENT: Cas9 targeting and the CRISPR revolution. Science 2014 May 16;344(6185):707-8 -
ノンコーディングRNAのRsmZは、タンパク質を捕捉・保持・放出する「スポンジ」だった
ノンコーディングRNA(以下、sRNA)による転写後調節が注目を集めている。バクテリアのほぼ75%に共通に存在するCsr/Rsm(carbon storage regulator/regulator of secondary metabolism)システムにおいて機能するsRNAは、翻訳開始を抑制するタンパク質をリボソーム結合サイト(RBS)から隔離することで、翻訳を促す。今回、Frederic H.-T. Allain等はPseudomonas fluorescensを材料として、NMR法と電子スピン共鳴法(Electron Paramagnetic Resonance: EPR)を併用して、sRNAのRsmZと翻訳開始を抑制するタンパク質RsmEの複合体であるリボ核タンパク質(RNP)の構造を決定し、RsmZがRsmEをRBSから隔離して翻訳を促す分子機構を明らかにした。RsmZは他のsRNAと全く異なる二次構造をとっており、4つのステムループとρ依存性ターミネーター(内因性ターミネーター)が連なり、ループとそれ以外の4カ所、計8カ所にタンパク質結合GGAモチーフが存在している。今回の解析によって、RsmZの各所に、RsmE二量体が5個まで順次、特異的かつ協調的に捕捉され、RsmZ切断部位がRsmEによって覆われていくことによりRsmEがRNaseから保護されてRNPとして安定になる(RsmEが保持し続ける)。また、RNPには2種類の形(conformation)が共存している。一方で、RsmZ転写の増加、sRNAあるいはmRNAによってRsmEがRsmZから解離すると、RsmZはRNase Eによって切断され、RsmEの解離が進む。本論文の著者等は、タンパク質を捕捉し、保持し、放出する機能を持つRsmZをタンパク質のスポンジに(protein sponge)に準えた。
原著論文→ Duss Oet al. Structural basis of the non-coding RNA RsmZ acting as a protein sponge. Nature Published online 14 May 2014
立体構造→ 2mf0: Structural basis of the non-coding RNA RsmZ acting as protein sponge: Conformer R of RsmZ(1-72)/RsmE(dimer) 1to3 complex
立体構造→ 2mf1: Structural basis of the non-coding RNA RsmZ acting as protein sponge: Conformer R of RsmZ(1-72)/RsmE(dimer) 1to3 complex -
C型肝炎ウイルスのエンベロープ糖タンパク質E2のコア特有の構造
C型肝炎ウイルス(HCV)の感染者は世界中で1億6千万人に達し、国内感染者はおよそ200万人と言われている。近年、インターフェロンとリバビリンの併用やペグインターフェロン(PEG-IFN)の適用によって、治療法が改善されてきているが、患者の負担やウイルスの完全排除に未だ課題を残しており(日本人感染者の70%はHCVの中でも難治性の遺伝型1b型に感染している)、治療法のさらなる改良やワクチンの開発が待たれる。今回、Arash GrakouiやJoseph Marcotrigianoの米国の研究チームは、HCVの宿主細胞への融合・侵入を担うと言われているE2エンベロープタンパク質のコア細胞外ドメインの構造を、抗原結合性フラグメント(Fab)との複合体構造から2.4Åの分解能で決定した。E2のコアドメインは4本のβストランドからなるβシート2枚(以下、N末端寄りをシートA、C末端寄りをシートBとする)を主構造とする球状をしたモノマーであった。また、溶液中の完全長E2細胞外ドメインも球状であった。また、低pHの溶液中でも大きなコンフォメーションの変化やオリゴマーの再配置は起こらなかった。Daliサーバによって、シートAと似たIgG様フォールドをもつタンパク質を同定することができたが、いずれもクラスⅡ膜融合タンパク質ではなかった。また、DaliサーバではシートBに類似のフォールドは見出せなかった。これらの結果から、HCVのE2は膜融合に直接関与していないと考えられる。本論文の査読中にScience誌に発表されたE2の立体構造(PDB 4MWF)もクラスⅡ膜融合タンパク質とは異なるフォールディングをしており、HCVの宿主細胞への融合と侵入の分子機構の解明には、エンベロープタンパク質E1の構造ならびにE1E2の複合体の構造決定が必要である。
原著論文→ Khan AG.et al. Structure of the core ectodomain of the hepatitis C virus envelope glycoprotein 2.Nature 2014 May 15 ;509(7500):381?384. Published online 19 February 2014
立体構造→ PDB 4NX3: Structure of the core ectodomain of the hepatitis C virus envelope glycoprotein 2 -
サイトカイン受容体とヤーヌスキナーゼ(JAK)の結び付きを解きほぐして見た
ローマ神話の二面神ヤヌスの名が冠せられたキナーゼJanus kinase(JAK)ファミリーには、JAK1、JAK2、JAK3そしてTYK2(Tyrosine kinase 2)の4種類があり、それぞれがインターロイキン、エリスロポエチン、インターフェロンなど30種類以上のサイトカインに対する受容体の細胞質内テール部分に特異的に結合し、シグナル伝達兼転写活性化因子STATをリクルート・リン酸化・活性化して、免疫応答、造血、細胞増殖等に関わるシグナル伝達系を駆動する。これまで、TYK2においてはFERMドメインとSH2ドメインが受容体と相互作用し、受容体においては膜近傍にあるプロリンリッチなbox1モチーフとそれよりC末端寄りの疎水性のbox2モチーフがTYK2と相互作用するとされてきたが、構造をもとにした結合の分子機序は不明であった。今回、Genentech社のPatrick J. Lupardus等は、ヒトTYK2の中でインターフェロンα(IFN-α)受容体INFAR1と結合する領域と、受容体INFAR1の細胞質内テールのうちJAKに結合する領域との融合タンパク質の結晶構造を2Åの分解能で初めて決定し、結合の分子機序を推定した。IFNAR1のTYK2結合領域(18残基)をN末端から3つの領域1-3に仮に分けて見ていくと、領域1に存在するジロイシンモチーフがTYK2のFERMの疎水性ポケットを占め、領域2のグルタミン酸残基がSH2のポケットをホスホチロシンに代わって占め、領域3に存在するbox2モチーフがSH2のグルーブに入り込んでいること、加えて、18残基領域の外側にbox1の候補となりうる保存領域が存在することが明らかになった。
NEWS AND VIEWS→ McNally R, Eck MJ. JAK-cytokine receptor recognition, unboxed. Nat Struct Mol Biol. 2014 May 6;21(5):431-3
原著論文→ Wallweber HJ, Tam C, Franke Y, Starovasnik MA, Lupardus PJ. Structural basis of recognition of interferon-α receptor by tyrosine kinase 2. Nat Struct Mol Biol. 2014 May;21(5):443-8. Published online 06 April 2014
立体構造→ PDB 4PO6: Crystal structure of the human TYK2 FERM and SH2 domains with an IFNAR1 intracellular peptide -
Protein Data Bankは1971年に米国で創設され、2003年からは米国、欧州、日本の3極共同で運営されている。ミオグロビンの登録からから始まったデータベースは、1976年の時点では13件の規模であったが、タンパク質の他に、少数ではあるが徐々にDNAやRNAの構造も加り、2014年5月14日(水曜日)のリリースで219件追加し、10万件を超すに至った(毎週水曜日がデータ更新日)。解析方法の内訳はX線88,701件、NMR10,450件、電顕753件、ハイブリッド65件、その他178件となっている。
NATURE|EDITORIAL→ Hard data. Nature 2014 May 15; 509(7500) :260 -
上皮癌に特有な遺伝子変異を認識するT細胞による免疫療法が効果を上げた
メラノーマの患者には腫瘍に特異的な遺伝子変異を認識するT細胞が存在し養子免疫療法(adoptive cell therapy: ACT)に利用されてきたが、上皮癌にもそのようなT細胞が存在するか定かではなかった。今回、米国立癌研究所のSteven A. Rosenberg等は、化学療法では治癒しなかった転移性胆管癌患者(43才、女性)の協力を得て、全エクソーム解析によってERBB2IPタンパク質に起きている腫瘍特異的な遺伝子変異を特定し、その変異を認識するCD4+ T helper 1(TH1)細胞の存在を見出し、治験を行った。1回目の治験では、TH1細胞を25%含む腫瘍浸潤リンパ球(tumor-infiltrating lymphocytes: TIL)を424億個投与したところ、2ヶ月後から腫瘍が縮小し始め7ヶ月目に縮小が最大に達したが、その後は再び増殖し始めた。1回目の投与から18ヶ月後の2回目の治験では、TH1細胞を95%以上含むTILを1260億個投与したところ、1ヶ月後に腫瘍が縮小し始め6ヶ月にわたり縮小し続け、1回目の治験の最大効果のところまで近づいている。本研究には、より長期間にわたる観察と治験対象の拡大が必要であるが、少なくとも、上皮癌に特異的な遺伝子変異を標的にする養子免疫療法、ひいては個別化医療の可能性があることは示された。
原著論文→ Tran E. et al. Cancer immunotherapy based on mutation-specific CD4+ T cells in a patient with epithelial cancer.Science 2014 May 9;344(6184):641-5. -
タンパク質間相互作用ネットワークを支配する(dominate)タンパク質群の特定と生物学的意味
タンパク質間相互作用ネットワークの研究は、ネットワークを制御することを目的として、ネットワーク全体を統御するタンパク質の特定に向かっている。NCBIのStefan Wuchty(現マイアミ大学)は、High-quality INTeractomes (HINT)データベースから、ヒトならびに酵母のタンパク質相互作用ネットワーク(以下、ネットワーク)を制御するタンパク質の最小支配集合(minimum dominating sets: MDSets)を数理的に抽出した。MDSetsは、ネットワークの他の全てのタンパク質(non-MDSetタンパク質(以下、nMP))が直接繋がっているタンパク質の最小集合である(nMPは少なくとも一つのMDsetタンパク質(以下、MP)と直接繋がっている)。各種バイオデータベースの参照と解析の結果、nMPに比べてMPはより多くのタンパク質複合体に関与していた。また、MPには、必須遺伝子・癌関連遺伝子・ウイルス感染の標的遺伝子由来ならびに転写因子とキナーゼが多く、MPは、ネットワークのボトルネック、調節、リン酸化ならびに遺伝子間相互作用に深く関わっていた。生物学的意味に加えて、タンパク質を除去していくシミュレーションの結果、MPは、相対的に多くのタンパク質と相互作用することで定義されるハブタンパク質よりもネットワークのレジリエンスに大きな影響を与えることが示された。
【注】参照データベース:CancerGenes database、Molecular INTeraction (MINT)、Database of Essential Genes (DEG) 、CORUM (Comprehensive Resource of Mammalian protein complexes)、CYC2008、Biological General Repository for Interaction Datasets (BioGRID)、TRANScription FACtor (TRANSFAC)、NetworKIN、Transcriptional Regulators And Consensus Tracking (YEASTRACT)
原著論文→ Wuchty S. Controllability in protein interaction networks.Proc Natl Acad Sci USA 2014 May 13;111(19):7156-7160. Online publication 2014 April 28 -
2014年3月4日にJ. Craig Venter等によって設立されたHuman Longevity, Inc.(以下、HLI)は、5月14日にCorTechs Labsと業務提携を結んだことを発表した。CorTechs Labは、臨床の現場で萎縮した脳のMRIイメージを定量的に解析することを可能にするシステムを有している。このシステムは米国FDAの501(k)をクリアしており、世界中で150の施設に導入されている。この業務提携によって、HLIは、ゲノム、マイクロバイオーム、プロテオミックスとデータ解析や細胞治療のデータに脳画像データを加えて、遺伝型と表現型を統合したデータベースに近づいていくことになる。
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分子シャペロンと基質タンパク質の複合体構造と動態が見えてきた
バクテリアのトリガーファクター(trigger factor: TF)はリボソームに結合し、リボソームのトンネルから出てくる新生ペプチド鎖に結合し、その凝集とミスフォールディングを防止し、正常なタンパク質への畳み込みに誘導する重要な分子シャペロンである。しかし、基質との結合が一過性な巨大な複合体の構造解析は困難であり、TFが示す機能の分子機構は不明であった。今回、ラトガーズ大学のKalodimosグループは、Escherichia coliから精製したTFと基質タンパク質の一例であるアルカリフォスファターゼ(alkaline phosphatase:PhoA)との複合体の構造と動態を、安定同位体標識を取り込ませた緩和分散NMR法によって解析した。その結果、単独のTFは溶液中では2量体を形成していること、折り畳まれていない状態の基質にはTFが3個結合していること、TFには90Å以上に広がっている疎水性の基質結合部位が中央部に3カ所とリボソームと結合する側と遠い側に1カ所存在する一方でPhoAにはTFと結合する疎水性の領域が7カ所あること、相互の結合部位・領域の親和性は比較的低くTFが結合するPhoA領域の箇所と範囲が増えるほど複合体構造が安定になること、しかし、最も低エネルギー状態であっても20ms程度と極めて短い時間で状態が遷移すること、が明らかになった。TFは、複数のフレキシブルな結合部位を備えていることによって、多様なタンパク質の凝集とミスフォールディングを防止するholdaseとunfoldaseとして機能できると考えられる。今後、2量体の状態からリボソームに結合した状態への遷移や、TFが基質を保持した後に他のシャペロンが作用していく分子機構の解明が待たれる。
原著論文→ Saio T, Guan X, Rossi P, Economou A, Kalodimos CG. Structural basis for protein antiaggregation activity of the trigger factor chaperone. Science 2014 May 9;344(6184):1250494
PERSPECTIVE→ Gamerdinger M, Deuerling E. Biochemistry: Trigger factor flexibility. Science 2014 May 9;344(6184):590-1 -
リキッド・バイオプシー(liquid biopsy)の進展と課題
Cancer Genome Projectなどによって、癌の種類、癌の進行度、患者ごと、治療方法等々さまざまな要因の組み合わせごとに特有な変異が存在することが明らかになってきている。そこで、個人に起きているゲノム変異を非侵襲で網羅的かつ効率的に検出する検査技術の研究開発が進んでいる。その一つであるリキッド・バイオプシーは、従来の細胞や組織を採取するバイオプシーに対して、血液を採取する非侵襲の検査技術であり、2013年のKlaus PantelとCatherine Alix-Panabieresの総説Real-time Liquid Biopsy in Cancer Patients: Fact or Fiction?以来、用語として定着したようである。今回、Klaus PantelはMichael R Speicherと共著で、血中循環腫瘍細胞(circulating tumor cells: CTCs)、血中循環腫瘍DNA(circulating tumor DNA:ctDNA)ならびに腫瘍が分泌するexosomeを対象とする解析法をとりあげて、リキッド・バイオプシーの最新の成果と課題を概観した。
CTC解析法については、ライブラリーのスクリーニングと複数のライブラリーを組み合わせる工夫census-based sequencingによって、腫瘍発生初期と転移性腫瘍における幹(trunk)変異の検出などに成功した例が取り上げられた。ctDNA解析法については、さまざまな進行癌の患者の75%以上でctDNAを検出し、KRAS遺伝子の変異を高精度・高感度で検出し、さらに、EGFR阻害薬の投与によってMAPK経路に変異が起きることを検出した例が取り上げられた。exosomeの解析法については、ハイスループットな解析を実現した新技術nano-plasmonic exosome 解析法(nPLEX)が取り上げられた。今後、CTCs/ctDNA/exosomeが腫瘍細胞・組織から放出・分泌される分子機構をさらに詳らかにし、CTCの数が際立って少ない患者の診断やCTCごとの解析を実現し、多数のセンターが参画して臨床応用の観点から技術を評価し標準プロトコルを設定することで、リキッド・バイオプシーの臨床応用が可能になる。
NEWS AND VIEWS→ Speicher MR & Pantel K.et al. Tumor signatures in the blood - The goal of characterizing solid-tumor genomes with nothing more than a blood sample is now within reach. Nature Biotechnology 2014 May 8;32(5):441-3. -
Nature、Beyond Divisionsをテーマとして合成生物学(Synthetic biology)を特集。これまでに Nature, Nature Methods ならびに Nature Reviews Microbiologyに掲載された関連記事や論文のアーカイブにもなっている。
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真核生物のDNA複製過程において、Ctf4が三量体を形成してCMGへリカーゼ複合体とDNAポリメラーゼを繋ぐ
多数のタンパク質が協調することによってDNAの複製が滞り無く進むが、真核生物において、DNA二重らせんを解くヘリカーゼとDNAを合成するポリメラーゼが連携する分子機構については不明な点が多い。今回、英国のAlessandro CostaとLuca Pellegrini等の研究チームは、X線解析、単粒子解析法、ゲル濾過クロマトグラフィーとレーザ回折・散乱法などによる構造解析をもとに新たなモデルを提唱した。始めに、酵母のCtf4が、それ自身のC末端ドメインで形作られる6枚羽根βプロペラドメインが寄り合うことで3回対称の円盤型三量体として存在し、プロトマーごとに6本のαヘリックスからなるヘリックス束(helical bundle)が放射状に突き出していることを明らかにした。次に、CMGヘリカーゼ複合体(GINS_Helicase_Complex" target="_blank">Cdc45–Mcm–GINS Helicase Complex)のタンパク質GINSのサブユニットであるSld5にも、ポリメラーゼPolαの触媒サブユニットのN末端部分にも、Ctf4結合モチーフが共通に存在し、それぞれがCtf4のヘリックス束に結合することを明らかにした。これらの実験結果に基づいて、CMGヘリカーゼ1分子とPolα2分子がCtf4の3つのプロトマーに結合することで、CMGヘリカーゼとDNAポリメラーゼが協調してラギング鎖が伸張するというモデルを提唱した。このモデルは、2012年に発表された大腸菌のラギング鎖伸張のモデルと符合している(参考文献1〜2)。
原著論文→ Simon ACet al. A Ctf4 trimer couples the CMG helicase to DNA polymerase α in the eukaryotic replisome. Nature Published online 04 May 2014
参考文献1→ Georgescu RE, Kurth I, O'Donnell ME. Single-molecule studies reveal the function of a third polymerase in the replisome. Nat Struct Mol Biol. 2011 Dec 11;19(1):113-6.
参考文献2→ Lia G, Michel B, Allemand JF. Polymerase exchange during Okazaki fragment synthesis observed in living cells. Science 2012 Jan 20;335(6066):328-31. -
PINK1の変異が遺伝性パーキンソン病を引き起こす分子機構の解明進む
パーキンソン病の発症機構についてさまざまな仮説が提唱されてきたが、近年、「膜電位を失った異常なミトコンドリア(以下、a-Mt)の隔離や分解ができないために,タンパク質リン酸化酵素PINK1 や ユビキチンリガーゼ(E3)Parkin に由来する若年性劣性パーキンソン病が発症する」(東京都医学総合研究所蛋白質代謝研究室ホームページより引用・編集(2014/05/12))ことを示唆する研究結果が蓄積されてきた。最近(2014年3~4月)、この発症機構の詳細な分子機構に関する報告が相次いだ。Science3月20日には、PINK1の変異によってミトコンドリアの膜電位が失われるという報告が掲載された(文献1)。続いて、3月25日、4月21日そして4月30日と、「PINK1→ユビキチン(ubiquitin)のリン酸化→Parkin活性化→a-Mtのユビキチン化→マイトファジーによるa-Mtの隔離・分解」という経路が、東京都医学総合研究所田中啓二所長と蛋白質代謝研究室松田憲之主席研究員等の国内とカナダの研究機関の研究グループなど(文献2~4)によって報告された。これら最新の研究成果は「PINK1の変異によってa-Mtが増加し、かつ、PINK1の変異あるいはParkinの変異によってa-Mtが蓄積されていく」過程をターゲットにしたパーキンソン病の診断薬・治療薬の可能性を示唆している。
文献1→ Morais VA et al. PINK1 Loss-of-Function Mutations Affect Mitochondrial Complex I Activity via NdufA10 Ubiquinone Uncoupling. Science 2014 Apr 11;344(6180):203-7. Published Online March 20 2014
文献2→ Kazlauskaite A et al. Parkin is activated by PINK1-dependent phosphorylation of ubiquitin at Ser65. Biochem J. 2014 May 15;460(1):127-39. Published as BJ Immediate Publication 25 March 2014
文献3→ Kane LA et al. PINK1 phosphorylates ubiquitin to activate Parkin E3 ubiquitin ligase activity. J Cell Biol. 2014 Apr 28;205(2):143-53. Online publication April 21, 2014
文献4→ Koyano F et al. Ubiquitin is phosphorylated by PINK1 to activate parkin. Nature Published online 30 April 2014 -
A-TとG-Cに加えて非天然塩基対のin vivo複製に成功
これまでに、非天然塩基対(unnatural base pairs: UBPs)の作出とin vitroでの複製が実現されていた。今回、スクリプス研究所のFloyd E. Romesberg等は、疎水性の核酸塩基を含むヌクレオチドからなるUBP、d5SICS-dNaM、のin vivo複製に成功した。成功の鍵は、珪藻の一種であるPhaeodactylum tricornutum由来のヌクレオチド三リン酸トランスポーター(nucleotide triphosphate transporter: NTT)、PtNTT、 を見つけ出したことにある。PtNTTを発現させた大腸菌はd5SICSとdNaMを培地から取込み、d5SICSとdNaMの対からなるUBPを含むプラスミドを保持したまま増殖する。UBPの存在は大腸菌の増殖にほとんど影響すること無く、UBPが大腸菌のDNA修復機構によって分解されることも無かった。今後、他のUBPも同様にin vivoで複製可能になると思われる。また、複製に続いてUBPの転写・翻訳に進むことができれば、非天然のアミノ酸・タンパク質を設計・生産することが可能になる。非天然塩基対は、なんらかのトランスポーターによって意図的に送り込まない限り生物自ら生成することが無いことから、安全にコントロールできると想定できる。
【注】本研究の成果は特許申請されており、また、論文オンライン刊行時と同日に公にされたSynthorx Inc.社が専有権を有している。
NATURE|NEWS & VIEWS→ Thyer R, Ellefson J. Synthetic biology: New letters for life's alphabet. Nature Published online 07 May 2014
原著論文→ Malyshev DA. et al. A semi-synthetic organism with an expanded genetic alphabet. Nature Published online 07 May 2014 -
技術と数理とゲームの三位一体で物体の動きを識別する網膜の神経回路網モデルを構築
1964年にウサギの網膜が動く対象の方向と速度を感知することが報告され、近年、網膜のstarburstアマクリン細胞(SAC)が動きの方向選択性(direction selectivity: SD)に関与することが分かってきた。今回、MITのH. Sebastian Seung(現 プリンストン大学)等はマウス網膜を解析対象として、双極細胞(bipolar cell: BC)の型を分類し、SACの細胞体に対して、近傍に結合するBCと離れた位置に結合するBCが存在し、前者には後者に比べて信号が遅れて伝わることが、網膜に方向選択性をもたらすというモデルを提唱した。このモデルは、連続ブロック表面走査電子顕微鏡(serial block-face scanning electron microscopy: SBEM)によってデジタル化したマウス網膜の3次元像、機械学習による個々の神経細胞の判別、研究室のスタッフとオンラインゲームEyeWireに参加したボランディア(いわゆるCitizen science)による神経細胞のつながり方の同定、および数理モデルに基づいている。
【注】EyeWire参加者の背景がExtended Data Figure3にまとめられている。
NATURE|NEWS→ Costandi M. Nature Clarified online 06 May 2014
原著論文→ Kim JSet al. Space?time wiring specificity supports direction selectivity in the retina. Nature Published online 04 May 2014 -
光遺伝学は、神経と行動の包括的解析を可能にし、神経細胞のON/OFF双方の制御が可能になり、発展の一途を辿っている
2006年にスタンフォード大学のKarl Deisseroth等が命名したOptogenetics(光遺伝学)の手法は、2010年のMethod of the Yearに選ばれ、急速に応用分野が広がり、技術開発も続いている。2014年4月25日号のScience誌には、光遺伝学を応用してショウジョウバエの神経回路の興奮パターンと行動パターンの相関を明らかにした論文1報(原著論文1)と、神経細胞を興奮させる(ON)光駆動型の陽イオンチャネルである藻類由来のチャネルロドプシン(ChR)を変異させて神経細胞をこれまでになく効率的に抑制する(OFF)光駆動型の陰イオンチャネルを作出した論文2報(原著論文2-1、2-2)が掲載された。
前者は、ショウジョウバエの幼虫の1,049種のGAL4系統のべ37,780個体を対象とし、神経細胞に導入したチャネルロドプシン-2(Chr2)と光刺激による神経回路網の活性化のパターンと、幼虫の行動を撮影したビデオから教師なし学習法で仕分けした行動パターンの相関関係を解析した。この解析はショウジョウバエの全神経細胞およそ10,000個の解析に相当するが、神経細胞と行動のパターンの関係は多対多で確率的であった。
後者2報はそれぞれ、2012年に解かれたChR1とChR2のキメラ構造をもとに、チャネルの内側にならんでいた負電荷を帯びたアミノ酸を正電荷を帯びたアミノ酸に変異させたSwiChRの作出、ならびに、ChRのゲートに位置するアミノ酸E90を正電荷を帯びたアルギニンに置換してCl-のチャネルとしたChloCsの作出である。こうして光によって神経細胞を文字通りオン・オフすることが可能になった。
Science展望: 神経科学→ O'Leary T, Marder E. Mapping neural activation onto behavior in an entire animal. Science 2014 Apr 25;344(6182):372-3.
Science展望: 生物物理→ Hayashi S. Silencing Neurons with Light. Science 2014 Apr 25;344(6182):369-70
原著論文1→ Vogelstein JT et al. Discovery of brainwide neural-behavioral maps via multiscale unsupervised structure learning. Science 2014 Apr 25;344(6182):386-92. Published Online March 27 2014
原著論文2-2→ Berndt A, Lee SY, Ramakrishnan C, Deisseroth K. Structure-guided transformation of channelrhodopsin into a light-activated chloride channel. Science 2014 Apr 25;344(6182):420-4
原著論文2-1→ Wietek Jet al. Conversion of channelrhodopsin into a light-gated chloride channel. Science 2014 Apr 25;344(6182):409-12. Published Online March 27 2014 -
タンパク質合成速度が細胞の恒常性維持に重要な役割を果たしている
Medical Center Research Institute at UT Southwestern (CRI) 所長のSean J. Morrison等の研究チームは、ハーバード大学のAdrian Salic等が2012年に発表したタンパク質合成をin vivoで可視化する技術とフローサイトメトリーを併用して、造血幹細胞(haematopoietic stem cells:HSC)と分化能が限定された数種の造血前駆細胞のタンパク質合成速度(以下、PSS)を測定・比較した。PSSは、細胞によって異なったが、中でもHSCのPSSは相対的に著しく低かった。リボソームのサブユニットが変異してタンパク質合成能が低下しているマウスRpl24Bst/+のHSCのPSSはさらに低下し、HSCの機能も低下していた。一方で、腫瘍抑制因子のPtenを欠損させるとHSCのPSSが上昇したが、HSCの機能は低下した。また、Rpl24Bst/+マウスではPten欠損の影響が相殺された(PSSが低下し、HSCとしての機能が向上し、白血病の発生が遅延あるいは抑止された)。本研究は、タンパク質合成速度が細胞ごとに厳密に制御されていることを示唆しており、これを契機として、生体を構成する多様な細胞や各種疾患の細胞におけるタンパク質合成速度の比較研究が広がっていくものと思われる。
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HIV-1エンベロープのV1/V2ループを標的とする中和抗体の生成経路と特徴を明らかにする
HIV感染者における中和抗体(neutralizing antibody: NAb)の生成過程は、エイズワクチンの設計開発のひな形足り得るが、その分子機構はまだ詳らかにされていない。今回、米国立アレルギー・感染症研究所、南アフリカ国立伝染病研究所など米国、南アフリカならびにオランダの19機関の研究グループは、南アフリカのドナーCAP256の協力を得て、感染後6週から225週まで定期的に血液を採取し、CAP256-VRC26と命名したNAbとHIVの動態を追跡調査した。分離した12種類のCAP256-VRC26.01?12のいずれにおいても、チロシンが硫酸化された陰イオン性のCDR(相補性決定領域)H3ループが突き出していた。これらのNAbの原型はHIV-1初回感染後30?38週の間に発生し35残基のCDR H3を有し、初回感染後15週後に重複感染したウイルスを中和した。NAbの中和する範囲と効力は59週まで、軽度の親和性成熟(affinity maturation)のもとで拡大した。
【注1】HIVエンベロープの糖タンパク質とCAP256-VRC26.09の再構成(EM Data Bank): EMD-5856
【注2】Fab CAP256-VRC26の結晶構造(PDB): 4ODH, 4OCR, 4OD1, 4ORG, 4OCW, 4OD3, 4OCS
原著論文→ Doria-Rose NAet al. Developmental pathway for potent V1V2-directed HIV-neutralizing antibodies. Nature 2014 May 1;509(7498):55-62. Published online 02 March 2014 -
X線小角散乱とNMRのデータを統合し、O157の抗毒素PaaA2の構造アンサンブルを導き出した
原核生物のⅡ型毒素-抗毒素(toxin-antitoxin: TA)モジュールの抗毒素は天然変性領域を有し多様な配座をとりうる柔らかなタンパク質である。今回、ブラッセルのRemy LorisとNico A.J. van Nuland等の構造生物学のグループは、Escherichia coli O157のpaaR2-paaA2-parE2がコードする抗毒素PaaA2を対象として、化学シフトと核オーバーハウザー効果(NOE)の実験データから大規模な構造アンサンブル候補を生成し、これをX線小角散乱(SAXS)データに基づく最適化(EOM)によって絞り込み、ジャックナイフ法で精密化することによって求めた構造アンサンブルの妥当性を、残余双極子相互作用(RDC)のデータで検証した。PaaA2の構造アンサンブルは非常にコンパクトであり、PaaA2は毒素と結合していない状態では2カ所のαへリックスを柔軟なリンカーがつなぐ構造をとっていた。構造アンサンブルから特定の構造が選択されたときにこの2カ所のαヘリックスが毒素ParE2を認識して結合すると思われる。
原著論文→ Sterckx YG.et al. Small-Angle X-Ray Scattering- and Nuclear Magnetic Resonance-Derived Conformational Ensemble of the Highly Flexible Antitoxin PaaA2. Structure 2014 April 23. pii: S0969-2126(14)00084-7. Available online 24 April 2014
PDB 3ZBE→ E. coli O157 ParE2-associated antitoxin 2 (PaaA2)
Protein Ensemble Database 5AAA→ Ensemble of the ParE2-associated antitoxin (PaaA2) - 5AAA -
クライオ電子顕微鏡を用いた単粒子解析によって、ヌクレオソームがどのようにクロマチン繊維を構成しているか特定した
2重螺旋構造のDNA二本鎖が階層的に畳み込まれたクロマチンは、DNAが読み出され修飾される檜舞台であり、その構造と機能について解明が進むとともに議論も続いている。ヒストン8量体にDNA鎖が巻き付いたユニットが数珠つなぎになっているヌクレオソームが、30nm径のクロマチン繊維を形成するモデルについても、これまでにソレノイドモデルやジグザグモデルが提唱・議論される一方で、2012年には30nm繊維が存在しない事例も報告された。今回、中国生物物理研究所のPing ZhuとGuohong Li等は、187bpまたは177bpの長さの12回のタンデムリピート601 DNAとXenopus laevis由来のヒストンとでin vitro再構成したクロマチン繊維の構造を、クライオ電子顕微鏡を用いた単粒子解析法によって決定した(分解能11Å)。その結果、今回の実験条件においては、リンカーヒストンH1がテトラヌクレオソームのユニットを形作り、そのユニットが連なり、3連(12ヌクレオソーム)ごとに1回転する2重螺旋構造をとることがクロマチン繊維の実体であるとした。しかし、著者等が生体内の環境が異なれば他のモデル、例えばソレノイドモデル、も成立することを示唆していることもあり、Andrew TraversがScience誌のPerspective欄でコメントしているように本研究は新たに数々の興味深い課題を想起させる。
【注】今回提唱されたモデルは動画で一目瞭然になります。
原著論文→ Song F.et al. Cryo-EM Study of the Chromatin Fiber Reveals a Double Helix Twisted by Tetranucleosomal Units.Science 2014 Apr 25;344(6182):376-80. Online publication DD MM YYYY
Science Perspective→ Travers A. Structural biology: The 30-nm fiber redux. Science 2014 Apr 25;344(6182):370-2.
Video→ Institute of Biophysics, Chinese Academy of Sciences. Wrapping up DNA for a Cell
EM Navigator EMDB-2600→ 3次元電子顕微鏡データナビゲーター. EMDB-2600. Cryo-EM study of the chromatin fiber reveals a double helix twisted by tetra-nucleosomal units. Updated 2014-04-09 -
抗血栓薬の標的とされているP2Y12受容体のアゴニストならびにアンタゴニストとの複合体構造が明らかになった
ヒトP2Y12受容体を標的とする抗血栓薬が脳卒中や心筋梗塞の予防に投与されているが、副作用などの問題が存在する。P2Y12受容体は、プリン作動性Gタンパク質共役受容体(GPCR)ファミリーに属し細胞外ヌクレオチドによる活性化されるP2Y受容体の一つであるが、その構造ひいては薬剤との相互作用の詳細は明らかになっていなかった。今回、スクリプス研究所でのポストドクから帰国し中国科学院上海药物研究所で教授を務めるQiang ZhaoとBeili Wuが率いる中米独の研究チームは、P2Y12とフルアゴニスト2MeSADP、部分アゴニスト2MeSATp、非ヌクレオチド可逆性アンタゴニストAZD1283との3種類の複合体の構造を、それぞれ、2.5Å、3.1Å、2.6Åの分解能で決定し、受容体構造の差異を分析した。P2Y12-2MeSADPでは、ヘリックスⅥとⅦがP2Y122-AZD1283における向きから大きく内側に傾き、AZD1283が結合する2つのポケットにうち一方が圧縮されていた。また、結合した2MeSADPとAZD1283の配向が異なっていた。2MeSADPは、ヘリックスのバンドル、細胞外のループとN末端の大規模な動きを経て、P2Y12にきつく結合しほぼ完全に包み込まれている。今回あきらかになった機序の普遍性の解明と、創薬への応用が期待される。
原著論文→ Zhang K.et al. Structure of the human P2Y12 receptor in complex with an antithrombotic drug. Nature 2014 May 1;509(7498):115-118. Published online 23 March 2014
原著論文→ Zhang J.et al.Agonist-bound structure of the human P2Y12 receptor. Nature 2014 Apr 30;509(7498):119-12. Published online 30 April 2014
PDB ID 4NTJ→ Structure of the human P2Y12 receptor in complex with an antithrombotic drug
PDB ID 4PXZ→ Crystal structure of P2Y12 receptor in complex with 2MeSADP
PDb ID 4PY0→ Crystal structure of P2Y12 receptor in complex with 2MeSATP -
レトロマーの構造を安定にするとアミロイド-βへの産生を抑制できる
レトロマーは膜貫通受容体をエンドソームからトランスゴルジ網へとリサイクルするタンパク質複合体である。2000年代はじめからコロンビア大学の脳神経学者Scott A. Small等は、アルツハイマー患者におけるレトロマー低下や、細胞や実験動物におけるレトロマーのレベルとアルツハイマー病の原因物質とされているアミロイド-β(Aβ)の量との相関などから、「レトロマーが不全になりリサイクルが止まると神経細胞のエンドソームにアミロイド前駆体タンパク質(Amyloid precursor protein: APP)が滞留し、それが酵素で切断されAβが産生され始める」というモデルを提唱していた。そこで、生化学・構造生物学者のGregory A. PetskoとDagmar Ringe等は、薬理学的シャペロンによって細胞内でレトロマーを安定させることを追求し、今回、Small等と共同でその成果を発表した。既に解かれていたレトロマーの立体構造情報から結合が弱い(weak link)部位を同定し、結合を強化する小分子をin silicoスクリーニングによって絞り込んだ後、in vitroアッセイによって、熱変性に抗してレトロマーに安定な構造をとらせる小分子を発見した。この化合物を海馬ニューロン培養細胞に加えたところ、レトロマーのレベルが上り、APPがエンドソームから減り、Aβの産生が抑制された。細胞毒性も比較的低かった。この化合物を医薬品たらしめるには、レトロマーがAPP以外の分子もリサイクルすることがもたらす副作用や、レトロマーがAPPを輸送する先のゴルジ体でもAβが産生されることなどの課題を解決する必要があるが、アルツハイーマー病の治療にあらたな観点が加わった。
Science NEWS&ANALYSIS→ Garber Ket al. Potential Alzheimer's drug spurs protein recycling. Science 2014 Apr 25;344(6182):351.
原著論文→ Mecozzi VJet al. Pharmacological chaperones stabilize retromer to limit APP processing. Nat Chem Biol. Published online 20 April 2014
参考文献→ Small SA. Retromer sorting: a pathogenic pathway in late-onset Alzheimer disease. Arch Neurol. 2008 Mar;65(3):323-8 -
抗がん剤5フルオロウラシル(5-FU)は、オートファジーを介して、p53癌抑制遺伝子に異常がある癌細胞に5-FU耐性をもたらす
オートファジーが癌細胞の生存を促進するか抑制するか議論が続いているが、オートファジーが癌細胞の抗がん剤に対する耐性を強めるというデータが増えている。今回、中国Sir Run Run Shaw Hospital of College of Medicine of Zhejiang UniversityのHongming PanとWeidong Han等の研究チームは、オートファジーが、p53に変異を持つ癌細胞HT-29ならびにp53を欠失させた癌細胞HCT116 p53-/-に抗がん剤耐性をもたらすことを示した。5-fluorouracil(5-FU)投与によってこれらの細胞ではオートファゴソームの蓄積が起きたが、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(MAPキナーゼ)の一種であるc-Jun N末端キナーゼ (JNK)の活性化とオートファジータンパク質のBeclin-2のリン酸化が、5-FUによるオートファジーを誘導していた。JNKを阻害すると、オートファジーが抑制され、c-JunとBeclin-2のリン酸化も抑制され、一方で、癌細胞の細胞死が起きた。本研究の成果がp53遺伝子が変異している癌患者のための化学療法に進展をもたらすことを期待したい。
原著論文→ Sui X.et al. JNK confers 5-fluorouracil resistance in p53-deficient and mutant p53-expressing colon cancer cells by inducing survival autophagy Sci Rep. 2014 Apr 15;4:4694
参考文献→ Sui X.et al. Autophagy and chemotherapy resistance: a promising therapeutic target for cancer treatment. Cell Death and Disease 4:e838 Published online 10 October 2013 -
クルーズトリパノソーマ(Trypanosoma cruzi)は昆虫のサシガメによって媒介され主として中南米でヒトにシャーガス病をもたらしていたが、近年、輸血などを介してその他の地域にも感染が見られるようになってきている。一方で、駆虫薬としてベンズニダゾールとニフルチモックスが認可されているが、感染初期に1ヶ月程度服用する必要があり、慢性期になってから投与の効果ははっきりせず、副作用も大きい。今回、Institut Pasteur Korea Center for Neglected Diseasesの研究者等は、作用機序が異なる3群8化合物について、T. cruziの遺伝的多様性をカバーする6種類のdiscrete typing units (DTUs)のパネルに対するefficacy(最大効力)とpotency(用量効果)を評価し、タイム・キル・アッセイも行った。その結果、ニトロ複素環式化合物とoxadoleがpotencyは比較的低かったが全てのDTUに対して効力を示し、短時間でT. cruziを駆除した。エルゴステロール生合成を担うCYP51の阻害剤は、DTUごとに活性が大きく異なり、また、7日間連続投与後も細胞内感染を除去することができなかった。今後、標準的なアッセイ法を整備して、Drugs for Neglected Diseases initiative(DNDi)などにおけるリード化合物の評価を進めることによって、薬剤開発の効率化を進めるべきである。
原著論文→ Moraes CB et al. Nitroheterocyclic compounds are more efficacious than CYP51 inhibitors against Trypanosoma cruzi: implications for Chagas disease drug discovery and development..Sci Rep. 2014 Apr 16;4:4703. Online -
ツェツェバエの分子機構の弱点を突いてトリパノソーマを封じ込める
トリパノソーマは、アフリカサハラ砂漠以南において、ツェツェバエの吸血によって媒介され、ヒトには死に至るアフリカ睡眠病をもたらし、家畜にはナガナ病をもたらし、ヒトの健康・生命と経済に多大な被害を与える病原原虫である。しかし、安全で効果的なワクチンと治療薬の開発は難航しており、媒介者のツェツェバエを効果的に駆除あるいは無害化するための研究も行われて来た。今回、International Glossina Genome initiative(IGGI)は、ツェツェバエGlossina morsitansのゲノムを解読・公開した。ゲノムの大きさは3.66億塩基で、タンパク質をコードする遺伝子は推定12,308個であり、バクテリア(>Wolbachia)ゲノムの染色体が取り込まれていることや、胎生・ミルクタンパク質・視覚と臭覚・光受容体・唾液腺タンパク質など、ツェツェバエ独特の生態に対応する遺伝子が明らかにされた。ゲノム解読の成果はScience誌に発表されたが、トランスクリプトーム解析やプロテオーム解析の結果も含む詳細が、PLOS ONE誌、PLOS Genet.誌、PLOS Negl. Trop. Dis.誌に掲載された8編の論文(Science論文の参考文献7?14)にわたって報告されている。
【注1】アフリカ睡眠病はWHOが定義した17種類のNeglected Tropical Diseaseの一つ。
【注2】2004年に発足したIGGIには、18ヶ国78機関146人の研究者が結集。
原著論文→ International Glossina Genome Initiative. Genome sequence of the tsetse fly (Glossina morsitans): vector of African trypanosomiasis. Science 2014 Apr 25;344(6182):380-6. -
米国でも欧州でもオーファンドラッグ(orphan drug)の認定が急増
米国では、治療法が現存せず対象患者数が20万人未満の希少疾病(orphan disease)に用いられる医薬品を希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ、以下OD)と呼び、1983年のオーファンドラッグ法以来、開発した企業には、米国FDAへの217万ドルのUser Feeの免除、7年間の市場独占権などの優遇制度を設けている。欧州医薬品庁も同様に優遇制度を実施している。ありふれた疾患(common diseases)に対する画期的な医薬品の開発に行き詰まってきた製薬企業は、こうした優遇制度に加えて、ODが国際的な需要(鎌形赤血球症薬の例)や患者への価格転嫁(嚢胞性線維症薬Kalydecoの例)によって利益があがる事例が出て来たこともあり、OD開発に注力している。このため、米国においても欧州においてもODの認定件数が年々増えて来ており、米国では2013年のODの申請件数が2012年の38%増の260件に達した。また、ODが2013年にFDAが認可した医薬品の3分の1を占めるに至った。今後、疾病は細分化される傾向にある。遺伝型により詳細に分類することが可能になるだけではなく、病歴、病原菌の耐性など、さまざまな観点からの細分化が起き、ひいては医薬品のほとんどがODになる日が来てもおかしくはない。User Feeが先細りになる影響もあり、FDAはOD開発の位置づけについて慎重に検討していくことであろう。
【注】日本では対象患者数が5万人未満、ヨーロッパでは対象患者が2,000人に一人以下を希少疾病の要件としている。
NATURE|NEWS→ Reardon S. Nature Regulators adopt more orphan drugs. 2014 Apr 3;508(7494):16-7. -
PQBP1遺伝子変異がスプライソソームの不全を引き起こし精神遅滞をもたらす
mRNA前駆体のスプライシングを担うスプライソソームはウリジンに富む5種類の核内低分子RNA(snRNA)にそれぞれにいくつかのタンパク質が結合した核内低分子リボ核タンパク質粒子(snRNP:U1, U2, U4, U5, U6)で構成される巨大な複合体であるが、スプライシングの段階ごとに構成がダイナミックに変化する。この中で、スプライソソームのタンパク質U5-15kDは、岡澤均(現 東京医科歯科大学)等が1999年に同定したポリグルタミン結合タンパク質1(Polyglutiamine tract-binding protein 1: PQBP1)とC末端ドメインを介して結合することが明らかにされていた。一方で、これまでに同定されたX染色体連鎖性精神遅滞(X-linked mental retardation: XLMR)患者に特有のPQBP1遺伝子変異11種類中の7種類のフレームシフト変異によって、PQBP1のC末端ドメインが損なわれることが明らかにされていた。今回、富山大学の水口峰之等は岡澤均等と共同で、PQBP1のC末端とU5-15kDの複合体と融合タンパク質の構造、さらにU5-52Kも含むヘテロ三量体の構造を決定し、部位特異的変異導入実験なども行って、C末端ドメインにおけるYxxPxxVLモチーフが複合体の形成に必須であり、また、フレームシフト変異によってこのモチーフが欠失することを見出した。すなわち、フレームシフトがスプライソソームの機能不全を引き起こすことがXLMRの一因と考えられる。
原著論文→ Mizuguchi M.et al. Mutations in the PQBP1 gene prevent its interaction with the spliceosomal protein U5?15kD.Nat Commun. 5:3822 Published online 30 April 2014
PDB登録 4BWQ→ Crystal structure of U5-15kD in a complex with PQBP1
PDB登録 4CDO→ Crystal structure of PQBP1 bound to spliceosomal U5-15kD
PDB登録 4BWS→ Crystal structure of the heterotrimer of PQBP1, U5-15kD and U5-52kD. -
3.11からの回復を追跡調査 - 脳の形態と精神状態の変化を分析
東北大学加齢医学研究所の関口敦等は、東日本大震災を経験した年齢21歳前後の37名を被験者とし、地震を経験しなかった11名を対照群として、地震前(Pre)、地震後3-4ヶ月(Post)、1年後(Follow-up)の3点における脳の灰白質の容積と精神状態の変化を分析した。被験者全員Follow-up時にはPTSDの症状を示さず、眼窩前頭皮質の灰白質容積が増加していた。また、左眼窩前頭皮質容積の増加と自尊心の強さが相関していた。一方、右海馬の灰白質容積は減少し続け、また、地震が引き起した不安や落ち込みの程度がPost時から回復していなかった。
【注】灰白質容積はVoxel-based morphometry(VBM)によって計測。精神状態は専門家がインタービューしてしかるべきスケールで定量化。例えば、自尊心の場合は日本版Rosenberg self-esteem scaleに則った。
原著論文→ Sekiguchi Aet al. Resilience after 3/11: structural brain changes 1 year after the Japanese earthquake. Mol Psychiatry. 2014 Apr 29 Advance online publication -
Y染色体には、性決定に加えてセントラルドグマの各ステージを調節する役割があった
祖先であった常染色体からおよそ3億年の間に数百の遺伝子を失ってきたY染色体はいずれ消滅するという通説があったが、2012年米国Whitehead InstituteのDavid C. Pageが率いる研究チームは、ヒトとアカゲザルならびにチンパンジーのY染色体の遺伝子セットがほぼ同じであり、ヒトのY染色体が過去2,500万年の間は安定していたと主張した。今回、Page等の研究チームとSwiss Institute of BioinformaticsのHenrik Kaessmannが率いる研究チームがそれぞれ独立に、配列解析をもとにY染色体の進化過程を再構成した。そこでは、現在のヒトのY染色体は常染色体から少なくとも4段階の層化(stratification)を経た結果であり、現存する遺伝子は、祖先染色体における遺伝子含量をヒトのX-Y遺伝子対の遺伝子含量においても維持するような選択圧のもとに維持されてきたと考えられた。保存遺伝子には、性決定(Sex-determining region Y: SRY)と精子生産に関わる遺伝子の他に、セントラルドグマの各ステージの調節に関わり全組織で発現する12種類の遺伝子が含まれている。これまで性ホルモンによって性差が生じると言われてきたが、疾患感受性などにおける性差が、どのようにして12種類のY染色体遺伝子が調節する遺伝子発現の違いから生まれてくるのか、興味深い。
【注】「層」の内部ではX-Y交差が抑制される。
ScienceNow→ Williams, SCP. Y Chromosome Is More Than a Sex Switch. 23 April 2014 1:00 pm
原著論文→ Bellott DA et al. Mammalian Y chromosomes retain widely expressed dosage-sensitive regulators. Nature 2014 Apr 24;508(7497):494-9
原著論文 → Cortez Det al. Origins and functional evolution of Y chromosomes across mammals. Nature 2014 Apr 24;508(7497):488-93 -
男性が観察するか女性が観察するかによって、マウスの反応に違いが出た
研究室や実験者が異なると実験結果を再現できないことがある。その由来が、実験担当者の男女比の違いにある可能性を、マギル大学(カナダ)においてPain Genetics研究室を主宰するJeffrey S. Mogil等の研究グループが提示した。2010年に彼らが開発した痛みを測る指標 the mouse grimace scale (MGS)を使って、炎症を起こすグルカンの一種であるZymosanを両足首に注射したマウスが感じる痛みを測ったところ、注射後にケージのそばに男性が居るか、男性が一晩来たTシャツを置くか、あるいは男性の臭いを模した揮発性化合物を置くと(以下、ここでは男性環境と呼ぶ)、女性環境の場合に比べて有意に痛みが和らぐことを見出した。この男女環境がもたらす違いは、モルモット、ラット、猫そして犬の雄または雌の床敷を与えた場合にも起こった。MGSによる痛みの判定とともに、注射後のストレス応答に関わるホルモンであるコルチコステロンのレベル、体温、最初期遺伝子(immediate-early gene)産物Fosタンパク質陽性のニューロン数、ならびにオピオイド受容体アンタゴニストの影響も測定した。その結果、男性環境特有の臭いから受けたストレスによって誘発された鎮痛(stress-induced analgesia;SIA)作用が、男女環境による相違をもたらすと考えられた。今後、痛みの研究に限らず、研究目的とする特性にストレスが影響する可能性がある場合は、研究報告のメソッド欄に実験者の性別も記載すべきであろう。
短報→ Sorge, R. E.et al. Olfactory exposure to males, including men, causes stress and related analgesia in rodents. Nat Meth. 2014/04/28/online -
米国、産学連携で2型糖尿病の原因遺伝子・遺伝子変異の解明を加速する
国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所(National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases:NIDDK)は、2型糖尿病における遺伝的変異の解析を目的として2009年に開始したプログラムT2D-GENEを、産学連携のAccelerating Medicines Partnership(AMP)プロジェクトの枠に移行し、2014年4月25日に課題募集を開始した。2015年の予算規模は総額300万ドル、採択数の上限は6件である。また、同時に、新たなAMP T2D-GENES課題の研究成果であるデータと情報の共有をWebポータルサイトとデータベースの構築や会合企画によって実現し、進捗の把握を可能とし、ひいては研究の促進を図るData Coordinating Center (DCC)の募集も開始した。2015年の予算規模は250万ドルで採択件数は1件である。
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国立ヒトゲノム研究所(National Human Genome Research Institute: NHGRI)と国立精神衛生研究所(National Institute of Mental Health: NIMH)は、2014年4月28日から、ゲノム科学・ゲノム医学における革新的な基礎研究、臨床応用研究ならびに大規模なゲノム解析研究を支援するThe Centers of Excellence in Genomic Sciences (CEGS) の募集を開始した。CEGSのプログラムは、いつの時点でも課題数が10件を超えないように設計されており、昨年度までに7課題が採択されていたところ、今回は期間5年・予算上限200万ドルの2課題募集となった。
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病原細菌や癌細胞は、異物を排出する分子装置であるポンプによって多剤耐性を獲得している。グラム陰性菌のポンプは、能動輸送体を含む細胞質内膜から外膜までを貫くマルチコンポーネントのタンパク質複合体である。その代表であり大腸菌で常時発現しているArcAB-TolCポンプについては、外膜チャネルのTolC、内膜に結合している2次性能動輸送体AcrBならびに細胞膜周辺腔(periplasmic space)に位置するAcrAの構造が、阪大村上聡(現 東工大)等の貢献もあり2000年から2006年にかけてそれぞれ解明され、排出の分子機序について議論が続いていたが、2012年になって、新たにAcrBと結合する49残基のタンパク質ArcZが基質選択性を担っていることが明らかにされた。今回、Dijun DuとBen F. Luisi等の英・米・オーストラリアの研究グループは、クライオ電子顕微鏡法によって、およそ16Åの分解能でArcZも含むポンプ全体の疑似原子構造(pseudo-atomic structure)モデルを構築した。従来のモデルと異なり、共に3量体のTolCとAcrBとが直接には結合しておらず、6量体のAcrAのヘアピンのドメインとTolCが結合し、AcrAのβバレルとArcBの膜近傍のドメインとが結合することによって、ポンプが形成されている。これらの構造から、TolCがキレート効果またはアロステリック効果によって開口すると考えられる。多様な化合物を排出する多剤排出ポンプの機能を新たな化合物によって抑制する戦略は矛盾をはらんでいるが、マルチコンポーネントから成るポンプに対しては、タンパク質間の相互作用を創薬のターゲットとしていく道があるかもしれない。
原著論文→ Du D.et al. Structure of the AcrAB?TolC multidrug efflux pump.Nature Published online 2014 Apr 20. -
病原因子を宿主へ輸送する病原細菌の分泌装置(scretion system)は多種あるが、なかでもⅡ型、Ⅲ型、Ⅳ型が良く知られている。英国構造分子生物学研究所のGabriel Waksman等の研究グループは、2009年にⅣ型(type Ⅳ secretion system: T4S)の中核複合体と外膜複合体の構造を報告したが、今回、電子顕微鏡法によってT4Sの全体構造の再構成に成功した。T4SはVirB1からVirb11までの11種類のタンパク質とVirD4の計12種類のタンパク質で構成されていると言われていた。今回、大腸菌接合性プラスミッド(conjugative plasmid)R388を発現して得られたvirB3からvirB10までの8種類のタンパク質からなる3.4メガダルトンの大きさの複合体は、virB7,9,10からなる中核複合体と、12個のVirB4 ATPaseを主体とする6量体のバレルが並んだ形の内膜複合体(inner membrane complex: IMC)が、柄(stalk)によって連結されてた構造をしていた。すなわち、T4Sの構造は、外膜から内膜まで連続的な導管(conduit)を有するⅢ型とは大きく異なっていた。今後、こうしたT4Sの特徴的な構造を手がかりにして、T4Sに起因する感染症や薬剤抵抗性の蔓延への対策が検討されているであろう。
【注】T4Sの形は、内幕複合体が足を踏ん張って外膜複合体を支えているように見える。
原著論文→ Low HH.et al. Structure of a type IV secretion system. Nature 2014 Apr 24;508(7497):550-3 Published online 09 March 2014 -
膜タンパク質はバクテリアからヒトまで共通に存在している。細胞質で合成されたタンパク質を細胞膜に取り込みしかるべく配置する分子機構もまたバクテリアからヒトまで共通に存在している。今回、濡木理(東大)と塚崎智也(奈良先端大)等は、バクテリアBacillus haloduransにおいてこの取込みを担っているタンパク質YidCを脂質キュービック法で結晶化し、SPring-8のビームラインによって2.4Åの分解能で立体構造を解いた。YidCの顕著な特徴は、その5本のαヘリックスが疎水性の細胞膜の内部に正に帯電した親水性の溝(groove)を作り出すことであった。この溝は、脂質二重膜と細胞質には開いていたが、細胞外にはつながっていない。続いて、in vivoの実験により、取り込む膜タンパク質と相互作用するYicDの部位を特定し、溝の中央部に位置するYidCのアルギニンが取り込みに重要な役割を果たしていることが明らかにした。これらの構造・機能解析の結果に基づいて、一回膜貫通型タンパク質の場合、始めに、負の電荷を帯びた膜タンパク質の細胞外領域が溝に引き込まれ、続いて、疎水的相互作用と膜電位による静電的引力によって組み込みが進み、やがてYidCから離れて組み込みが完了するという分子機構を提唱した。
原著論文→ Kumazaki K.et al. Structural basis of Sec-independent membrane protein insertion by YidC.Nature Published online 16 April 2014
Spring-8 プレスリリース→ 国立大学法人東京大学、 京都産業大学、 国立大学法人奈良先端科学技術大学院大学. タンパク質を細胞膜に組み込むメカニズムを解明-バクテリアから人まで共通した基本的な生命現象の理解- 2014年4月17日 -
フィアルリジンの肝毒性をTK-NOGマウスによって検出可能になった
1990年初めにB型肝炎の治療を目的として作出されたフィアルリジン(Fialuridine)は、マウス、ラット、犬、さらにサルを使った前臨床試験では見出せなかった肝毒性によって、治験において15名中5名に劇症肝炎による死をもたらした。今回、スタンフォード大学のGary Pelt等は、日本の実験動物中央研究所(実中研)において開発されたヒト肝臓キメラマウスであるTK-NOGマウスによって、フィアルリジンがヒトの肝臓に与える毒性を検出できることを示した。TK-NOGマウスは肝臓以外の臓器に対する毒性の判定には向いていない。また、TK-NOGマウスは免疫不全のNOGマウスから作出されたものであり、免疫システムの介在によって生じる毒性の判定にも向いていない。しかし、前臨床の段階で、新薬開発の続行に対してこれまでの実験動物では得られなかった判断材料を与えることができる。
【注】Gary PeltはTK-NOG系統の論文の共著者である。
原著論文→ Xu D.et al. Fialuridine Induces Acute Liver Failure in Chimeric TK-NOG Mice: A Model for Detecting Hepatic Drug Toxicity Prior to Human Testing. PLoS Med. 2014 Apr 15;11(4):e1001628.
NEWS&ANALYSIS→ Cohen J. Toxicology: 'Humanized' mouse detects deadly drug side effects. 2014 Apr 18;344(6181):244-5.
TK-NOGマウスの論文→ Hasegawa M. et al. The reconstituted 'humanized liver' in TK-NOG mice is mature and functional. Biochem Biophys Res Commun. 2011 Feb 18;405(3):405-10. -
生体の内と外・生体組織の内と外を仕切りかつ繋げるタンパク質の構造が明らかにされた
1988年京都大学の月田承一郎等は、内と外の境界にある上皮細胞を密着結合(Tight Junction: TJ)させるタンパク質クローディンを発見した。これまでに27種類のクローディンが同定されてきたが、今回、藤吉好則(名大)、濡木理(東大)、月田早智子(阪大)等の研究グループは、マウスのクローディン-15を脂質キュービックフェーズ法によって結晶化し、SPring-8のマイクロフォーカスビームラインを使って、初めてその立体構造を決定した(分解能2.4Å)。クローディンは典型的な左手系4回膜貫通型(left-handed four-helix bundle)であり、膜貫通部位から細胞外にのびている2つのループがそれぞれ1本のβストランドと4本のβストランドを形成していることを明らかにした。また、クローディンが直鎖状に重合することも示した。これらの結果に基づいて、クローディングが細胞接着ともに細胞間隙におけるイオンや小分子の透過性を制御しているとした。
原著論文→ Suzuki H. et al. Crystal structure of a claudin provides insight into the architecture of tight junctions. Science 2014 Apr 18;344(6181):304-7.
名古屋大学 研究教育成果情報→ 細胞間の“すきま”を密着させてバリアを制御する分子構造の解明 2014/04/18 -
ヒトのアクアポリン2の構造を解き、AQP2の変異と腎性尿崩症の関わりを解く
アクアポリン2(AQP2)は、下垂体ホルモンのアルギニンバソプレシン(AVP)の刺激を受けて、細胞内小胞から集合管の頂端膜に輸送されて、水を再吸収する。このAQP2の変異は尿を濃縮できなくなる腎性尿崩症(NDI)を引き起こす。ルンド大学(スエーデン)のSusanna Tornroth-Horsefielda等は、2.75Åの分解能でAQP2の構造を決定し、AQP2の4つのプロトマーのC末端αヘリックス間のコンフォメーションの違いやプロトマー間の関係を明らかにした。また、NDIの患者から見出されたアミノ酸変異の立体構造上の位置を明らかにした。膜貫通部位に存在する多くの変異によって、AQP2の正しい構造への折り畳みに間違いが生じたり(misfolding)、AQP2が小胞体から頂端膜に移動しなくなると考えられる。今回明らかになった立体構造を手がかりに、APQ2の輸送によって膜タンパク質のチャネルの働きを調節するタンパク質間相互作用の解明が進んでいくであろう。
原著論文→ Frick A.et al. X-ray structure of human aquaporin 2 and its implications for nephrogenic diabetes insipidus and trafficking. Proc Natl Acad Sci USA. 2014 Apr 14. Early Edition
立体構造→ PDB ID code: 4NEF -
PINK1の変異はミトコンドリアの膜電位を低下させることによってパーキンソン病を引き起こす
セレンとトレオニンをリン酸化するキナーゼの一種であるPINK1の変異がパーキンソン病(以下、PD)を引き起こす分子機構について、ベルギーのBart De Strooper等の研究グループが、ショウジョウバエ、マウスそしてPD患者由来の細胞を使った実験結果に基づいて、新たな仮説を提唱した。Pink1遺伝子をノックアウトしたモデル生物由来の細胞とPink1が変異しているPD患者の細胞において、ミトコンドリアにおけるエネルギー生産に決定的な役割を果たすComplex I (NADHデヒドロゲナーゼ)のリン酸化が正常に進まず、ミトコンドリアの膜電位が低下し、ATP合成が進まなくなることを見出した。Complex I のサブユニットNdufA10の250番目のセリンがリン酸化されないという異常を回復すると、マウス細胞と患者由来の幹細胞においてPDの症状が軽減あるいは消滅した。リン酸化を促進するあるいは脱リン酸化を抑制するという観点からPDの新しい治療法が生まれる可能性がある。
原著論文→ Morais VAet al. PINK1 Loss-of-Function Mutations Affect Mitochondrial Complex I Activity via NdufA10 Ubiquinone Uncoupling. Science 2014 Apr 11;344(6180):203-7. Published Online March 20 2014
THIS WEEK IN SCIENCE→ In the PINK1. Science 2014 Apr 11;344(6180):125. -
ケミカルジェノミックス(chemical genomics、以下CG)の解析プラットフォームHIP-HOPによって、薬らしい小分子化合物に対する酵母(Saccharomyces cerevisiae)遺伝子の応答がin vivoで網羅的に明らかにされた。HIPは、化合物のターゲットとなる遺伝子を1コピーしか持たないヘテロ接合型においてその遺伝子産物の産生が劣化する程度(haploinsufficiency)を示すプロファイル(profile)である。HOPは、ホモ接合型(homozygous)において化合物が遺伝子に与える影響を示すプロフィルである。Guri Giaeverが率いるトロント大学(カナダ)のHip-Hop CG研究室はスタンフォード大学酵母CG研究室などと共同で、ヘテロ接合型酵母1,095系統とホモ接合型酵母4,810系統について、3,250種類の小分子化合物に対するHIP-HOPプロファイルを測定・解析した。その結果、121種類の遺伝子の機能を特異的に阻害する化合物317種を同定し、これらの遺伝子は例えば細胞周期やDNA損傷応答など45種類の細胞応答に属していることを明らかにした。本研究で集約されたプロファイルは、HIPHOP chemogenomics databaseとして公開されており、ダウンロードすることも可能である。
【注】バイオロジーの外の世界では、hip hopは1970年代に米国ブロンクス地区で生まれた文化を意味し、ラップ、DJ、ブレイクダンス、グラフィティーがその4大要素と言われている。
原著論文→ Lee AY.et al. Mapping the Cellular Response to Small Molecules Using Chemogenomic Fitness Signatures. Science 11 April 2014;344(6180):208-211.
THIS WEEK IN SCIENCE→ Yeasty HIPHOP. Science 11 April 2014;344(6180):125. -
抗がん剤開発のターゲットに新たな展開:がん細胞特有の遺伝的変異からがん細胞に必須の酵素へ
Nature Reviews Cancer2014年4月17日号RESEARCH HIGHLIGHTは、酸化ストレスから細胞を保護する酵素MTH1が抗がん剤のターゲットになることを示したNature4月10日号掲載2論文を取り上げた。カロリンスカ研究所のThomas Helledayが率いるスウェーデンの研究グループは(Article_1)、MTH1が正常細胞にとっては必須の酵素ではないが、癌細胞ではその特有のレドックス反応によって産生される活性酸素種から受けるストレスを免れるために必須な酵素であることを示した。また、MTH1の活性部位に結合して活性を阻害することによって抗がん作用を示す低分子化合物を見いだした。Giulio Superti-Furga等のオーストラリア・英国・スウェーデンのグループは(Article_2)、RASの異常に因るがん化を抑制する小分子SCH51344の作用機序を明らかにしていく過程で、そのターゲットがMTH1であることを特定し、化合物のスクリーニング範囲を広げて、すでに米国等では非小細胞肺がんの抗がん剤として認可されていたクリゾチニブがMTH1を阻害することを見出した。驚くべきことに、臨床で用いられている鏡像異性体(R)エナンチオマーではなく(S)-エナンチオマーがMTH1の活性を選択的に阻害した。MTH1をターゲットとした抗がん剤は、多様ながん細胞に共通に有効でありまた薬剤耐性の問題を回避できることを期待できる。
RESEARCH HIGHLIGHT→ Gemma KA. DNA DAMAGE:De-sanitizing tumour cells. Nature Reviews Cancer Published online 17 April 2014
NEWS & VIEWS→ Dominissini D, He C. Cancer: Damage prevention targeted. Nature 2014 Apr 10;508(7495):191-2.
Article_1→ Gad H.et al. MTH1 inhibition eradicates cancer by preventing sanitation of the dNTP pool. Nature 2014 Apr 10;508(7495):215-21. Corrected online 10 April 2014
Article_2→ Huber KV. et al. Stereospecific targeting of MTH1 by (S)-crizotinib as an anticancer strategy. Nature 2014 Apr 10;508(7495):222-7. Published online 02 April 2014 -
p53とNF-κBはヒトのマクロファージにおいて炎症誘発性遺伝子応答を同時制御する
ガンの化学療法において炎症を抑制することは、患者の負担を軽減し、治療効果を上げる重要なポイントである。米国NIEHSのJulie M. LoweとMichael A. Resnick等は、抗腫瘍化合物Nutlin-3を外因性刺激として与える実験から、ヒトの単球とマクロファージの場合に限って、ガン抑制遺伝子産物p53と免疫応答を担う転写因子NF-κBのサブユニットp65が炎症性サイトカインIL-6のプロモーター領域に結合して、IL-6の発現を亢進することを見いだした。また、IL-6以外にも、p53とNF-κBによって発現が同時制御される(coregulate)サイトカインやCXCL1などのケモカインの存在も確認した。したがって、この発現パスウエーを制御することによって炎症を軽減することが可能である。一方で、腫瘍微小環境にある腫瘍関連マクロファージ(tumor-associated macrophages; TAMs)の場合は、p53が腫瘍からのパラクリン因子に応答してIL-6の発現を亢進することを見い出した。TAMにおけるp53の活性化には、セネッセンスを介して腫瘍を縮小に導く方向と、血管形成や腫瘍関連好中球などを介して腫瘍を増殖に導く方向とがあり、p53が腫瘍形成に及ぼす総合的評価が今後の課題となる。
原著論文→ Lowe JM.et al. p53 and NF-κB Coregulate Proinflammatory Gene Responses in Human Macrophages. Cancer Res. 2014 Apr 15;74(8):2182-92.
レビュー(免疫応答と腫瘍形成)→ Chimal-Ramirez GK, Espinoza-Sanchez NA, Fuentes-Panana EM. Protumor Activities of the Immune Response: Insights in the Mechanisms of Immunological Shift, Oncotraining, and Oncopromotion. Journal of Oncology vol. 2013, Article ID 835956, 16 pages, 2013. Published online 14 Mar 2013 -
生ワクチンや不活性化ワクチンに比べて、抗原として機能する部分のみを含むサブユニットワクチンは安全性が高いが、免疫原生が弱いため、投与方法に工夫が必要である。今回、MITのDarrell J. Irvine等は、サブユニットワクチンをリンパ節へ集中的に送り込む新手法を開発した。がん患者においてアルブミンと結合した色素が蓄積されることを利用してセンチネルリンパ節を可視化していたことに学び、新手法は、ペプチド抗原または抗原性を補強するアジュバントをアルブミンに結合させた両親媒性物質ワクチン(amphiphiles vaccine; amph-vaccine)を設計したものである。構造を最適化したCpG-DNA/ペプチドamph-vaccinesは、マウスにおいて、免疫原性と抗腫瘍性を示し、また、全身性の毒性を抑制した。
【注】Irvineは論文の筆頭著者Haipeng Liuとともにamph-vaccineを特許出願した。
原著論文→ Liu H.et al. Structure-based programming of lymph-node targeting in molecular vaccines. Nature 2014 Mar 27;507(7493):519-22. Published online 16 February 2014
MIT NEWS→ Hitchhiking vaccines boost immunity - New MIT vaccines that catch a ride to immune cell depots could help fight cancer and HIV. 2014 February 16. -
ヒトの免疫システムを体現するモデル動物は免疫学に必須の研究資源である。Nature Biotechnology4月8日号のNEWS AND VIEWSは、新たなモデルマウス2系統の論文を取り上げた。:Rongvaux等は、マウスのサイトカインがヒト造血幹細胞の分化を完全には体現しない問題を、ヒトのGM-CSF、IL-3、M-CSFならびにTPOの4種類の遺伝子をノックインすることによって回避したMITRG系統と、さらにヒトのSIPRαを導入してマクロファージによるファゴサイトーシスを回避したMITRGS系統を確立した。これらの系統は、ヒトに近い生理状態での感染症、腫瘍、薬剤応答性などの解析、さらに、個別化医療にも応用可能である。ただし、クラススイッチは起こらず、抗原特異的な抗体の産生には向いていない。;Lee等の系統はこの弱点を補うと位置づけられる。Lee等は、ES細胞でRMCEを繰り返してヒト免疫グロブリンの可変領域の全て(2.7Mb)をマウスゲノムに挿入し、ヒト免疫グロブリンの定常領域が混入していない系統を確立した。この新しい系統はヒトB細胞を体現しており、ワクチンの開発や治療用モノクローナル抗体の開発に新展開をもたらす。
NEWS AND VIEWS→ Spits H. Nat Biotechnol. 2014 Apr 8;32(4):335-6. Published online 08 April 2014
原著論文1→ Rongvaux A.et al. Development and function of human innate immune cells in a humanized mouse model.. Nat Biotechnol. 2014 Apr;32(4):364-72. Published online 16 March 2014
原著論文2→ Lee EC.et al. Complete humanization of the mouse immunoglobulin loci enables efficient therapeutic antibody discovery. 2014 Apr;32(4):356-63. Published online 16 March 2014 -
ヒト遺伝子2,000種類以上の3'非翻訳領域の機能を詳らかにした
mRNAの3'末端の非翻訳領域(3'UTR)はmRNAの安定性を高めたり翻訳を調節する役割を果たすこと言われている。今回、米国UCSFのDavid J Erle等の研究チームは、近年オリゴヌクレオチド合成と塩基配列決定を高効率で実行可能になったことを活かして、大量の3'UTRの配列を並列に解析していく手法fast-UTRを開発して、3'UTRの機能を詳らかにした。この新手法によって、2,000種類以上のヒト遺伝子について総塩基数45万超の3'UTR配列を分析した結果、3'UTRがmRNAの安定性とタンパク質産生に影響を与える広汎な調節作用を有していることを見いだした。さらに、新たなシスエレメント87個を同定し、既知ならびに新奇3'UTRモチーフにおける遺伝的変異の影響も測った。3'UTRの配列と変異が遺伝子発現に及ぼす影響を直接ハイスループットで測定可能にしたfast-UTR法は今後、疾患の原因となる遺伝的変異の特定、コンピュータによる有用な3'UTRの設計、組織特異的な遺伝子調節解明などに活用されていくであろう。また、本手法を5'UTR配列の機能アノテーション用へと改変することも視野に入っている。
原著論文→ Zhao Wet al. Massively parallel functional annotation of 3' untranslated regions. Nat Biotechnol. 2014 Apr;32(4):387-91. Published online 16 March 2014 -
高い親和性を示すタンパク質複合体の結合ランドスケープをin silico実験で描き出した
タンパク質間相互作用(protein-protein interaction; PPI)の解明は生命科学の命題の一つでありドラッグデザインへの寄与も期待される。今回、ヘブライ大学のJulia Shifman等は、コンピュータ上で飽和突然変異誘発を加えることに(in silico saturated mutagenesis)によって座位ごとの結合自由エネルギー変化(結合ランドスケープ)を得た。親和性の高い組み合わせとしては、蛇毒のファシキュリン(Fas)とヒトまたはシビレエイの一種Torpedo californicaのアセチルコリンエステラーゼ(それぞれhAChEまたはtAChE)を選択した。In silico実験の結果は、50件のウエット実験と高い相関を示した。また、Fasの配列は2種類のアセチルコリンエステラーゼ、なかでもhAChE、への結合にほぼ最適化されていたが、結合に直接関与していなかった部位の変異によって親和性をさらに高めることができることも見出した。
→ Aizner Y. et al. Mapping of the Binding Landscape?for a Picomolar Protein-Protein Complex through Computation and Experiment -
マウスのプリオンタンパク質PrPの網羅的変異実験結果に基づいて感染型PrPScのモデルを評価・提案
プリオン病の感染部位に存在する感染型プリオンタンパク質PrPScの立体構造について、さまざまなモデルが提案されてきた。今回、長浜バイオ大学の白井剛と東北大学大学院の北本哲之の研究グループは、マウスのプリオンタンパク質のコアの領域に網羅的に部位特異的変異誘発を加えて、PrPScが正常型のPrPCを感染型に変換する効率を測定した。この実験結果とPrPScの主要な5つのモデルとをスレディング法によって照合した結果、コア領域のN末端領域がβヘリックスに変換されるとしたモデルが実験結果と最もよく整合することを見出した。これらの知見に基づいて改良型モデルを提案した。
→ Shirai T. et al. Evaluating Prion Models Based on Comprehensive Mutation Data of Mouse PrP. Structure 2014 Apr 8;22(4):560-71. publication online 2014 Feb 20. -
ガン細胞は大量のグルコースを摂取して、生存・増殖に必要なエネルギーならびにアミノ酸や脂質をまかなっている。1920年ごろからしばらく代謝系の異常がガンを引き起こすという見方があったが、1970年代にはいって、遺伝子変異や染色体異常がガンの原因とされるようになった。一方で、TCA回路で機能しているイソクエン酸脱水素酵素1(IDH1)の変異が原発性脳腫瘍などで見いだされていたところ、2009年にAgios Pharmaceuticalsの研究者は、このIDH1の変異がガン代謝物2-ヒドロキシグルタル酸 (2HG)を生成することを見いだした。すなわち、代謝経路の異常がガンを引き起こす可能性が改めて示された。Agiosは、IDH1変異体の阻害剤AG-120とIDH1と同様なIDH2変異体の阻害剤AG-221を開発してきたが、2014年4月6日にAmerican Association for Cancer Research (AACR)年会において、AG-221の第I相治験の結果を報告した。それは、IDH2変異をもつ急性骨髄性白血病患者10名にAG-221を投与したところ、感染症を起こした3名を除く7名のうち6名がAG-221に反応し5名からはガン細胞が消滅するという希望を持たせる成果であった。
【注】本記事はNature 2014年4月10日のNEWS IN FOCUSに基づいて展開した。
NEWS IN FOCUS→ Ledford H. Metabolic quirks yield tumour hope. Nature 2014 Apr 10;508(7495):158-9
IDH1の変異とガン代謝物の論文→ Dang L. et al. Cancer-associated IDH1 mutations produce 2-hydroxyglutarate. Nature 2009 Dec 10;462(7274):739-44
Agios社サイトによる「IDH1とIDH2」紹介→ http://www.agios.com/pipeline-idh.php -
RNA:DNAハイブリッドと結合したTy3逆転写酵素は非対称なホモダイマーの形をしていた
動く遺伝子の中で、レトロトランスポゾンは自分自身をRNAに複写した後、逆転写酵素(reverse transcriptase; RT)によってDNAに複写されて、移動していく。レトロウイルスのRTの構造が解明されてきたのに対して、それらの祖先とも言われているLTR型のレトロトランスポゾンのRTの構造は不明であった。今回、ポーランドInternational Institute of Molecular and Cell BiologyのMarcin Nowotnyと米国Frederick National LaboratoryのStuart F J Le Griceの研究グループは、初めて、Saccharomyces cerevisiae由来のLTR型レトロトランスポゾンTy3のRTの構造をポリプリン配列を含むRNA:DNAハイブリットと結合した状態で決定した(分解能3.1Å)。レトロウイルスのRTと大きく異なり、基質に結合したTy3 RTの構造はホモダイマーでかつ非対称であり、RNase HドメインとDNAポリメラーゼがホモダイマーの別々のサブユニットに配置されていた。
原著論文→ Nowak E.et al. Ty3 reverse transcriptase complexed with an RNA-DNA hybrid shows structural and functional asymmetry. Nat Struct Mol Biol. 2014 Apr;21(4):389-96. Published online 09 March 2014
Ty3の構造情報 → Ty3 reverse transcriptase complexed with an RNA-DNA hybrid shows structural and functional asymmetry; 4OL8 -
立体構造に基づいてインテグリンに対するpure antagonistを設計する手がかりを得た
細胞接着因子インテグリンは治療標的とされているが、フィブロネクチンのRGD配列に結合する部位を狙った抗インテグリン剤は、致死的な副作用の原因となる構造変化を引き起こすパーシャルゴニストである。今回ハーバード大学のM Amin Arnaout等は、ヒトインテグリンの一種であるαVβ3と、フィブロネクチンの野生型(wtFN10)または親和性が高く完全なアンタゴニスト性を示す変異体(hFN10)との複合体の構造を決定し、インテグリンの活性化を引き起さない副作用の無い抗インテグリン剤開発の方向性について新たな知見を提示した。具体的には、複合体の構造比較から、hFN10の場合は、RGDドメインを含むhFN10のループ構造に位置するTrp1496とβ3サブユニットに位置するTyr122との間に生じるπ-π相互作用が、インテグリンに不活性な構造をとり続けさせていることを明らかにした。また、Trp1496をセリンに置換あるいはTrp1496をアラニンに置換するか、または、Trp149の向きをTyr122から背けることによって、hFN10がパーシャルアゴニストに変わることを見いだした。
原著論文→ Van Agthoven JFet al. Structural basis for pure antagonism of integrin αVβ3 by a high-affinity form of fibronectin. Nat Struct Mol Biol. 2014 Apr;21(4):383-8. Published online 23 March 2014
αVβ3?hFN10の構造情報→ Integrin AlphaVBeta3 ectodomain bound to an antagonistic tenth domain of Fibronectin; 4MMZ
αVβ3?wtFN10の構造情報→ Integrin AlphaVBeta3 ectodomain bound to the tenth domain of Fibronectin; 4MMX
αVβ3?hFN10/Bの構造情報→ Integrin AlphaVBeta3 ectodomain bound to the tenth domain of Fibronectin with the IAKGDWND motif; 4MMY -
Nature Biotechonology 2014年4月8日号は、EDITORIAL、NEWS FEATURE、PATENTS、NEWS AND VIEWS、Research:REVIEWの各セクションでCRISPR-Casシステムを取り上げた。EDITORIALの記事は、”この18ヶ月の間にCRISPR-Casゲノム編集技術関連論文が125編以上発表され、少なくとも3つのベンチャー企業が設立された。”と書き起こし、先月設立されたInnovative Genomics Initiative (IGI)が標榜するようにCRISPR-Casシステムはゲノム編集に変革をもたらすと結論づけている。PATENTのセクションでは、CRISPR-Cas技術によって新たに産み出されるであろう人工遺伝子、人工タンパク質、トランスジェニック生物の特許可能性について論じられている。
EDITORIAL→ Genome editing for all. Nat Biotechnol. 2014 Apr 8;32(4):295
NEWS FEATURE→ Gene editing at CRISPR speed. Nat Biotechnol. 2014 Apr 8;32(4):309-12.
PATENTS→ Webber P. Does CRISPR-Cas open new possibilities for patents or present a moral maze? Nat Biotechnol. 2014 Apr 8;32(4):331-3.
PATENTS→ Recent patent applications in CRISPR-Cas systems. Nat Biotechnol. 2014 Apr 8;32(4):334.
NEWS AND VIEWS→ Garside EL, MacMillan AM. Cas9 in close-up. Nat Biotechnol. 2014 Apr 8;32(4): 338-340
REVIEW→ Sander JD, Joung JK. CRISPR-Cas systems for editing, regulating and targeting genomes. Nat Biotechnol. 2014 Apr 8;32(4):347-355 -
大腸菌を改変してバイオフィルムから光電素子を形成することができた
大腸菌が細胞外に分泌するCsgAタンパク質はCurli線毛を形作る。MITのTimothy K. Lu 等は,anhydrotetracycline (aTc)またはバクテリア細胞間の情報伝達物質であるacyl-homoserine lactone (AHL)の存在下でのみcsgA遺伝子が発現するように大腸菌を改変することによって、バイオフィルムの形や大きさを制御可能にした。さらに、CsAタンパク質にヒスチジンを複数含むペプチドまたはSpyTagを付加して、バイオフィルムと非生物材料(金(Au)微粒子、ZnS、CdTe/CdS)との融合を実現した。 具体的には、導電性のバイオフィルム、金(Au)のnanowiresとnanorods、蛍光を発するZnSのnanoparticleを形成し、また、CdTe/CdS量子ドット(quantum dot; QDs)に金微粒子を局在させることでCdTe/CdS QDの蛍光の強度と時間を制御できることを示した。本研究によって微生物の遺伝子発現ネットワークの改変、細胞間の情報伝達機構の利用、そして非生物材料と結合可能なペプチドタグを組み合わせることによって、機能する生物・非生物複合体を形成することが可能なことが示された。
原著論文→ Chen AY. et al. Synthesis and patterning of tunable multiscale materials with engineered cells. Nat Mater. . Online publication 2014 Mar 23.
NEWS & ANALYSIS→ Service RF. Synthetic biology: Synthetic biologists design 'living materials' that build themselves. Science 2014 Mar 28;343(6178):1421 -
真核生物のRNase Ⅲの構造を解き、基質の選択と結合の分子機構を明らかにした
RNase Ⅲは、二本鎖RNA(dsRNA)を切断する酵素Dicerのファミリーに属し、RNAの成熟を介して遺伝子調節に関わるRNA分解酵素の一種である。これまで研究が進んでいたバクテリアのRNase Ⅲの知見からは真核生物のRNase Ⅲの振る舞いを説明することができなかった。今回、カナダUniversite de Sherbrookeの Sherif Abou Elelaと米国National Cancer InstituteのXinhua Jiの研究チームは、Saccharomyces cerevisiaeのRNase Ⅲ(Rnt1p)がdsRNAを切断した後のRnt1p:RNA複合体の構造を決定し、基質の認識・結合における真核生物特有の分子機構を明らかにした。
→ Liang YH, Lavoie M, Comeau MA, Abou Elela S, Ji X. Structure of a Eukaryotic RNase III Postcleavage Complex Reveals a Double-Ruler Mechanism for Substrate Selection. Mol Cell. (2014) i press, corrected proof. Available online 3 April 2014
PDB登録番号→ 4OOG -
酵母ゲノムをデザインする:ついに機能する真核生物の染色体が合成された
2011年Jef D. Boeke等は、出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeにおいて、コンピュータで設計しDNA合成した第9染色体右腕90-kilobaseと第6染色体左腕30-kilobaseによって該当部分を置換しても、酵母として機能し、多様な表現型が生み出されることをNature誌で報告した。この成功は、loxPを利用して多数の変異を同時に導入可能としたSCRaMbLE (synthetic chromosome rearrangement and modification by loxP-mediated evolution)法の有効性を実証し、酵母染色体丸ごとを合成・置換するプロジェクトSc2.0の実現可能性を示した。その後、2007年にジョンズホプキンス大学で始まっていた酵母DNAを合成する夏の学校”Build A Genome”とプロジェクトSc2.0は急速に国際的な広がりを見せた。そして今回、ジョンズホプキンス大学のSrinivasan ChandrasegaranとJef D. Boeke等の国際チームは、酵母第3染色体の設計・合成・置換の成功を報告するに至った。合成した染色体は、野生型に対して500カ所以上の改変が加わり、319,667塩基に対して273,831塩基へと「効率化」されていた。SCRaMbLEとSc2.0は、酵母の基礎研究から始まりアルコール飲料やバイオ燃料などの応用研究までを加速し、さらにえ、酵母がヒトの染色体の解析の場たらしめるかもしれない。
【注】野生型の酵母染色体に加える改変は参考文献のBOX 1に見やすくまとめられている。
原著論文→ Annaluru N.et al. Total synthesis of a functional designer eukaryotic chromosome. Science 2014 Apr 4;344(6179):55-8. Online publication 2014 Mar 27
参考文献→ Dymond JS. et al. Synthetic chromosome arms function in yeast and generate phenotypic diversity by design. Nature 2011 Sep 14;477(7365):471-6.
NEWS FOCUS→ Pennisi E. Building the Ultimate Yeast Genome. Science 28 March 2014;343(6178):1426-1429 -
光合成装置の構造解析に新たな展開:集光アンテナタンパク質LH1と光合成反応中心RCの複合体構造を3Åの分解能で決定
光合成は光エネルギーから酸素を生成し、化学エネルギーを生成するヒトにとって必須の反応である。光合成研究の格好のモデルである光合成細菌の装置は、光反応中心(RC)、RCを囲むアンテナタンパク質LH1、LH1とは別のアンテナタンパク質LH2の装置で実現されている。1985年にRCの構造(分解能3Å)を発表したJohann Deisenhofer、Robert HuberそしてHartmut Michelは1988年ノーベル化学賞を受賞した。LH2の構造は1995年に2.5Å分解能で解かれた。残るLH1についてはこれまで低分解能の構造しか得られていなかったが、今回、京都大学の三木邦夫と茨城大学の大友征宇等は、温泉から分離された好熱性光合成細菌Thermochromatium tepidumに由来するLH1とRCの巨大な複合体の構造をX線構造解析によって3Åの分解能で解き、LH1からRCヘのエネルギー移動、化学エネルギーを運搬するユビキノンの移動などについて詳細な考察を加えた。この精密な構造情報に基づいて光合成におけるエネルギー励起と電子伝達の分子機構の解明が加速されるであろう。
【注1】RCの構造解析は、初の膜貫通タンパク質の構造解析でもあった。
【注2】LH1とRCの構造は3分割されてPDBjから公開されている(3WMN、3WMO、3WMM)
原著論文→ Niwa S. et al. Structure of the LH1-RC complex from Thermochromatium tepidum at 3.0Å. Nature 2014 Apr 10;508(7495):228-32. doi: 10.1038/nature13197. Online publication 2014 Mar 26
RESEARCH NEWS&VIEWS→ Cogdell RJ, Roszak AW. Structural biology: The purple heart of photosynthesis. Nature. 2014 Apr 10;508(7495):196-7. Published online 2014 Mar 26 -
多様な生物のmRNAにおけるポリA鎖の長さを測定可能として、長さと翻訳効率との相関などを分析した
ほとんどの真核生物においてmRNAは転写終了時に特定のタンパク質複合体で切断され、3'末端側にpoly(A)鎖の尾部が付加される。このpoly(A)尾部の機能として、mRNAの安定性や核外輸送などへの寄与が言われてきたが、poly(A)鎖の長さを測定することが困難であったため、機能の詳細は不明であった。今回、MIT Whitehead InstituteのDavid P. Bartel等は、poly(A)-tail length profiling by seqeuncing (PAL-seq)法を開発して、酵母、シロイヌナズナ、ショウジョウバエ、マウス肝臓、HeLa細胞、3T3細胞、HEK293T細胞、ならびにゼブラフィッシュとカエルの胚に由来する数百万のpoly(A)鎖の長さを測定した。尾部の長さは、相同なmRNAの場合は種を超えて保存されていたが、リボゾームタンパク質やその他のハウスキーピングタンパク質では短めになっていた。尾部と翻訳効率の間の相関については、ゼブラフィッシュとカエルの胚では見られたが、発生過程における原腸形成後や、胚以外の細胞には見られなかった。発生過程において相関の有無の切り替えが起こったことは、マイクロRNAによる脱アデニル化の役割が、翻訳抑制からmRNA分解へと切り替わる現象の説明になりうる。
原著論文→ Subtelny AO et al. Poly(A)-tail profiling reveals an embryonic switch in translational control. Nature 2014 Apr 3;508(7494):66-71. Epub 2014 Jan 29. -
レプチン発見から20年を経て組み替え型レプチンが希少疾患の認可薬へ
2014年2月24日米国食品医薬品局(FDA)は、組み替え型レプチンMyalept(metreletin for injection)を、希少疾患であるリポジストロフィー(脂肪異栄養症)の初の治療薬として認可した。Nature Biotechnology誌は2014年4月8月号でレプチン発見からの20年間の紆余曲折を紹介している。1994年のロックフェラー大学のJeffrey M. Friedman等の論文から製薬企業においてペプチドホルモンleptin(レプチン)をターゲットする肥満薬開発の熱狂が始まった。しかし、ロックフェラー大学からライセンスを取得したAmgenは1999年には肥満薬開発を断念した。その間、国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所 (NIDDK; National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases)、ケンブリッジ大学ならびにテキサス大学では関連研究が続けられており、Amgenもリポジストロフィー薬の治験に協力した。その後、企業合併が繰り返された結果、2014年からAstzaZenecaがMyaleptを所有している。Myleptには、レプチンや自分自身に対する中和抗体ならびにリンパ腫を生成する可能性があり、また、通常の肥満症は禁忌にあたることから、FDAは、Risk Evaluation and Mitigation Strategy (REMS) プログラムに則ってMyaleptを処方することを義務づけた。
News→ Sinha G. Nat Biotech. April 2014 Apr8;32(4):300-2.
Press announcement → U. S. Food and Drug Administration, FDA Newsrelease. 25 Feb 2014 -
パーキンソン病(PD)の要因の一つとしてロイシンリッチリピート配列キナーゼ2(LRRK2)が知られているが、その活性の上昇が神経変性をもたらす分子機構は不明であった。今回、ジョンズホプキンス大学のTed M. DawsonとValina L. Dawson等は、リボソームタンパク質40Sのサブユニットの一つs15がその鍵を握っていることを見見出した。LRRK2の病原性変異G2019Sによってs15のリン酸化が亢進し、それによってキャップ依存型かキャップ非依存型のいかんにかかわらずタンパク質合成が亢進し、この生成された過剰なタンパク質によって神経細胞が損傷・死滅すると考えられる。この反応経路は、リン酸化されないs15変異体やタンパク質合成を阻害するanisomycinによってブロックされたことから、リン酸化やタンパク質の合成と分解を制御する観点から新たなPDの治療や診断(バイオマーカ)の開発が進む可能性が出て来た。
原著論文→ Martin Iet al. . Ribosomal Protein s15 Phosphorylation Mediates LRRK2 Neurodegeneration in Parkinson's Disease. Cell 10 April 2014;157(2):472-485.
皮膚由来のiPS細胞から樹立した神経幹細胞を使った関連論文→ 鈴木啓一郎・Juan Carlos Izpisua Belmonte「パーキンソン病の原因遺伝子LRRK2の変異によりひき起こされるヒトの神経幹細胞における進行性の変性」ライフサイエンス新着論文レビュー 2012年11月3日(c 2012 鈴木啓一郎・Juan Carlos Izpisua Belmonte Licensed under CC 表示 2.1 日本) -
市販薬に至らなかった治験薬情報を機関の壁を超えて共有するデータクラウド始動
2001年当時の米国ブッシュ大統領はがん研究を加速するためにCEO Roundtable on Cancer(CRC)を設置し、産学官が一体になってこそ達成可能な目標を設定することを求めた。それから14年経た2014年4月8日に、CRCは、機関を超えて治験データを共有するProject Data Sphere(PDS)事業を公開した。PDSにはすでに、AstraZeneca、Bayer、Celgene、Janssen Research and Development、Memorial Sloan Kettering Cancer Center、PfizerならびにSanofi USが提供したのべ3,500人を対象としたがん治験薬の第III相試験の治験実施計画や症例報告などを包含した9件のデータセットが登録されており、第三者も利用申請手続きを経て利用可能である。近々、さらに25データセットが追加される予定であり、12ヶ月間に25,000人分の治験情報を集積することを目指している。また、PDSはSASによる統計解析アプリケーションのサービスも開始する。2014年2月4日にNIHが主導して発足した産学連携AMPにおける創薬初期段階のデータ共有の枠組みに加え、市販薬として認可に至らなかった膨大な治験薬のデータクラウドからも見事な虹が現れるか注目に値する。
プレスリリース→ CEO Roundtable on Cancer Launches the Project Data Sphere Initiative、A New Data Sharing and Analytic Platform for Cancer Patient Benefit -
イオンチャネルは微生物からヒトまであらゆる生物に存在しイオンが関わるあらゆる生理現象に関わっている多様なタンパク質である。その中で、電位依存性水素イオン(プロトン)チャネルHv1/VSOP(Voltage Sensor Only Protein)は、膜電位を感知するセンサーとイオンが透過するポア(細孔)を兼ねる4つの膜貫通領域で構成されているという特徴がある。VSOPの発見者であり命名者である阪大の岡村泰司は、今回、阪大蛋白研の中川敦史等と共同でプロトンを通さない静止状態にあるVSOPの立体構造を決定した(PDB ID: 3WKV)。"その構造は,4つの膜貫通領域のうち,膜電位センサーのスイッチである4番目の膜貫通領域が細胞質にあるコイルドコイル領域とひとつながりの長いヘリックスを形成した,閉じた和傘のようなかたちであった。細胞の外側にはVSOPのプロトンチャネル活性を阻害するZn2+が結合し,4番目の膜貫通領域は静止膜電位の状態の負電荷により細胞の内側にシフトし,脱分極変化を感受することができるような位置にあることがわかった。また,プロトンの透過経路は内部にある2つの疎水性バリアにより水分子の侵入をふさぐことで閉じており,VSOPは静止状態においてプロトンを漏洩しないような巧妙で厳密な制御機構をもつことが示唆された。(ライフサインエンス新着論文レビューより転載・一部改変)"
【注1】ライフサインエンス新着論文レビュー「電位依存性プロトンチャネルの結晶構造」 2014年3月27日 c 竹下浩平・岡村康司・中川敦史 Licensed under CC 表示 2.1 日本
【注2】本研究の一部は文部科学省のターゲットタンパク研究プログラムならびに創薬等支援技術基盤プラットフォーム事業の支援を受けた。
原著論文→ Takeshita K.et al. . Nat Struct Mol Biol. April 2014;21(4):352-357. Published online 02 March 2014 -
タンパク質の構造モチーフを高感度で検出する新たなプログラム"Motif Analyzer"
タンパク質におけるαヘリックスやβストランドなどの二次構造要素(secondary structure element; SSE)の情報は、タンパク質の構造・機能予測にとって有力な手がかりを与える。今回、モスクワ大学生物物理化学研究所のEvgeny Aksianovは、SSEとしてβストランドだけを含むかまたはβストランドとαヘリックスが連なったタンパク質における構造モチーフ(超二次構造)を、高感度で検出可能な"Motif Analyzer (MotAn)"を公開した。MotAnの特徴は、SSEのタンパク質配列(一次元配列)における並び順と空間的配置とを表現する表記法を使用し、DSSPやSTRIDEよりも優れているとする"SheeP"によってβシートを検出し、βシート同士あるいはβシートとαヘリックスとの空間的配置をプログラム"ArchiP"で判定し、加えて、タンパク質の分類に決定的な二次構造となる"core"と二次構造要素を連結するループ部分などに存在する小さなSSEである"phantom"を区別しているところである。SCOPドメインを使った検証では、MotAnは、PGRLとProMotifよりも高感度であった。また、MotAnによる解析結果の解釈において、著者はSCOP分類の曖昧な点も指摘している。
原著論文→ Aksianov E. Motif Analyzer for protein 3D structures. J Struct Biol. 2014 Apr;186(1):62-7. Available online 4 March 2014.
MotAnのWebサイト→ http://mouse.belozersky.msu.ru/motan -
アルツハイマー病の特徴であるアミロイドβ1-24タンパク質が鉄(Fe)に働きかける機序が明らかになった
アルツハイマー病(AD)の発症機序と病理にはまだまだ謎が多いが、アミロイドβタンパク質(Aβ)とよばれるペプチドの蓄積がその特徴であることは広く受けいられている。また、蓄積が起きる部位の重なりなどAβと鉄の相関を示唆する現象が見出されてきたが、両者の相互作用の実体は明らかにされていなかった。今回、英国Keele大学のN. D. Telling等は、in vitroの実験によって、AβがFe(III)を取込み・蓄積してFe(II)へと還元すること、加えて、アルミニウムがこの還元効率を高めることを見いだした。このFe(II)からフェントン反応によって生じる活性酸素が与える酸化ストレスによって、ADの病理である神経細胞の損傷を引き起こすと考えらることから、Fe(II)やアルミニウムをターゲットとするAD治療法の可能性が見えてきた。これらの分析の根拠となるデータは、Diamond Lite Source synchrotronとAdvanced Light SourceにおけるX線吸収分光法(XAS)とX線磁気円二色性分光(XMCD), Swiss Light Sourceにおける走査型透過X線顕微鏡(STXM)、ならびに透過電子顕微鏡法そして分光測色法によるFe(II)の定量によって得られた。
原著論文→ Everett J, Cespedes E, Shelford LR, Exley C, Collingwood JF, Dobson J, van der Laan G, Jenkins CA, Arenholz E, Telling ND. J R Soc Interface. 2014 Mar 26;11(95):20140165.
ニュースリリース→ A bright light for science New & Features -
脳研究を進展させる新たな情報資源BrainSpan Atlas(アトラス)
米国Ed S. Lein等の研究コンソーシウムは、ヒト胎児の脳の解剖学的データとトランスクリプトームデータを網羅したBrainSpan Atlas(アトラス) of the Developing Human Brainを構築し、マウスの脳やヒト成人の脳のアトラスと比較することによって、脳の発達について新たな知見を得た。このBrainSpanアトラスには、死産後に適正な手続きに則って研究対象とすることができた受胎後15週、16週ならびに21週の胎児の脳の組織からレーザーマイクロダイセクション法で得た300種類の部位について、「in situハイブリダイゼーション、超高精度なMRI(核磁気共鳴画像法)、そしてマクロアレー解析」の測定データが、網羅されている。アトラスの比較によって、ヒトとマウスの間で脳の発生段階で現れる一過性のサブプレートには大きな差異があることを確認できた。一方で、脳室下帯(subventricular zone; SVZ)において、マウスにも存在する内側の部位(inner SVZ)とマウスには存在しない外側の部位(outer SVZ)の間には大きな差異を見いだせなかった。Ed S. Lein等は、非コード保存領域(conserved non-coding sequence)近傍の遺伝子の発現や自閉症に関連する遺伝子が発現する時期と部位の解析も行った。BrainSpanアトラスは一般公開されており、今後、脳の発生と進化、脳神経系の疾患などの研究にとって貴重な情報資源となっていくことであろう。
原著論文→ Miller, JA et al. Transcriptional landscape of the prenatal human brain. Nature advance online publication. Published online 2 April 2014.
データベース→ BrainSpan Atlas of the Developing Human Brain -
自然免疫におけるRNA分解の機序を、RNase Lの立体構造から明らかにする
ウイルスに侵入された宿主は、「ウイルスの二重鎖RNA(dsRNA)を感知→細胞インターフェロンを分泌→2-5A合成酵素誘導→2-5A合成→RNase L活性化→ウイルスのdsRNA切断」の段階を経て、ウイルスに対抗する。この自然免疫において重要な役割を果たすRNase Lの構造解析が試みられてきたが、今回、プリンストン大学のAlexei Korennykh等は、RNase L、2-5A、ヌクレオチドならびに18個のRNAヌクレオチドのオリゴマー(RNA 18)の共結晶を得て、ヒトのRNase L(残基21~719番)の構造を決定した。RNase Lは、アンキリンリピート(ANK)、pseudokinase(KH)およびKENの3種類のドメインを持っているが、活性状態ではANKとKHドメインによって安定したホモ二量体を形作ることで、非対称なRNAを認識し切断する2つのKENドメインを位置決めしていた。二量体の一方のKENドメインがウリジンを認識してRNAに結合し、もう一方のKENドメインがdsRNAを切断する。
原著論文→ Han Y, Donovan J, Rath S, Whitney G, Chitrakar A, Korennykh A. Structure of human RNase L reveals the basis for regulated RNA decay in the IFN response. Science 2014 Mar 14;343(6176):1244-8. Published Online February 27 2014 -
コンピュータモデリングによって、ウイルスのエピトープに特異的なワクチン設計が夢から現実になった
RSウイルスは乳幼児に重篤な呼吸器系の感染症(respiratory syncytial virus infection)を引き起こす。一方で、一般に予防薬の標的になりうるエピトープ(neutralization epitope)が知られている場合でもウイルスや病原菌であっても、従来の手法では有効なワクチンを作出することが困難であった。今回、スクリプス研究所のWilliam R. Schief等は、コンピュータプログラム Fold From Loops (FFL) を開発して、3ヘリックス束状(PDB 3LHP, chain S)をテンプレートとして、RSウイルスのエピトープ(PDB 3IXT, chain P)に対する足場タンパク質の設計を試みた。コンピュータで生成した40,0000種類の構造からプログラムによるフィルタリングと専門家による最適化によって、RSウイルスの中和エピトープの構造を正確に模した足場タンパク質を得た。この足場タンパク質は、ヒトの良いモデルであるアカゲザルにおいて、RSウイルスに対する中和抗体を誘導できたことから、RSウイルスに対するワクチン開発への道が拓けた。また、今回実証した手法は、RSウイルスだけでなく、HIVやインフルエンザウイルスに対するワクチン開発にも展開可能である。
原著論文→ Correia BE et al. Proof of principle for epitope-focused vaccine design. Nature 2014 Mar 13;507(7491):201-6. Published online 5 Feb 2014. -
コンピュータモデリングによって画期的に高効率な酵素の設計に成功した
ケンタッキー大学のChang-Guo Zhan等は、コンピュータモデリングによって、ヒトのブチリルコリンエステラーゼ(BChE)に部位特異的変異誘導によって得た変異体から、コカインを特異的に高い効率で分解する酵素E30-6 を作出することに成功した。E30-6の触媒効率は、アセチルコリンを分解する効率が最も高いことで知られているヒトのアセチルコリンエステラーゼの効率に達した。また、E30-6を事前に投与したマウスは、致死量のコカインに晒されても生存することを示した。このコンピュータモデリングは2段階で行われた:コカインのカルボニル酸素と、酵素のオキシアニオンホールとの間の水素結合総体の強度に注目して、考えられる限りのBChEの変異体から候補をin silicoスクリーニング;第一段階で得られた候補をQM/MM-FE計算で最適化。
原著論文→ Fnag Z. et al. A highly efficient cocaine-detoxifying enzyme obtained by computational design. Nat Commun. Mar 18;5:3457. Published online 18 Mar 2014. -
抗原に結合したIgGは6量体を形成することによって補体系を活性化する
2001年には、IgGのFc部位がリング状の6量体を形成することが、HIV-1 gp120の抗体IgG1-b12の構造解析によって明らかにされていた。今回、ユトレヒト大学のPiet GrosとGenmab社の Paul W. H. I. Parren等は、抗原に結合しているIgGに補体C1が結合している状態をクライオ電子線トモグラフィーで観察するなどして、6量体と補体系カスケードの活性化の関係を明らかにした。すなわち、抗原に結合した抗体は、Fc部の非共有的結合性の相互作用によって6量体を形成し、IgGのC1に対するアフィニティーが高まって補体C1をリクルートするところから補体系のカスケードの活性化が始まる。したがって、Fc部位の相互作用の制御によって補体系を制御し、ひいては高効率の抗体薬を開発する道筋が見えてきた。
原著論文→ Diebolder CA et al. Complement Is Activated by IgG Hexamers Assembled at the Cell Surface. Science 2014 Mar 14;343(6176):1260-3. -
p62/SQSTM1/は最もよく知られているオートファジーの基質の一つであるため、オートファジーによる分解の指標として広く使用されている。東京大学大学院医学系研究科水島研究室のMayur Sahani等は今回、たしかにp62はアミノ酸飢餓の初期にはオートファジーにより分解されて、その存在量が減少するが、マウス胎児線維芽細胞とHepG2細胞の場合、4時間以上の長期飢餓に晒すとp62のタンパク質量が通常レベルにまで回復することを見出した(一方で、HeLaやHEK293細胞では回復が起きなかった)。またこの回復が、p62 の転写発現誘導と、オートファジーによって産生されるアミノ酸に依存することを明らかにした。本研究は、p62の発現レベルとオートファジー活性とは常に逆相関を示すとは限らないことを示している。また、オートファジーによって産生されるアミノ酸が飢餓時のタンパク質合成に必要であることを哺乳類培養細胞で示唆した初めての報告と考えられる。
【注】本稿は水島昇教授ご提供の和文アブストラクトに準拠しております。
原著論文→ Sahani MH, Itakura E, Mizushima N. Expression of the autophagy substrate SQSTM1/p62 is restored during prolonged starvation depending on transcriptional upregulation and autophagy-derived amino acids. Autophagy March 2014;10(3):431-441. Published online 3 Jan 2014 -
米国ユタ大学とUtah Science Technology and Research (USTAR) イニシアティブからの資金600万ドルを得て、ユタ大学のMark YandellとGabor Marthが率いるUSTAR Center for Genetic Discoveryが設立された。センターはカリフォルニアのOmicia社と共同で、Yandellが開発した疾患遺伝子同定システムVAASTを組み込んだ情報プラットフォームOpalの構築を進める。センターはまた家系情報と健康情報を蓄積してきたUtah Genome Projectの研究者とも連携する。WebベースのOpalによってゲノム解読を臨床の現場で日常化することを目指すが、データ解析パイプラインの商品化も計画している。
News and Announcement→ University of Utah Health Care. From DNA to Diagnosis: U of U, USTAR Center for Genetic Discovery to Integrate Genome Data into Patient Care. Mar 18, 2014. -
ロックフェラー大学のAndreas Keller等はヒトは1兆種類以上のにおいを判別できるとScience誌で報告したが、その精神物理学(psychophysics)実験は次のように行われた。においの種類を広くカバーすると思われる128種類のにおい分子(化合物)を選定し、そのうちの10分子、20分子、または30分子からなる混合物を用意する。このとき、同数の分子からなる混合物のセットにおいて、共通の分子の割合を0%から90%以上まで変えておく。この共通の分子の割合が異なる2種類の混合物を、26人の被験者が判別できるか否かを見ていった。被検者ごとの個人差はあったが、共通分子の割合と判定の成否の相関関係の分析結果から、ヒトは少なくとも1兆種類以上のにおいを判別できるという結論を導いた。今後、におい分子とにおいの種類の関係やヒトが数百ある臭覚受容体を使ってにおいを判別している機序についてさらに明らかにされていくことが期待される。なお、報告には引用論文をもとに「ヒトは、波長390nm~700nmの範囲で230~750万種類の色を識別でき、20~20,000Hzの周波数領域においておよそ34万種類の音を聞き分けることができる」と記載されている。
報告→ Bushdid C, Magnasco MO, Vosshall LB, Keller A. Humans can discriminate more than 1 trillion olfactory stimuli. Science 2014 Mar 21;343(6177):1370-2. -
結核菌の薬剤排出能を超える結核薬を天然物由来の抗生物質から半合成する
米国St. Jude Children's Research HospitalのRichard E Lee等は、天然物(Streptomyces spectabilis)由来の抗生物質スペクチノマイシンと結核菌Mycobacterium tuberculosisとの複合体構造をホモロジーモデリングし、その立体構造を手掛かりに同定したスペクチノマイシンにおける修飾可能な部位を利用して16種類の誘導体を合成し、Glide法によるin silicoドッキングと分子動力学シミュレーションによって、抗結核菌に最適化したリード化合物3種類を得た。こうしてスペクチノマイシンから半合成したspectinamides(スペクチナミド)は、多剤排出ポンプRv1258cによる細胞外への排出を回避することで、多剤耐性菌を含む多様な結核菌に対して活性を示し、薬剤動態にも優れていた。スペクチナミドはまた、細胞毒性を示さず、交差耐性を起こさず、結核菌特異的に活性を示した。すなわち、他のグラム陽性菌ならびに薬剤排出ポンプのTolCタンパク質を欠損した大腸菌を除くグラム陰性菌には活性を示さなかった。スペクチナミドの創出は薬剤排出の回避に基づく抗結核菌薬を半合成していく第一歩であり、また、マウスで実証した成果ではあるが、臨床展開を進めつつある。
原著論文→ Lee RE. et al. Spectinamides: a new class of semisynthetic antituberculosis agents that overcome native drug efflux Nature Medicine 2014 Feb;20(2):152-8. Published online 26 Jan 2014.
News & Views→ Barry CE. Tuberculosis: Drug discovery goes au naturel. Nature 2014 Feb 27;506(7489):436-7 -
タンパク質キナーゼ阻害剤と標的キナーゼの多重な関係を腑分けする
タンパク質キナーゼの阻害剤(protein kinase inhibitor)は抗がん剤の候補として注目を集め、薬剤として承認された例も出てきたが、標的キナーゼが非特異的(polypharmacology)であることで悪名高い。ハーバード大学医学大学院システム生物学のMarc W. Kirschner等は、機械学習(エラスティックネット型正則化)、遺伝子発現プロファイル、阻害剤の既知データならびに遺伝子欠失実験を組み合わせて、32種類のキナーゼ阻害剤がそれぞれ6種類の細胞の遊走に与える影響を分析した。その過程で、抗がん剤の新たな標的になりうるキナーゼを同定することもできた。本研究は、ドライとウエットの融合によって、polypharmacologyを解き明かすことが可能なことを示している。
原著論文→ Taranjit Singh Gujral1, Peshkin L and Kirschner MW. Exploiting polypharmacology for drug target deconvolution PNAS Early edition March 19, 2014 -
転写因子Sox2とOct4がDNAに結合するまでを一分子追跡した
The Howard Hughes Medical InstituteのZhe Liu等は、顕微鏡(Nikon Eclipse Ti)による2次元の一分子追跡(single-molecule-tracking: SMT)と3次元のSMT、動力学モデル、機能喪失変異実験、ChiP-exo法によるゲノム全域にわたる転写因子結合部位の精密マッピングを総合して、マウスのES細胞において、多能性維持に働く転写因子Sox2とOct4がDNAに結合していく様式を明らかにした。Sox2は、12~16秒間の特異的結合に至るまでに0.75~0.9秒間の非特異的結合を平均84~94回繰り返している。この探索は、およそ3.7秒間の3次元空間での移動とそれに続くごく短時間のDNA鎖上のスライドによって行われる。Sox2とOct4のDNA結合には順番があり、およそ75.3%の割合でSox2がOct4に先行する。特異的結合の時間は非特異的結合よりも長時間であるが、頻繁な非特異的結合によって、ハイスループットな結合部位同定実験結果には、生物学的意味を持たない見かけ上の結合部位が多数含まれると考えられる。
原著論文→ Chen J. et al. Single-molecule dynamics of enhanceosome assembly in embryonic stem cells. Cell 2014 Mar 13;156(6):1274-85. -
ブリティッシュコロンビア大学のYu Tian Wang等は、膜透過性をもたらすドメイン、標的タンパク質に結合するドメインおよびシャペロン介在性オートファジー(Chaperone-mediated autophagy: CMA)へとタンパク質を誘導するモチーフの3つの部位で構成したペプチドによって、標的タンパク質をリソソームで分解できるという仮説をたて、実験を行った。その結果、ラットのα-synuclein(19 kDa)、DAPK1(19 kDa)、シナプス足場タンパク質のPSD-95ならびにα-synucleinの病原性変異体(A53T)において、仮説を実証することができた。本手法では、タンパク質結合ドメインの配列によって標的タンパク質を精密に選択でき、ペプチドの量によって分解が続行する時間を制御でき、また、比較的短時間でノックダウンが始まる。遺伝学的手法やウイルスベクターを必要としない本手法は、従来の手法の欠点を克服した優れたタンパク質発現制御法であり、タンパク質の機能に関する基礎研究から安全な臨床応用まで可能性が広がっている。
技術報告→ Fan, X. et al. Rapid and reversible knockdown of endogenous proteins by peptide-directed lysosomal degradation. Nat. Neurosci. (2014) 17(3)471-480. Published online 26 January 2014
RESEARCH HIGHLIGHT→ Pastrana, E. Molecular engineering: Knocking down Goliath. Nat. Meth. (2014) 11(3):232. Published online 27 February 2014 -
DNAヌクレアーゼCas9-標的DNA-single-guide RNAの三者複合体の構造解析
2012年6月28日、ゲノム編集ツールとして注目を集めているCRISPR-Casシステムの論文がScience誌オンライン版に掲載された。それから1年半余り経った2014年2月6日、DNAが編集される場であるDNAヌクレアーゼCas9単体の構造を解析した論文が、再びScience誌オンライン版に掲載された。その1週間後の2月13日、Cas9とその標的となるDNA、そして標的DNAをCas9に導くガイドRNAの三者複合体の構造を解析した論文がCell誌オンライン版に掲載された。Cell論文については、筆頭著者西増弘志と責任著者濡木理が自ら執筆した日本語レビューをライフサイエンス新着論文レビューのサイトで閲覧できる。そこには、研究成果が「Cas9-ガイド鎖RNA-標的DNA三者複合体の結晶構造を2.5Å分解能で解明した.結晶構造および変異体の解析から,1)Cas9は2つのローブから構成されること,2)ガイド鎖RNAと標的DNAからなるヘテロ2本鎖は2つのローブのあいだに結合すること,3)HNHドメインおよびRuvCドメインの2つのヌクレアーゼドメインはそれぞれ,標的2本鎖DNAの相補鎖および非相補鎖を切断するのに適した位置に存在すること,4)Cas9のC末端領域はDNA切断に必須の塩基配列であるPAMの認識にかかわること(c 2014 西増弘志・濡木 理 Licensed under CC 表示 2.1 日本)」と要約されているが、2012年6月28日に口火が切られたCRISP-Casシステムを巡る激しい研究競争も活写されている。
ライフサイエンス新着論文レビュー→ 西増弘志・濡木 理. as9-ガイド鎖RNA-標的DNA三者複合体の結晶構造. 2014年2月24日
原著論文→ Nishimasu H. et al. Crystal structure of cas9 in complex with guide RNA and target DNA. Cell 2014 Feb 27;156(5):935-49 -
CRISPR/Cas9技術のさらなる広がりを目指すInnovative Genomics Initiativeが設立された
UC BerkelyのJennifer Doudna等が開発したCRISPR/Cas9技術は、2012年の発表時にスイスアーミーナイフにも例えられたように、簡便・効率的・多用途な革命的ゲノム編集技術である。UC Berkeleyは2014年3月18日のニュースで、香港の李嘉誠基金會からの寄附金1,000万ドルを得て、UCSFとともに、CRISPR/Cas9技術を核とするInnovative Genomics Initiative(IGI)を設立したことを発表した。IGIの目的は、ゲノム編集に関する研究・技術開発の促進と成果の普及であり、地球上のバクテリアとアーケアから新たなゲノム編集手法の知恵を引き出すことから、California Institute for Quantitative Bioscience(QB3)と連携したベンチャー企業育成に至るまで視野に入れている。
ニュースウオッチ欄関連記事→ ゲノム編集ツールCRISPR/CasシステムにおけるCas9タンパク質の構造と変容が解明された -
IBMのコグニティブシステムWatson、個別化医療にチャレンジ
IBMは2011年に米国の人気クイズ番組『ジェパディ!』(Jeopardy!)でチャンピオンに勝利した後も質問応答システムWatsonの研究開発を進め、2014年1月9日にはIBM Watson Groupを設けて、Big Dataから洞察をもたらすとするサービスを本格的に展開し始めた。同年3月19日、IBMはNew York Genome Center(NYGC)と共同で、クラウド型のWatsonを、今後がんの個別化医療に応用していくことを発表した。Watsonは、自然言語処理と高速の計算処理、そして巨大なデータベースを組み合わせたシステムであるが、NYGCとのプロジェクトでは、遺伝情報、臨床データ、日々発表される論文などを包含するデータベースを構築し、データが蓄積されるほどWatsonからの解が高精度になるとされている。
[注1]IBMはNYGCのFoundating Technology Memberである。
[注2」Watsonの名称は、John H. WatsonでもJames D. WatsonでもなくThomas J. Watson由来である。
ニュース・リリース→ IBM. The New York Genome Center and IBM Watson Group Announce Collaboration to Advance Genomic Medicine. 19 Mar 2014
ワークショップ(動画)→ The New York Genome Center. Revolutionizing Genomics and Personalized Medicine with IBM Watson. March 19, 2014 -
BRCA1遺伝子についてはDNA修復に関わるがん抑制遺伝子として盛んに研究が行われ、また、その変異と乳がんや卵巣がんとの関連については一般にも良く知られている。今回、米国ソーク研究所のInder M. Verma等は、放射線によるDNA切断の影響を受け易い神経幹細胞においてBRCA1が果たしている役割を明らかにした。著者等は、神経幹細胞に限定してBRCA1を欠損させたモデルマウスにおいて、その発生から成熟までの過程で、脳の層状組織が欠損・無秩序化し、脳全体の容積が縮小することを見出した。その上で、BRCA1欠損マウスの脳に起きた異常の原因が、DNA修復の不全から誘導されたp53依存経路によって細胞の増殖速度を上回るアポトーシスが起きることであることを明らかにした。また、BRCA1とp53のダブルノックアウトマウスにおける改善が部分的に留まったのに対して、BRCA1とATMのダブルノックアウトマウスは野生型の表現型を示すに至ることを見出した。今後、BRCA1遺伝子については、ヒトにおける脳形成との関連を対象にした研究も広がっていくものと思われる。
原著論文→ Pao GM et al. Role of BRCA1 in brain development. Proc Natl Acad Sci U S A. Early edition January 29, 2014.
関連論文→ Pulvers JN and Huttner WB. Brca1 is required for embryonic development of the mouse cerebral cortex to normal size by preventing apoptosis of early neural progenitors. Development 2009 Jun;136(11):1859-1868. -
活性部位から離れた部位に起きた変異・変化が活性に大きな影響を及ぼすことなどから「タンパク質は、然るべき時と場所において素早く形を変えて役目を果たす。これは、タンパク質が分子全体として(long-range)振動しているからこそである」という仮説が、初めて実験的に確かめられた。ニューヨーク州立大学バッファロー校のAndrea Markelz等は、新たにcrystal anisotropy terahertz microscopy (CATM)を開発して、卵白から抽出したリゾチームにおいて10cm-1以上の固有周波数の振動が続いていることを発見した。CATMは、周波数がテラヘルツ領域の光を使った近接場光学顕微鏡であり、結晶を乾燥させたり低温に冷やすことなく、異方性があるタンパク質の集団振動モード固有の振動数を測定可能とする。今後、CATMの普及とともに、振動モードと機能との相関の解明と応用が広がっていくであろう。
原著論文→ Acbas G, Niessen KA, Snell EH, Markelz AG. et al. Optical measurements of long-range protein vibrations. Nature Communications 2014/01/16/online -
本ニュースウオッチ欄では、2014年1月30日「体細胞は酸性浴で生まれ代わる」と1月31日「酸による処理が幹細胞技術にブレークスルーをもたらした」の2回にわたって、RIKEN発生・再生科学総合研究センターのHaruko Obokataとハーバード大学医学大学院Brigham and Women's HospitalのCharles A. Vacanti等によるSTAP細胞の研究成果を紹介した。その後、研究論文に対する疑義が指摘され続けたことから、理化学研究所は調査を開始し3月14日に「データの取扱いに不適切な点はあったが、研究不正には当たらないと判定したこと;継続して調査が必要とした4つの項目があること」を要点とする中間報告を行った。各種マスコミの報道によると筆頭著者Haruko Obokataを始めとする著者の多くが論文取り下げを申し出ているが、Charles A. Vacantiはそれに合意していないとのことである。STAP論文が掲載されたNature誌と独立に編集されているNature Newsは、記者会見を詳報したブログにおいて「著者全員が同意しない場合でも、Nature誌の判断で論文を取り下げる可能性がある」と記している。
本件から得たものがあるとすれば、インターネットが具現化したcollective intelligence(集団的知性;集合智、集合知)が機能し、ひいては、ラボからジャーナルまでの全過程においてプロトコールとデータを公開することの価値と必要性が示されたことかもしれない。いずれにしても、本サイトとしては今後、信頼に足る研究成果をニュースウオッチ欄に掲載していくよう努めたい(ニュースウオッチ欄に対するコメントを p4d-info[at]nig.ac.jp 宛てにお寄せ下さい([at]を@に置き換え、全て半角にしてからメールアドレスとしてご利用下さい))。
プレスリリース→ RIKEN. 研究論文(STAP細胞)の疑義に関する調査中間報告について. 2014年3月14日
RIKENの記者会見報道の一例→ Reay D. Confusion as institute releases report on controversial acid-bath stem-cell papers. Nature News Blog 14 Mar 2014
発表された論文に対する再実験検証とpeer review→ v Noorden, R. The new dilemma of online peer review: too many places to post? Nature News Blog 14 Mar 2014 -
理研、膨大な遺伝子データの統合解析を可能にしたバイオインフォマティクス・ツールZENBU提供開始
理研のAlistrair Forrest等は、RNA-seq、ChIP-seq、DHS-seq、CAGE由来の遺伝子データから生命現象に関する情報・知識抽出を支援するツールZENBUを開発し、2014年3月9日から提供を開始した。ZENBUは、データの登録・編集・前処理・解析・可視化・対話型インターフェースと「全部入り」のツールであり、その性能は、EONCODE, FANTOM3ならびにFANTOM4といったプロジェクト由来の5TBに及ぶデータを対象として検証された。ZENBUはオンラインでもローカルにも使用可能(注:配列解析とプロジェクトの略号については、理化学研究所プレスリリースの補足説明をご参照ください)。
投稿記事→ Severin J. et al. Interactive visualization and analysis of large-scale NGS data-sets using ZENBU Nature Biotechnology 2014 Mar;32(3):217-129
プレスリリース→ 理化学研究所. 新しいバイオインフォマティクス・ツール「ZENBU」を開発―ゲノム上の数千もの転写活性を視覚化、解析し、データを共有―. 2014年3月10日 -
米国において、加齢に関する遺伝疫学研究(Genetic Epidemiology Research on Aging; GERA)プロジェクトの成果である「多様な民族を含む平均年齢63歳の78,000人以上の遺伝型(genotypes)と表現型(phenotypes)」が、2014年2月27日にNCBIのdbGaP(the database of Genotypes and Phenotypes)から研究者に向けて公開された。GERAは、NIHのGrand Opportunities枠のファンド2,500万ドルを受けた米国最大規模の医療保険グループKaiser Permanente(非営利法人)とUCSFによって2009年から進められて来た。GERAの背景には、疾患につながる遺伝的要因と環境要因を解明する事を目的としたKaiser PermanenteのResearch Program on Genes, Environment, and Health(RPGEH)があった。RPGEHにはKaiser Permanente Northern California systemのメンバー43万人の健康・医療情報が蓄積され、20万人については唾液サンプルも集積されてきた(会員からは研究へのデータ利用について事前合意を得ている)。こうして、dbGaPを介して、比較的高齢な集団を対象とする表現型と遺伝型の統合的解析が可能になった。
ニュースリリース→ National Institute of Health (US) News & Events February 26, 2014
GERA報告会ビデオ(5時間強)→ A Grand Opportunity: Developing a Resource for Genetic Epidemiology Research in Adult Health and Aging (GERA) -
アフィニティー精製質量分析法の大量データからタンパク質のsubcomplexを同定する
近年、アフィニティー精製と質量分析の組み合わせ(AP-MS)によってタンパク質複合体に関するデータをハイスループットで入手できるようになった。これまで、AP-MSの大量データから、タンパク質複合体を精確に検出することを目的として、データマイニングの手法が工夫されてきた。これに対して、アラブ首長国連邦のN. ZakiとイタリーのA. Moraは、subcomplex(部分複合体)の検出を目的として新たなデータ解析手法TRIBALを開発した。ここでいう部分複合体は、転写因子TFIIHにおけるTFIIKのように、より大きな複合体の機能部品となっている複合体を意味する。TRIBAL法の特徴は、アフィニティー精製において共精製されてくるタンパク質ペアのプルダウン・リストを解析対象とし、複合体のつながりで形成されるネットワークにおいて多重のエッジを許すところにある。全般的に既存のCACHET法が優れた結果を出したが、より大きな複合体に完全に包含されている部分複合体の検出に関してはTRIBAL法も採用するに値した。
原著論文→ Zaki N and Mora A. Sci Rep 2014 Mar 3;4:4262
参考文献→ Gibbons BJ et al. Subunit architecture of general transcription factor TFIIH. Proc Natl Acad Sci U S A. 2012 Feb 7;109(6):1949-54. -
ヒストンタンパク質H2Aの変異体H2A.Bがクロマチン再編成過程に一過性のヌクレオソームをもたらす
ヌクレオソームを構成するコアのヒストンタンパク質の一つH2Aには、非対立遺伝子由来の変異体H2AB(H2A Barr body-deficien (H2A.Bdd))が存在する。早稲田大学の胡桃坂仁志と大阪大学の木村宏等は、H2ABは、転写が起きている部位だけでなくDNAの複製や修復が行われている部位にも一時的に集積しすぐに通常型のH2Aに置換されることを見出した。また、ヒトのヒストンタンパク質と5種類の長さのDNA断片(116, 124, 130, 136および146塩基対)を組み合わせたヌクレオソーム再構築実験を行って、比較的短い(116と124塩基対)DNA断片の場合、H2Aを含むヌクレオソームでは六量体だけが形成されたのに対して、H2ABでは六量体に加えて八量体も形成されることを見出した。加えてX線小角散乱解析によって、H2Aを含む八量体に比べてH2ABを含む八量体がより空間的に広がっていることを見出した。これら特徴を持ったH2ABが、比較的短いDNA断片を含む一過性のヌクレオソームを形成するものと考えられる。
原著論文→ Arimura Y. et al. Structural basis of a nucleosome containing histone H2A.B/H2A.Bbd that transiently associates with reorganized chromatin Sci. Rep. 2013/12/16/online -
Harvard Medical SchoolのG. M. Church等は、2003年に発表しゲノム解析やトランスクリプトーム解析におけるDNAアンプリコン(ampricon)の配列決定に適用してきたfluorescent in situ sequence(FISSEQ)法を、細胞内のRNA配列決定へと展開した。この次世代FISSEQでは、「RNAの短い断片→逆転写→一本鎖cDNA→環状化→Rolling Circle Amplification(RCA)」の段階を経て形成されるDNA nanoballを対象として配列解析する。著者等が命名したDNA nanoballは、細胞内で元になったRNAの位置に形成される多量のcDNAアンプリコンから成る半径200~400nmの大きさの塊である。次世代FISSEQを、創傷からの治癒過程における初代線維芽細胞のin situ分析に適用した結果、同定した6,880の遺伝子から発現量が変動する遺伝子を12種類特定し、そのうち8種類は治癒との関連が知られていなかった遺伝子であることを見出した。本方法によって、組織切片から胚全組織標本に至るまで細胞内の位置を特定してRNA配列決定可能である。膨大な種類の細胞を判別するためのRNAバーコードを構築することも可能になった(読み取るRNA断片の長さ(塩基数)をNとすると4N種類の細胞を判別可能)。
→ Lee JH. et al. Highly Multiplexed Subcellular RNA Sequencing in Situ Science Published Online February 27 2014 -
遷移元素で抗体を標識する新たな免疫染色法によって100種類のマーカーを並行判別可能にした
スタンフォード大学Baxter幹細胞生物学研究所のG. P. Nolan等は、免疫染色法において、蛍光色素や酵素に替えて遷移元素ランタニドの同位体で抗体を標識し、イオンビームを照射して得られる二次イオンを測定するMultiplexed Ion Beam Imaging (MIBI)法を考案し、乳がんの病理組織標本の分析に適用した。1回目のイオンビーム走査(25分)で7種類のマーカー(エストロゲン受容体α、プロゲステロン受容体、Ki-67、E-カドへリン、HER2、二本鎖DNAならびに核を染色するヘマトキシリン)を同定し、2回目の走査で3種類のマーカー(ケラチン、ビメンチン、アクチン)を同定した。MIBI法のダイナミックレンジは5ケタにも及びまた原理的に100種類のマーカーまで判別可能である。今後、二次イオン分析装置の性能改善と抗体に結合する金属原子数を増加させる工夫によって測定をさらに高速化して、ホルマリンで固定しパラフィンで包埋した標本の病理検査を大幅に効率化することができる。
技術報告→ Angelo M. et al. Multiplexed ion beam imaging of human breast tumors Nature Medicine Published online 02 March 2014 -
ゲノム解析された乳がん検体を対象としたタンパク質・リンペプチドの網羅的解析データが公開される
米国のThe Cancer Genome Atlas (TCGA)においてゲノム解析が行われた乳がん検体を対象として、同国のClinical Proteomics Tumor Analysis Consortium (CPTAC)が iTRAQ (isobaric Tags for Relative and Absolute Quantification)法によって解析したプロテオームとリン酸化プロテオームのデータが、2015年5月26日に公開される予定である。同一検体由来のゲノム、プロテオーム、リン酸化プロテオームの統合解析から新たな成果が生まれることが期待される。なお、データをダウンロードするためには、ネットワークの帯域をフルに活用する商用の大容量ファイル転送ソフトウエアAspera Connect Clientのversion 3.0以上が必要とされている。
データポータルサイト→ CPTAC - Tumor Analysis (2011 - present) -
蛍光抗体を併用した共焦点レーザー内視鏡による膜結合型TNFのカウント結果から潰瘍性大腸炎薬の効用を予測する
フリードリヒ・アレクサンダー大学エアランゲン=ニュルンベルクのM. F. Neurath等は、25人のクローン病患者を対象として、フルオレセインでラベルしたヒト型抗ヒトTNF-αモノクローナル抗体製剤(アダリムマブ)を大腸内視鏡検査の際に局所的に散布し、共焦点レーザー内視鏡によって膜結合型TNF(mTNF)をin vivoで観察した。その結果、mTNF+の細胞数が多い患者の場合、アダリムマブの効用が12週で現れてしかも継続し、1年後の内視鏡検査で潰瘍が改善されていることを見出した。一方、この細胞数以外の指標ではアダリムマブの効用において生じる個人差を判別できなかった。クローン病に限らず、蛍光抗体による可視化は慢性炎症、自己免疫疾患、がんにおいても、個別化治療を進める上のツールとして有望である。
技術報告→ Atreya R. et al. Nature Medicine 2014 Mar;20(3):313-8 -
2014年3月4日の記者発表によると、ヒトゲノム解読で国際コンソーシウムと激しい競争を繰り広げ、その後、自らの名前を冠した研究所JCVIを設立するに至り、2007年には個人ゲノムを解読・公開したJ. Craig Venterが、7千万ドルの資金を調達してHuman Longevity Inc.(HLI)(直訳すると人間長寿株式会社)を設立した。HLIは、Metabolon Inc.、UC San Diego Moores Cancer CenterならびにJCVIと連携して、遺伝型、体内や皮膚におけるマイクロバイオーム、メタボローム、および臨床データを含む表現型を網羅したデータベースを構築する。HLIは、このデータベースのライセンス料と先進的な診断法と幹細胞治療などの画期的治療法の開発によって収益を上げていく目論みである。当面、すでに2セット購入した次世代シーケンサーIllumina HiSeq X Tenによって、年に40,000人のゲノム解読を実現していく。
プレスリリース→ Human Longevity Inc. (HLI) Launched to Promote Healthy Aging Using Advances in Genomics and Stem Cell Therapies -
2014年3月5日、米国NIGMSは"Genomes to Natural Products"の課題募集を開始した。これまでに上市された抗菌剤と抗がん剤の75%が天然物由来の生物製剤である。しかし、地球上のバクテリアと菌類の僅か1%程度しか分類同定されていない中で、生物製剤の開発はこれまで、培養可能な生物が産生し、かつアッセイ可能な量が得られる物質の枠内で行われてきた。そこでNIGMSは、ゲノム・メタゲノムの配列データと合成生物学の最新の成果を活かして生物製剤をハイスループットで発見・創成する新たな手法が必要と判断した。研究成果として、汎用的な生合成経路の発掘、分析、設計、開発を実現することが求められており、天然物からの有用物質探索、天然物の化学合成、大量生産への最適化などは今回募集の対象外である。募集の〆切は2014年6月10日、規模は2015年に2課題450万ドルである。
募集要項→ RFA-GM-15-001: Genomes to Natural Products
参考文献→ Miller SJ, Clardy J. Natural products: Beyond grind and find. Nat Chem. 2009 Jul;1(4):261-3. -
データ科学者(data scientists)が21世紀における"the sexiest job"であることを実証する絶好の機会が与えられた。Nature Geneticsは他のジャーナルとも共同で、多様なデータセットを組み合わせて解析することによって、細胞分化・運命決定に関する画期的な仮説をもたらす論文の募集を開始した。論文概要の〆切が2014年5月1日、審査後の本論文の〆切は同年9月1日である。仮説をウエットの実験で検証することは求められていないが、シミュレーションまたは研究開発に使用しなかったデータセットによる検証が求められている。また、成果である統合検索・解析システムが一般に活用されていくように、相互運用性の観点からBioSharing、the Global Alliance for sharing data、ELIXIR、米国NIHのBig Data to Knowledge initiativeなどのガイドラインに沿った評価も行われる。
論説→ Call for data analysis papers Nature Genetics. 2014 Feb 26;46(3):213 -
ネクロプトーシスによる細胞死かアポトーシスによる細胞死か、それを決めるのがRIPK3
腫瘍壊死因子の結合から細胞死に至るシグナル伝達経路には、一連のカスパーゼが関与するアポトーシスの経路と、受容体相互作用タンパク質キナーゼ(RIPK)のRIPK1とRIPK3が関与するネクロプトーシスの経路が存在するとされている。また、RIPK1に対する阻害剤ネクロスタチン1(necrostatin-1)を与えるか、RIPK3を欠損させることによって、ネクロプトーシスがもたらす症状が軽減されることが知られている。Genetech社のKim NewtonとVishva Dixit等は、RIPK1とRIPK3の不活性な変異体をそれぞれホモあるいはヘテロに発現させたモデルマウスを作成して、活性の有無と程度がモデルマウスに与える影響を分析し、RIPK3の活性はネクロプトーシスに必須であり、また、RIPK3がカスパーゼ8の活性化ひいてはアポトーシスによる細胞死を制御していることを見出した。RIPK3を標的とする創薬が示唆される結果である。
原著論文→ Newton K. et al. Activity of Protein Kinase RIPK3 Determines whether Cells Die by Necroptosis or Apoptosis.Science Published Online February 20 2014 -
2012年に米国NHLBIのNisha Narayan等はSIRT2がネクロプトーシスに必須であると発表した。したがって、SIRT2を標的としてネクロプトーシスを阻害すれば全身性炎症反応症候群等の炎症や変性疾患の症状を緩和できる可能性が出てきた。そこで、オーストラリアWEHIのJohn Silke等は9機関で独立にSIRT2に関する検証実験を行いその結果を短報として発表した。AGK2によるSIRT2の阻害、3種類のsiRNAによるSirt2遺伝子ノックダウン、そして、独立に樹立した2種類のSirt2-/-マウス系統の細胞、のいずれの場合も、ネクロプトーシスは阻害されず、また、Sirt2-/-マウスではむしろTNFに対する感受性が野生型よりも高まっていた。
短報(出典)→ Newton Ket al. Is SIRT2 required for necroptosis? Nature 506, E4?E6 (27 February 2014)
論文→ Narayan N. et al. The NAD-dependent deacetylase SIRT2 is required for programmed necrosis. Nature 2012 Dec 13;492(7428):199-204 -
SLC30A8遺伝子におけるありふれた変異(common variant)p.Trp325Argは2型糖尿病(type 2 diabetes; T2D)のリスクをやや高める事が知られていた。それに対して、Broad Institute のDavid Altshuler等の国際チームは、SLC30A8のまれな変異(rare variant)がT2Dのリスクを低減することを見出した。きっかけは、2009年に、フィンランド人とスエーデン人758名の中で、飲酒と喫煙の習慣があり、肥満かつ高齢であるにもかかわらずT2Dを発症していない集団からまれな変異を見出したことである。その後、1万人規模の集団のジェノタイピング、deCODE geneticsのデータベース探索、Genetics of Type 2 Diabetes (Go-T2D) ならびにType 2 Diabetes Genetic Exploration by Next-Generation Sequencing in Multi-Ethnic Samples (T2D-GENES) コンソンシーウムにおけるSLC30A8の配列解析へと研究を展開した。こうして得た多様な人類集団に属するのべ15万人近いデータ解析から、SLC30A8における12種類のまれな変異を特定し、これらの変異によって遺伝子産物である亜鉛トランスポーターZnT8の形が変わって機能を喪失し、T2Dのリスクを大幅に低減することを見出した。分子機構の解明がまだまだ必要であるが、本研究によって、ZnT8を阻害する観点からのT2D治療薬開発への道が拓けた。こうした変異による機能喪失が発症のリスクを低減する自然現象を真似た創薬の試みは、AIDS治療薬や高コレステロール血症治療薬の先例がある。
原著論文→ Flannick J. et al. Loss-of-function mutations in SLC30A8 protect against type 2 diabetes. Nature Genetics Published online 02 March 2014
Broad Institute プレスリリース→ http://www.broadinstitute.org/news/557 -
オートファジー遺伝子Atg16l1の一塩基多型がクローン病を引き起こす機序が明らかにされた
クローン病は消化管全域に炎症が起こる難病である。これまでに知られている150以上の関連遺伝子の中で、オートファジーのオートファゴソーム形成に必須の遺伝子Atg16l1のミスセンス変異がクローン病と強い相関を示すことが知られていた。今回、Genentech社のAditya Murthy等は、ヒトのATG16L1タンパク質の300番目のアミノ酸スレオニンがアラニンに変わった変異体T300A(マウスの場合はT316A)が炎症を引き起こす分子機構を明らかにした。すなわち、アミノ酸配列のアライメント解析から296〜299番のアミノ酸配列がカスパーゼ切断モチーフを形成しているところ、栄養飢餓、TNF-αのデス受容体への結合あるいは細菌Yersinia enterocolitica感染の信号を受けた経路で活性化されたカスパーゼ3によってT300Aの分解が亢進する。この分解によってオートファジーとゼノファジーが損なわれて細胞は栄養飢餓に応答できなくなり、除去されなかった細菌はサイトカインのTNF-αとIL-1βのレベルを上げる。こうして、遺伝型(点突然変異)が表現型(クローン病)として立ち現れることになった。
原著論文→ Murthy A. et al. A Crohn/'s disease variant in Atg16l1 enhances its degradation by caspase 3 Nature 2014 Feb 27;506(7489):456-62. Epub 2014 Feb 19. -
木版画の手法から着想した新たな細胞アレイ構築法BloC-Printing
米国ヒューストンのLidong Qin等は、最短30分でペトリ皿やスライドなどの基板上に生きた1細胞を最小5μm間隔のアレイ状に固定可能なBlock-Cell-Printing(BloC-Printing)法を開発した。本方法では、版画の版木にあたる基板上に、CADで設計した微細な流路の型(Bloc-Mold)をフォトリソグラフィーとポリジメチルシロキサン(PDMS)で構築する。Bloc-Moldは版木と同様に繰り返し利用する事が出来、加えて精密さを失わない。流路には12μmx10μmの大きさのフック状のトラップが設計されていて、版画の絵の具に相当する細胞培養液を流すとトラップごとに細胞一個が捕らえられる。その後、30〜60分インキュベートしてからPDMSを除去すると、正方格子状に限らず設計したパターンの細胞アレイが基板に残る。Qin等はこのBloc-Printing法を使って、複数種の細胞からなる多重アレイの作成、ギャップ結合依存性細胞間情報伝達(GJIC)解析に適したアレイの作成、がん細胞の細胞突起伸張と腫瘍形成能との相関判定、一次ニューロンの長期間(14日)維持と自己シナプス(autapse)や軸索突起と樹状突起の伸張観察、を実現した。
原著論文 → Zhang K. et al. Block-Cell-Printing for live single-cell printing. Proc Natl Acad Sci U S A. 2014 Feb 25;111(8):2948-53; Epub 2014 Feb 10. -
がん細胞の3次元培養体を使った化合物スクリーニングによって新たな分子機構による抗がん剤候補を発見
固形がんにおいて酸素と栄養が欠乏した微小環境に存在する休眠細胞(dormant malignant cells)は、既存の抗がん剤の攻撃をかわし、癌の再発を引き起こす元凶とみなされている。カロリンスカ研究所のStig Linder等の国際チームは、この休眠細胞を細胞死に誘導する化合物VLX600を発見した。三次元の球状に培養した大腸がんの細胞集団のコアの部分を休眠細胞のモデルとして10,000種類の化合物をスクリーニングした結果である。VLX600はミトコンドリアにおける酸化的リン酸化(OXPHOS)を抑制しHIF-1α依存的に解糖系を誘導する。このメカニズムは、グルコースが十分供給される環境のがん細胞や正常細胞の生存には貢献するが、栄養ひいてはATPが不足する微小環境にあるがん細胞を細胞死に導く。また、モデルマウスにおいて、VXL600と大腸がん治療薬であるイリノテカンの併用によって、がん細胞の増殖が抑制されることも確認された。休眠細胞を標的とする従来に無いタイプの抗がん剤として、第1相試験への準備が進んでいる。
原著論文→ Zhang X. et al. Induction of mitochondrial dysfunction as a strategy for targeting tumour cells in metabolically compromised microenvironments. Nature Communications 5:3295 (2014 Feb 18) -
2014年2月に構造生命科学ニュースウオッチ欄で、米国の独立系非営利組織Parkinson's Institute and Clinical Centerのバイオマーカー特定プロジェクトを取り上げたが、今回は、The Michael J. Fox Foundation for Parkinson's Research (MJFF) のParkinson's Progression Markers Initiative (PPMI)からの研究ファンドを紹介する。PPMIは2002~6年に行われた研究支援事業から始まり、現在では米欧の32の臨床機関が連携して、複数のコホートの臨床データとバイオサンプルを蓄積してきた。また、一定の条件のもとに外部へもデータとサンプルを提供してきた。2014年2月21日にPPMIは、MJFF、Alzheimer's Associationならびにカナダの財団The W. Garfield Weston Foundationと共同で、PPMIのデータと米国家プロジェクトであるAlzheimer's Disease Neuroimaging Initiative (ADNI)のデータを使用して、パーキンソン病、アルツハイマーその他の神経変性疾患に共通の発症メカニズムの仮説検証や有用なバイオマーカー発見を目指す研究課題募集を開始した。
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ノースカロライナ州立大学のC. L. Beisel助教の研究チームは、Escherichia coliのI-E CRISPR (clustered regularly interspaced short palindromic repeats)/Cas(CRISPR associated)システムにおいて、標的とする菌株のゲノムに特有な配列に基づいてCRISPRのspacersを設計することで、混合培養されている微生物集団の中から複数の菌種を選択的かつ定量的に死滅可能なことを示した。また近縁の菌株の選別も可能なことを示した。今後、環境中の微生物にCRISPR RNAをデリバリーする手段を開発することができれば、CRISPR/Casシステムは発酵工業、食品産業、衛生管理、医療などにおいて、微生物菌叢編集ツールとして必須のものになる。
原著論文→ Gomaa, AA. et al. Programmable Removal of Bacterial Strains by Use of Genome-Targeting CRISPR-Cas Systems. mBio 5(1):e00928-13. 28 Januray 2014
Research Highlight→ Microbiology: CRISPR takes out bacterial species Nature 506, 135 (13 February 2014)
参考文献(総説)→ Barrangou R, Horvath P. CRISPR: new horizons in phage resistance and strain identification. Annu Rev Food Sci Technol. 2012;3:143-62. Epub 2011 Dec 20. -
ゲノム編集ツールCRISPR/CasシステムにおけるCas9タンパク質の構造と変容が解明された
CRISPR (clustered regularly interspaced short palindromic repeats)/Cas(CRISPR associated)システムはバクテリアとアーケアには獲得免疫をもたらし、ヒトにはゲノム編集ツールをもたらした。しかし、その分子機構にはまだ不明なところがあった。チューリッヒ大学のM. Jinek助教等の国際チームは、Streptococcus pyogenesとActinomyces naeslundiiのCas9の構造をX線解析によってそれぞれ2.6Åと2.2Åの解像度で決定し、生化学実験と電子顕微鏡による単粒子解析も行って、Cas9がゲノムを編集する機序を明らかにした:Cas9は核酸分解酵素ドメインとC末端ドメインからなるローブ(lobe)と大きなα鎖のドメインで構成され、それぞれのローブに溝(cleft)が存在する;crRNA:tracrRNAが結合するとローブが向きを変えて2つの溝が向かい合い初めてDNAが結合可能なチャネルが現れる;DNAがチャネルに結合しprotospacer-adjacent motif (PAM) に依存したRループを形成した後、Cas9はさらに形を変えてターゲットのDNAを完全に包み込み、DNAを切断するに至る。
原著論文(出典)→ Jinek, N. et al. Structures of Cas9 Endonucleases Reveal RNA-Mediated Conformational Activation. Science 2014 Feb 6. [Epub ahead of print]
参考文献(CRISPR/Casシステムによるゲノム編集)→ Cong L, Ran FA, Cox D, Lin S, Barretto R, Habib N, Hsu PD, Wu X, Jiang W, Marraffini LA, Zhang F. Multiplex genome engineering using CRISPR/Cas systems. Science 2013 Feb 15;339(6121):819-23.Epub 2013 Jan 3. -
Rasタンパク質、調節因子そしてエフェクターの入り組んだ関係をNMRで読み解く
細胞内のシグナル伝達経路の要(ハブ)であるRasタンパク質は、GDPが結合した不活性状態からグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)によってGDPがGTPへと交換されると活性状態へ移行し、種々のエフェクターと結合して 下流の多様なシグナル伝達経路を活性化する。一方で、活性状態にGTase活性化蛋白質(GAP)が結合するとGTPがGDPへと加水分解されて不活性状態へ戻る。トロント(カナダ)のSmithとIkuraは、種々のエフェクターのRAS結合ドメイン(RAS binding domain; RBD)、GEF、GAPとRASが混在した状態をNMRで解析し、シグナル伝達の機序について新たな知見を得た:RBDのRAS結合性に一定の順位がある;がん化の変異(G12V)が起きているRASG12Vでは順位が変る;RBDの各濃度によって順位が変わる;RASへの結合においてエフェクターはGAPに対してもGEFの一種SOS1に対しても拮抗する。SmithとIkuraの手法は、Rasタンパク質のシグナル伝達経路に限らず、多数の分子が関わる細胞内システム一般の解析に応用できる。
原著論文→ Smith MJ, Ikura M. Nat Chem Biol. 2014 Mar;10(3):223-30. Epub 2014 Jan 19.
NEWS AND VIEWS→ Luchinat C, Parigi G, Ravera E. Nat Chem Biol. 22014 Feb 14;10(3):173-4. -
ライソゾーム病の一種であるゴーシェ病は、GBA遺伝子の変異による加水分解酵素グルコセレブロシダーゼ(glucocerebrosidase)の活性低下あるいは欠損によって引き起こされる。これまで300種類以上の変異が特定されてきたが、今回、ビクトリア大学(カナダ)のChoy教授等は、神経症状を伴わないI型ゴーシェ病の患者2名が、従来知られていたN370S変異(c1226A>G)の他に新奇な変異をもっていることを見出した。1名にはエクソン3でシステインからトリプトファンへの変異(C23W)が起きており、もう1名には、イントロン7の3末端の塩基GがAに置換(IVS7-1 G>A)されていた。前者は酵素のジフィルド結合に影響を及ぼし、後者はスプライシングの異常を引き起こすヌル対立遺伝子と考えられる。今後の早期診断のために、これらの新しい変異をRFLPでスクリーニングする手法も開発された。
原著論文(出典)→ Jack A, Amato D, Morris G, Choy FY. Two novel mutations in glucocerebrosidase, C23W and IVS7-1 G>A, identified in Type 1 Gaucher patients heterozygous for N370S. Gene 2014 Jan 13. pii: S0378-1119(14)00036-5. [Epub ahead of print] -
臨床データとオミックスデータの統合解析によるパーキンソン病のバイオマーカー発見へ
米国のパーキンソン病患者は現在100万人、今後毎年5万人のペースで増加すると言われている。米国の独立系非営利組織のParkinson's Institute and Clinical Centerは2014年2月18日、バイオ医薬品企業のBerg社と共同で、パーキンソン病の診断・治療に有用なバイオマーカーの発見に向かうと発表した。患者と対照群の尿、血液、皮膚組織などを分析し、そのマルチオミックス(プロテオミクス、メタボロミクス、リピドミクス)のデータと臨床データをBerg社のInterrogative BiologyTM Platformでマイニングすることによって、これまでの共同研究で見出されてきたバイオマーカー候補の評価選別へと進む。このデータ統合解析によって、病態の分子的機序を解明し、パーキンソン病の診断・治療に新たな展開をもたらすことを目指す。
プレスリリース→ Parkinson's Institute and Clinical Center February 18, 2014 -
2014年2月13日のNature誌に統合失調症に関する大規模なエキソーム解析の成果が2報発表された。一報はde novo変異(両親にはない新生突然変異)の観点からトリオ(623件の患者とその両親)のエキソーム解析)を行った結果であり、他の一報は患者集団の中で0.01%未満の頻度で存在するまれな変異の観点から5,079人(2,536名の患者と2,543名の健常者)のエキソーム解析を行った結果である。研究チームは双方ともたまたま同数32名の国際チームであるが、マウントサイナイ病院のスタッフなどおよそ3分の1の著者が共通しており、論文も相互参照されている。両論文に共通した知見として、足場タンパク質であるARC(activity-regulated cytoskeleton-associated protein)とNメチルDアスパラギン酸(NMDA)受容体複合体からなるグルタミン作動性シナプス後タンパク質ならびに脆弱X精神遅滞タンパク質(FMRP)の標的に変異が多く見られている。また、変異の観点から統合失調症の型(分類)の見直しや、自閉症スペクトラム障害(ASD)などの他の神経精神疾患との共通性についても議論されている。
原著論文(出典)→ Fromer, M. et al. De novo mutations in schizophrenia implicate synaptic networks. Nature 2014 Feb 13;506(7487):179-84. Epub 2014 Jan 22
原著論文(出典)→ Purcell SM. et al. A polygenic burden of rare disruptive mutations in schizophrenia. Nature 2014 Feb 13;506(7487):185-90. Epub 2014 Jan 22 -
リボソームタンパク質S4が結合する前後の16sRNAのダイナミックな振る舞いが明らかにされた
タンパク質合成装置であるリボソームはリボソームRNA(rRNA)に多数のタンパク質が順序よく結合して形成される。米国のイリノイ大学、ジョンホプキンス大学、ハワードヒューズ医学研究所の研究グループは、一分子蛍光共鳴エネルギー転移法(single molecule fluorescence resonance energy; smFRET)によって、リボソームタンパク質とrRNAの複合体が形成される過程をリアルタイムで観察した。具体的には、Escherichia coliのタンパク質S4と16SrRNAの5本のへリックス(h3, h4, h16, h17 およびh18)のジャンクション5WJ(five-helix junction)との結合過程を明らかにした。すなわち、5WJのh3とh16が結合前は複数のコンフォメーションの間を振動しており、結合後に、非天然の複合体構造を経由して、天然の複合体構造に至る。さらに3色のFRETと分子動力学シミュレーションを使って、S4の結合後にh16の動きがかなり抑制される一方で、h3は一定の平面内に限定されるが動き続ける。このコンフォメーションにS16が結合してh3を安定にさせたところでS12が結合するという機序で、S30が正確に構築されていく。
原著論文(出典)→ Kim, H. et al. Protein-guided RNA dynamics during early ribosome assembly Nature 2014 Feb 12. [Epub ahead of print] -
二成分情報伝達系(TCS)の蛋白質ペアの共進化情報を活用して新たなTCSを設計する
バクテリアの二成分情報伝達系(two-component signaling (TCS) system)は、外部からの刺激を感知するヒスチジンキナーゼ(HK)とHKからリン酸基を受け取って標的の遺伝子の発現を制御するレスポンスレギュレーター(RR)で構成されている。ライス大学のOnuchic教授等は、30,623組のHKとRRの配列のマルチプルアラインメント結果に、mfDCA(mean field Direct Coupling Analysis)を加えることで、共進化してきたタンパク質間相互作用を解析した。その結果、TCSタンパク質における変異が信号伝達に与える影響を予測可能にするメトリックスを設計することができた。このメトリックスを指標として、標的遺伝子の発現の増加あるいは減少をもたらす変異さらには全く新たな配列を設計する新たな道を拓いた。
原著論文(出典)→ Cheng RR, Morcos F, Levine H, Onuchic JN. Toward rationally redesigning bacterial two-component signaling systems using coevolutionary information. Proc Natl Acad Sci USA . 2014 Feb 4;111(5):E563-71. Epub 2014 Jan 21. -
G蛋白質結合受容体の発現が脳回(大脳皮質のしわ)の形成を支配する
米国ハーバード大学Walsh教授を始めとする米日英トルコの研究グループは、1000人以上の被験者から見出した脳回に異常がある3家系5個人のGWAS(ゲノムワイド関連解析)によって、GPR56遺伝子の調節因子の中の15bpの欠損が、言語野を含む傍シルビウス裂周辺に生じる多小脳回の原因であることを特定し、脳の蛍光イメージ解析によって調節因子部分の欠損がGPR56の発現を損うことを確認した。また、ヒト、マーモセット、イルカ、ネコおよびマウスにおけるオーソログ遺伝子の発現を比較してその進化過程についても考察を加えた。本論文によって、新皮質の構築原理や進化に関する手がかりがまた一つ得られた。本論文はScience同号の展望でも取り上げられているが、その著者の一人は、大脳皮質領野形成の内因説を提唱したエール大学のRalic教授である。
論文(出典)→ Bae, B et al. Evolutionarily Dynamic Alternative Splicing of GPR56 Regulates Regional Cerebral Cortical Patterning. Science 14 February 2014: 343(6172) pp.764-768
展望→ Rash BG and Rakic P. Genetic Resolutions of Brain Convolutions. Science 14 February 2014: 744-745. -
低温で生息可能な魚、昆虫、植物あるいは微生物には、氷の表面に結合して氷結晶の成長を抑制する不凍タンパク質(antfreezing proteins; AFP)が存在する。クイーンズ大学(カナダ)のDavies教授の研究チームは、冬ヒラメから分離したAFPであるMaxiの結晶構造を1.8Åの解像度で決定した。Maxiは二つ折りになったへリックス二本が逆平行に並んだ4へリックスバンドルで形づくられていたが、そのコアは疎水性コアではなく水和コアであった。すなわち、400個以上の水分子がほとんどの部分で五角形に連なった網として、へリックス内とへリックス間にひろがり、アミノ酸鎖と包接化合物に準じた構造を形成している。タンパク質の折り畳み機構から見ると、Maxiは、折り畳みが水分子を排除していく途中で、水分子の層が水素結合のネットワークによってへリックスバンドルを束ねる状態が実現し、折り畳みが止まったタンパク質と解釈できる。
論文(出典)→ Sun T. et al. An Antifreeze Protein Folds with an Interior Network of More Than 400 Semi-Clathrate Waters. Science 14 February 2014: Vol. 343 no. 6172 pp. 795-798
展望(参考文献)→ Sharp KA. Protein Folding, Interrupted Science 14 February 2014: Vol. 343 no. 6172 pp. 743-744 -
ここ10年ほどアルツハイマー病(以下、AD)の原因物質とされているβアミロイド(以下、Aβ)と膜タンパク質SORLA(SORL1あるいはLR11と同意)の逆相関に関する知見が蓄積されてきた。阪大蛋白研の高木淳一教授とドイツMax-Delbrueck-CenterのT. E. Willnow教授等の研究チームは、ヒトのSORLA遺伝子を導入したトランスジェニックマウスにおいて、SORLAが過剰発現し、脳内からAβが減少することを観察した。また、従来の仮説と異なり、AβがSORLAのN末端に存在するVPS10Pドメインに結合することでリソソームへ輸送・分解され、細胞内から減少していくという作用機序を明らかにした。加えて、家族性ADに存在するSORL1遺伝子の変異によってこの結合が阻害されることも見出した。今後、SORLAをターゲットとする新たなAD対処法が拓けることを期待したい。
論文(出典)→ Caglayan S et al. Lysosomal Sorting of Amyloid-β by the SORLA Receptor Is Impaired by a Familial Alzheimer's Disease Mutation. Sci. Transl. Med. 6, 223ra20 (2014).
参考論文(VPS10Pドメイン)→ Nakata Z, Nagae M, Yasui N, Bujo H, Nogi T, Takagi J. Crystallization and preliminary crystallographic analysis of human LR11 Vps10p domain. Acta Crystallogr Sect F Struct Biol Cryst Commun. 2011 Jan 1;67(Pt 1):129-32. -
ヒトにおけるピリミジン生合成を担う酵素CADに新たな知見をもたらす
ほとんどの生物に存在しているピリミジンの新生(デノボ)生合成経路についての研究の歴史は長く、また、がん細胞においても機能していることから抗腫瘍薬開発のターゲットとしても研究されてきた。今回、スペイン国立癌研究センターのGrande-Garcia等は立体構造解析に基づいて、ヒトにおける生合成反応の最初の三段階を担う多機能タンパク質CADについての定説を覆した。CADを構成する3種の酵素のうちジヒドロオロターゼ(DHOase)の立体構造を1.5Å以上の解像度で決定し、カルボキシル化されたリジンで架橋された2個のZn2+によって活性部位が構成され、フレキシブルなループが活性部位を覆っていること、加えて、活性部位において3つ目のZn2+が脱プロトン化されたヒスチジンと結合していることを明らかにした。また、部位特異的変異導入実験からこの3番目の亜鉛が活性を微調整していることも明らかにした。さらに、バクテリアおける相同な酵素との比較に基づいて、DHOaseファミリーの分類の改訂を提案した。
論文(出典)→ Grande-Garcia A, Lallous N, Diaz-Tejada C, Ramon-Maiques S. Structure, Functional Characterization, and Evolution of the Dihydroorotase Domain of Human CAD. Structure 2014 Feb 4;22(2):185-98. doi: 10.1016/j.str.2013.10.016. Epub 2013 Dec 12.
論文著者所属 → Structural Biology and Biocomputing Programme, Spanish National Cancer Research Centre -
SRタンパク質による選択的スプライシングが創傷治癒と皮膚の過形成に関与する
コールド・スプリング・ハーバー研究所の研究チームは、SRファミリーに属するスプライシング因子SRSF6が創傷治癒と皮膚の恒常性維持を制御していることを特定した。SRSF6の発現が上昇するとなんらかの刺激を受けた皮膚において幹細胞が多能化してケラチノサイトが急増する。一方で、SRSF6は多様な選択的スプライシング(以下、AS)を制御するが、皮膚癌と密接に関連するテネイシンCもそのASのターゲットである。したがって、SRSF6タンパク質あるいは遺伝子をターゲットとする皮膚癌の治療薬を開発していくことも考えられる。
論文(出典)→ Jensen MA, Wilkinson JE, Krainer AR.et al. Splicing factor SRSF6 promotes hyperplasia of sensitized skin. Nat Struct Mol Biol. 2014 Feb;21(2):189-97. doi: 10.1038/nsmb.2756. Epub 2014 Jan 19. -
悟空にあたるのは、米国ペンシルベニア州立大学のMallouk研究室のWei Wang院生であり、如意棒は多孔のアルミニウム膜への電着で作成したナノサイズ(直径300nm、長さ3um)の金のロッドである。HeLaの培養細胞と混合するとロッドはすぐに細胞表面に付着したが、そのまま24時間以上インキュベーションすると、細胞内に取り込まれた(取り込まれる数は細胞ごとに異なる)。細胞内においても超音波の周波数によってロッドの前進・後退またはスピンを選択できたが、複数のロッドは一斉に同一方向に運動するのではなく局所環境に応じて互いに独立にふるまった。細胞を破壊しない程度の超音波エネルギーだけで駆動できるロッドは、ナノモーター(nanomotors)として、互いにコミィニケーションをとりながら生体内を巡回し診断や治療をするというナノテクノロジー版「ミクロの決死圏(1966年のSF映画"Fantasy Voyage"の邦題)」を実現するかもしれない。
ペンシルベニア州立大学プレスリリース(出典)→ Nanomotors are controlled, for the first time, inside living cells (February 10, 2014)
論文(出典)→ Wang, W., Li, S., Mair, L., Ahmed, S., Huang, T. J. and Mallouk, T. E. (2014), Acoustic Propulsion of Nanorod Motors Inside Living Cells. Angew. Chem.. Article first published online: 12 FEB 2014
参考資料(Nanomotorsの動画)→ A demonstration of very active gold nanorods internalized inside HeLa cells in an acoustic field. -
ウイルス感染を阻止する(中和する)ために、HIV-1感染者に見られる中和抗体に類似の抗体を誘導する試みが行われてきたが、有効な中和抗体誘導には至っていない。米国デューク大学の生化学とコンピュータ科学の研究グループは、HIVのエンベロープタンパク質(envelope protein; Env)gp41の膜貫通部位近傍(membrane proximal region; MPER)の構造を、キメラタンパク質のコンストラクトの設計、残余双極子相互作用(residual dipolar coupling)を利用した溶液NMR解析ならびにスパースモデリングによって、決定した。また、このコンストラクトが、中和抗体と結合することを確認した。Envの構造は、宿主細胞と融合する前から融合後へと大きく変化するが、本研究によってその遷移状態における構造が初めて明らかになった。
原著論文→ Rearden FP, Sage H, et al. Structure of an HIV-1 Neutralizing Antibody Target. A Lipid Bound dp41 Envelope Membrane Proximal Region Trimer. Proc Natl Acad Sci U S A. 2014 Jan 28;111(4):1391-6. -
より広範なIgGと結合する新たな抗体結合タンパク質Protein M
細菌の慢性感染症によって引き起こされる単クローン性B細胞リンパ球急増症の研究に取り組んできたスクリプス研究所のGrover等は、30名の多発性骨髄腫の患者ならびに健常者のIgGの全てと反応する細菌抗原をMycoplasma genitaliumから特定し、Protein Mと命名した。Protein Mに特異的な部位と抗体Fab部位との複合体の構造を1.2Åの解像度で決定し、Protein Mが、他の細菌由来抗体結合タンパク質(Protein A, GあるいはL)と異なり、抗体のκまたはλの軽鎖の可変領域のうち抗体間で保存されている部分で結合することで、より幅広いIgGと結合可能になることを解明し、Protein Mが今後大規模な抗体精製などに貢献していくことを示唆した。
論文(出典)→ Rajesh K. Grover et al. A Structurally Distinct Human Mycoplasma Protein that Generically Blocks Antigen-Antibody Union. Science 7 Feb 2014; 343: 656-661. -
鎮痛に関わる受容体δオピオイド受容体の精密構造が明らかになり信号伝達の分子機構が見えたきた
1970年代から脳内のナトリウム濃度によってオピオイド受容体(以下、δOR)の活性が変化することが知られていたが、その機構は不明であった。スクリプス研究所のSteven研究室とノースカロライナ大学のRoth研究室のグループは、ヒトδORとb562RIL(BRIL) の融合タンパク質とδOR遮断薬ナルトリンドール複合体の構造を1.8Åの解像度で決定し、ナトリウムイオンの配置からδORのアゴニストへの親和性を低減するナトリウムのアロステリックな調節機構を明らかにした。また、ナトリウムイオンと結合する部位のアミノ酸の変異実験から、βアレスチン経路を選択的に制御できることを見出した。これらの成果が、δORのみならず他のオピオイド受容体が関わる経路に選択的に働きかけることができる創薬への道を拓くことが期待される。
論文(出典)→ Fenalti G, Giguere PM etc. Molecular control of δ-opioid receptor signalling. Nature. 2014 Jan 12. doi: 10.1038/nature12944. [Epub ahead of print] -
RIPK3は難治性遺伝的疾患ゴーシェ病の治療ターゲットになりうる
グルコセレブロシダーゼ(glucocerebrosidase gene: GBA)遺伝子の変異が引き起こすゴーシェ病(以下、GD)に対して酵素補充療法が有効であるが、非常に高額であり、数時間の点滴投与によるため患者への負担が大きい。また、薬剤が血液脳関門を通過することができないため、GDの患者およびモデルマウスの脳に起こる神経細胞の消失に対して効果がない。イスラエルと英国の研究グループは、GDのモデルマウスを使って、受容体共役タンパク質セリンスレオニンキナーゼ(receptor-interacting protein serine-threonine kinase 3: Ripk3)の活性が、ライソゾーム病の一種であるGDおよびクレッブ病を引き起こす一因であることを明らかにし、Ripk3やその下流に位置するネクローシスに対する阻害剤が、新たな薬剤になりうることを示唆した。
論文(出典)→ Vitner EB. et al. RIPK3 as a potential therapeutic target for Gaucher's disease. Nat. Med. 20(2)204–208 (2014) doi:10.1038/nm.3449 -
創薬を加速する産学連携AMP(Accelerating Medicines Partnership)
2014年2月4日に、米国NIHの所長Fancis Collins博士は、米国FDAとNIH、武田薬品を含む10の製薬企業ならびに8つの非営利団体がパートナーとなるAMPが組織されたことを発表した。AMPのパートナーは創薬の初期段階におけるデータと手法を共有かつ公開することによって、さまざまな疾病の診断や治療のターゲットとして最適なバイオマーカー候補の手がかりを得、その後の競争的開発において、成功率5%ともいわれる創薬の成功率を飛躍的に高め、1件あたり10億ドルとも言われる開発経費を大幅に削減することを目指している。NIHと企業群とほぼ同規模の資金からなる予算は5年間で2億3千万ドルを予定しており、当初、アルツハイマー病、II型糖尿病ならびに自己免疫疾患(関節リウマチと全身エリテマトーデス)の3疾病を対象としてプロジェクトが開始される。(蛇足 AMPははからずも生命現象にとって重要な有機化合物を意味するが、増幅器も意味する)。
NIH NEWS & EVENTS (出典)→ NIH, industry and non-profits join forces to speed validation of disease targets -
SNAP-tagと融合させた膜タンパク質解析用の蛍光プローブ、リンス不要
スイスの研究グループは、脂肪染色試薬として知られているNile Redのo6-benzylguanine誘導体を合成し、SNAPでタグ付けされた膜タンパク質と結合した場合に限りNile Redが細胞膜中に取り込まれて蛍光を発するシステムを開発した。SNAPでラベルされたヒトのインスリン受容体の場合、ハムスター由来のCHO細胞内において、誘導体を加えてから30分でインスリン受容体からの蛍光を観察することができた。Nile Redのソルバトクロミズム(Solvatochromism) により細胞二重膜に取り込まれなかったNile Redからの蛍光はほとんど無視できるため、このシステムはプローブを洗い流す過程が不要であり、生体内の膜タンパク質をリアルタイムで観察可能とする。
論文(出典)→ Prifti E et al. A Fluorogenic Probe for SNAP-Tagged Plasma Membrane Proteins Based on the Solvatochromic Molecule Nile Red. ACS Chem Biol. 2014 Jan 29. [Epub ahead of print] -
国際がんコンソーシアムがData Release 15を発表
国際がんゲノムコンソーシアム(International Cancer Genome Consortium:ICGC) は2014年2月3日にData Release 15を発表した。データコンテンツの概要は次のとおり:42の癌プロジェクト、原発部位18、被験者10,067名、体細胞変異数3,935,558、変異遺伝子数54,896(タンパク質コード領域中19,947)。
ICGC Data Portal→ http://dcc.icgc.org -
米国の患者支援団体が、全ゲノムエクソン配列解析(エクソーム解析) の無料サービスを実施する
きわめて希な疾患や遺伝的疾患を持つ子供やその家族を支援する米国の非営利団体がエクソーム解析を無料提供する。The Global Genes Projectが募ったファンドによって、現在、SWAN (Syndromes Without A Name) USAが申請を受け付けている。要件を満たした希望者から30名程度が無作為抽出で選ばれ、毎年2月最終日のRareDiseaseDay(RRD:世界希少・難治性疾患の日)の翌日3月1日から解析が始まる予定である。エクソーム解析は東海岸のParabase Genomicsと西海岸のUCLA Clinical Genomics Centerが実施する。将来、患者団体自らエクソーム解析を企画できる程に、シーケンシングが高速・低廉になる日が待たれる。
プレスリリース→ Global Genes Partners With SWAN USA To Help Undiagnosed Rare Disease Patients Seek A Medical Diagnosis Through Free Whole Exome Sequencing Program -
タンパク質やRNAは核膜を通して核と細胞質の間を行き来する。この物流を担う核膜孔複合体(nuclear pore complex: NPC)は、脊椎動物の場合、30種類程度の核膜孔複合体タンパク質ヌクレオポリン(nucleoporins: Nups)から成るsubcomplex(部分複合体)で組み上げられる約120MDaという巨大なタンパク質複合体である。このNPCの構造や細胞周期において繰り返される分解・集成の機構といった巨大な謎を解く試みが続いてる。その研究成果の一つが2014年2月Nature MethodsのResearch Highlightで取り上げられた。EMBL Structural and Computational Biology(Heidelberg)のBeck等の研究グループは、クライオ電子線トモグラフィー(cryo-electron tomography: cryo-ET)、単粒子解析ならびに化学架橋-質量分析法(cross-linking spectrometry: XL-MS)を駆使して、ヒトのNPCの全体構造を3.2nmの解像度で決定し、Nup107の部分複合体32コピーが細胞質リングと核膜リングのscaffold(足場)を構成する構造と機構を明らかにした。また、有糸分裂の際のリン酸化のサイトが主として部分複合体間の界面に存在することを見出した。
Research Highlight→ Krasteva PV. STRUCTURAL BIOLOGY: Zooming in on nuclear logisticsNature Methods 11, 126?127 (2014) doi:10.1038/nmeth.2827
原著論文→ Bui KH et al. Integrated structural analysis of the human nuclear pore complex scaffold. Cell 2013 Dec 5;155(6):1233-43. doi: 10.1016/j.cell.2013.10.055. -
オンラインゲームと生化学実験のクラウドでRNAの高品質設計に成功
2014年1月27日発行のPNASに、10名の研究者とEteRANゲーム参加者(ゲーマー)37,541名の共著によるRNA設計の論文が掲載された。このゲームでは、構造が既知のRNAをターゲットにした練習ゲームで一定のポイントを獲得すると、新たなRNA配列を設計できるステージに進むことができる。毎週、ゲーマーがオンラインで提案した配列のうちコミュニティーの評価が上位の配列をもとに、スタンフォード大学の生化学研究室がRNAの合成を試み、その成否がゲームにフィードバックされる。このサイクルが繰り返される過程で、既知の設計ルールに加えて禁則ルールも含むEteRNA独自の設計ルールが蓄積された。これらのルールを機械学習にのせたEteRNA Botも開発されて、従来の設計アルゴリズムを上回る結果を出したが、ゲーマーの衆智から産み出される設計はEteRNA Botをさらに上まる成果を出し続けた。著者らはゲームと実験室の融合をMassive Open Laboratory(MOL)と命名したが、これは科学ゲームと自動化が進みつつある実験の場を組み合わせたクラウドソーシングの新たなモデルであり、ゲーミフィケーションに適した研究課題へと広がっていく可能性がある。
原著論文(出典)→ Lee J, Kladwang W, Lee M, Cantu D, Azizyan M, Kim H, Limpaecher A, Yoon S, Treuille A, Das R; EteRNA Participants. RNA design rules from a massive open laboratory. Proc Natl Acad Sci USA 2014 Jan 27. [Epub ahead of print], doi:10.1073/pnas.1313039111
参考文献(タンパク質折り畳みゲームの論文)→ Cooper S, Khatib F, Treuille A, Barbero J, Lee J, Beenen M, Leaver-Fay A, Baker D, Popovi? Z; Foldit players. Predicting protein structures with a multiplayer online game. Nature. 2010 Aug 5;466(7307):756-60. doi: 10.1038/nature09304. -
日本は、全自動配列解読装置の開発に先行着手しながら、今や、米国企業のシーケンサに席巻されている。「ゲノム敗北」が出版されてから10年、GenomeWeb Newsは2014年1月28日に日本のベンチャー企業Quantum Biosystemsが製品化を進めている画期的なシーケンサを紹介した。このシーケンサは、最先端研究開発支援プログラム(FRIST)川合プロジェクトにおいて研究開発されてきた技術を駆使している。すなわち、細胞からDNA/RNAを抽出し、DNA/RANを分離し、DNA/RANを伸展させ、ギャップが僅か0.8nmの電極間を通過するDNA/RNAの一塩基ごとに、イオン電流ではなくトンネル電流の変化を読み取るところまで、ナノテクノロジーが駆使されている。超高速で低コストのシーケンサが、日本の超早期診断と精密医療に革新をもたらし、ひいては世界を席巻することを期待したい。
参考資料(ゲノム敗北)→ 岸 宣仁著. 出版社: ダイヤモンド社 (2004/09) ISBN-10: 4478240973 ISBN-13: 978-4478240977
参考論文(川合プロジェクト)→ Ohshiro T, Matsubara K, Tsutsui M, Furuhashi M, Taniguchi M, Kawai T. Single-molecule electrical random resequencing of DNA and RNA.Sci Rep. 2012;2:501. doi: 10.1038/srep00501. Epub 2012 Jul 10. -
X線の回折現象を発見したにマックス・フォン・ラウエが、X線による結晶構造解析に関する研究を進展させたヘンリー・ブラッグとローレンス・ブラッグが、1914年と1915年に相次いでノーベル物理学賞を受賞してから100年、2014年は国際連合総会において世界結晶年(International year of crystallography; IYCr2014)と制定された。Nature誌は、2014年1月30日号において結晶学の特集を組み、秀逸なタイトルの"Crystal clear"を始めとして、結晶学をテーマにした7本の記事を掲載した。その中の"Crystallography: Atomic secrets"では、X線結晶回折の原理から始まって、DNA二重らせん構造の回折パターンと立体構造モデルなど、分子構造の理解において時代を画した結晶構造解析の成果をグラフィカルに辿ることができる。
Nature Editorial(出典)→ Crystal clear. Nature 505, 586 (30 January 2014) doi:10.1038/505586a
Nature News Feature (出典)→ Crystallography: Atomic Secrets -
【STAP論文に重大な過誤があったことが明らかになったことを受けて、理化学研究所発生・再生科学総合研究センターは2014年3月17日に、STAP論文のプレスリリースをホームページから取り下げた。Nature誌からの論文取り下げも検討されている模様】
2014年1月29日にScienceは「信じられないほど簡単な方法で分化した細胞を初期化」とNatureに論文発表されたSTAP細胞の関するニュースを配信したが、STAP細胞の作製方法から今後の影響まで簡明にまとめられている。
Science NOW (出典)→ Acid Treatment Could Provide Breakthrough Stem Cell Technique -
【STAP論文に重大な過誤があったことが明らかになったことを受けて、理化学研究所発生・再生科学総合研究センターは2014年3月17日に、STAP論文のプレスリリースをホームページから取り下げた。Nature誌からの論文取り下げも検討されている模様】
理化学研究所発生・再生科学総合研究センター細胞リプログラミング研究ユニットの小保方晴子研究ユニットリーダー等は、マウスの脾臓由来のリンパ球を酸性溶液に浸すと「リプログラム」されて、受精胚の中にあった時の未分化な状態の細胞に生まれ変わることを発見し、この多能性を獲得した細胞をSTAP(stimulus triggered acquisition of pluripotency; 刺激惹起性多能性)細胞と命名した。STAP細胞は、化学的外部刺激だけでなく物理的刺激によっても生成されること、リンパ球以外に皮膚など他の組織の細胞からも生成されること、胎児の組織そして胎盤や胎外組織へも分化することも明らかにした。これらの研究成果は2編の研究論文として2014年1月30日発行のNatureに掲載され、Natureはニュース記事「解き放たれた多能性」においてこれらの論文を取り上げた。遺伝子導入によるiPS細胞創出に続いて、日本人研究者による分化の概念を「リプログラム」する画期的成果であり、ヒト細胞への展開が待たれる。
原著論文1→ Obokata H. et al. Stimulus-triggered fate conversion of somatic cells into pluripotency. Nature 505;641-647 2014/01/30/print doi: 10.1038/nature12968
原著論文2→ Obokata H. et al. Bidirectional developmental potential in reprogrammed cells with acquired pluripotency. Nature 505;676-680 2014/01/30/print doi: doi:10.1038/nature12969
ニュース「解き放たれた多能性」→ SMith A. Cell biology: Potency unchaned
STAP細胞からの発生→ YouTube 15秒間のビデオ -
X線構造解析から明らかになったヒトTransportin 3によるスプライシング因子の核内輸送機構
Maertens等は、核内輸送受容体Trasnportin 3 (Tnpo3)がスプライシング因子を核内輸送する機構と、HIV-1複製の補助因子として機能する機構を明らかにするために、はじめにFlagタグを使って積荷タンパク質を洗い出し、積荷の多くがセリンとアルギニンの反復配列からなるドメイン(RSドメイン)を有し、mRNA代謝に関わるタンパク質であることを確認した。次に、X線解析解析によって明らかにしたTnpo3単独、Tnpo3とRanGTPの複合体、そして、Tnpo3とASF/SF2の複合体の構造から、Tnpo3が積荷に結合しまた離す機構を明らかにした。また、Tnpo3はHIV-1複製の補助因子としも機能することが最近知られてきたが、CPSF6と結合しなくなったTnpo3変異体はHIV-1の感染を促さないこと見出して、AIDS治療薬への展開を示唆した。
Maertens GN. et al. Structural basis for nuclear import of splicing factors by human Transportin 3. Proc Natl Acad Sci USA 2014 Jan 21. [Epub ahead of print] doi: 10.1073/pnas.1320755111→ http://www.pnas.org/content/early/2014/01/17/1320755111.long -
イルミナHiSeq X Tenシーケンスシステムをどう評価するか
2014年1月14日のニュースリリースでイルミナは1年間で18,000人分のヒトゲノムを解析ができるHiSeq XTM Tenシーケンスシステムを発表した。同月15日のNatureニュース解説によると、イルミナは、この装置によるシーケンシングのコストは、減価償却797ドル、試薬137ドル、保守運用のための人件費55~65ドルを合わせて計999ドルと主張しており、世界で初めて1000ドルゲノムの夢を実現したことになる。ニュースリリースには、初期導入顧客として、ゲノム解析の国際的な中核機関の一つである米国Broad Institute、オーストラリア最大規模の医学生物学研究所Garvan Institute of Medical Researchならびに次世代シーケンサー受託解析サービスを提供している韓国Macrogenがあげられていたが、Macrogenは、同月20日に「1000ドルゲノムサービス開始予定」とアナウンスした。HiSeq XTM Tenは装置10セット以上の単位で販売するようであり、超大量の配列解析のニーズがあり1000万ドルを初期投資できる機関には「お薦め」である。
Natureニュース解説→ Hayden EC. Nature 15 January 2014 doi:10.1038/nature.2014.14530 -
真核細胞に相当する微細なリアクターを多重のポリマソームで実現
オランダRadboud大学Nijmegenの研究グループは、加水分解酵素のCandida antarctica lipase B (CalB)または枯草菌由来セリンプロテアーゼalcalaseとアルコール脱水素酵素ADHをそれぞれポリスチレンのPS-b-PIATの膜に封じ込めたポリマソーム(polymersome)に加えて、フェニルアセトンモノオキシゲナーゼ(PAMO)と補助因子を、プロブタジエンのPB-b-PEOに封じ込めたポリマソームを開発して、profluoresecnt substrate 1から多段の化学反応を経て蛍光物質レゾルフィンが生成できることを示した。このナノリアクターは、PS-b-PIATで囲まれたポリマソームを細胞小器官に、PB-b-PEOで囲まれたポリマソームを真核細胞にみなす事ができ、高効率な超小型な化学反応装置として有望であるとともに、単純な細胞から複雑な真核細胞への進化過程の研究にも有用と考えられる。
論文(出典)→ Peters RJ, Marguet M, Marais S, Fraaije MW, van Hest JC, Lecommandoux S. Cascade reactions in multicompartmentalized polymersomes. Angew Chem Int Ed Engl. 2014 Jan 3;53(1):146-50. doi: 10.1002/anie.201308141. Epub 2013 Nov 19.
Nature Chemistryの紹介記事→ Johnson R. Nanoreactors: Catalysis in compartments. Nat Chem. 2013 Dec 17;6(1):5. doi: 10.1038/nchem.1840. -
構造生物学はScience誌の2013年ブレイクスルー次点に
2013年に本ニュースウオッチにて記事「構造ワクチン学:RSウイルス感染症糖タンパク質ワクチンの設計と評価」を掲載した。この出典である原著論文は、Scienceの同じ号で「幼児を蝕むウイルスに対する構造生物学の凱歌」と賞されたが、Science誌による2013年を通してのブレイクスルーの観点においても、第1位のがん免疫療法に続く次点として評価された。立体構造の解析によってウイルス融合タンパク質において抗体が結合するサイトを詳らかにすることで、強力な抗体産生をうながす免疫原を設計する手法は、HIVなどの他のウイルス抗体開発にも広がっている。
News(出典)→ Science 20 December 2013: Vol. 342 no. 6165 pp. 1442-1443 DOI: 10.1126/science.342.6165.1442-a -
ソニー株式会社2014年1月23日の記者発表によると、エムスリー株式会社ならびに米国Illumina, Inc.とゲノム情報プラットフォーム事業を行う新会社P5(ピーファイブ)株式会社を同年2月末までに設立する予定である。P5株式会社はゲノム情報の解析サービスとともに、医療情報・健康情報までひろがるデータベースを構築して、ゲノムに関わる基礎研究から診断・健康相談の支援まで幅広いサービスも目指す。
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ジョンズ・ホプキンス大学の研究グループは、Cre発現依存的遺伝子発現法によって、両親由来のX染色体をそれぞれ緑色蛍光タンパク質GFPと赤色蛍光タンパク質tdTomatoで識別する方法で、X染色体不活性化(X chromosome inactivation; XCI)について、細胞のスケールで精密な分布地図を作成した。この地図は、胚から成熟した各種臓器や組織に至るまで、細胞内・細胞間でも、組織内・組織間でも、個体間でも、雄からと雌からのX染色体由来の遺伝子がモザイク様に発現することを明示した。本論文では特に、網膜錐体視細胞、内耳蝸牛のコルティ、大脳皮質などのモザイクについて詳細な考察が加えられ、また、遺伝性の眼疾患であるNorrie病のモデルマウスにおける表現型とXCIモザイクの関連についても考察が及んでいる。
論文(出典)→ Wu H et al. Cellular Resolution Maps of X Chromosome Inactivation: Implications for Neural Development, Function, and Disease. Neuron Volume 81, Issue 1, 8 January 2014, Pages 103–119 -
免疫グロブリン抗体IgGは6量体からなる二次元結晶として機能する
京都大学工学部電子材料物性研究室の山田准教授等は、原子分解能を有する液中FM-AFM(Frequency Modulation-Atomic Force Microscope;周波数変調原子間力顕微鏡)を使って、マウス由来のIgGモノクローナル抗体のY字構造を初めて溶液中のまま直接観察し、さらに、マイカの基板上で、抗体がそのFab部を外側にFc部を内側に向けた6量体へと自己組織化した2次元結晶を形成すること見出した。この2次元結晶は広範なpHと温度域で免疫機能を有していることから、バイオセンサーやバイアッセーへの応用が期待される。
論文(出典)→ Ido S, Kimiya H, Kobayashi K, Kominami H, Matsushige K, Yamada H. Immunoactive two-dimensional self-assembly of monoclonal antibodies in aqueous solution revealed by atomic force microscopy. Nat Mat Published online 19 Jan 2014
FM-AMFで溶液中のDNAの構造を観察→ Ido S, Kimura K, Oyabu N, Kobayashi K, Tsukada M, Matsushige K, YamadaH. Beyond the Helix Pitch: Direct Visualization of Native DNA in Aqueous Solution. ACS Nano 2013 Feb 26;7(2):1817-22. doi: 10.1021/nn400071n. Epub 2013 Feb 4. -
愛知県2014年1月21日の記者発表によると、「知の拠点あいち」重点研究プロジェクトにおいて、国立長寿医療研究センターと豊橋科学技術大学は、"抗原抗体反応時に発生する微小な電位の変化を半導体イメージセンサーで感知する"装置を開発した。本装置は、僅か0.02mlの血液からアルツハイマー病などのマーカーを同時に50種類10分程度で検出することができ、低コストで迅速な早期診断への実用化が待たれる。
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2013年12月のNature Outlookは、2013年8月から米国において第1相治験が始まった埋め込み型の免疫療法剤などを含むがん免疫療法研究を展望している。この免疫療法剤は、細胞成長因子、CpGオリゴヌクレオチドそして凍結乾燥した患者由来のがん細胞を、手術の縫合糸の材料として使われているポリグラチンで固めた多孔性ディスクであり、大きさはアスピリンの錠剤程度である。なお、Nature Outlookの本号のスポンサーは、Bristol-Myers Squibb、Dendreon Corp., F. Hoffmann-La Roche Ltd ならびに Merck & Co., Inc.であった。
展望(出典)→ Gravits L. (2013) Cancer Immunotherapy Nature 504, S1 (19/26 December 2012)
免疫療法について(朝日新聞医療サイト)→ http://apital.asahi.com/article/kiku/2013090300001.html
免疫療法(がん情報サービスサイト)→ http://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/immunotherapy.html
埋め込み型免疫療法剤→ http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2684978/ -
腸内菌叢のバランスが抗生物質によって壊れると気管支炎が悪化する
腸内菌共生バランス失調(dysbiosis)が腸外の免疫系に及ぼす影響の一端がマウスにおいて明らかにされた。筑波大学医学部のKim等は、嫌気性菌や緑膿菌などの抗生剤を投与したマウスでは、腸内において菌類Candiaが優勢になり、これによって血漿中で増加したプロスタグランジンE2が肺においてマクロファージのM2型への分極を引き起こすことから気管支での炎症が激しくなる事をつきとめた。この炎症は、シクロオキシゲナーゼ阻害剤であるアスピリンとセレコキシブによって抑制された(注 本論文の骨子は、そのGraphical Abstractで一目瞭然)。
論文(出典)→ Kim, YUdayanga K, Gamage S, Totsuka N, Weinberg JB, Núñez G and Shibuya A. (2014) Gut Dysbiosis Promotes M2 Macrophage Polarization and Allergic Airway Inflammation via Fungi-Induced PGE2. Cell host & microbe 15(1)95-102 15 Jan 2014 -
Cancer Knowledge Cloudの概念が具体化に向かう
米国the National Cancer Informatics Program (NCIP)などで議論されていたCancer Knowlege Cloudの実現に向けて、米国立がん研究所(National Cancer Institute; NCI)は、2014年1月13日にCancer Genomics Cloud(以下、CGC)のパイロットプロジェクトの募集を開始した。パイロットプロジェクトの開始は2014年9月、期間は1年(基本設計から開発まで6ヶ月、実装の9ヶ月、運用・評価の9ヶ月)、予算総額2000万ドルが予定されている。CGCは、"applications are brought to the data, rather than bringing the data to the applications"を標榜して、The Cancer Genome Atlas(TCGA)を始めとするペタバイト級のデータならびに解析プログラムとそれらの統合利用を可能とするAPIを備え、セキュリティーと安定性も実現することで、がん研究のために必要な巨大かつ多様なデータの解析を画期的に効率化し、また、研究社会のどこからでも利用可能にする(democratize)。
NCI募集サイト→ http://goo.gl/tRqg48
関連活動1→ NIH Big Data to Knowledge (BD2K)
関連活動2→ Cancer Genomics Data Commons (GDC)
関連活動3→ Cancer Genomics Hub (CGHub)
関連活動4→ Therapeutically Applicable Research to Generate Effective Treatments (TARGET) -
腸内に常在するバクテリアが神経疾患を改善する実験結果が得られた
Nature Reviews Microbiology2014年2月号はResearch HighlightでCALTECHのHsiao等の成果(*)を取り上げて、腸と脳を関連付ける分子機構の概念が実証されたとした。(*)自閉症スペクトラム(Autistic Spectrum Disorder; ASD)障害のモデルマウスMaternal immune activation (MIA)マウスの腸内細菌叢と腸壁の透過性が正常マウスと大きく異なる;ヒト腸内常在菌のBifidobacterium fragilisを投与すると腸の状態もASDの症状も改善される;MIAマウスの代謝産物のプロファイルが正常マウスと異なる。中でもClostridium spp.由来と考えられる代謝産物4-ethylphenylsulfate (4EPS)が46倍に至る;B. fragilisの投与によって4EPSが減少しASDの行動異常も減少する。
Research Highlight(出典)→ Hofer U (2014) Microbiome: B. fragilis and the brain Nat Rev Microbiol. 2014 Feb 12(2)76-77 (2014) Published online 23 Dec 2013
Hsiao等の成果→ Hsiao EY et al.(2013) Microbiota modulate behavioral and physiological abnormalities associated with neurodevelopmental disorders. Cell 2013 Dec 19;155(7):1451-63 -
ヒトの脳切片中の一細胞と培養細胞の一細胞のトランスクリプトームが異なる事が実証された
Lovatt等は、新たに設計したケージド化合物によって、生体内とほぼ同じ環境にある単一細胞についてトランスクリトーム解析が可能なことを示し、膜透過性ペプチド(Cell Penetrating Peptide; CPP)を含むこの化合物をTranscriptome in vivo analysys (TIVA) タグと命名した。TIVAは、従来の方法にあった細胞間のコンタミネーションや組織から一細胞を取り出す際の機械的損傷の恐れが無い。また、細胞や生物の種類を選ばず、RNAの種類に特化したタグ設計も可能であり、単一細胞トランスクリプトーム解析に新たな展開をもたらす実験手法である。
論文(出典)→ Lovatt D. et al. (2014) Transcriptome in vivo analysis (TIVA) of spatially defined single cells in live tissue. Nat Meth. 2014/01/12/online -
これまで、がん細胞独特の揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds; VOC)をガスセンサーや犬の行動観察によって検出する試みが行われてきた。Straus等は今回、細胞のヘッドスペースからの匂いによるショウジョウバエの臭覚受容体ニューロンの活性化を、蛍光タンパク質の一種であるGCaMPを使ったカルシウムイメージング(calcium imaging)で測定できることを示した。その上で、得られた多数のニューロンの活性化パターンを多次元解析することによって、乳がん細胞と正常細胞を判別できる事を示した。本方法によって、犬の行動解釈における曖昧さ無く、従来の電子嗅覚システム(electronic noses)よりも広い範囲の匂い物質を検出することができ、また、がん細胞特有の代謝物の事前知識が無くてもがん細胞を識別することができる。
論文(出典)→ Strauch M. et al. (2014) More than apples and oranges - Detecting cancer with a fruit fly's antenna. Sci. Rep. 4 : 3576 6 January 2014 (online) -
仏英の38名の研究チームが、パーキンソン病を発症して5年以上を経過した48~65歳の患者15人に、レンチウイルスベクターを使ってドーパミン合成に必要な3種類の酵素遺伝子を脳の線条体に導入した治験(第1相と第2相)の成果が、2014年1月の医学雑誌The Lancetに発表された。遺伝子導入後6ヶ月後と12か月後にUnified Parkinson's Disease Rating Scale (UPDRS)で判定した結果、ジスキネシアなどの副作用を凌ぐ効果が見られた。遺伝子導入はOxfordBiomedicaが開発しているProSavin(R) によって行われ、本研究はOxfordBiomeciaの資金提供を受けている。
論文(出典)→ Palfi S et al (2014) Long-term safety and tolerability of ProSavin, a lentiviral vector-based gene therapy for Parkinson's disease: a dose escalation, open-label, phase 1/2 trial. The Lancet, Early Online Publication, 10 January 2014 doi:10.1016/S0140-6736(13)61939-XCite or Link Using DOI -
タンパク質複合体の立体構造解析によって、ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1)がヒトのユビキチン・プロテアソーム系を乗っ取る手口が詳らかにされた
HIV-1は、ヒトのユビキチン-プロテアソーム系を巧妙に簒奪することで免疫をかいくぐって増殖する。すなわち、ウイルス由来のviral (virion) infective factor (Vif)が、ヒトの制限酵素APOBEC3Gを、scaffoldタンパク質cullin5 (CUL5)とアダプタータンパク質であるelongin B(ELOB)とelongin C(ELOC)を含むユビキチンリガーゼE3にリクルートして、ユビキチン化する。ユビキチン化されたAPOBER3Gはプロテアソームに誘導されて分解される。また、ヒトのcore-binding factor subunit β(CBF-β)も同時にVifによって無力化されてVif-CBF-β-CUL5-ELOB-ELOC複合体を形成することが最近明らかにされた。Guo等は、この複合体を結晶化して立体構造を解析ることによって、Vifがヒトのタンパク質分解系を乗っ取る(hijacking)手口を初めて白日の下にさらした。Nature誌では、本論文と、本欄ですでにとりあげたShwefel等の論文("レンチウイルスが宿主細胞のタンパク質分解系を無力化する分子機構を立体構造から明らかにする")とあわせてNew & Viesで取り上げて、構造解析から明らかにされた免疫の無力化に登場するタンパク質とその相互作用をターゲットとする創薬への期待を表した。
論文(出典)→ Guo Y, Dong L, Qiu X, Wang Y, Zhang B, Liu H, Yu Y, Zang Y, Yang M & Huang Z (2014) Structural basis for hijacking CBF-β and CUL5 E3 ligase complex by HIV-1 Vif. Nature. 505,229-233 (9 January 2014) doi:10.1038/nature12884
関連論文→ Schwefel D, Groom HC, Boucherit VC, Christodoulou E, Walker PA, Stoye JP, Bishop KN, Taylor IA1 (2013) Structural basis of lentiviral subversion of a cellular protein degradation pathway. Nature. 2013 Dec 15. doi: 10.1038/nature12815. (Epub ahead of print)
News & Views→ Malim MH (2014) HIV: Ringside views Nature 505, 167-168. (9 January 2014) doi:10.1038/505167a -
単一細胞のRNA-seqによって、マウス細胞における単一対立遺伝子の発現がダイナミックかつランダムに起きることを明らかにした
Ludwig Institute for Cancer Research(Stockholm Branch)のSandberg等のグループは、同グループが開発したSmart-seq(参考文献1)とSmart-seq2(参考文献2)を使って、卵母細胞から芽細胞までの発生過程にわたって(CAST/EiJ x C57BL/6J)F1マウス由来の269個の細胞ごとにゲノムワイドの遺伝子発現を解析するとともに、成熟細胞についても細胞ごとの遺伝子発現を解析した。その結果、胚細胞でも成熟細胞でも、単一対立遺伝子の発現がランダムに起きることを見出し、その確率過程が、ゲノムインプリンティングや対立遺伝子排除ではなく、転写爆発モデルに合うとした。また、新たな父系性X染色体不活性化も見出した。この発見は同一の遺伝型の細胞ひいては個人が示す表現型の多様性の解釈に新たな観点をもたらす。
文献(出典)→ Deng1 Q, Ramskold D, Reinius B, Sandberg R. (2014) Single-Cell RNA-Seq Reveals Dynamic, Random Monoallelic Gene Expression in Mammalian Cells. Science 10 January 2014: Vol. 343 no. 6167 pp. 193-196
参考文献1(Smart-seq)→ Ramskold D et al. (2012) Full-length mRNA-Seq from single-cell levels of RNA and individual circulating tumor cells. Nat Biotechnol. 2012 Aug;30(8):777-82.
参考文献2(Smart-seq2)→ Picelli S et al (2013) Smart-seq2 for sensitive full-length transcriptome profiling in single cells. Nat Methods. 2013 Nov;10(11):1096-8. doi: 10.1038/nmeth.2639. Epub 2013 Sep 22. -
北大、JASRI、SPring-8、東京薬科大学ならびに共和化工の研究チームが、日和見感染を引き起こすこともある細菌の一種Micobacteirum lacticumの内部構造を、試料を染色や樹脂で固めることなく溶液中で生きたまま観察することに成功した。この成功には最先端の施設と独自に開発した技術が駆使されている:我が国初であり他には米国にしか存在しないX線自由電子レーザー(XFEL)施設であるSACRA(SPring-8 Angstrom Compact Free Electron Laser);パルス状コヒーレントX線溶液散乱(PCXSS)法;窒化ケイ素の膜を利用した10nm角のマイクロ液体封入アレイ(MLEA)チップ;マルチポートCCD検出器;コヒーレントX線回折像からの細胞構造再構成アルゴリズム。
論文(出典)→ Kimura K, Joti Y, Shibuya A, Song C, Kim S, Tono K, Yabashi M, Tamakoshi M, Moriya T, Oshima T, Ishikawa T, Bessho Y, Nishino Y (2014) Imaging live cell in micro-liquid enclosure by X-ray laser diffraction. Nat Commun. 2014 Jan 7;5:3052. doi: 10.1038/ncomms4052.
SACRAを楽しもう→ キャラクター「ピコネコ」が案内するSACRA -
X線自由電子レーザー(XFEL)における位相決定問題を解決する
結晶が壊れ始める前に回折像を記録する(diffraction-before-destruction)ことを実現した極めて短く(フェムト秒)強いパルスを発生するXFELによる微細結晶の構造決定が進みつつある。しかし、これまでは回折像から電子密度を算出するために必要な位相決定に、既知あるいは類似の構造の情報が必要であった。著者等は、米国のSLAC国立加速器研究所のLinac Coherent Light Source(LCLS)を使って、ノズルから微結晶を溶液のままジェットで飛ばしそこにビームを当てる連続フェムト秒結晶解析法(Serial Femtosecond Crystallography; SFX)により単波長異常散乱(S-SAD)を測定し、モンテカルロ積分を行って高精度な回折強度を導出して、一連の実験の中で位相を決定できることを示した。
論文(出典)→ Barends TR, Foucar L, Botha S, Doak RB, Shoeman RL, Nass K, Koglin JE, Williams GJ, Boutet S, Messerschmidt M, Schlichting I.(2014) De novo protein crystal structure determination from X-ray free-electron laser data. Nature 505, 244-247 (09 January 2014) doi:10.1038/nature12773 (Published online 24 November 2013) -
2013年のMethod of the Yearは単一細胞シークエンシングに
Nature Methodは、2013年を象徴する実験手法として、単一細胞シークエンシングを選定し、2014年1月号でその特集記事を組んだ。単一細胞のゲノムシークエンシングやトランスクリプトームシークエンシングによって、細胞や組織を構成している細胞の不均一性を明らかにすることができ、また、微量あるいは希少な細胞の分析も可能になることから、発生の分子機構、ガンを始めとする疾患の分子機構あるいは微生物メタゲノムといった広範な研究対象に対する精密な解析が可能になり、今後、本手法から目覚ましい成果が生まれていくものと思われる。
参考文献(出典)→ Editorial "Method of the Year 2013" Nature Methods Vol 11. No.1 January 2014 p. 1 doi:10.1038/nmeth.2801 -
タンパク質表面の疎水性はアミノ酸を構成する個々の原子の疎水性から見ていくべきである
これまでに100以上の疎水性指標(hydrophobicity scales)が発表されてきたが、著者等は、アミノ酸を構成する各原子の疎水性を基にした指標がタンパク質の構造と機能をより精密に説明できることを示した。提案された原子の疎水性指標は簡明であり、OPLS(参考文献参照)から得られた部分電荷をもとにして各原子の疎水性を+1/-1の二値で表す。アミノ酸の疎水性ひいてはタンパク質の表面の疎水性は、この原子の疎水性指標の集合としてみていく。この手法によって、タンパク質界面のKyte-Doolittle指標(参考文献参照;以下、KD_S)の分布との比較から、両者の差異をもたらすアミノ酸とその内部構造の特徴を明らかにし、また、インターロイキン1βの空孔における水分子の配置ならびにアクアポリン1のチャネルとKcsA K+チャネルの機能を、精密に説明することができた。(原子レベルの疎水性を可視化するツールVMDは著者等から入手できる)
論文(出典)→ Kapcha LH, Rossky PJ.(2013) A Simple Atomic-Level Hydrophobicity Scale Reveals Protein Interfacial Structure. J Mol Biol. 2013 Oct 10. pii: S0022-2836(13)00623-2. doi: 10.1016/j.jmb.2013.09.039. [Epub ahead of print]
参考文献(Kyte-Doolittle scale)→ Kyte J, Doolittle RF (1982) "A simple method for displaying the hydropathic character of a protein". J. Mol. Biol. 1982 May;157 (1): 105-32.
参考文献(VMD)→ Humphrey W, Dalke A, Schulten K.(1966) VMD: visual molecular dynamics. J Mol Graph. 1996 Feb;14(1):33-8, 27-8. -
Greber等は低温電子顕微鏡法によってSus scrofa(ブタ)肝臓由来39Sの立体構造を4.9Åの精度で決定し、S. scrofaとBos taurus(ウシ)の39Sの架橋と質量分析のデータも組み合わせ、高度好熱菌Thermus thermophilusの23S rRNAと比較しながら、ミトコンドリアリボソーム(mitoribosome)39S特有の構造を明らかにした。Mitoribosomeにおいて、バクテリアに比べて減少しているrRNA量が、ミトコンドリア特有のタンパク質によって構造の上では補償され、また、ペプチド鎖が合成されるトンネルの出口におけるタンパク質MRPL45の配置と機能を同定して、バクテリアのrRNAの出口の構造から、呼吸鎖を構成する疎水性タンパク質の合成と膜挿入をもたらすことができる構造へと大きく変わっていることを見出した。
論文(出典)→ Greber BJ, Boehringer D, Leitner A, Bieri P, Voigts-Hoffmann F, Erzberger JP, Leibundgut M, Aebersold R, Ban N. (2013) Architecture of the large subunit of the mammalian mitochondrial ribosome -
英国Wellcome Trust Centre for Cell BiologyのEarnshaw博士がForensic Integrative Cell Biology(以下、FICB)を提唱。細胞生物学において今後、機能が不明なタンパク質と新奇なタンパク質の機能予測ならびに一定の機能が知られているタンパク質の新奇な機能の予測が重要な研究分野になると設定。FICBは、質量分析、RNAi、RNA-seq、系統解析など、タンパク質に関わる各「痕跡」を分類指標(classifier)として数値化した上で、多変量解析や機械学習などの情報解析によって統合的にタンパク質の機能を「鑑識」する手法である。FICBの展開には、痕跡を特定する実験手法の進歩・普及とともに、さまざまな研究グループが行ったハイスループットな測定の結果がもれなくデータベースとして再利用可能にされていることが必須であり("Same data, different question")、したがって科学技術予算もその方向を目指すべきとした。また、機能予測の結果を検証して最終的に細胞機能を明らかにするために生化学者が必須であるとした。著者等は、2010年に、有糸分裂染色体を対象として、いずれもSILAC法を適用した5種類のプロテオーム解析からの分類指標をクラスター解析して、当時機能未知であったタンパク質C10orf104の機能を予測し、後に他の研究グループによってANAPC16として同定された成功体験を有している。
小論 (出典)→ Earnshaw WC(2013) Deducing Protein Function by Forensic Integrative Cell Biology. PLoS Biol. 2013 Dec;11(12):e1001742. doi: 10.1371/journal.pbio.1001742. Epub 2013 Dec17.
参考文献(SILAC)→ Ong SE. (2012) The expanding field of SILAC. Anal Bioanal Chem. 2012 Sep;404(4):967-76. doi: 10.1007/s00216-012-5998-3. Epub 2012 Apr 25. -
ゲノム薬理学が臨床応用に至るには、薬剤感受性測定プロトコールの標準化が必須か
2012年のNature誌において、138種類の抗がん剤を727種類の細胞株でアッセイしたCancer Genome Project (CGP)の成果と24種類の抗がん剤を1,036種類の細胞株Cancer Cell Line Encyclopedia (CCLE)の成果が報告された。2013年12月のNature誌では、両者に共通であった15種類の抗がん剤、471種類の細胞株ならびに12,187の遺伝子のセットについて、解析データを照合した結果が報告されている。それによると、遺伝子発現プロファイルは両者のデータが整合していたが、薬剤感受性および薬剤と遺伝子の相関関係については整合性が低かった。両者の薬剤感受性のアッセイ法が異なっていたことがその一因であるが、その他にも多様な要因があると考えられ、こうした非整合はこれからのゲノム薬理学のプロジェクトの間でも起こりうる。CCLEとCGPのデータは基礎研究に掛け替えのない情報資源であるが、個別化医療を目指して行く上では、解析プロトコルの標準化を検討する必要がある。
展望(出典)→ Weinstein JN and Lorenzi P. (2013) Cancer: Discrepancies in drug sentitivity. Nature. 2013 Dec 19;504(7480):381-3. doi: 10.1038/nature12839. Epub 2013 Nov 27.
論文(出典)→ Haibe-Kains B, El-Hachem N, Birkbak NJ, Jin AC, Beck AH, Aerts HJ, Quackenbush J. (2013) Inconsistency in large pharmacogenomic studies. Nature. 2013 Dec 19;504(7480):389-93. doi: 10.1038/nature12831. Epub 2013 Nov 27. -
レンチウイルスが宿主細胞のタンパク質分解系を無力化する分子機構を立体構造から明らかにする
レンチウイルスの中でもHIV-2やSIVなどは特有のアクセサリータンパク質viral related protein x(Vpx)またはviral related protein r(Vpr)によって、宿主細胞の制限酵素SAMHD1をユビキチン-プロテアソーム系で分解して宿主に感染する。英国の研究グループは、単波長異常分散法を使って、Vpx、ユビキチン転移酵素(ユビキチンリガーゼ) (E3)の基質アダプタータンパク質DCAF1およびSAMHD1のC末端の複合体の構造、ひいては、3つの構成分子の界面を明らかにした。その結果、ジンクフィンガーモチーフで安定になっている3ヘリックスバンドル構造のVpxがディスク状のDCAF1を包み込むことによって現れる界面がSAMHD1を引き寄せる機構を発見した。
論文(出典)→ Schwefel D, Groom HC, Boucherit VC, Christodoulou E, Walker PA, Stoye JP, Bishop KN, Taylor IA1 (2013) Structural basis of lentiviral subversion of a cellular protein degradation pathway. Nature. 2013 Dec 15. doi: 10.1038/nature12815. [Epub ahead of print] -
オートファジーは、脱リン酸化酵素Fap-1の選択的分解を介して、細胞死を制御する
Thorburn等は、オートファジーが細胞死を促進するか抑制するかは、細胞の型と外部刺激に依存することを明らかにした。アポトーシスへの関与にミトコンドリアを要しない細胞(BJAB細胞)と要する細胞(Jurkat細胞とCEM細胞)および培養した細胞集団をFACSで仕分けたオートファジー活性の低い集団と高い集団に対して、デスレセプターのアゴニストであるFasリガンドとTRAILおよび抗がん剤の刺激を与えた反応を観察した。その結果、Fasリガンドに対してBJAB細胞においてはオートファジーがFap-1を選択的に分解してFasアポトーシスによって細胞死を促進することを見出し、オートファジーのアダプタータンパク質p62がFap-1をオートファゴソームに導く機構を提唱した。また、オートファジーの活性の違いは24時間後には消えてしまうが、活性が高かった細胞集団では、Fasリガンドに対する感受性が高かった事も報告している。一方で、後者の2種類の細胞ではFasリガンドが引き金となるアポトーシスが抑制され、また、全ての細胞においてTRAIL刺激によるアポトーシスが抑制されることを見出した。
論文(出典)→ Gump JM, Staskiewicz L, Morgan MJ, Bamberg A, Riches DW, Thorburn A (2014) Autophagy variation within a cell population determines cell fate through selective degradation of Fap-1. Nat Cell Biol. 16(1)47-54
論評(出典)→ Joshi S, KM Ryan (2014) Autophagy chews Fap to promote apoptosis. Nat Cell Biol. 16(1)23-25.
Fap-1→ チロシン脱リン酸化酵素(Fas-associated phosphates 1 or PTPN13, PTP-L1)
TRAIL→ tumour necrosis factor (TNF)-related apoptosis-inducing ligand
BJAB細胞→ EBV-negative B lymphoma cell line -
血中で循環する腫瘍由来DNAにおいて各種のガンの早期診断のために変異をみるべき遺伝子を絞り込む
著者等は、TCGA(The Cancer Genome Atlas)のデータセットにTCGA以外のデータセットも組み合わせて4,467の検体のデータセットを分割して、1つの発見コホート(discovery cohort)と2件の評価コホート(validation cohort)を用意して、各種腫瘍と遺伝子変異の相関を解析した。その結果、わずか25種類の遺伝子セットによって10種類の腫瘍を65~77%の感度で検出できるとことを見出した。すなわち、血中で循環する腫瘍由来のDNA(circulating tumor DNA; ctDNA)について少数の遺伝子領域を高深度シーケンシングすることによって、多様な腫瘍を非侵襲的に早期診断すできる可能性を示した。一方で、ctDNAのホットスポットをターゲットとする解析は、アミノ酸への読み枠を変えない変異へのバイアスがあることからガン検出の再現性に問題が起きる事を指摘した。
論文(出典)→ Martinez P, McGranahan N, Birkbak NJ, Gerlinger M, Swanton C.(2013) Computational optimisation of targeted DNA sequencing for cancer detection. Sci Rep. 2013 Dec 3;3:3309. doi: 10.1038/srep03309.
参考(末梢循環腫瘍細胞)→ http://www.ishiyaku.co.jp/magazines/ayumi/AyumiBookDetail.aspx?BC=922811 -
富山大学和漢医薬学総合研究所の東田准教授等は2012年に、山芋からの抽出物ジオスゲニン(diosgenin)がアルツハイマー病のモデルマウスの病態を改善し、1,25D3-膜結合型迅速応答ステロイド結合タンパク質(1,25D3--membrane-associated,rapid response steroid- binding protein; 1,25D3-MARRS) を直接活性化することを見出した。今回は、健康なモデルマウスにジオスゲニンを投与すると、物体を認識した記憶を限界の24時間を超えても保持している表現型とともに、脳神経の軸索の密度が高くなり、脳の前頭前野と嗅周皮質においてc-Fos遺伝子の発現があがる事を見出し、記憶力の向上はジオスゲニンの標的タンパク質1,25D3-MARRSを媒介とする軸索の成長によるものとした。
論文(出典)→ Tohda C, Lee YA, Goto Y, Nemere I. (2013) Diosgenin-induced cognitive enhancement in normal mice is mediated by 1,25D3-MARRS. Sci Rep. 2013 Dec 2;3:3395. doi: 10.1038/srep03395. -
鋳型(template)を使ったタンパク質相互作用予測法を展望する
Template-based modeling (TBM)のさまざまな手法を取り上げながら、TBMによって、アミノ酸配列の相同性が高い鋳型が存在する場合は構造変化を伴う複合体形成の場合でも高精度なモデルを構築可能であり、また、その高速性からゲノム全域を対象として複合体予測が可能とした。また、相同性が無い鋳型も界面構造の比較から検出して利用できること、単量体の構造の組合わせによって複合体の鋳型を増やせること、ならびに、TBMと剛体ドッキングの手法を組み合わせることで予測精度が上がる場合があるとした。一方で、TBMの課題についても言及されている。(本論文は、Current Opinion in Structural Biologyの"Folding and binding"特集号に収められている)
レビュー(出典)→ Andras Szilagyi and Yang Zhang (2014) Template-based structure modeling of protein?protein interactions. Current Opinion in Structural Biology Volume 24, Feburary 2014, Pages 10-23 -
2013年12月のCurrent Opinion in Genetics & Developmentは、Genetics of system biology と題した特集号である。編集者のまとめを含めてGWAS解析、パスウエー解析、遺伝子発現解析、酵母遺伝解析など多岐にわたるテーマについて15編の簡明なレビューが掲載されている。
特集号(出典)→ Sunyaev S and Roth F (ed) Genetics of system biology Current Opinion in Genetics & Development Volume 23, Issue 6, Page 599-708 (December 2013) -
罹患者が多い家族の全エクソームシーケンシングは、罹患リスクを有意に高める希少変異の探索に有用である
遅発型アルツハイマー病(late-onset Alzheimer's disease; LOAD)の患者を有する14の家族とそれ以外の7つの対照群のwhole-exome sequencingの解析によって、GWASで検出できない低頻度(希な)変異、PLD3(phospholipase D3)の変異Val232Met、がLOADのリスクを有意に高めていることを見出した。また機能解析によって、PLD3遺伝子の発現量と細胞内のアミロイド前駆体タンパク質APP量が逆相関していることも見出した。
論文(出典)→ Cruchaga C et al. (2013) Rare coding variants in the phospholipase D3 gene confer risk for Alzheimer's disease. Nature Published online 11 December 2013doi:10.1038/nature12825
参考文献→ Guerriro et al. (2013) TREM2 variants in Alzheimer's disease. N. Engl. J. Med. 368, 117?127 (2013). -
(修復機構について2013年に発表された論文を中心に最新の知見を展望)超高速なタイムラプスイメージング顕微鏡法やクロマチン免疫沈降法を使った観察によって、切断されたDNA二本鎖DNA(DNA double-strand breaks; DSBs)の修復に必要な相同部位が生体内において、染色体の損傷部分を起点として、染色体にそった一次元上で近い領域およびループやセントロメアの配置などに影響される3次元空間において近い領域において、探索されることが分かってきた。また、遺伝子座間の転座が、ループ形成の制御を介してATM因子またはRAG2因子のC末端によって抑制されていることも分かってきた。損傷後の染色体の動的振る舞いを支配する因子の解明が待たれる。
展望(出典)→ Rocha PR, Chaumeil J and Skok JA (2013) Finding the Right Partner in a 3D Genome Science 13 December 2013: Vol. 342 no. 6164 pp. 1333-1334 DOI: 10.1126/science.1246106 -
クライオ電子顕微鏡法で非相同末端結合におけるDNA結合タンパク質の構造と結合部位を推定する
非相同末端結合(non-homologous end joining; NHEJ)は二本鎖DNAの損傷の修復から適応免疫に必要な二本鎖DNAの切断までを幅広く修復する分子機構である。DNA-PKcsはこのNHEJにおいて主要な役割を果たすキナーゼである。DNA-PKcs/DNA複合体ならびにDNA-PKcs/Ku/DNA複合体の膨大なクライオ電子顕微鏡からの画像を対象する固有画像解析の結果、DNA-PKcsにはintrinsic disorder領域が複数箇所にあり、それが複合体に構造的柔軟性をもたらすと推定でき、また、DNAとKuが結合するDNA-PKcsの領域を絞り込むことができた。
論文(出典)→ Villarreal SA and Stewart PL (2013) CryoEM and Image Sorting for Flexible Protein/DNA Complexes. Journal of Structural Biology Available online 9 December 2013 -
CASP(Critical Assessment of Techniques for Protein Structure Prediction)は、その立体構造が明らかにされていないアミノ酸配列からタンパク質構造を予測するコンテストであり、20年にわたり構造予測法の進歩を促してきた。この論文は、課題となるターゲットを提供したいわゆる実験家が、そのターゲットに取り組んだ動機、特に、構造ならびに機能の観点から構造のどのような特徴を解明したかったのか、を集積した論文であるが、今後、バイオインフォマティシャンが構造予測に取り組んで行く上で示唆に富む内容が含まれている。
論文(出典)→ Kryshtafovych A, et al (2013) Challenging the state-of-the-art in protein structure prediction: Highlights of experimental target structures for the 10th Critical Assessment of Techniques for Protein Structure Prediction Experiment CASP10. Proteins 2013 Dec 8. doi: 10.1002/prot.24489. [Epub ahead of print] -
米国NIH、BD2K(Big Data to Knowledge)の新規課題募集を開始
米国NIHは、医学生物学がデータ科学の様相を強めることを見越して、2013年からBD2Kイニシアティブを開始した。7月から「Centers of Excedllence for Big Data Computing in the Biomedical Science」を募集していたが、12月になりFDAと共同で新課題「BD2K-LINCS-Perturbation Data Coordination and Integration Center (DCIC) (U54)」の募集を開始した(LINCSはLibrary of Integrated Network-Based Cellular Signaturesの略称)。採択は1件、期間は5年の予定で、予算規模は500万ドル(2015年度分)。
募集要項→ BD2K-LINCS-Perturbation Data Coordination and Integration Center (DCIC) (U54) -
東北メガバンク、Thomson Resuters Cortellisを利用
アカデミアでは引用文献検索サービスWeb of Scienceで知られているThomson Reuters社は、2013年12月12日、東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)に、CortellisTM for Informatics Gene Variant Databaseを始めとするソリューションを提供することを発表した。このデータベースには、治療に対する反応や薬剤のデータも含まれていうる。CortellisTM for Informaticsは、Thomson Reuters Cortellisをアクセスする一連のAPIsで構成されている。
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Stergachis等は、ヒト細胞81種類のエクソンからDNaseIゲノムフットプリント法で検出した1千万以上のフットプリントを解析して、ヒト遺伝子のコドンのおよそ15%は、遺伝暗号と転写因子結合の2重の役割を担うコドン、(duon)、であるとし、進化的保存性の高い(duon)がタンパク質の進化に影響を与え、コドンの偏りの要因でもあるとした。また、592,867のヘテロなsingle-nucleotide variants (SNVs)のうちduon中に存在した17%以上のSNVsが転写因子の結合に直接影響するとした。このduonの提唱によって、ゲノムや変異のアノテーションに新たな観点がひらけていく可能性が出てきた。
論文(出典)→ Stergachis AB et al.(2013) Exonic Transcription Factor Binding Directs Codon Choice and Affects Protein Evolution. Science Vol. 342 no.6164 pp.1367-1372. DOI: 10.1126/science.1243490
論文(参考)→ Khan AH, Lin A, Smith DJ (2012) Discovery and Characterization of Human Exonic Transcriptional Regulatory Elements PLoS One. 2012;7(9):e46098. doi: 10.1371/journal.pone.0046098. Epub 2012 Sep 24. -
60万の薬剤・化合物と570のヒトタンパク質における7千のポケットの相互作用をランク付け
2013年11月に開催された米国NIHのHigh Risk-High Rewardシンポジウムにおいて、ニューヨーク大学の薬理学者Tomothy Cardozo博士は薬剤・化合物とタンパク質のドッキングを網羅的に評価するプロジェクトを紹介した。PubChemとCheMBLのデータをもとにして、Googleのスーパーコンピュータを使って計40億組の相互作用を算出し、Gene Expression Omnibus (GEO)データベースを組み合わせてヒトの組織・臓器に紐づけた。プロジェクトの成果は、drugable.comにおいて試験的に公開されている。
紹介記事(出典)→ Reardon S (2013) Project ranks billions of drug interactions. Nature. 2013 Nov 28;503(7477):449-50. doi: 10.1038/503449a. -
2013年Science & ScieLifeLab prize for young scientistsから
英国のSchmidt博士は、ヒト、マウス、犬、オポッサム及び鶏における組織特異的な転写因子CEBPAとHNF4Aを比較し、また、哺乳類におけるCTCF因子を比較して、制御因子の複雑な進化に取り組んだ成果によって、若手科学者賞の最終選考に残った。
エッセイ(出典)→ Schmidt D(2013) SCIENCE & SCILIFELAB PRIZE Evolution of Vertebrate Transcriptional Regulator Binding. Comparative evolutionary analysis of transcriptional regulator binding across several vertebrate species reveals intricate regulatory genome evolution. Science 6 December 2013: 1186. -
クライオ電子顕微鏡法によってカプサイシン受容体TRPV1の構造が解明された
ジャーナルNature 2013年12月5月号において、構造生物学の画期的成果としてカプサイシンだけでなく熱によっても活性化されるTPRV1の構造解明が取り上げられた。米国のグループ(原著論文1と原著論文2)は、試料調整の工夫ならびに高感度カメラと高精度なデータ処理法によって、電顕測定法だけによってTRPV1のチャネル構造を3.4Åの精度で決定し、クモ毒素とカプサイシンの結合位置からTRPV1にはチャネルの上下2か所にゲートが存在することを明らかにし、TRPV1が多様な刺激に反応するのは2か所のゲートの協調によるものとした。この構造・機能解析によって、TRPV1などのイオンチャネルをターゲットにした鎮痛剤開発を期待できる。
文献(出典)→ Henerson R (2013) Ion channel seen by electron microscopy. Nature Vol 504 93-94 5 DECEMBER 2013
原著論文1→ Liao M, Cao E, Julius D & Cheng Y (2013) Structure of the TRPV1 ion channel determined by electron cryo-microscopy. Nature 504, 107?112 (05 December 2013) doi:10.1038/nature12822 Published online 04 December 2013
原著論文2→ Cao E, Liao M, Cheng Y & Julius D (2013) TRPV1 structures in distinct conformations reveal activation mechanisms. Nature 504, 113?118 (05 December 2013) doi:10.1038/nature12823 Published online 04 December 2013 -
クラスCのGタンパク質共役受容体(GPCR)であるGABAB受容体は代謝型受容体であり、他の代謝型グルタミン酸受容体(mGluR)がホモ二量体であるのに対して,GBR1とGBR2の2種類サブユニットで構成されるヘテロ二量体である。このGBR1とGBR2の外部ドメインVenus flytrap (VFT)ドメインに、アポ、アゴニストまたはアンタゴニスト(GABAの誘導体)が結合した状態の動的構造を明らかにした。その結果、アゴニストもアンタゴニストもGBR1のドメインの間隙にのみ結合し、アンタゴニストの結合がもたらす静止状態の構造とアゴニストの結合がもたらす活性状態の構造の間で変化することを見出した。このアゴニスト結合がもたらす外部ドメインの構造変化によって、信号伝達をもたらす膜貫通部位のヘテロ二量体の再配置が引き起こされるというGABAB受容体に特有の分子機構を提案した。
論文(出典)→ Geng Y, Bush M, Mosyak L, Wang F & Fan QR (2013) Structural mechanism of ligand activation in human GABAB receptor. Nature doi:10.1038/nature12725 Published online 04 December 2013 -
近年オートファジー関連論文が急増し、疾患との関連に関する総説も著わされている。英国の研究グループは、Kras遺伝子に変異を起こした膵管腺癌(pancreatic ductal adenocarcinoma (PDAC))のモデルマウスを使って、オートファジー遺伝子Atg5またはAtg7の欠損が、癌抑制遺伝子p53を有するモデルマウスでは癌化を抑制するが、p53を欠損したモデルマウスではグルコースの取り込みと同化作用が上がり、癌化を加速することを見出した。また、治験に入っているオートファジー阻害剤hydroxychloroquineがp53を欠損したPDACモデルマウスにおいて腫瘍形成を加速することを示した。
オートファジーと疾患に関する総説→ Choi AM, Ryter SW, Levine B (2013) Autophagy in human health and disease. N Engl J Med. 2013 Feb 14;368(7):651-62. doi: 10.1056/NEJMra1205406.
文献(出典)→ Mathias T et al (2013) p53 status determines the role of autophagy in pancreatic tumour development. Nature doi:10.1038/nature12865 Published online 04 December 2013 -
東北メディカル・メガバンク機構 1000人分の全ゲノム配列の高精度解読完了
2013年11月29日、東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)は、東北メディカル・メガバンク計画のコホート事業に参加した健常な日本人1000人分の 全ゲノム解読を完了したと発表した。1300万個の既知の遺伝子多型に加え、1500万個におよぶ新規遺伝子多型を収集。ToMMo 全ゲノムリファレンスパネルのドラフト版を今年度中に構築する予定。さらに、ToMMo 全ゲノムリファレンスパネルのドラフト版 を今年度中に構築する予定です。また、広く医学・生命科学系研究者に向けて検索しやすいデータベースとしての準備が整い次第公開。
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タンパク質とRNAのドッキングシミュレーションのベンチマークとなるデータセットを構築した。2013年9月16日時点でProtein Data Bank (PDB)に収録されていた1,495件のタンパク質RNA複合体から絞り込んだ73の複合体について、PDB ID、タンパク質名、RNA名、解離定数Kdの測定値、測定方法、測定条件(pH、温度、バッファーの組成)、参考文献へのリンクとデータ抽出した表または図の番号、ならびにKdあら計算した解離エネルギーを網羅した。この解離エネルギーと3種類のスコアリング(scoring)関数で計算したスコアとの相関は低かった。ドッキングの評価関数の精密化に貢献するために、このデータセットは年1回更新されていく予定である。
論文→ Yang X, Li H, Huang Y, Liu S (2013) The dataset for protein-RNA binding affinity. Protein Sci. 2013 Dec;22(12):1808-11. Article first published online: 12 NOV 2013.doi: 10.1002/pro.2383.
データセット→ タンパ質とRNAの結合親和性テーブル -
2013年6月に米国立がん研究所(NCI)は、長年にわたり抗がん剤のターゲットとして研究されながら征服することができなかった難敵Ras変異タンパク質に集中的に取り組むRas Projectの構想を発表した。それから半年足らずの11月20日、米国ハワード・ヒューズ医療研究所(HHMI)のShokat博士らの研究チームは数年来斬新なアプローチで進めたきた研究成果をNature誌上に発表した。はじめに、K-Rasの変異体K-Ras(G12C)のシステインをピンポイントで狙って、460種類のライブラリーの中からこのシステインに非可逆的に結合する化合物を同定した。さらに、変異体と化合物の複合体の構造をX線構造解析で決定し、変異体にこれまで知られていなかったポケットを発見し、この化合物のアロステリック効果によって、変異体が活性状態を継続するGTPとの結合よりも非活性な状態になるGDPとの結合へ向かい、加えて、エフェクターとの相互作用を打ち消すことを明らかにした。この結果、K-Ras(G12C)をターゲットとする副作用が小さな抗がん剤創出の可能性を示すと共に、Rasの多様な変異の一つ一つをターゲットとする多様な抗がん剤創出の可能性も示した。このShokat等の研究成果は、Nature誌のNews & Viewsにも記事"DRUG DISCOVERY Pocket of opportunity"として取り上げられた。
文献→ Ostrem JM, Peters U, Sos ML, Wells JA, Shokat KM.(2013) K-Ras(G12C) inhibitors allosterically control GTP affinity and effector interactions. Nature. 2013 Nov 20. doi: 10.1038/nature12796. [Epub ahead of print] PMID: 24256730
記事→ Bollag G and Zhang C (2013). Drug discovery: Pocket of opportunity. Nature 2013 Nov 20. doi: 10.1038/nature12835. [Epub ahead of print] PMID: 24256732 -
富山大学和漢医薬学総合研究所、所有する生薬由来化合物及び生薬エキス(共に約100種類)のセットを用いた探索研究の公募を始めました
富山大学和漢医薬学総合研究所は、平成22年度に文部科学省より全国共同利用・共同研究拠点「和漢薬の科学基盤形成拠点」として採択され、拠点事業を実施している。当研究所は我が国唯一の和漢医薬学に特化した研究所として、これまで我が国のみならず世界の伝統医薬学の近代化と発展、並びに現代医療に寄与するために、21世紀COEプログラム「東洋の知に立脚した個の医療の創生」、拠点大学方式によるタイとの学術交流事業、知的クラスター創成事業などのプロジェクトを実施してきた。和漢医薬学総合研究所附属民族薬物資料館では、生薬標本27,000点余、植物標本33,000点余を所蔵しており、平成22年度に増築を完了し、国際共同研究拠点オフィスを抱える共同研究拠点としての環境整備を行っている。また、和漢薬データベースを公開し共同研究に供することにより、和漢薬の科学基盤を形成するとともに、全人医療に向けた新しい医療体系の構築を目指している。現在、研究所は「和漢薬の科学基盤形成拠点」事業の一環として、公募型共同研究を実施しており、その中の「探索研究プロジェクト」として、研究所が所有する生薬由来化合物及び生薬エキス(共に約100種類)のセットを用いた探索研究を公募してきたが、このたび、平成26年度の公募型共同研究の募集が始まった(なお、セットは無償で提供されます)。
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ジャーナルProteins: Structure, Function, and Bioinformatics 2013年11月号から拾い読み
1. 構造予測においては一般に、立体配座空間からのサンプリングを行ってから、発生させたモデルをスコアリングで再評価し、続いてモデルの精密化に進むことが行われてきたが、蛋白質間相互作用を例題として、著者等の実験とCAPRI(Critical Assessment of PRediction of Interactions)の結果から、サンプリングとスコアリングを独立に行うのではなく、統合して行う手法の方が高精度なモデルを構築できるとした。
2. DNAに結合する残基を、良い鋳型(TM-scoreが0.6を超す)が得られる場合に適している鋳型に基づいた手法と、良い鋳型が得られない場合および結合の前後で構造が大きく変化する場合にも適している機械学習とを組み合わせて予測するアルゴリズムを開発し、結合している残基と結合していない残基を特徴づける指標も工夫した上で、他の予測システムよりも高性能なDNABindとして実装・公開した。
3.エストロゲン受容体アルファ(ERα)がホルモンから信号を伝達される間にERαの2つのドメイン、リガンド結合ドメイン(LBD)とDNA結合ドメイン(DBD)、の振る舞いを、粗視化と全原子の分子動力学計算を組み合わせてシミュレーションした。その結果、エステジオールに結合したLBDがC末端のヘリックス(H12)を介してDBDと相互作用し、LBDの複数の面によってLBDとDBDの結合が安定になることで、DBAとDNA複合体を安定化することを見出した。
4.相同でない1247種類の酵素について、酵素全体の動きに対応する最も遅いモードでの動きをガウスネットワークモデル(GNM)によって計算し、Needleman?Wunschの動的計画法によって各酵素の動的構造のアライメントを行った。その結果、各酵素に特有な動的振る舞いは最も遅いモードだけに支配されるのではなく、複数のモードの複合効果や四次構造(quaternary structure)の違いによってサブユニットの動きに加わる制限が異なる等の要因によって支配されると推定した。
5.酵母Saccharomyces cerevisiaeのエキソソームにおいて進化的に最も保存されているRrp41サブユニットと保存性が最も低いMtr3サブユニットをモデルとして、蛋白質複合体における共進化をバイオインフォマティクスによる解析だけではなく実験的に解析した。実験においては、両サブユニットのオーソログを他の菌類からS. cerevisiaeに導入したキメラ酵母の特性を測定した。その結果、エキソソームのサブユニットは菌類の進化の初期に分岐したが進化のパターンは似ていることを見出した。また、エキソソームのコアのサブユニットとRNA基質との間の共進化も見出した。
6.タンパク質の構造予測コンテストCASPと蛋白質間相互作用予測コンテストCAPRIに習って、人工的に設計したインフルエンザ赤血球凝集素に結合する2種類のタンパク質を対象に、網羅的に導入した変異が蛋白質間相互作用に与える影響を予測するコンテストを行った。参加22グループが予測した結果と、酵母ディスプレー法から濃縮した結合タンパク質の高深度配列解読(deep sequencing)からの実験結果と照合し、精度の高い予測を実現するために考慮する必要がある要因を洗い出した。
文献1(総説)→ Vajda S, Hall DR, Kozakov D.(2013) Sampling and scoring: A marriage made in heaven. Proteins. 2013 Nov;81(11):1874-84. doi: 10.1002/prot.24343. Epub 2013 Aug 19. PMID: 23775627
文献2→ Liu R, Hu J.(2013) DNABind: A hybrid algorithm for structure-based prediction of DNA-binding residues bycombining machine learning- and template-based approaches. Proteins. 2013 Nov;81(11):1885-99. doi: 10.1002/prot.24330. Epub 2013 Aug 16. PMID: 23737141
文献3→ Huang W, Greene GL, Ravikumar KM, Yang S.(2013) Cross-talk between the ligand- and DNA-binding domains of estrogen receptor.
文献4→ Tobi D.(2013) Large-scale analysis of the dynamics of enzymes. Proteins. 2013 Nov;81(11):1910-8. doi: 10.1002/prot.24335. Epub 2013 Aug 19. PMID: 23737241
文献5→ Moretti R et al. (2013) Community-wide evaluation of methods for predicting the effect of mutations on protein-proteininteractions. Proteins. 2013 Nov;81(11):1980-7. doi: 10.1002/prot.24356. Epub 2013 Aug 23. PMID: 23843247
文献6→ Sandler I, Medalia O, Aharoni A.(2013) Experimental analysis of co-evolution within protein complexes: The yeast exosome as a model. Proteins. 2013 Nov;81(11):1997-2006. doi: 10.1002/prot.24360. Epub 2013 Aug 23. PMID: 23852635
項目6の関連論文→ Whitehead TA et al (2012) Optimization of affinity, specificity and function of designed influenza inhibitors using deep sequencing. Nat Biotechnol. 2012 May 27;30(6):543-8. doi: 10.1038/nbt.2214. -
Precision Medicineに向けて:医学生物学の進歩と疾患の精緻な分類をもたらす知識ネットワーク
本記事の直前の記事「ヒトゲノムの変異と疾患の関連究明に取り組む基盤となるデータベースとツールを徹底レビュー」で言及したPrecision Mecicineについては、United States National Research Councilの委員会による報告書が2011年に出版されている。その要約版では、糖尿病や高血圧症の例を引いて、医学生物学の最先端情報が臨床の現場にも生かされて、精緻な疾患の分類に基づいて患者一人一人に最適な医療が施されるシステム、Information CommonsとKnowledge Network、の概念が謳われている。
報告(出典)→ Committee on a Framework for Development a New Taxonomy of Disease; National Research Council, US (2011) -
メチオニン転移RNAとGTPの非加水分解性アナログのGDPCPでリボソームに固定した転写開始因子eIF5Bとの転写開始複合体の構造を改良したクライオ電子顕微鏡で分析し、本手法が、複合体一般の動的構造あるいは遷移状態の研究に有用であることを示した。完全な転写開始複合体は全サンプルのわずか3%にあたる5,143サンプルであったが、6.6オングストロームの分解能で構造を決定することができた。その結果、転写開始にあたってリボソーム、eIF5Bおよびメチオニン転移RNAのいずれもが構造を変化させることが明らかになり、成熟リボソームにおいてのみ転写が始まる機構についても提案することができた。
論文(出典)→ Fernandez IS, Bai XC, Hussain T, Kelley AC, Lorsch JR, Ramakrishnan V, Scheres SH.(2013) Molecular architecture of a eukaryotic translational initiation complex. Science. 2013 Nov 15;342(6160):1240585. doi: 10.1126/science.1240585. Epub 2013 Nov 7. PMID: 24200810 -
ヒトゲノムの変異と疾患の関連究明に取り組む基盤となるデータベースとツールを徹底レビュー
疾患と変異に関するデータを集積しているHuman Gene Mutation Database(HGMD), Online Mendelian Inheritance in Man(OMIM), ClinVarおよびUniProt/Swiss-Protの内容を精査し、それぞれの特徴を詳らかにした(情報拠点注 その他の疾患と変異に関するデータベースの多くについても簡明なコメントが加えられている)。次に、これらのデータベースに集積されていない疾患と変異の関連情報が多くの文献に散在していることから、文献からの情報抽出技術について概観した。また、まれな疾患(rare disease)に関連する変異の情報等データベースにまだまだ集積されていない変異があることから、疾患をもたらす変異を同定するコンピュータ解析の手法も概観した。(情報拠点注 論文タイトルにあるPrecision Medicineは「遺伝子の変異から症状まであらゆる情報を融合して患者一人一人に最適な医療を行う」という概念でClayton Christensenが提唱した。例えば、公開されているプレゼンテーションのスライド13を参照されたい。)
文献(出典)→ Peterson TA, Doughty E, Kann MG (2013) Towards precision medicine: advances in computational approaches for the analysis of human variants. J Mol Biol.?2013 Nov 1;425(21):4047-63. doi: 10.1016/j.jmb.2013.08.008. Epub 2013 Aug 17. -
日本人を対象とするHuman Genetic Variation Databaseが公開された
京都大学医学研究科附属ゲノム医学センターは2013年11月12日に、日本人1000人規模のゲノム解析結果をHuman Genetic Variation Databaseとして専門家向けに公開した。
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Common variants(ありふれた変異)とrare variants(まれな変異)のデータから、疾患関連遺伝子と疾患原因遺伝子を探し出す
"Nature Genetics" 2013年11月号のLettersに7報連続して掲載されたcommon variantsとrare variantsに関する報告を紹介する(添付ファイル参照)。なお、Manolio TA等(2009)のレビューによれば、「ありふれた変異」と「まれな変異」は定量的には出現頻度に応じて次のように分類される:very rare (0.1%未満), rare (01.%~0.5%), low frequency (0.05%未満), common(0.5%以上)
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そうか、君は計算生物学者(computational biologist)になりたいのか? - Loman & Watsonの十戒
目的を明確に、類似のソフトウエアから最適を選択せよ! ソフトウエアの動きを検証せよ! 美しいプログラムを書くことに溺れるな! ソフトウエア開発の履歴を記録せよ! パイプライン開発を安易に始めるなかれ! 失敗を恐れるな、Obama流で行け! 解析結果を信じるな! UNIX/Linuxのコマンドラインを恐れるな、広く使われているコンピュータ言語から始めよ! データが因って来る生物学の物語を探れ! 君が思いつくことは誰かも思いつく!
解説(出典)→ Loman N & Watson M (2013) So you want to be a computational biologist? Nature Biotechnology 31(11)996?998 doi:10.1038/nbt.2740 Published online 08 November 2013
論説→ Nussinov R (2013) How Can PLOS Computational Biology Help the Biological Sciences? PLoS Comput Biol. 9(10):e1003262. doi: 10.1371/journal.pcbi.1003262. Epub 2013 Oct 3. -
米国のVollum研究所とHHMIの研究グループは輸送体と各種抗うつ薬の複合体構造を決定し、抗うつ薬の薬理に分子レベルの洞察を加えた:[論文1]ショウジョウバエのドーパミン輸送体(DAT)と三環系抗うつ薬(TCA)ノルトリプチリンとの複合体の構造を3Åの精度で決定し、DATがTCAを認識する機構の詳細を明らかにした。また、神経伝達物質ナトリウム共輸送体(NSS)に新奇な構造を見出し、コレステロールが真核生物のNSS輸送のアロステリックな制御に寄与するとした(ショウジョウバエのDATは、哺乳類DATのノルアドレナリン輸送体とセロトニン輸送体の機能を備えており、神経伝達物質ナトリウム共輸送体(NSS)の薬理と基質特異性研究の良いモデルである。);[論文2]真核生物のアミン輸送体(BAT)と相同ではあるがアミノ酸配列の一致度が25%程度止まりでありまた機能の違いも大きかったバクテリLeuTから、BATと同様な薬理作用を示す変異体LeuBATを作成した。LeuBATは、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)セルトラリンに結合定数18nMで結合し、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)とTCAにも高親和性結合を示した。このLeuBATとSSRI4種類, SNRI2種類、TCA1種類ならびにマジンドールとの複合体12種類の構造を決定し、多様な抗うつ薬に共通な結合様式と阻害の機構を明らかにした。
論文1(出典)→ Penmatsa A, Wang KH, Gouaux E (2013) Nature. 2013 Sep 15. doi: 10.1038/nature12533. PMID: 24037379 [Epub ahead of print] X-ray structure of dopamine transporter elucidates antidepressant mechanism.
論文2(出典)→ Wang H, Goehring A, Wang KH, Penmatsa A, Ressler R, Gouaux E (2013). Structural basis for action by diverse antidepressants on biogenic amine transporters. Nature. 2013 Oct 13. doi: 10.1038/nature12648. [Epub ahead of print] -
パスウエーを意識した代謝物ドッキングシミュレーションによって、タンパク質の機能と新奇なパスウエーを予測し、実験で裏付けた
遺伝子クラスターでコードされているタンパク質群のホモロジーモデリングと代謝物ドッキングからの推測をもとに、新奇なタンパク質であったPDB登録番号"2PMQ"のタンパク質にHyp-B 2-epimeraseの機能を割り当てるin vitro実験を進め、予測を裏付けることができた。また、2PMQが解糖系のスーパーファミリーに属していることから予測したcHyp-Bをαケトグルタル酸へと異化するパスウエーの存在を予測し、実験で裏付けることができた。さらに、トランスクリプトームによって、Hyp-B epimeraseが、tHyp-Bを浸透圧調節物質として蓄積するか、炭素源または窒素源として異化するかを決定するスイッチであることを見出した。
論文(出典)Zhao S et al (2013) Discovery of new enzymes and metabolic pathways by using structure and genome context. Nature. 2013 Oct 31;502(7473):698-702. doi: 10.1038/nature12576. Epub 2013 Sep 22.→ http://www.nature.com/nature/journal/v502/n7473/full/nature12576.html -
RNA結合タンパク質の立体構造を明らかにしたことによって、結合の機構の詳細が明らかになった
多くのミトコンドリアと陸上植物の葉緑体に存在するペンタトリコペプチドリピート(35アミノ酸の繰り返しモチーフ)を持つタンパク質(PPR)は、一本鎖RNA(ssRNA)を認識してRNAに結合するタンパク質である。トウモロコシ葉緑体のPPR10は、ATPH'とPSAJの2カ所の遺伝子間領域に結合する。今回、PPR10の構造を3Å以上の精度で決定して結合の機構を解明した。PPR10は、大きな構造変化をおこしながら18塩基のPSAJに結合するが、PSAJの6個の塩基を特異的に認識することを見出した。
論文(出典)→ Yin P et al (2013) Structural basis for the modular recognition of single-stranded RNA by PPR proteins.Nature. 2013 Oct 27. doi: 10.1038/nature12651. [Epub ahead of print] PMID: 24162847
論文(参考)→ (24種の真確生物由来の205のRNA結合タンパク質の結合部位を解析)Ray D et al (2013) A compendium of RNA-binding motifs for decoding gene regulation. Nature. 2013 Jul 11;499(7457):172-7. doi: 10.1038/nature12311 PMID: 23846655 -
膨大な遺伝的変異のデータを解読する新しいパラダイム"pathway association paradigm"
パスウエーの観点からの解析には、対象としている表現型と深く関連するSNPsやCNVといった遺伝的変異を既知のパスウエーにマッピングしていく方法(canonical pathway bases analyses)と、タンパク質間相互作用のネットワークにマップして遺伝的変異の密度の高い領域と表現型との相関を見ていく方法(''de novo" pathway discovery)がある。マッピングの精度や計算処理・統計処理において解決すべき点が残っているが、パスウエーレベルの相関解析は、遺伝子発現データの重ね合わせ、疾患などの状況に即した動的なタンパク質間相互作用ネットワークへの展開、相互作用の界面などの構造の考察を組み込んだネットワークの改良などによって、今後発展し、遺伝型と表現型の相関を解明するための強力なツールとなるであろう。
論文(出典)→ Atias N, Istrail S & Sharan R (2013) Pathway-based analysis of genomic variation data, Current Opinion in Genetics & Development (October 2013) 23:1-5. doi:10.1016/j.gde.2013.09.002
参考論文→ Wang K, Li M, Hakonarson H. (2010) Analysing biological pathways in genome-wide association studies. Nat Rev Genet. 2010 Dec;11(12):843-54. doi: 10.1038/nrg2884. -
RNA合成酵素(RNA polymerase II)の転写開始前複合体(PIC)の構造
RNA polymerase II(polII)には基本転写因子(general transcription factors, GTFs)のセットがあり、GTFsの機能は知られていたが、X線構造解析で明らかにされた"TFIIB"を除いて、構造は不明であった。今回、クライオ電子顕微鏡による観察と化学的架橋法と質量分析法を組み合わせた解析によって、32タンパク質1.5megaDaltonのPICにおいて、polIIならびにプロモーターDNAと組んでいるGTFsの全体構造を決定した。この構造解析に基づいて、PICはGTPsとpolIIの2つの領域に分かれており、プロモーターDNAは、polIIと接触する前に一旦GTFsに保持された後に曲げられてpolIIの間隙に落ち込んでいくことを発見した。
論文(出典)→ Murakami K et al. (2013) Architecture of an RNA polymerase II transcription pre-initiation complex. Science. 2013 Nov 8;342(6159):1238724. doi: 10.1126/science.1238724. Epub 2013 Sep 26. -
構造ワクチン学:RSウイルス感染症糖タンパク質ワクチンの設計と評価
RSウイルス(RSV)は主として乳幼児に感染し発症するウイルスである。このウイルスの融合糖タンパク質(RSV-F)が構造変化を起こす前の准安定状態な抗原部位(サイト?)をターゲットとするワクチン開発を目指した。RSV-Fの変異体を導出し、6種類の変異体の立体構造の比較から、2か所のセリンをシステインへ置換すること空隙(cavity)の疎水性残基による充填がサイト?の安定化をもらたす機構を解明した。また、マウスとマカカ猿を使って、安定化したサイト?をターゲットとするワクシン開発の可能性を示した。
論文(出典)→ McLellan JS et al. (2013) Structure-based design of a fusion glycoprotein vaccine for respiratory syncytial virus. Science. 2013 Nov 1;342(6158):592-8. doi: 10.1126/science.1243283. PMID: 24179220 -
測定技術の急速な進歩に寄って生命科学もビッグデータの時代を迎えており、一見無秩序な膨大なデータからデータの構造を見いだすデータ解析技術の必要性が高まっている。Wolfe PJは、PNASの論評で、dimensionality reduction(次元縮退)の研究の観点からPearsonの主成分分析やTorgersonの多次元尺度構成法を簡潔に辿った後に、Aflalo & Kimmelの論文を論評した。この論文は、滑らかな多様体について、従来からあった全体を小さな部分の集合と見なす考え方とラプラス-ベルトラミ作用素を組み合わせたスペクトラルMDSを提唱し、次元縮減の計算を効率的に実現できることを例示した。
論評(出典)→ Wolfe PJ. Making sense of big data. Proc Natl Acad Sci U S A. 2013 Oct 21. [Epub ahead of print] PMID: 24145435
Aflato & Kimmelの論文→ Aflalo Y, Kimmel R. Spectral multidimensional scaling. -
コンピュータで予測した酵素の基質特異性を実験で裏付けることができた
進化トレース(ET, Evolutionary Tracing)法を組み込んだタンパク質の機能アノテーションパイプライン(ETA)によって予測した機能を、変異を入れた生化学実験によって検証した。その結果、2種類の機能未知のタンパク質について、ETA法によって予測した機能を実験結果で裏付けることができた。また、非触媒性の残基が結合の特異性に貢献することも見出した。2つのタンパク質のアミノ酸配列とそれぞれの機能アノテーションに採用した参照酵素のアミノ酸配列とのSequence identity(配列同一性)はいずれも30%未満であった(一つは20%未満)。
論文(出典)→ Amin SR, Erdin S, Ward RM, Lua RC, Lichtarge O. Prediction and experimental validation of enzyme substrate specificity in protein structures. Proc Natl Acad Sci U S A. 2013 Oct 21. [Epub ahead of print] PMID: 24145433
Webサイト→ ETA Web Servers for "Prediction and Experimental Validation of Enzyme Substrate Specificity in Protein Structures" -
東京大学門脇孝教授等の研究グループは、脂肪の燃焼を活発にする善玉分子アディポネクチンの受容体(AdipoR)を活性化する小分子を、東京大学創薬オープンイノベーションセンターの化合物ライブラリーから同定し、AdipoRonと名付けた。AdipoRonを与えたマウスでは、インスリンの効果が高くなり、脂肪酸の燃焼効率があがった。また、脂肪が多い餌を与えたマウスの生存日数も延びた。本研究の一部は文部科学省ターゲットタンパク研究プログラムにおける医学・薬学への応用分野の課題「メタボリックシンドローム・糖尿病の鍵分子アディポネクチン受容体AdipoR/AMPK/ACCタンパク群の構造解析とそれに基づく機能解明及び治療法開発」において行われた。
論文(出典)→ Miki Okada-Iwabu et al. A small-molecule AdipoR agonist for type 2 diabetes and short life in obesity Nature. Published online 30 October 2013 doi:10.1038/nature12656
参考資料 → メタボリックシンドローム・糖尿病の鍵分子アディポネクチン受容体AdipoR/AMPK/ACCタンパク群の構造解析と機能解析 -
ヒトゲノムに多数のシスエレメントが同定されているが、それらがターゲットとする遺伝子を同定することは未だ課題である。この課題を解決する方法の一つが、3C(Chromosome Conformation Capture)アッセイ法である。米国の研究グループは、高度な3C法であるHi-C法によって、ヒト繊維芽細胞についてクロマチン部位間の網羅的相互作用マップ(interactomeマップ)を作成し、5~10 kbの精度で100万以上の長距離相互作用を同定した。また、細胞にTNF-αを加えた実験により、シグナルに依存する転写因子が結合する前から細胞型に依存してエンハンサーとプロモーターとが接していることを明らかにした。さらに、クロマチンのループ構造が細胞型ごとに異なることは、エンハンサーのターゲットの遺伝子への到達性に違いによる細胞型固有の転写制御が存在する可能性を示唆した。
論文(出典)→ A high-resolution map of the three-dimensional chromatin interactome in human cells. Jin F, Li Y, Dixon JR, Selvaraj S, Ye Z, Lee AY, Yen CA, Schmitt AD, Espinoza CA, Ren B. Nature. 2013 Oct 20. doi: 10.1038/nature12644. [Epub ahead of print] PMID: 24141950 -
ついにRNAポリメラーゼⅠ(Pol I)の結晶構造が解明された!
14サブユニットで構成される580-kilodaltonの酵母(Saccharomyces cerevisiae) Pol Iの構造が解明された。欧州の2つの研究グループ(論文1と論文2)がそれぞれ3Åと2.8Åの精度で構造を決定した。この構造の特徴として、他のRNAポリメラーゼよりもDNAを咥える溝が広く、zinc-ribbon domainが活性部位に組み込まれていることなどを明らかにし、Pol Iの転写機構ならびに構造と機能進化的保存に考察を加えた。
文献(出典)→ Zomerdijk J. Structural biology: Pivotal findings for a transcription machine. Nature. 2013 Oct 23. doi: 10.1038/nature12700. [Epub ahead of print] PMID: 24153180
論文1→ Fernandez-Tornero C, Moreno-Morcillo M, Rashid UJ, Taylor NM, Ruiz FM, Gruene T, Legrand P, Steuerwald U, Muller CW. Crystal structure of the 14-subunit RNA polymerase I.Nature. 2013 Oct 23. doi: 10.1038/nature12636. [Epub ahead of print] PMID: 24153184
論文2→ Engel C, Sainsbury S, Cheung AC, Kostrewa D, Cramer P. RNA polymerase I structure and transcription regulation. Nature. 2013 Oct 23. doi: 10.1038/nature12712. [Epub ahead of print] PMID: 2415318 -
タンパク質折り畳み過程の一分子計測からKramersの拡散係数を推定する
タンパク質は一本鎖の状態から立体に折りたたまれる過程で自由エネルギーの山(障壁)を越える。米国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所化学物理研究室のChungとEatonは、3つのへリックスで構成される73残基のタンパク質α3Dが障壁を越える瞬間の時間(transition path time(Tpt))を、一分子計測によって測定した。そのデータと原子レベルの分子動力学シミュレーションを組み合わせることで、Tptの温度依存性と溶媒の粘度依存性から、これまで測定が困難であったKramersの拡散係数と障壁の高さを推定可能なことを示した。
論文(出典)→ Chung HS, Eaton WA. Single-molecule fluorescence probes dynamics of barrier crossing. Nature. 2013 Oct 31;502(7473):685-8. doi: 10.1038/nature12649. Epub 2013 Oct 23. PMID: 24153185
参考文献→ Chung HS, McHale K, Louis JM, Eaton WA. Single-molecule fluorescence experiments determine protein folding transition path times. Science 2012 Feb 24;335(6071):981-4. doi:10.1126/science.1215768. PMID: 22363011 -
米国の研究チームは新しいゲノム編集技術をSicenceに発表した。大腸菌MG1655株の終止コドンのUAGをすべて終止コドンのUAAに置き換え、終結因子のRF1を除去し、tRNA合成酵素とtRANのセットを用意してコドンUAGを再定義し、非天然型アミノ酸(NSAA:non-standard amino acids)のコードをゲノムに埋め込む技術である。ゲノムを編集した大腸菌は新奇なタンパク質を産生することが可能になるとともに、ウイルスに対する抵抗性も上がった。著者等は、比較的コストが低く、産業上有用であり安全性も高いこの技術で構築する生物をGenomically Recoded Organisms (GRO)と命名した。
文献(出典)→ Lajoie MJ, Rovner AJ, Goodman DB, Aerni HR, Haimovich AD, Kuznetsov G, Mercer JA, Wang HH, Carr PA, Mosberg JA, Rohland N, Schultz PG, Jacobson JM, Rinehart J, Church GM, Isaacs FJ.Genomically recoded organisms expand biological functions. Science. 2013 Oct 18;342(6156):357-60. doi: 10.1126/science.1241459. PMID: 24136966
関連サイト→ イエール大学ニュース -
米国企業23andMeの特許「遺伝情報統計解析に基づく配偶子の選別(仮訳)」がデザイナーベービー特許として日本でも話題になっている。この特許に対する疑問を呈した投稿「"I prefer a child with…": 消費者に直結した遺伝学の分野でまた論議を呼ぶパテント(仮訳)」がGenetics in Medicineに掲載された。著者は欧州の生命倫理の専門家と法律家である。投稿のタイトルにある”I prefer a child with"は、特許文書にある利用者インターフェースの図4から取られたものである。図4は、提供されている配偶子ごとに、関心がある疾患ごとのリスクや目の色などの表現型の確率が表示され、利用者は「好みの」配偶子を選択できるインターフェースである。著者らは、そもそも特許の対象になりえるのかの議論が審査の過程で行われなかったことを指摘しているが、一方で、欧州と異なり米国の特許法では道徳律に反する特許を認めないと明文化されていないことから、それも驚くべき事でもないとしている。
文献(出典)→ Sterckx S, Cockbain J, Howard HC, Borry P. "I prefer a child with …": designer babies, another controversial patent in the arena of direct-to-consumer genomics. Genet Med. 2013 Oct 3. doi: 10.1038/gim.2013.164. [Epub ahead of print] PMID: 24091802 -
酵素α-L-イズロニダーゼの構造と機能からみたムコ多糖症I型(MPS I)
希少疾患であり日本では特定疾患に指定されているライソゾーム病の一種であるムコ多糖症(MPS)に関して、100以上の関連遺伝子と多様な症状が知られているが、遺伝型と表現型の相関は未だ明らになっていない。カナダの研究チームは、その異常がMPSのI型(MPS I)を引き起こす酵素α‐L‐イズロニダーゼIDUA;EC 3.2.1.76)の構造を決定し、酵素反応の機構を解明して、IDUAの変異と臨床的表現型とを関連付けた。この成果により、酵素補充療法に基づいた患者一人当たり年間45万ドルを要するMPS I治療薬(2013年10月現在日本では未認可)に変わるケミカルシャペロン法に基づく治療薬開発への手掛かりが得られた。
論文(出典)→ Bie H, Yin J, He X, Kermode AR, Goddard-Borger ED, Withers SG, James MN. Insights into mucopolysaccharidosis I from the structure and action of α-L-iduronidase. Nat Chem Biol. 2013 Sep 11. doi: 10.1038/nchembio.1357. [Epub ahead of print] PMID: 24036510 -
Box C/D酵素の構造解析からそのRNAメチル化調節機構を推定する
真核生物の核小体低分子(snoRNA)にはbox C/DとboxH/ACAの2種類があり、そのうちbox C/Dとタンパク質の複合体snoRNPは2'-Oメチル化を担っている。独仏のチームは、超好熱古細菌Pyrococcus furiosusにおいてこのsnoRNに相当するbox C/D sRNPの構造を、溶液NMR、X線小角散乱(SAXS)ならび中性子小角散乱(SANS)を組み合わせて解明し、メチル化の機構について論じた。
文献(出典)→ Lapinaite A, Simon B, Skjaerven L, Rakwalska-Bange M, Gabel F, Carlomagno T. The structure of the box C/D enzyme reveals regulation of RNA methylation. Nature. 2013 Oct 13. doi: 10.1038/nature12581. [Epub ahead of print] PMID PMID:24121435 -
アロステリックな薬剤によるGタンパク質共役受容体(GPCR)の調節機構を明らかに
創薬開発研究においてGPCRのアロステリックモジュレーターの設計が盛んに試みられているが、アロステリック結合の様式と分子機構は知られていない。米国とオーストラリアの研究チームは、ムスカリン性アセチルコリン受容体M2サブタイプを対象として、薬剤を含む多様なモジュレーターとの結合について、原子レベルの結合シミュレーションを行い、また、受容体の変異体と放射性リガンドを使った実験によって、その構造と機構を明らかにした。シミュレーションは、ソフトウエアAntonとポテンシャルCHARMMを使った分子動力学計算によって行った。
文献(出典)→ Dror RO et al. Structural basis for modulation of a G-protein-coupled receptor by allosteric drugs. Nature 2013 Oct 13. doi: 10.1038/nature12595. [Epub ahead of print] PMID: 24121438
文献(ライフサイエンス 新着論文レビューより)→ Haga K et al. Structure of the human M2 muscarinic acetylcholine receptor bound to an antagonist. Nature 2012 Jan 25;482(7386):547-51. doi: 10.1038/nature10753. PMID: 22278061 -
文献(展望)→ McShane LM et al. Criteria for the use of omics-based predictors in clinical trials. Nature. 2013 Oct 17;502(7471):317-20. doi: 10.1038/nature12564. PMID: 24132288
文献(背景)→ Institute of Medicine. Evolution of Translational Omics: Lessons Learned and the Path Forward (eds Micheel CM, Nass S & Omenn GS). The National Academies Press 2012. -
データベースを駆使して移植拒絶反応をもたらす臓器共通の遺伝子セットを特定
米国とベルギーの研究チームは、公共のデータベースの一つであるGene Expression Omunibus(GEO)から肝臓、肺、心臓、腎臓の4種類の臓器の移植片由来のデータセットを切り出し、メタデータの注意深い解析と統計解析によって、急性拒絶反応を示した移植片だけで有意に過剰発現している遺伝子11種類を特定した。この遺伝子セットは4種類の臓器に共通であり、Common Rejection Module (CRM)と命名された。次に、関連論文の情報を組み合わせて、米国FDAがすでに認可している高脂血症治療薬1種類と白血病の分子標的薬1種類が、CRMを調節して拒絶反応を抑制するものと予測した。すなわち、既存の薬剤の新しい薬効を見出すリポジショニングを予測した。この予測は、心臓移植を施したマウスの実証され、加えて、22年間に及ぶ2,515人の腎臓移植患者のコホート臨床データを解析した結果とも一致した。
論文→ Khatri P, Roedder S, Kimura N, De Vusser K, Morgan AA, Gong Y, Fischbein MP, Robbins RC, Naesens M, Butte AJ, Sarwal MM. A common rejection module (CRM) for acute rejection across multiple organs identifies novel therapeutics for organ transplantation. J Exp Med. 2013 Oct 14. [Epub ahead of print] PMID: 24127489 -
Amazon Web Service(AWS)の利用に関するCIAとAmazonの契約は有効
10月8日のBloombergの記事によれば、米国連邦裁判所は、Amazonが10年間6億ドルでCIAのクラウドコンピューティングを落札した契約は有効と裁定した。
関連記事→ CIAのクラウド契約、勝ち取るのはアマゾンかIBMか(The Wall Street Journal日本語版 2013年6月12日)
関連記事→ Amazpn Web ServcesがCIAとNSAのクラウド入札でまたまたIBMに勝つ(TECHRUNCH Japan 2013年10月8日) -
Roche 454 の幕を閉じる
GenomeWeb Daily News10月15日号によれば、Rocheは454によるシーケンシングビジネスを2016年中頃までに閉じ100人程度を解雇する(GenomeWeb Daily Newsの記事全文を読むためには利用者登録が必要です(登録は無料))。
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2013年10月12日付けのmsn産経ニュースによれば、英国オックスフォード大学とツムラは漢方薬の機能を科学的に解明する共同研究を始める。
関連文献→ Noble D. "Could there be a Synthesis between Western and Oriental Medicine, and with Sasang Constitutional Medicine in Particular?" Evid Based Complement Alternat Med. 2009 Sep;6 Suppl 1:5-10. doi: 10.1093/ecam/nep101. -
ホモロジーモデリング(Homology ModelingまたはComparative Modeling)は、構造が既知のタンパク質の立体構造とアミノ酸配列の相同性を参照しながら、構造未知のタンパク質の立体構造を予測する手法の一つであり、既知構造が増えるほど精度が向上することを期待できる。2013年10月8日号のStructure誌上で、米国ワシントン大学のSong等は、構造予測の国際的コンテストCASP10において他の手法よりも高精度な予測を行ったホモロジーモデリング法RosettaCMの計算手法と具体的成果を紹介している。
論文→ Song Y, Dimaio F, Wang RY, Kim D, Miles C, Brunette T, Thompson J, Baker D. "High-Resolution Comparative Modeling with RosettaCM" Structure, Volume 21, Issue 10, 8 October 2013, Pages 1735-1742 doi:10.1016/j.str.2013.08.005
関連サイト→ Rosetta - The premier software suite for macromolecular modeling -
核膜孔を構成するアダプタータンパク質の一つNup157の構造と核酸結合性
細胞においてタンパク質は、核膜に存在する核膜孔を介して、核と細胞質の間で双方向に輸送される。核膜孔は、中央の通路(チャネル)の開き方を調節することで、大きさが異なる物質の輸送に対応する。この構造変化は、チャネルを囲むアダプターヌクレオポリンと言われるタンパク質に担われていると言われている。今回、酵母のアダプターヌクレオポリンの一つであるNup157の残基70~893の範囲の構造を決定し、残りのC末端側をモデリングした。Nup157は、コンパクトなC字形を採り、正電荷の表面を持っていて二本鎖DNAならびにRNAと結合する。この結合に配列依存性は見られない。Nup157はまた、自身の柔軟性ひいてはヌクレオポリンの可塑性をもたらすとおもわれる4カ所のヒンジ構造を持っている。
論文→ Seo HS, Blus BJ, Jankovic NZ, Blobel, G. "Structure and nucleic acid binding activity of the nucleoporin Nup157." Proc Natl Acad Sci U S A. 2013 Oct 8;110(41):16450-16455. Epub 2013 Sep 23. PubMed: 24062435 DOI:10.1073/pnas.1316607110 -
'Science誌は10月11月号の記事「Biology''s Dry Future」で、ピペットを使わなくても、細胞を染色しなくても、実験動物を解剖しなくても、生命科学における重要な発見が可能な時代になったと謳った。計算生物学 (Computational Biology)がすでに、ドラッグリポジショニング、iPlant、新たな疾患マーカーや遺伝子の発見、トウモロコシの育種、植物の祖先ゲノムの推定などにおいて成果を上げてきたことを指摘し、データ・アルゴリズム・ソフトウエア・計算機を駆使する「ドライ」研究室の未来が開けているとした。米国においては特に、政府予算による科学研究由来のデジタルデータ公開が科学技術政策として打ち出され、また、Big Data to Knowledge (BD2K)のプロジェクトに政府予算で4年間9,600万ドルの予算が充てられ、ドライ研究者は全速前進の構えになっているようである。
Science誌と時を同じくして、Nature Biotechnology誌はThe anatomy of successful computational biologyの温故知新「The anatomy of successful computational biology」を掲載した。BLASTなどの定番ツールの開発者にインタビューして、成功の秘訣、ビジネスソフトウエア開発との違い、ソフトウエアとその開発に対する誤解ならびに使われないツールが開発し続けられる観点から総括し、計算生物学の進む方向性を探った。
(注)Nature Biotechnologyにリストされている定番ツール:BLAST, R, ImageJ, Cytoscape, Bioconducter, Galaxy, MAQ, Bowtie, Tophat, BWA, Cicros, SAMtools, CufflinksならびにIGV
* Science NEWS FOCUS Service RF. "Biology''s Dry Future" Science 11 October 2013: Vol. 342 no. 6155 pp. 186-189 DOI: 10.1126/science.342.6155.186
* Nature Biotechnology FEATURE Altschul S, Demchak B, Durbin R, Gentleman R, Krzywinski M, Li H, Nekrutenko A, Robinson J, Rasband W, Taylor J, Trapnell C. "The anatomy of successful computational biology software" Nat Biotechnol. 2013 Oct 8;31(10):894-897. doi: 10.1038/nbt.2721.
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米国のバイオ医薬研究企業による希少疾患(Rare Diseases)向け薬剤の開発が進んでいる。
米国では、7,000種類の希少疾患の少なくとも一つを持っている国内居住者数が3千万人に及ぶと言われている。米国研究製薬工業協会(the Pharmaceutical Research and Manufacturers of America (PhRMA))が10月7日に発表した報告によると、希少疾患に対する452種類の薬剤が臨床試験またはFDAによる審査の段階に達している。対象疾患の内訳は、癌 105、血液がん 65、遺伝子疾患 85、神経疾患 32である。
注:希少疾患の定義や用語の使い方が日米欧で少しずつ異なる。米国では、1984年に改正されたOrphan Drugに関する法律において米国内対象患者数が20万人未満の疾患と定義されている。日本では1993国内年の厚生省薬務局長通知(資料1スライド#6)以来、国内対象患者数が5万人未満の疾患と定義されているようである。また、Rare diseaseはorphan diseaseと同じ意味で使われることが多いが、欧州では、orphan diseasesの下にneglected diseasesと共に位置づけている。
関連サイト→ 日本における希少疾患に対する日本の取り組み
関連サイト→ 米国国立衛生研究所国立先進トランスレーショナル科学センター希少疾患研究局(NIH National Center for Advancing Translational Sciences (NCATS) Office of Rare Diseases Research)
関連サイト→ 関連サイト世界希少・難治性疾患の日(Rare Disease Day) -
ナトリウムが結合した状態のナトリウムポンプの構造が明らかにされた
2013年10月2日のNatureと10月4日のScienceに相次いで、ナトリウムポンプの構造と振る舞いに関する論文が発表された。
* Natureの論文:東京大学分子細胞生物学研究所附属高難度蛋白質立体構造解析センターの豊島 近センター長等の研究グループは、世界で初めてナトリウムイオンが結合した状態のナトリウムポンプの構造を決定し、ナトリウムポンプがナトリウムだけを選択的に細胞内から細胞外へ汲み出す分子機構を明らかにし、加えて、ナトリウムポンプの機能を阻害する抗生物質オリゴマイシンの結合様式も明らかにした。SPring-8のビームラインを使って行ったX線構造解析の結果は2.8 Å と高分解能であった。
論文はこちら→ Kanai R, Ogawa H, Vilsen B, Cornelius F and ToyoshimaC. “Crystal structure of a Na+-bound Na+,K+-ATPase preceding the E1P state” Nature 2013 Oct 2. doi: 10.1038/nature12578. Accepted 16 August 2013.
関連記事:
* Spring-8大型放射光施設解説記事「カルシウムポンプのダイナミックな構造変化を解明」(2010年)
* PDBj今月の分子:ナトリウム・カリウムポンプ(2009年10月)
* カルシウムポンプの構造論文 Shinoda T, Ogawa H, Cornelius F, Toyoshima C.” Crystal structure of the sodium-potassium pump at 2.4 A resolution. Nature 2009 May 21;459(7245):446-50. doi: 10.1038/nature07939.
* Science論文:デンマークのCentre for Membrane Pumps in Cells and Disease-PUMPkinの研究グループも、ナトリウムイオンが結合した状態のナトリウムポンプの構造を解析し、電気生理的分析も行って、汲み出される3個のナトリウムイオンの結合位置を推定した。結晶構造の分解能は4.3 Åであった。
論文はこちら→ Nyblom M, Poulsen H, Gourdon P, Reinhard L, Andersson M, Lindahl E, Fedosova N, Nissen P. “Crystal Structure of Na+, K+-ATPase in the Na+-Bound State” Science 2013 Oct 4;342(6154):123-127. Accepted 3 September 2013. -
ポリケタイド合成酵素における新しいドメインのカセットがポリケタイドに異次元の多様性をもたらす
ライプニッツ研究所(ドイツ)のBretschneider等は、Burkholderia rhizoxinica リゾキシン(rhizoxin)において、マイケル付加反応によって、直鎖上のポリケタイドに直交する分岐が生じ、ラクトン環が形成されることを見出した。また、バイオインフォマティクスとin vivoの解析によってこの環形成がポリケタイド合成酵素(PKS)の3つのドメイン(アシルキャリヤー・プロテイン(ACP)とケトシンターゼ(KS)そして、これまで知られていなかったドメインB(branching))のカセットによって生じることを明らかにした。このカセットを活用して新たな生物活性を有するポリケタイドひいては新薬を設計できる可能性が広がった。
論文はこちら→ Bretschneider T et al (2013) “Vinylogous chain branching catalyzed by a dedicated polyketide synthase module”Nature 2013 Oct 3;502(7469):124-128. doi: 10.1038/nature12588. Epub 2013 Sep 18. -
10月9日に発表になった2013年ノーベル化学賞は、複雑な化学反応のシミュレーションを可能にしたMartin Karplus(マーティン・カープラス、ハーバード大学など)、Michael Levitt氏(マイケル・レヴィット、スタンフォード大学)、ならびに Arieh Warshel氏(アリー・ウォーシェル、南カリフォルニ大学)に。
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非翻訳領域の変異の中から表現型の変異と因果関係にある変異を絞り込むバイオインフォに革新をもたらせ!
米国National Institutes of Healthは2013年10月から「Interpreting Variation in Human Non-Coding Genomic Regions Using Computational Approaches and Experimental Assessment」の募集を開始した。このプロジェクトは、データベース群(注*)を駆使して、非コード領域に存在する変異の中から、一般の疾病リスク、発がん感受性、薬物依存性などを含む表現型の変異と因果関係にある変異を絞り込むバイオインフォの革新的手法を開発し、実験的検証も行うことを求めている。プロジェクトは2015年に7~8機関、600万ドルの規模で始まり、2016年に13~15機関1億1300万ドルの規模になる予定(米国外からも応募可能)。
(注*)
* 募集要項に例示されているデータベース群:The database of Genotypes and Phenotypes(dbGaP), The Cancer Genome Atlas(TCGA), 1000 Genomes(A Deep Catalog of Human Genetic Variation) , Genotype-Tissue Expression Portal(GTEx), Encyclopedia of DNA Elements (ENCODE), Roadmap Epigenomics, Library of Integrated Network-based Cellular Signatures (LINCS), the Molecular Si gnatures Database (MSigDB), Gene Expression Omnibus (GEO), brain atlases , and the Human Connectome.
* 募集要項に例示されているデータの種類:GWASの遺伝型・配列・表現型データとomiccsデータ;クロマチン構造データ;転写因子結合と遺伝子発現データ;集団や生物種における変異のパターン
Non-coding variantsに取り組んだ論文例:
[REVIEW] Li X, Montgomery SB. “Detection and impact of rare regulatory variants in human disease.” Front Genet. 2013 May 31;4:67. doi: 10.3389/fgene.2013.00067.
[ARTICLE] Khurana E et al. “Integrative Annotation of Variants from 1092 Humans: Application to Cancer Genomics” Science. 2013 Oct 4;342(6154):1235587. -
The Nobel Prize in Physiology or Medicine 2013 was awarded jointly to James E. Rothman, Randy W. Schekman and Thomas C. Sudhof "for their discoveries of machinery regulating vesicle traffic, a major transport system in our cells".
詳細はこちら→ http://www.nobelprize.org/nobel_prizes/medicine/laureates/2013/press.html -
ゲノム解析とトランスクリプトーム解析を重ね合わせると遺伝型と表現型を対応付けることができる
GEUVADIS(Genetic European Variation in Health and Disease, A European Medical Sequencing Consortium)は、1000人ゲノムに含まれる5種類の人類集団からの462人のリンパ芽球細胞を対象に、大規模かつ高精度なmRNAシーケンシングとmiRNAシーケンシングを行い、シス因子のQTL(cis-eQTL)をトランスクリプトームにマッピングし、遺伝的変異とトランスクリプトームにおける変異の相関関係を明らかにした。さらに、eQTLによって疾患の原因となる多型をGWAS(Genome-wide association study)によって洗い出された多型の中からをピンポイントで特定できる例を示し、ゲノム配列データにトランスクリプトームのデータを組み合わせることによって、多型が表現型に与える影響を分析・予測できる可能性を示した。
論文→ Lappalainen T et al. Transcriptome and genome sequencing uncovers functional variation in humans. Nature 2013 Sep 26;501(7468):506-11
データ公開サイト
* E-GEUV-1 - RNA-sequencing of 465 lymphoblastoid cell lines from the 1000 Genomes
* E-GEUV-2 - small RNA-sequencing of 452 lymphoblastoid cell lines from the 1000 Genomes
* E-GEUV-3 - RNA-sequencing and small RNA-sequencing of 465 lymphoblastoid cell lines from the 1000 Genomes (QCをしていない全データ)
* データの可視化サイト
関連サイト
* GEUVADISにおけるデータのQCについて
* GTEx(Genotype-Tissue Expression)Portal ? Broad Institute: The Genotype-Tissue Expression project (GTEx) aims to create a comprehensive public atlas of gene expression and regulation across multiple human tissues. -
RNAまたはssDNAが、高等真核生物の複製開始に関与するかもしれない
DNA複製開始点認識複合体(ORC)はDNA複製開始点に結合しますが、ヒトORCが結合するDNA配列は明確になっていません。この論文では、グアニン4重鎖形成能があるRNAまたは一本鎖DNAが、ヒトORCのDNA相互作用と競合することが明らかにされています。RNAまたは一本鎖DNAへの結合は、ORC第1サブユニットの中央に位置するドメインが関与することも明らかにしており、相互作用に必要なアミノ酸残基も特定されています。この実験事実と、ヒト複製開始点にみられるグアニン4重鎖を形成できる配列モチーフとには、何らかの関係がありそうです。
2013/09/03, J. Biol. Chem.
原著論文はこちら→ Shoko Hoshina, Kei Yura, Honami Teranishi, Noriko Kiyasu, Ayumi Tominaga, Haruka Kadoma, Ayaka Nakatsuka, Tomoko Kunichika, Chikashi Obuse and Shou Waga. Human Origin Recognition Complex Binds Preferentially to G-Quadruplex-Preferable RNA and Single-Stranded DNA. J. Biol. Chem. Published on September 3, 2013, doi: 10.1074/jbc.M113.492504. -
米国、新生児のゲノム配列とエクソーム配列の解析プロジェクトを開始
NIHの2つの研究所のファンドによって、新しいプログラム「Genomic Sequencing and Newborn Screening Disorder(GSNSD)」のパイロットプロジェクトが始まった。2013年に4機関500万ドルの規模で出発し、5年間で2,500万ドルの規模を見込むプログラムである。このプログラムには、遺伝子配列の変異と疾患の関連解明を目指す研究・技術開発と並んで、臨床の場で遺伝情報を患者のケアにどのように活かしていくのか、ならびに、倫理・法的・社会的問題をどのように解決していくのか、が課題として設定されている。技術的には新生児全員のゲノム配列決定が現実になりつつある状況で、研究者も臨床医も新生児とその家族も心を満たされる遺伝情報の取り扱いについてこのプログラムがどのような回答をもたらすのか注目される。
2013/09/04, NIH News & Event, National Institutes of Health
関連記事→ Sequenced from the start. Nature Vol 501, P.135
用語解説→ エキソーム解析 羊土社Online -
東京工業大学上田宏教授等のグループは、ホタルの発光が酵素ホタルルシフェラーゼによる2段階の反応で起きることを巧妙に利用して、タンパク質間相互作用を高感度かつ高速で検出できる技術であるFlimPIA(Firefly luminescent intermediate-based Protein Interaction Assay)を開発した。もっぱら第1段階の反応を担う酵素変異体と、もっぱらその中間体を受け取って酸化的発光反応を担う酵素変異体を、開発し、それぞれを結合した2種類のタンパク質が近接すると、酵素の2段階の反応が復元されることによって、発光が顕著になることを実証した。FlimPIAは、従来の物理的に分割した酵素の再構成を利用する検出法PCA(Protein-fragment Complementation Assay)よりも発光強度と安定性に優れており、タンパク質間相互作用がかかわる生命現象の解明を加速するものと期待される。
論文:Ohmuro-Matsuyama Y, Nakano K, Kimura A, Ayabe K, Ihara M, Wada T and Ueda H. A Protein–Protein Interaction Assay Based on the Functional Complementation of Mutant Firefly Luciferases Anal. Chem. August 1, 2013 [Epub ahead of print]. DOI: 10.1021/ac401682520130801,JSTプレスリリース,japan Science and Technology Agency
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Henrietta Lacksさん由来のHeLa細胞は、ご本人の同意も遺族の同意を得ることもなく、1951年から62年間にわたり74,000件の実験に利用されてきた。そして、2013年3月欧州の研究グループよって全ゲノムデータの解析結果が論文発表されデータも公開された。米国では同様の解析結果が公開されようとしていた。この時点で、遺族からの申し出によって欧州のデータは一旦非公開にされた。その後、米国ボルチモア在住の遺族と米国NIHの間で話し合いが行われ8月にデータの取り扱いについて以下の合意に至った:データはdbGaPに格納する;研究者は利用申請が承認された後に利用を開始し、その後年報を提出する;NIHに設置されるHeLa Genome Data Access working group(遺族2名を含む)が申請を審査する。これで、HeLa細胞は正当な地位を得たといえるが、「細胞は誰の物か」について一般的なルールを整備する必要があると思われる。
欧州の論文:Landry JJ et al.The Genomic and Transcriptomic Landscape of a HeLa Cell Line. G3: Genes | Genomes | Genetics. August 2013 3:1213-1224; Early Online March 11, 2013, doi:10.1534/g3.113.005777
米国の論文:Andrew A et al.The haplotype-resolved genome and epigenome of the aneuploid HeLa cancer cell line Nature 500, 207–211 (08 August 2013) doi:10.1038/nature12064
HeLa細胞の運命に関する参考文献:Rebecca Skloot. The Immortal Life of Henrietta Lacks Crown(2011) ISBN-13: 978-030788844020130807,New York Times,New York Times Company
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オートファジーは、細胞内の老廃物や有害物を包み込んだオートファゴソームとリソソームが融合したところで、対象物が分解される現象である。大阪大学大学院生命機能研究科/医学系研究科の吉森 保教授等の研究グループは、リソソームがシリカ、尿酸ナトリウム、薬剤などで損傷すると、それ自体がオートファジーによって選択的に隔離されるとともに、損傷の無いリソソームが生成される現象を見いだした。また、尿酸を投与して高尿酸血症を誘発させたモデルマウスにおいて、オートファジーに必須の遺伝子を腎臓細胞で特異的に破壊した個体では症状が重篤になることも見いだした。
リソソームの損傷は、細胞毒素、膵島アミロイドポリペプチドやコレステロール結晶などによっても起きることが知られていることから、今後、オートファジーの分子機構の観点から新たな疾病予防法が産み出される可能性がある。
論文:Maejima I et al. Autophagy sequesters damaged lysosomes to control lysosomal biogenesis and kidney injury. The EMBO Journal advance online publication 6 August 2013; doi:10.1038/emboj.2013.17120130806,JSTプレスリリース,Japan Science and Technology Agency
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アトピー性皮膚炎(AD)の機構解明に貢献したモデルマウスhK14mIL33g
兵庫医科大学と三重大学の研究グループは、皮膚にIL-33 を発現し、ヒトのADの症状をよく再現するトランスジェニックマウスを開発し、AD発症機構の一端を明らかにした:外部刺激による皮膚細胞からのIL-33放出→→ ILC2s(group 2 innate lymphoid cells)の活性化→ → Th2 型のサイトカインの一種であるIL-5産生→→好酸球の皮膚への浸潤 。研究グループはまた、IL-5抗体投与による症状緩和も見いだした。
IL-33はAD治療剤のターゲットになりうるが、一方で、寄生虫感染を防御する機能をもっていることから、IL-33をターゲットとする薬剤は、地域によって用法を調整する必要が出てくるかもしれない。
論文:Imaia Y. et al. Skin-specific expression of IL-33 activates group 2 innate lymphoid cells and elicits atopic dermatitis-like inflammation in mice. PNAS published online before print August 5, 2013, doi:10.1073/pnas.130732111020130805,PNAS,National Academy of Science
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ウエットとドライの融合によってカプシド巨大分子の構造が解明された
カプシドは蛋白質(サブユニット)の集合体であり、ウイルスが宿主の細胞に侵入するまではウイルスゲノムを保護し、侵入後ウイルスゲノムを放出するという2つの役割を担っている。2013年5月に米国の研究チームは HIV-1の巨大なカプシドの構造を発表した。低温電子顕微鏡によってチューブ状の集合体の構造を8Aの分解能で決定し、低温電子線トモグラフィーによって生体由来のHIV-1のコアの構造を明らかにし、これらのデータを参照しながらペタフロップス級のスパコンBlue Waters上で Molecular Dynamics Flexible Fitting(MDFF) を行って、カブシド全体構造を決定し、また、カブシドの安定性についても論じた。
論文: Zhao G, Perilla JR, Yufenyuy EL, Meng X, Chen B, Ning J, Ahn J, Gronenborn AM, Schulten K, Aiken C, Zhang P. Mature HIV-1 capsid structure by cryo-electron microscopy and all-atom molecular dynamics. Nature 2013 May 30;497(7451):643-6.doi:10.1038/nature12162
PDB:3J3Q1356サブユニットで構成される構造、原子数>200万個); 3J3Y(1176サブユニットで構成される構造、原子数>200万個)20130531,PDBj,PDBj
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総合科学技術会議による「ターゲットタンパク研究プログラム」事後評価出る
総合科学技術会議(第113回)の資料2−2として、国家的に重要な研究開発の評価「ターゲットタンパク研究プログラム」の事後評価結果(案)が公開された。ターゲットタンパク研究ならびに技術開発研究ともに、当初目標を達成したとの評価。
20130731,総合科学技術会議,Cabinet Office, Government of Japan
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細胞質から核へ蛋白質を輸送する核輸送因子importinαが細胞分化を制御することが主張されていた。今回、マウスのES細胞における実験研究と複合体のhomology modeling(ホモロジーモデリング)によって、importinαのサブユニットであるimportinα2には従来知られていた核移行シグナル認識部位の他に新たな核移行シグナル認識部位が存在し、これらの使い分けによって、未分化を維持する転写因子Oct3/4の核移行は促進するが、分化を促す転写因子Oc6とBrn2の核への移行を阻害することが明らかにされた。今回の成果によって、ES細胞の分化を始めとする解析研究に新たな道が拓かれた。
論文:Yasuhara N. et al. Importin Alpha Subtypes Determine Differential Transcription Factor Localization in Embryonic Stem Cells Maintenance. Developmental Cell 26, 123–135, July 29, 201320130730,JSTプレスリリース,JST
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名古屋大学浅井真人特任講師等の日米英欧の研究チームは、マウスにおいて、餌の量、栄養の吸収、運動量などが同じであっても肥満を引き起こす遺伝子を特定し、Sciece誌で発表した。従来、4型メラノコルチン受容体(MC4R)が食欲やエネルギー代謝の調節に重要な役割を果たすことが示唆されていたが、今回、アクセサリータンパク質MRAP2が欠損するとMC4Rが、ペプチドホルモンの一種であるαメラニン細胞刺激ホルモン(αMSH)に応答しなくなることによって、肥満が引き起こされることが明らかにされた。同チームは肥満コホート参加者の遺伝子解析も行い、極度の肥満者の一部にMRAP2のヘテロ変異を見出した。ヒトにおける肥満と遺伝子型の関係についてはまだまだ研究が必要であるが、本研究によって、肥満コントロールの新たな視野が広がった。なお、Science誌には、浅井特任講師等の論文に続いて、ゼブラフィッシフィッシュにおけるMRAP2によるMC4Rの制御に関する論文が掲載されている。
論文:Asai M et al. Loss of Function of the Melanocortin 2 Receptor Accessory Protein 2 Is Associated with Mammalian Obesity. Science 19 July 2013: Vol. 341 no. 6143 pp. 275-278 DOI: 10.1126/science.123300020130719,名古屋大学Press Release,Nagoya University
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iKnifeは、急速蒸発イオン化質量分析法(REIMS:Rapid evaporative ionization mass spectrometry)を組み込んだ装置であり、電気手術によって焼かれた組織が発生するガスを「嗅いで」、がん細胞と正常細胞を瞬時に判定する器具である。ハンガリーと英国のグループは、iKnifeによって手術中に癌細胞と正常細胞をごく短時間で判定できることを示した。術中の細胞判別はこれまでも顕微鏡によって行われてきたが20〜30分も要していた。
iKnifeは予め用意されたデータベースを参照して主成分分析と線形判別分析によって細胞を判定する。今回、302人の患者由来の1624の癌細胞と1209の正常細胞のデータベースにもとづき、81件の手術中に判定した結果が、術後の病理組織学的判定と100%一致することが示された。また、iKnifeによって、腫瘍型の判定や、原発か転移性かの判定も可能なことが示唆された。
論文:Intraoperative Tissue Identification Using Rapid Evaporative Ionization Mass Spectrometry Sci Transl Med 17 July 2013: Vol. 5, Issue 194ra94 DOI:10.1126/scitranslmed.300562320130717,Science Translational Medicine,AAAS
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米国国立癌研究所(NCI)はNCI-60の全細胞株を対象にexon領域38Mbの配列を決定するwhole exome sequencing (WES) を行い、成果を論文とともにデータベースからも公開した。論文では、遺伝子発現や薬理活性などのデータと組み合わせて解析の結果、遺伝子(TP53, BRAF, ERBBs, ATAD5)と抗がん剤(nutlin, vemurafenib, erlotinib, and bleomycin) の相関についても論じた。
WES解析によって網羅的に癌遺伝子の変異データが蓄積されたこのデータベースは、個別化医療ならびに創薬に貢献していくことが期待される。
論文:Ogan D. Abaan, Eric C. Polley, Sean R Davis, et al. The Exomes of the NCI-60 Panel: A Genomic Resource for Cancer Biology and Systems Pharmacology. Cancer Res 2013;73;4372-4382
データベースサイト:CellMiner, Ingenuity, NCI-60 DTP Human Tumor Cell Line Screen
ダウンロードはこちらから:NCBI20130715,Cancer Research,AACR
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横浜市立大学大学院医学研究科臓器再生医学の谷口英樹教授等のグループは、ヒトのiPS細胞(iPSC-HEs)からヒトの臓器の生成に初めて成功した:iPSC-HEsを HNF4Aの肝臓マーカーを有する細胞へと80%の効率で分化させた。分化した細胞をヒト臍帯 静脈内皮細胞(HUVEC)ならびにヒト 間葉系幹細胞(hMSC)とともに培養すると、層状から立体的な肝芽(iPSC-LB)へと 自己組織化した。免疫染色と遺伝子発現パターンから見ると、iPSC-LBは生体由来の肝芽と類似していた。さらに、マウスに移植したiPSC-LBは、ホストの血管と繋がることで成熟し、タンパク質生産や薬剤代謝など肝臓としての機能を示し、また、iPSC-LBを移植した肝不全のマウスの生存率が著しく上がった。将来、肝臓病の治療への応用や創薬における機能や安全性の試験への実用化が期待される。
論文:Takebe T, Sekine K, Enomura M, Koike H, Kimura M, Ogaeri T, Zhang RR, Ueno Y, YW Zheng, Koike N, Aoyama S, Adachi Y & Taniguchi H. Vascularized and functional human liver from an iPSC-derived organ bud transplant. Nature (2013) doi:10.1038/nature12271. Published online 03 July 2013 (本論文は2012年4月18日にアクセプトされ、1年余りを要して2013年7月3日にオンライン出版された。Natureサイトにて、肝芽形成過程72時間を圧縮したビデオなど4種類のビデオを閲覧できる)20130703,nature,Nature Publishing Group
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Beatrice Rienhoffが2003年に誕生した時、父の 臨床遺伝学者 Hugh Rienhoffは フィブリン -1の欠損で生じる マルファン症候群 を疑い、原因遺伝子解明の旅を始めた。2005年には Loeys–Dietz症候群 の可能性も知った。その後、Beatriceの遺伝子解析から妻と自身のゲノム解析に進み、 TGF -β3の遺伝子が変異していることが分かったが、この変異は臨床的に病態を説明するに至らなかった。2008年、 Illumina によって、 transcriptome 解析、2009年に exome 解析、が行われて、TGF-βのシグナル伝達を抑制する変異が起きていることが分かった。この抑制は、2つの症候群をもたらすと言われている過剰なシグナル伝達と対照的である。病態と遺伝子の相関は奥深い。現在マウスでの実験が進もうとしており、Rienhoffの旅はまだ続く。
関連記事:2003年から2007年までの経緯詳細。遺伝子の抽出と増幅のために、中古のPCRや電気泳動装置を購入したエピソードも紹介されている。20130626,Nature,Nature Publishing Grou@
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細胞小器官ペルオキシソームは、その脂質膜上にあるゲートから酵素を取り込むことで、エネルギー産生のための長鎖脂肪酸の分解など生物の生存にとって重要な化学反応を進行させる。加藤グループは、タンパク質の大量生産技術を駆使しSPring-8によって、ゲートを構成するタンパク質の一つPTS2とそれを認識するタンパク質Pex7の複合体構造を決定し、酵素取り込みの認識機構を分子レベルで明らかにした。Pex7の異常に起因するRCDP-1型ペルオキシソーム症に対して、分子機構に裏打ちされた治療法の研究開発が進むことが期待される。 TPRP課題「生産D2 膜タンパク質結晶化の革新的支援法の開発」 論文 D Pan, T Nakatsu & H Kato. Crystal structure of peroxisomal targeting signal-2 bound to its receptor complex Pex7p-Pex21p. Nature Structural& Molecular Biology Published online: 30 June 2013 |doi:10.1038/nsmb.2618 PDB 3W15
20130701,京都大学ニュース,Kyoto University
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多剤耐性菌克服へ:薬剤を排出するタンパク質と阻害剤との結合構造を解明
近年、最後の切り札と言われたカルバペネム系薬剤にも耐性を示したり、異なる薬剤に対して多剤耐性を示す細菌が出現してきた。抗生物質の乱用が加速した問題であるが、細菌が薬剤を排出するタンパク質を備えていることが生命科学に与えられた問題である。阪大山口明人特任教授等は、薬剤を排出するタンパク質AcrBと抗生物質の複合体の構造解明に続き今回、ArcBとMexBがそれぞれ阻害剤と結合した構造を初めて明らかにした。また、結合部位の考察からこれまで阻害剤が発見されていないMexYをも阻害する薬剤をStructured Based Drug Design (SBDD)によって開発可能なことを示唆した。
論文:R Nakashima, K Sakurai, S Yamasaki, K Hayashi, C Nagata, K Hoshino, Y Onodera, K Nishino & A Yamaguchi. Structural basis for the inhibition of bacterial multidrug exporters. Nature (2013) doi:10.1038/nature12300, Published online 30 June 2013
PDB 3W9H, 3W9I, 3W9J20130701,JSTプレス発表,Japan Science and Technology Agency
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岡山大学の佐藤准教授等は、四肢を再生することが古くから知られていたメキシコサラマンダー(流通名 ウーパールーパー)の皮膚の傷に、それぞれ2種類の情報伝達経路に由来するタンパク質GDFそしてFGF2とFGF8を順次加えると、軟骨が形成されて四肢にまで至ることを示した。すなわち、情報伝達に関わるタンパク質によって、皮膚まで分化した細胞が脱分化して結合組織が形成されることを示した。
20130612,Developmental Biology,ELSVIER B. V.
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理研がニホンウナギの緑色蛍光タンパク質の遺伝子を特定し発光する仕組みを解明。ヘモグロビンが壊れるとできる色素ビリルビンと結合すると発色することから新生児黄疸の診断などへの応用へと展開。ノーベル賞となったおわんくらげの緑色蛍光色素と異なり酸素が無い状態でも発光することが特徴。UnaGのUnaはウナギのウナから、Gはウナギのギ由来ではなくGreen由来としたところがアカデミア風命名。読みはユーナジー。
論文Kumagai A, Ando R, Miyatake H, Greimel P, Kobayashi T, Hirabayashi Y, Shimogori T, Miyawaki A. A Bilirubin-Inducible Fluorescent Protein from Eel Muscle. Cell, Volume 153, Issue 7, 1602-1611, 13 June 2013
PDB 4I3B
用語:ビルビリン, おわんくらげの緑色蛍光色素, 蛍光蛋白質 Kaede, 蛍光蛋白質 Dronpa20130614,理化学研究所プレスリリース,RIKEN
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米国最高裁判所が、ヒト遺伝子を特許の対象外としたが、人工合成物にあたる相補的DNAは特許の対象となると裁定した。今回の裁定が遺伝子診断などのライフサイエンス産業に与える影響を見定めていく必要がある(Myriad社の見解はこちら→http://investor.myriad.com/releases.cfm)
2013/06/13,BBC News,BBC@2013
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巨大な蛋白質の構造が解明されるようになってきたことから、蛋白質立体構造データベースPDBは、2014年にデータ登録・蓄積・提供システムを刷新する。例えば、2013年5月には2,440,800原子/1,356チェインから成るHIV capsidの構造が解明されて25件のエントリーとしてPDBから公開された(http://goo.gl/wHlxO)。今後は、このような大規模な構造情報もmmCIFまたはXML形式で一括入手可能となる(巨大蛋白質構造例はこちらから→http://goo.gl/3Ghz8)
20130612,第13回蛋白質科学会年会PDBjランチョンセミナー,
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抗がん剤開発の新手法:"Undruggable"であったRASの輸送を制御する
抗がん剤のターゲットとしてRASタンパク質の構造と機能が1980年代から徹底的に研究されてきたが、これまで新薬にまでたどり着くことは無かった。RASは翻訳後修飾されて内膜へ輸送され、癌化のシグナル伝達をもたらすことが知られていたところ、Zimmerman等(2013)は、RASの異性体であるKRASと、RASタンパク質の輸送を制御するPDEδとの結合を阻害する小分子を特定し、これによってKRASの内膜への輸送が阻害されることを示した。
2013/05/30,Nature 497, 577–578 (2013),Nature Publishing Group
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網膜芽細胞腫に関わるRB1のリン酸化による構造変化に新しいモデル
X線小角散乱(SAXS)のデータをもとにした透過型電子顕微鏡による単粒子解析によって、RB1が折り畳まれているコアの構造を決定した上で、リン酸化によるコアの構造変化に新しいモデルを提唱(PLoS ONE)
March 14, 2013,PLOS ONE 8(3), e58463,
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ミトコンドリアの分裂ひいては細胞死をもたらすDrp1の機能を制御するSUMO化(SUMOylation)と非SUMO化(deSUMOylation)の鍵を、SUMO-2/3分解酵素SENP3が握っている(EMBO Journal)
April 30, 2013,nature.com,©2013 EMBO,NPG
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直径約0.5〜1ナノメートル程の穴が無数に空いた結晶スポンジを使って、その穴の中にわずか数十〜数百ナノグラムの有機化合物を取り込むことで単結晶X線構造解析を行い、サンプルを結晶化することなく分子の結晶構造を得る手法が報告された (Nature)
March 28, 2013,東大プレスリリース,
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病原菌が抗生物質などの薬剤を排出する原因となる膜タンパク質輸送体MATE (multidrug and toxic compound extrusion)の構造が解明され、その機能を阻害する環状ペプチドが見出された (Nature)
March 28, 2013,東大プレスリリース,
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4種の海底古細菌細胞のゲノム解析から細胞外タンパク質分解酵素の存在が推定され、実際に海底にはこれらの分解酵素が豊富に存在し活性を保っていることが見出された (Nature)
March 27, 2013,Science Daily,© 2013 ScienceDaily
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二つの研究グループが、一つはヒトで、もう一つはマウスで、腸内細菌が肥満に及ぼす役割を報告した (Sci. Transl. Med. & J. Clin. Endocrinol. Metab.)
March 27, 2013,New York Times,© 2013 The New York Times
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セレトニン受容体のうち5-HT1B と5-HT2B につき、それぞれ片頭痛薬エルゴタミン、ジヒドロエルゴタミンと結合した構造が報告された (2 papers in Science)
March 22, 2013,Chemical & Engineering News,© 2013 ACS
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ウイルス由来のRNAを感知して炎症、抗ウイルス応答を引き起こすTLR8受容体 (Toll Like Receptor 8)の、リガンド非結合型とリガンド結合型の構造が明らかにされた (Science)
March 22, 2013,東大プレスリリース,
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ヒトエンテロウイルス71に阻害剤が結合した構造が報告された (PNAS)
March 21, 2013,Science Daily,© 2013 ScienceDaily
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キノロン-3-ジアリールエーテルがマラリア原虫のミトコンドリア・シトクロムbc1複合体 の強力な阻害剤で、3種の生活環ステージすべてに効果があることが報告された (Sci. Transl. Med.)
March 20, 2013,Science Daily,© 2013 ScienceDaily
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TF (Thomsen-Friedenreich) 抗原(CD176) は多くの癌細胞表面に発現しており、前立腺癌の転移に関わっている。タラから精製された糖ペプチドTFD100が、前立腺癌で過剰発現するガレクチン3と結合し、そのTF抗原との相互作用をブロックすることが見出された (PNAS)
March 20, 2013,Science Daily,© 2013 ScienceDaily
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白血病モデルマウスを用いて、がん幹細胞の静止期を維持するための必須のタンパク質Fbxw7 (F-box/WD repeat-containing protein 7) が同定され、Fbxw7の抑制と抗がん剤の併用により、治療後の再発を減少させ、生存率を大幅に改善できることが報告された (Cancer Cell)
March 19, 2013,JST?九大プレスリリース,
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新しい両親媒性物質は、膜タンパク質と密に会合して小さい複合体を形成するため、膜タンパク質の結晶化を促進する (PNAS)
March 18, 2013,Chemical & Engineering News,© 2013 ACS
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T細胞を微小エマルジョンの中にトラップして抗原シグナルを提示し、疾患ターゲットを攻撃するように教え込む方法が報告された (J. Am. Chem. Soc.)
March 18, 2013,Chemical & Engineering News,© 2013 ACS
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致死的な呼吸器感染と関連している新規なコロナウイルス(hCoV-EMC: human coronavirus-Erasmus Medical Center) は、気道細胞上の進化的に保存された受容体DPP4 (ジペプチジルペプチダーゼ4) に結合することが見出された (Nature)
March 13, 2013,Nature News,© 2013 NPG
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2つの研究グループが、抗生物質は活性酸素種 (ROS) 産生に適さない嫌気的条件でもバクテリアを殺すことを報告した;従来の見解と異なり、創薬のアプローチに疑義を投げかけた (2 papers in Science)
March 11, 2013,Chemical & Engineering News,© 2013 ACS
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魚油に多く含まれる不飽和脂肪酸DHA (ドコサヘキサエン酸)から代謝生産される脂質プロテクチンD1が、インフルエンザウイルスの複製を抑制して感染から守ることが見出された (Cell)
March 11, 2013,Chemical & Engineering News,© 2013 ACS
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赤ワインに多く含まれるポリフェノールのリスベラトロールのアンチエイジング効果は約10年間論争が続いてきた。その効果を支持する結果が報告された (Science)
March 7, 2013,Chemical & Engineering News,© 2013 ACS
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ある種の植物の花蜜に少量含まれるカフェインが、ハチの学習能力を向上させ、ハチは何度も受粉に戻ることが見出された (Science)
March 7, 2013,New York Times,© 2013 The New York Times
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Th17 細胞 (インターロイキン17を産生するヘルパー細胞) は、病原菌除去に働く一方、自己免疫疾患も引き起こす炎症誘発性細胞である。高食塩食が病原性Th細胞を誘起して組織の炎症を促進することが3報の論文により報告された (3 papers in Nature)
March 6, 2013,Nature News,© 2013 NPG
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甘味、苦味、旨味の3種の味蕾細胞表面のCALHM1イオンチャネルタンパク質から、生体のエネルギー通貨であるATP分子が神経伝達物質として放出されることが見出された(Nature)
March 6, 2013,Science Daily,© 2013 ScienceDaily
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600万人のネットユーザーから集めた大規模ウェブデータの解析から、FDA医薬品安全性監視システムでは未報告の処方薬副作用が検知された;抗うつ剤とコレステロール降下剤の組み合わせは高血糖を引き起こしやすい (J. Am. Med. Inform. Assoc.)
March 6, 2013,New York Times,© 2013 The New York Times
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BKチャネルタンパク質 (Calcium-activated potassium channels) がDHAなどの長鎖ω3脂肪酸の受容体で、脂肪酸がチャネルを活性化し、血圧を下げることが見出された。サプリメントに含まれるω3脂肪酸エステルにはこの効果が見られなかった (2 papers in PNAS)
March 5, 2013,Science Daily,© 2013 ScienceDaily
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ヒートショックタンパク質Hsp90の1つのチロシン残基のニトロ化により運動ニューロンの細胞死が引き起こされることが報告された (PNAS)
March 4, 2013,Science Daily,© 2013 ScienceDaily
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カルシウムポンプタンパク質がカルシウムイオンを結合する直前の構造
細胞中に大量に存在するマグネシウムイオンが、カルシウム結合に向けてポンプを準備する様子が解明された。また、結晶構造中にカルシウムポンプの調節タンパク質として知られるサルコリピンが同定され、この状態を安定にしていることが見い出された (2 papers in Nature)
March 4, 2013,東大プレスリリース,
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細胞内のオルガネラの一種で、オートファジーを担うオートファゴソームが、別のオルガネラであるミトコンドリアと小胞体が接触する場所で造られていることが見い出され、接触点でオートファゴソームが生成する様子の動画が撮影された (Nature)
March 4, 2013,阪大プレスリリース,
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クリプトクロム(CRY1とCRY2)は、昼間はユビキチン化修飾酵素FBXL21による安定化制御で蓄積し、夜になるとFBXL3による分解制御を受けて減少することが明らかにされた (2 Papers in Cell)
February 26, 2013,東大プレスリリース,
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地中海ダイエットが、心血管リスクの高い人の重大な心血管事象の発生率を減少させると報告された。その明確な有益性のため、臨床試験は予定より早く終了した (NEJM)
March 2, 2013,New York Times,© 2013 The New York Times
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ある種のハムシ (葉虫) のテルペノイド合成経路のイソプレニル二リン酸シンターゼは、補因子としてCoイオンあるいはMnイオンが存在する場合とMgイオンが存在する場合で全く生成物組成が異なることが見いだされた (PNAS)
February 28, 2013,Science Daily,© 2013 ScienceDaily
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クライオ電顕を用いて、ヒト基本転写因子群とRNAポリメラーゼII (Pol II) が転写前開始複合体を形成する過程のスナップショットが明らかにされた (Nature)
February 27, 2013,Science Daily,© 2013 ScienceDaily
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βラクタマーゼは、ペニシリンを含むβラクタム系抗生物質を加水分解する酵素で、細菌に薬剤耐性を付与する。先カンブリア紀の時代を追ったβラクタマーゼが再構成され、構造・機能が報告された (J. Amer. Chem. Soc.)
February 27, 2013,Science Daily,© 2013 ScienceDaily
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RNAの多様性は限りない。環状ノンコーディングRNAが発現調節に関与するマイクロRNAと結合し不活性化することが見いだされた (2 papers in Nature)
February 27, 2013,Nature News,© 2013 NPG
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腸内細菌による発酵で産生される短鎖脂肪酸 (SCFAs) が、2種のSCFA 受容体Olfr78 (olfactory receptor 78) とGpr41 (G protein-coupled receptor 41) を介して血圧を調節することが明らかにされた (PNAS)
February 26, 2013,Science Daily,© 2013 ScienceDaily
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心血管系疾患に関する米国の新しいガイドラインは、明確の臨床試験結果のない“悪玉”LDLコレステロールのターゲット値に触れない方見込みである
February 26, 2013,Nature News,© 2013 NPG
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河川盲目症は、ブヨ(ブユ)が媒介する寄生フィラリアによる感染症である。患者尿中から検知されるフィラリアの神経伝達物質トリアミンの代謝物が、感染のバイオマーカーであることが見いだされた (PNAS)
February 21, 2013,Science Daily,© 2013 ScienceDaily
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ドラッグデリバリー:“私を食べないで”シグナルで、ナノ粒子が免疫系をすり抜ける
白血球抗原CD47 はマクロファージ表面のSIRPα 受容体と結合し、マクロファージに“don’t eat me” シグナルを送る。CD47をモデルにした合成ペプチドでタグ付けしたナノ粒子はマクロファージの貪食を逃れ体内に入ることが示された (Science)
February 21, 2013,Chemical & Engineering News,© 2013 ACS
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ウイルスのノイラミニダーゼ (受容体破壊酵素) の活性部位に共有結合し、ウイルスが宿主細胞上のシアル酸 を開裂して蔓延することを妨げる阻害剤が開発された (Science)
February 21, 2013,Chemical & Engineering News,© 2013 ACS
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構造・機能解析から、ダームシジンは膜チャネルの構造を形成して病原菌の細胞膜に穴をあけ、水やイオンが流れこみ抗菌性を発揮することが示された (PNAS)
February 21, 2013,Science Daily,© 2013 ScienceDaily
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ニューロンのタンパク質‐タンパク質結合イメージングに関するCellの論文が撤回されたが、改良した手法が発表された (PLoS ONE)
February 20, 2013,Chemical & Engineering News,© 2013 ACS
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フェロモン生合成酵素長鎖脂肪酸アシルCoAレダクターゼ (pgFAR) のアミノ酸多型が基質特異性の違いを生じ、種特異的なフェロモン組成をもたらすことが示された (PNAS)
February 19, 2013,Science Daily,© 2013 ScienceDaily
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フェムト秒X線パルスを用いて、タンパク質複合体photosystem II (PSII) 微結晶の回折 (複合体全体の構造) と分光 (Mn錯体の電子状態) の両方が同時に解析された。結晶化の難しい放射線感受性システムの室温での検討に道を開いた (Science)
February 18, 2013,Chemical & Engineering News,© 2013 ACS
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20数年の試行錯誤を経て、アポリポタンパク質BをコードするメッセンジャーRNAをターゲットとする治療薬が、アンチセンス薬として初めてのFDA認可を得た
February 18, 2013,Chemical & Engineering News,© 2013 ACS
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米国政府は、ヒト脳の働きを調べ包括的な機能マップと作り上げる10年間のプロジェクトを検討している
February 17, 2013,New York Times,© 2013 The New York Times
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低温環境はチャネルタンパク質TRPA-1 (Transient receptor potential cation channel subfamily A member 1)を活性化し、カルシウムイオンが細胞内に流入し、引き続くシグナル伝達で寿命の主要制御因子である関連転写因子DAF-16に到達することが報告された (Cell)
February 14, 2013,Science Daily,© 2013 ScienceDaily
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これまでに報告されたGPCRの系統的比較解析から、GPCRの折り畳み方やリガンドとの結合の特徴が明らかにされた (Nature)
February 14, 2013,Science Daily,© 2013 ScienceDaily
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プリオンのミスフォールド型 (PrPScアイソフォーム) は狂牛病などの感染性疾患に関与する。一方、正常型 (PrPCアイソフォーム) は、神経結合形成に関与することが報告された (J. Neurosci.)
February 14, 2013,Nature News,© 2013 NPG
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バクテリアが産生する一酸化窒素は、線虫の2種の転写因子HSF-1 とDAF-16 の制御下の遺伝子群の活性化を通じて、そのストレス耐性を高め寿命を延ばすことが見出された (Cell)
February 14, 2013,Science Daily,© 2013 ScienceDaily
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線虫やヒト上皮細胞にω6脂肪酸を補給すると、細胞リサイクルメカニズムであるオートファジープロセスが活性化され、飢餓状態に強くなりまた老化進行を遅らせることが見いだされた (Genes Dev.)
February 13, 2013,Science Daily,© 2013 ScienceDaily
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メラミン混入粉ミルク・ペットフードによる腎不全の共犯者は腸内細菌
ラットを用いて、腸内細菌がメラミンを、腎結石の主要成分であるシアヌル酸に転換することが報告された (Sci. Transl. Med.)
February 13, 2013,Science Now,© 2013 AAAS/Science
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NMRを用いて、転写抑制因子CylR2 ホモ二量体の25 ℃ から?16℃ への低温変性の様子が追跡された (Nat. Chem. Biol.)
February 11, 2013,Science Daily,© 2013 ScienceDaily
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代謝を活性化しエネルギーを燃焼させることを狙っての2種のキナーゼIKKE とTBK1の阻害剤スクリーニングから認可アレルギー薬アンレキサノクスがヒットした。アンレキサノクスは肥満マウスで有益な効果を示した (Nat. Med.)
February 11, 2013,Science Daily,© 2013 ScienceDaily
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インターフェロンによって誘導される酵素CH25H (cholesterol-25-hydroxylase) は、コレステロールから25-ヒドロキシコレステロールを産生することにより、HIVなどエンベロープをもつウイルスの増殖を阻害することが示された (Immunity)
February 11, 2013,Science Daily,© 2013 ScienceDaily
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European Lead Factoryと呼ばれる産学創薬コンソーシアムがスタートする。製薬会社7社の提供する30万を含めた50万の化合物ライブラリーを整備したスクリーニング拠点を構築する
February 7, 2013,Nature News,© 2013 NPG
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筋萎縮性側索硬化症:核酸反復から翻訳されるジペプチド反復タンパク質
筋萎縮性側索硬化症 (ALS) やある種の認知症 (FTLD) ではC9orf72遺伝子のGGGGCC反復の増大が知られている。このGGGGCC反復が実際にジペプチド反復タンパク質へと翻訳されていることが見いだされた (Science)
February 7, 2013,Science Now,© 2013 AAAS/Science
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オートファジータンパク質beclin 1 (Atg6) 由来のペプチドTat-beclin 1がオートファジープロセスを引き起こすことが示された (Nature)
February 7, 2013,Science Daily,© 2013 ScienceDaily
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無機水銀のメチル化に用いられている微生物の遺伝子クラスターhgcA とhgcB が同定された。この遺伝子クラスターは、メチル水銀生成が知られるすべてのバクテリアに存在する (Science)
February 7, 2013,Science Daily,© 2013 ScienceDaily
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TRAIL (tumor necrosis factor-related apoptosis-inducing ligand) は、内在性腫瘍抑制タンパク質である。TRAILを持続的に発現させる化合物TIC10 (TRAIL-inducing Compound 10) が見いだされた (Sci. Transl. Med.)
February 6, 2013,Science Daily,© 2013 ScienceDaily
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珍しいタイプのコレステロールであるapolipoprotein (a) をコードするLPA遺伝子の変異が大動脈弁狭窄症の発症リスクと関連付けられることが報告された (NEJM)
February 6, 2013,Science Daily,© 2013 ScienceDaily
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腸内細菌が、穀物中で化学修飾されたカビ毒を分解し、消化器系や神経系にダメージを引き起こす毒素を解き放つことが見いだされた (Chem. Res. Toxicol.)
February 6, 2013,Chemical & Engineering News,© 2013 ACS
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腫瘍細胞株から低分子量Gタンパク質の1つであるRAC1を発現するRAC1遺伝子の突然変異が見いだされた。変異RACタンパク質の機能を抑制する薬剤によるがん分子標的療法の開発が期待される (PNAS)
February 5, 2013,JSTプレスリリース,
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HRG1 (Heme-responsive gene 1 protein homolog) が、赤血球を壊し、ヘム鉄を回収する際のヘム輸送に必須のタンパク質であることが報告された (Cell Metabolism)
February 5, 2013,Science Daily,© 2013 ScienceDaily
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2種類のサイトカイン、インターフェロンγ (IFN-γ) と腫瘍壊死因子 (Tumor Necrosis Factor, TNF) を組み合わせて作用させると、癌の持続的増殖停止がもたらせられることが示された (Nature)
February 4, 2013,Science Daily,© 2013 ScienceDaily
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真核生物のmRNA分解小胞エキソームの構造解析から、その基質認識と分解プロセスが明らかにされた (Nature
February 4, 2013,Science Daily,© 2013 ScienceDaily
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アポトーシス制御因子Baxの不活性状態と活性状態の構造が決められた。活性型がミトコンドリアの膜を破裂させ、細胞をアポトーシスに導く (Cell)
February 4, 2013,Science Daily,© 2013 ScienceDaily
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線虫のTMC-1 (Transmembrane channel-like protein 3) が有害な量の塩を感知することが報告された (Nature)
February 4, 2013,Chemical & Engineering News,© 2013 ACS
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リン脂質分布の変化に伴う質量スペクトル信号が、健常組織に囲まれた腫瘍組織の弁別に使われ始めた (PNAS)
February 4, 2013,Chemical & Engineering News,© 2013 ACS
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分子系統学解析と構造解析を組み合わせて、タンパク質の折り畳み速度は、38億年前から15億年前にかけて増加してきたことが報告された (PLoS Comput. Biol.)
January 31, 2013,Science Daily,© 2013 ScienceDaily
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表面近傍の窒素・空孔欠陥を有するダイヤモンドデバイスを用いて、極微量サンプルのナノテスラ磁場が感知できることが示された (2 papers in Science)
January 31, 2013,Nature News,© 2013 NPG
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生理活性ポリケチドが2種類の軟体動物(フナクイムシ:PNASとイモガイ:Chem. & Biol.)に共生するバクテリアから同定された
January 29, 2013,Science Daily,© 2013 ScienceDaily
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ハリケーンが上空に巻き上げた多くの微生物の中には、数日から数週間生き延びて空を飛ぶ種も存在することが報告された (PNAS)
January 28, 2013,Science Now,© 2013 AAAS/Science
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土壌放線菌の薬剤耐性株から、野生株が産生しない300以上の化合物が見いだされた (PNAS)
January 27, 2013,Science Daily,© 2013 ScienceDaily
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25万化合物のスクリーニングからジフェニルピラゾール系化合物が、HIV-1の病原性因子であるNefタンパク質と結合し、Nef-依存性のHIV複製をサブμMレベルでブロックすることが報告された(Chem. & Biol.)
January 24, 2013,Science Daily,© 2013 ScienceDaily
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ショウジョウバエを空腹状態にすると、血糖値をコントロールするインスリン分泌が低下し、インスリンにより抑制されていたタンパク質CRTC (CREB-regulated transcription coactivator) が核内移行し、CREB (Cyclic AMP-responsive element-binding protein) を活性化して記憶力があがることが報告された (Science)
January 25, 2013,JST‐東京都医学総合研究所プレスリリース,
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メラノーマ:タンパク質コード領域ではなく制御領域に頻発する変異
2つの研究チームから、黒色腫で、テロメラーゼの触媒サブユニットをコードするTERT (telomerase reverse transcriptase) 遺伝子のプロモーター領域の変異が見いだされた (2 papers in Science)
January 24, 2013,New York Times,© 2013 The New York Times
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薬剤抵抗性グラム陰性細菌の膜を断片化して溶解するペプチドミメティクスが開発された。L-アミノ酸から成るペプチドが宿主や病原菌の酵素で分解されやすい欠点を避けるため、すべてD-アミノ酸から成る (PNAS)
January 24, 2013,Science Daily,© 2013 ScienceDaily
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ゲノム比較から、イヌはオオカミに較べアミラーゼやマルターゼなどのでんぷん加水分解酵素の活性や効率が高いことが見いだされた (Nature)
January 23, 2013,Science Now,© 2013 AAAS/Science
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側根の内皮が塩に対して敏感で、植物ホルモンのアブシジン酸を活性化し、根の成長を止めることが報告された (Plant Cell)
January 23, 2013,Science Daily,© 2013 ScienceDaily
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シロイヌナズナからペプチドをコードする短い遺伝子を7,000 個以上発見 (PNAS)
January 22, 2013,理研-九州工業大共同プレスリリース,
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パラインフルエンザウイルスはどうやって免疫応答に対抗するのか?
RIG-I like receptor の一種のMDA5 はフィラメント状に重合して長鎖RNAを感知する。構造解析から、パラインフルエンザウイルスのVタンパク質は、そのヘアピンループを挿入してMDA5の構造をほどき、フィラメント形成を妨げることが見いだされた (Science)
January 21, 2013,Science Daily,© 2013 ScienceDaily
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Tat (Twin-arginine translocation) 系タンパク質分泌経路を担う膜口形成膜タンパク質TatAは、向かい合うアミノ酸の正負の電荷の中和という静電的な“チャージジッパー”に基づきフォールディングし、会合することが見いだされた (Cell)
January 18, 2013,Science Daily,© 2013 ScienceDaily
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抗体を用いてG-quadruplex (グアニン四重鎖) が可視化された (Nat. Chem.)
January 20, 2013,Nature News,© 2013 NPG
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ハンセン病を引き起こすらい菌は、ある種の神経細胞を幹細胞様にリプログラムし、それを用いて他の組織に浸潤することが見いだされた (Cell)
January 17, 2013,Science Now,© 2013 AAAS/Science
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発足1年を迎えたNIHのNational Center for Advancing Translational Sciencesの状況レポート
January 14, 2013,Chemical & Engineering News,© 2013 ACS
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電子顕微鏡を用いて、リボソームでの品質管理タンパク質Ltn1 (E3 ubiquitin-protein ligase listerin) は20以上のコンフォメーションをとることが示された (PNAS)
January 14, 2013,Science Daily,© 2013 ScienceDaily
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デスレセプター5 (DR5, Tumor necrosis factor receptor superfamily member 10B) は、正常細胞ではほとんど発現しないが、多くの癌細胞で発現する。約20万化合物ライブラリーのスクリーニングから、DR5の天然タンパク質リガンドTRAIL と同様に、DR5のクラスター形成を活性化し、アポトーシスを促す化合物bioymifi が見いだされた (Nat. Chem. Biol.)
January 14, 2013,Chemical & Engineering News,© 2013 ACS
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小枝を歯ブラシに使ってきた南アフリカの植物に含まれる化合物diospyrin (ビスナフトキノン) が、バクテリアや植物には必須で動物やヒトには存在しないDNAジャイレースの阻害剤であることが報告された (J. Biol. Chem)
January 14, 2013,Science Daily,© 2013 ScienceDaily
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インフルエンザウイルスなど脂質から成るエンベロープを有するウイルスは、アルコールで容易に破壊できるが、ノロウイルスなどのエンベロープを持たないウイルスは消毒用アルコールでの不活化は難しい;石鹸と水により物理的に洗い流すことが有効
January 14, 2013,New York Times,© 2013 The New York Times
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極低温電子線トモグラフィーを用いて、T7ウイルス粒子が大腸菌に感染する際の詳細な構造変化を伴う挙動が明らかにされた (Science)
January 10, 2013,Science Dail,© 2013 ScienceDaily
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インスリン受容体の短縮型構築体に結合したインスリンの4種類の結晶構造に基づき、インスリン受容体の主要結合部位とインスリンとの相互作用が明らかにされた (Nature)
January 9, 2013,Science Daily,© 2013 ScienceDaily
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いくつかのタイプの癌で、アポトーシス抑制タンパク質MCL1 (Induced myeloid leukemia cell differentiation protein) の過剰発現が報告されている。 MCL1の隣接するサイトに結合する2種類のフラグメント分子ファミリーが見いだされ、その2種類のフラグメントをマージしてMCL1阻害剤が開発された (J. Med. Chem)
January 8, 2013,Chemical & Engineering News,© 2013 ACS
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創薬化学者が用いる構造活性相関解析をコンピューターイテレーションすることにより、多重標的プロファイルを持つリガンドを設計する手法が提案された。この手法によりアセチルコリンエステラーゼ阻害剤ドネペジル(アリセプト)を、複数のターゲットタンパク質に対し異なった特異性と活性を有する様々なリガンドへと進化させることが示された (Nature)
January 7, 2013,Chemical & Engineering News,© 2013 ACS
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バクテリアの細胞壁生合成に必須の酵素ウンデカプレニルピロりん酸シンテターゼ (uppS) を阻害する10種類の化合物の同定と酵素-阻害剤複合体結晶構造が報告された (PNAS)
January 7, 2013,Science Daily,© 2013 ScienceDaily
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ゴキブリを刺して麻痺させ、幼虫の宿主(餌)にする昆虫寄生生物であるエメラルドゴキブリバチの幼虫は、口器から抗菌性化合物を分泌してゴキブリを消毒することが見出された (PNAS)
January 7, 2013,Nature News,© 2013 NPG
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最も処方されている糖尿病薬メトホルミンの作用機序は、従来提案されたAMPK (5'-AMP-activated protein kinase ) 酵素の活性化によるグルコース産生減少ではなく、グルカゴンホルモンシグナル伝達系の抑制によるものであることが示され、この伝達系の酵素アデニル酸シクラーゼが創薬ターゲットであることが推察された (Nature)
January 6, 2013,Science Daily,© 2013 ScienceDaily
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足場タンパク質p62 (sequestosome 1; SQSTM1) を脂肪細胞だけで欠損したマウスを用いて、p62が褐色脂肪組織のミトコンドリア機能の調節を介して、エネルギー代謝を制御していることが報告された (J. Clin. Invest.)
January 4, 2013,Science Daily,© 2013 ScienceDaily
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転写調節因子TRIP-Br2 (transcriptional regulator interacting with the PHD-bromodomain 2) は肥満や高脂肪食により発現上昇し、HSL (ホルモン感受性リパーゼ) やβ3アドレナリン受容体の発現を抑制し、エネルギー消費減少と脂肪蓄積を引き起こすことが見出された (Nat. Med.)
January 6, 2013,Science Daily,© 2013 ScienceDaily
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HIV感染細胞(東大)と癌細胞(理研)につき、患者の成熟T細胞を、iPS細胞作製技術とT細胞分化誘導技術を用いて、長寿命で特定の抗原を認識する大量の成熟T細胞へ再生できることが二つの研究チームから報告された (2 papers in Cell Stem Cell)
January 3, 2013,Science Daily,© 2013 ScienceDaily
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長期の記憶を司るとされていたプロテインキナーゼPKM-ζの役割に疑義が呈された (2 papers in Nature)
January 2, 2013,Nature News,© 2013 NPG
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バクテリアの抗生物質への応答を1細胞レベルで測定し、抗生物質投与に対して遺伝子変異なしで集団内部の一部のバクテリアが生き延びる「パーシスタンス現象」が、細胞の生存に関わる細胞内酵素の確率的発現により引き起こされることが見出された (Science)
January 4, 2013,東大‐JST プレスリリース,
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マラリア原虫を殺す宿主防御ペプチドの同定と治療薬開発への展開
血小板特異的ペプチドの血小板第4因子hPF4 (human platelet factor 4) にマラリア原虫を殺す作用があることが見いだされ、非ペプチド性小分子ライブラリースクリーニングから、hPF4と同様な効果を有する小分子が同定された (Cell Host & Microbe)
December 27, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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いくつかの腫瘍において、変異の無いp53が、MDM2 オンコプロテインとの結合のためにその機能を阻害されていることが見いだされている。大手製薬企業3社が、MDM2-p53 相互作用をブロックする薬剤によりp53を再活性化することを競っている
December 22, 2012,New York Times,© 2012 The New York Times
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マラリア熱治療に2000年用いられてきた漢方生薬の作用メカニズム
アルカロイドのフェブリフギンは、生薬Chang Shan の活性成分である。 フェブリフギンの誘導体のハロフジノンが結合したプロリル-tRNA 合成酵素 (ProRS) の詳細な構造解析から、ハロフジノンは、ProRS 酵素のtRNAとプロリンの両方の活性サイトをブロックしていることが明らかになった (Nature)
December 23, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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GPCRファミリーに属する膜タンパク質で、鎮痛や多幸感などに関与するオピオイド受容体4種の構造が、2つの研究チームから競って報告された (4 papers in Nature)
December 23, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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糸状菌が産生する抗がん剤の種テルペンドールEの生合成メカニズム
テルペンドールEを変換する酵素の遺伝子terPを欠損させ、安定的調製が可能に
December 21, 2012,理研プレスリリース,
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ScienceShot: クシクラゲのゲノムが明らかにする発光と受光
ゲノム解析から、クシクラゲ (ctenophore) の生物発光には10種のタンパク質が関与していること、また眼を持たないにも拘らず光受容色素タンパク質を有することが報告された (BMC Biology)
December 21, 2012,Science Now,© 2012 AAAS/Science
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肥満は、腸内の味覚受容体を選択的に標的として、満腹感を伝えるホルモンを放出させることによって防げるのではないかということを示唆する証拠が増えている (Trends in Endocrinology & Metabolism)
December 21, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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AquAdvantage という商標の大西洋鮭は、鱒の介 (キングサーモン) の成長ホルモン遺伝子とゲンゲと呼ばれる海水魚のプロモーター遺伝子が組み込まれており、暖かい時期だけではなく、一年中成長成長ホルモンを産生する
December 21, 2012,New York Times,© 2012 The New York Times
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マウスを用いて、アルツハイマー病においてNLRP3 (NOD-like receptor family, pyrin domain containing 3) が活性化され、その病理進行に関わることが示された。NLRP3インフラマソーム阻害が治療法開発に繋がるかもしれない (Nature)
December 19, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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ヒトGTP結合タンパク質Rab GTPaseの触媒機構を探る
Rab GTPases は小胞輸送の鍵制御因子で、Rab-GTPase活性化タンパク質 (RabGAPs) の助けが無い時のGTP加水分解活性は低い。X線構造解析とFTIR 分光を組み合わせて、Rab‐RabGAP 複合体の分子反応機構の詳細が原子レベルの分解能で検討された (PNAS)
December 19, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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核内受容体である肝臓X受容体(LXRα とLXRβ) の活性を肝臓において選択的に阻害する化合物 (SR9238) が開発され、マウスモデルで、脂質生合成、炎症、脂質蓄積を抑制する効果を示すことが報告された (ACS Chem. Biol.)
December 19, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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ゲノム進化に着目し、アブラナ科シロイヌナズナで花粉管誘引ペプチド LURE1 を発見し、これを遠縁種のアゼトウガラシ科トレニアに導入することで、種間交雑の壁を打破できることが報告された (PLoS Biol.)
December 19, 2012,名大プレスリリース,
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HIV 感染:新規ターゲットタンパク質‐シアル酸結合タンパク質シアロアドへシン
樹状細胞の受容体シアロアドへシン (Siglec-1 or CD169) が、HIV表面のシアル酸含有脂質ガングリオシドと結合することにより、HIVの侵入が引き起こされることが見出された。Siglec-1は新たなAIDS治療ターゲットである (PLoS Biol.)
December 17, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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British Medical Journal のクリスマスプレゼント
過去30年に渡り、BMJ誌はそのクリスマス週特集号では、医学の軽妙な、明るい、あるいは型破りな話題を扱った論文に傾注してきた。今年は、トナカイの鼻の赤い訳、院内感染菌としてクローズアップされているClostridium difficileを嗅ぎわけるビーグル犬などの論文が掲載されている (BMJ)
December 17, 2012,New York Times,© 2012 The New York Times
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Interactome3D: タンパク質ネットワークに構造情報を付与する
8種のモデル生物に関する12,000 以上のタンパク質-タンパク質相互作用にタンパク質立体構造情報が付与されたウェブプラットフォームInteractome3D がデビューした (Nat. Methods)
December 17, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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腫瘍細胞で過剰発現するマトリックスメタロプロテアーゼ (MMPs) で開裂されるペプチドでコートされたナノ粒子が開発された。ペプチド断片は尿中に蓄積し、質量分析で検知される (Nat. Biotechnol.)
December 17, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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脳弓下器官における小胞体ストレスがアンジオテンシンII 依存型高血圧を媒介することが報告された。脳弓下器は血液脳関門の外側にあり、新たな高血圧治療標的である (J. Clin. Invest.)
December 17, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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光をエネルギー源として酸素発生型光合成を行う原核生物シアノバクテリアの光受容体シアノバクテリオクロムの光受容部位の立体構造が報告された (PNAS)
December 18, 2012,東大– JST プレスリリース,
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X線自由電子レーザー(XFEL) 施設SACLAにおいて、原子レベルの表面精度を持つ集光鏡により、1マイクロメートルの集光ビームの実現に成功 (Nature Photonics)
December 17, 2012,SACLA – JASRI – 阪大 – 東大 – 理研 – JST リリース,
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HIVが感染の際に用いるCCR5受容体が、黄色ブドウ球菌の産生するポア形成二成分白血球傷害性外毒素であるロイコトキシン (LukE-LukD)の受容体でもあることが分かった。このトキシンによる細胞死は、エイズ治療薬マラビロクを含むCCR5阻害剤で阻止できることが示された (Nature)
December 14, 2012 ,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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酵母の二糖類マルトースを代謝する酵素ファミリーの進化の過程での遺伝子重複イベントと活性・選択性の変遷が詳細に調べられた (PLoS Biol.)
December 12, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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角質層がニコチンやエストロゲンのような親油性小分子しか通さないため、薬剤の経皮吸収は限定的とされてきた。植物由来のグリコシル化テルペンが、分子量2000以上にもかかわらず、皮膚を浸透することが報告された (PNAS)
December 12, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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“健康な遺伝子変異”に着眼して新しいコレステロール降下薬を開発する
PCSK9遺伝子に変異のある人は生来コレステロールレベルが低いこと、また正常な酵素PCSK9は悪玉コレステロールLDLを血中から除去するLDL受容体を分解に導くという知見に基づき、製薬メーカー各社がPCSK9阻害剤の開発にしのぎを削っている
December 11, 2012,MIT Technology Review,© 2012 Technology Review
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化学発光タンパク質と蛍光タンパク質をハイブリッド化することで、従来よりも10倍以上明るく光る高輝度化学発光タンパク質Nano-lantern (ナノ?ランタン) が開発された (Nat. Commun.)
December 12, 2012,阪大‐JST 共同プレスリリース,
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ピロリ菌が強酸性の胃に生息するために必須のチャネルタンパク質の構造
ヘリコバクター・ピロリは胃液から尿素を取りこみ、アンモニアに分解して胃酸を中和しており、その尿素チャネルは生存に必須である。このチャネルタンパク質の構造が報告された (Nature)
December 10, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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イムノトキシンは、抗体ドメインが標的がん細胞に結合し、毒素分子が細胞増殖を阻害する分子標的薬であるが、高価な製造原価が課題となっている。緑藻・コナミドリムシの葉緑体を用いてイムノトキシンタンパク質が生産された (PNAS)
December 10, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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液体クロマトグラフィーと質量分析を組み合わせて、ヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)中に発現している約1万種のタンパク質が同定された (J. Proteome Res.)
December 7, 2012,京大プレスリリース,
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ショウジョウバエは、有毒なカビの発する揮発性化合物ゲオスミン (“大地の臭い“) を臭覚受容体 (Or56a) を介して嗅覚神経系で感知することが見出された。この回路は活性化されると生得的嫌悪を引き起こし、産卵や摂食を妨げる (Cell)
December 6, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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低カロリーダイエットやケトン食療法をを続けるとケトン体のβ-ヒドロキシ酪酸 (βOHB) が産生される。βOHB は、ヒストン脱アセチル化酵素 (HDACs) を阻害して酸化ストレスを低減し、細胞をエイジングから守ることが報告された(Science)
December 6, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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キナーゼTyk2 (tyrosine-protein kinase-2) が、褐色脂肪組織 (BAT) の分化を介してマウスの肥満を制御することが報告された (Cell Metabolism)
December 5, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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ヒト味覚受容体をポリマーナノチューブにコーティングして、フェムトモルレベルで苦味化合物を感知する電子センサーが試作された (Nano Lett.)
December 5, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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6‐10 残基のアミロイド形成的ペプチドを単一ドメイン(VH) 抗体の相補性決定領域にグラフトすることにより、アミロイド形成に対する強力な抗体阻害剤が得られることが報告された (PNAS)
December 3, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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アルツハイマー病:新規ターゲットタンパク質β-アレスチン-2
β-アレスチン-2 が、βアミロイドタンパク質の産生とγ-セクレターゼの活性を制御していることが見出された (Nat. Med.)
December 3, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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アルツハイマー病:新規ターゲットタンパク質グリオキサラーゼ I
乳酸グルタチオンリアーゼ (glyoxalase I) の酵素活性を修復すると、モデルマウスの認知障害が軽減されることが報告された (ACS Chem. Neurosci.)
December 3, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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C. elegans は、大腸菌が放出するインドールや緑膿菌からの1-ヒドロキシフェナジンなどの毒素をグリコシル化することより無毒化している (ACS Chem. Biol.)
December 3, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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数千の化合物のin vivo スクリーニングから、空腹時の代謝を活性化する2種の化合物が見出された (Nat. Chem. Biol.)
December 2, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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腫瘍細胞表面の輸送体MCT1 (monocarboxylate transporter 1) が、治験中の解糖系阻害剤3-ブロモピルビン酸 (3-BrPA) の細胞内侵入を担っていることが報告された (Nat. Genet.)
December 2, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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アフリカ睡眠病を引き起こす寄生原虫トリパノソーマ・ブルセイの生存に必須のシステインプロテアーゼcathepsin B の“前駆体”の構造が決定された (Science)
November 29, 2012,Science News & Analysis,© 2012 AAAS/Science
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スイスの製薬大手Rocheで開発途上にお蔵入りした約300の化合物につき、Broad Institute of MIT and Harvardが新用途を求めて新たな解析をすることになった
November 28, 2012,FierceBiotech,© 2012 FierceMarkets
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腫瘍から血流中に放出された異常なDNAを配列解析することに基づく癌診断の試みが報告された。未だ進行癌を検知する感度しかないが、将来は初期腫瘍も診断できるようになる可能性がある (Sci. Transl. Med.)
November 28, 2012,Science Now,© 2012 AAAS/Science
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COPD (慢性閉塞性肺疾患) や喘息に繋がる気道細胞での過剰な粘液産生を抑えるためにMAPキナーゼ13 (MAPK13)の阻害剤が、MAPK14とその阻害剤の複合体構造を参照しつつ設計された (J. Clin. Invest.)
November 26, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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寄生虫症を治療するために長らく使われてきたアベルメクチン系薬剤が、結核治療にも有効であることが見出された (Antimicrobial Agents and Chemotherapy)
November 26, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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ウイルスのゲノムRNAとRNA ポリメラーゼを含む会合タンパク質の構造が2チームから報告された (2 papers in Science)
November 26, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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害虫の嫌うテルペンを生合成する経路の遺伝子を野生株から取り出し、市販トマトに導入する試みが報告された。茎と葉にのみ7‐エピジンギベレンを生成するので、果実の味わいは変わらない (PNAS)
November 26, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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配列と構造を結び付けるコードは何か? タンパク質はどうやって急速に折り畳まれるのか?構造はシミュレーションで予測できるか? (Science)
November 23, 2012,This Week in Science,© 2012 AAAS/Science
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アイディアを孵化し、数十のベンチャーを立ち上げてきたMITの研究室
MITのDr. Robert Langer (64) は、がん、糖尿病、心臓疾患、統合失調症から増毛まで、薬剤やドラッグデリバリーシステムなどの製品を扱う25のベンチャーを設立してきている
November 24, 2012,New York Times,© 2012 The New York Time
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免疫応答を制御するインターロイキン(IL)-12 / IL-23シグナル伝達系を遮断すると、アルツハイマー病様症状が軽減されることが見出された (Nat. Med.)
November 25, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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シナプスタンパク質neuroligin の過剰発現により引き起こされる神経の“ハイパーコネクション”は元に戻すことができることが示された (Nature)
November 21, 2012,Nature News,© 2012 NPG
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過度の眠気の原因は、睡眠薬のように機能する脳内化合物であることが示唆された (Sci. Transl. Med.)
November 21, 2012,Science Now,© 2012 AAAS/Science
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脂肪細胞表面に局在するGPCRの一種であるGPRC5B (G-protein coupled receptor family C group 5 member B) が、脂肪細胞における肥満に関連した炎症反応を活性化することが見出された (Sci. Signal.)
November 21, 2012,理研プレスリリース,
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構造を持つアミロイドと不定形なタンパク質凝集の両方の凝集を解く酵母タンパク質
酵母ヒートショックタンパク質104 (Hsp104) は、その6ヶのサブユニットがヘキサマーを形成してアミロイド線維を分解するのに対し、一つのサブユニットだけで不定形な凝集塊の凝集を解くという使い分けが明らかにされた (Cell)
November 19, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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ホップに含まれるポリフェノールのキサントフモールが、CETP (Cholesteryl ester transfer protein) 活性を阻害することにより、HDLコレステロールを上昇させ、総コレステロール量を減少させる効果があると報告された (PLoS ONE)
November 19, 2012,北大?サッポロビール共同プレスリリース,
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Michael J. Fox Foundation for Parkison’s Research に代表される患者支援団体のベンチャー投資により、新しい薬剤ターゲットやヒット化合物を臨床フェーズに持ち込む成功例が増えてきている。代謝型グルタミン酸受容体mGluR4 (パーキンソン病)、ヒストンH3-K79メチルトランスフェラーゼDOT1L (急性白血病)などに関する具体例を交えたレポート
November 5, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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ミスフォールドしたタンパク質がパーキンソン病を細胞間伝染させる
ミスフォールドしたα-シヌクレインを合成し、マウスの脳に注入するとパーキンソン病症状が発症することが報告された (Science)
November 15, 2012,Nature News,© 2012 NPG
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サルモネラ菌はエフェクタータンパク質SifAを分泌して、リソソームに加水分解酵素を再充填するキャリア‐の輸送を妨害し、貪食から免れることが見出された (Science)
November 15, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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家畜体内で生じると考えられていた抗生物質耐性獲得の予想外のレシピが見出された:牛の糞と土壌と抗生物質を含む尿の組み合わせから薬剤耐性大腸菌が発生する (PLoS ONE)
November 15, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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2グループの全く異なった出発点からの研究が、驚くべき符合で、アルツハイマー病に関わる遺伝子変異に収斂した:TREM2の変異が、アミロイド斑の蓄積を防ぐ能力を妨げるのではないかと疑われている (2 papers in New Engl. J. Med.)
November 14, 2012,New York Times,© 2012 The New York Times
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オープンアクセスイニシアティブから顧みられない熱帯病のヒット化合物の成果
DNDi(顧みられない病気のための新薬イニシアティブ)とMMV (Medicines for Malaria Venture: マラリア薬チャレンジ基金) は、眠り病 につき2種、リーシュマニア症につき1種のヒット化合物を同定したと発表した
November 13, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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エストロゲンホルモンの狙いを定めたデリバリー:メタボリックシンドローム
インスリン分泌を促進するペプチド消化管ホルモンのグルカゴン様ペプチド1 とエストロゲンから成る抱合体がインスリン分泌、血糖、体重を顕著に改善することが報告された。ペプチドによる標的デリバリーによりエストロゲン特有の副作用も見られない (Nature Medicine)
November 13, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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X線構造解析と分子動力学シミュレーションを用いて、β-ラクタマーゼに属する酵素カルバペネマーゼがβ-ラクタム系抗生物質カルバペネムをどう認識し、分解するかが報告された (J. Amer. Chem. Soc.)
November 9, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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脂肪細胞で時計遺伝子Arntl (Bmal1とも呼ばれる)を欠損したマウスは、食餌の時間がシフトし肥満することが見出された(Nature Medicine)
November 11, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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血液凝固過程で重要な役割を果たすタンパク質凝固第X因子 (FX) が、アデノウイルスと結合し、感染に応答する抗ウイルス免疫に関与していることが示された (Science)
November 9, 2012,This Week in Science,© 2012 AAAS/Science
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2型糖尿病患者では診断の数年前から、炎症プロセスで重要な役割を果たすタンパク質SFRP4 (secreted frizzled-related protein 4)が, 血清中で増加していることが見出された (Cell Metabolism)
November 7, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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100年前の今週、Lawrence Bragg が、後に鉱物学から生物学に渡る広い領域に革命を起こすことになる「フラッグの法則」を発表した
November 7, 2012,Nature Correspondence,© 2012 NPG
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一連の規則に従い、5種のタンパク質につき、スクラッチから理想的なコンフォメーションへ折り畳まれると予測されるアミノ酸配列が設計された (Nature)
November 7, 2012,Nature News,© 2012 NPG
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NIHのNCBIが、文献と臨床遺伝子検査ラボのデータから疾患関連遺伝子変異情報を統合するデータベースClinVar の構築を始めた。検査ラボデータの登録も受け付ける
November 7, 2012,Nature News,© 2012 NPG
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光受容タンパク質photoactive yellow protein (PYP)の光応答素過程?trans→cis異性化、水素結合の切断と形成、ひずみの発生と緩和、水分子のPYP内への浸透などがリアルタイムで観察された (PNAS)
November 1, 2012,奈良先端科学技術大学院大学プレスリリース,
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60年間使われてきている抗結核薬p-アミノサリチル酸 (PAS) は、結核菌の鍵酵素を直接阻害するのではなく、プロドラッグ(前駆薬剤)として機能することが報告された (Science)
November 5, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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脳内で産生される麻薬性物質カンナビノイドを代謝するモノアシルグリセロールリパーゼ (MAGL) を阻害するとβアミロイド斑の生成と蓄積を抑えることが報告された (Cell Reports)
November 1, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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ピーナッツアレルギーマウスの小腸ではPim 1キナーゼが高発現しており、この酵素を阻害するとアレルギー反応が抑制されることが見出された (J. Allergy & Clinical Immunol.)
November 1, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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ビール酵母ラガー株細胞壁形成タンパク質Cfg1p がビールの泡を安定化することが見出された (J. Agric. Food Chem.)
October 31, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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Structural Genomics Consortium (SGC) と産学の研究者との共同研究から、BRD4 (bromodomain-containing protein 4 )、JMJD3 (lysine-specific demethylase 6B ) 、EHMT2 (histone-lysine N-methyltransferase) などのターゲットタンパク質の阻害剤が見いだされてきた
October 31, 2012,Nature Correspondence,© 2012 NPG
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急性アレルギーの原因であるIgE 抗体?FcR受容体複合体から抗体を切り離す合成タンパク質阻害剤DARPin E2-79が報告された (Nature)
October 28, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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免疫療法と、IgE 抗体をターゲットとする薬物療法が、食物アレルギー患者に朗報をもたらし始めている
October 22, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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緑内障治療薬としてFDA認可済みのプロスタグランジン誘導体ビマトプロストの育毛効果が報告された (FASEB J)
October 26, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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タンパク質合成を阻害すると考えられていたアンチセンスRNAの中に、タンパク質合成を促進する機能も持つものがあることが見出された (Nature)
October 25, 2012,理研プレスリリース,
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カテコール-O-メチル基転移酵素 (COMT) は、プラセボ反応の鍵因子とみなされているドーパミンの異化反応系における重要な酵素である。COMTのバリン→メチオニン変異がプラセボ効果の有望なバイオマーカーであることが見出された (PLoS ONE)
October 23, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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CXCR1 は、免疫・炎症反応メディエーターのインターロイキン8の受容体で、 Gタンパク質共役型受容体(GPCR) ファミリーに属する。NMRを用いて、リン脂質二重層に埋め込まれたヒトCXCR1の構造が明らかにされた (Nature)
October 22, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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電子顕微鏡:細胞タンパク質の高解像度可視化のためのタンパク質タグ
GFP (緑色蛍光タンパク質) の電子顕微鏡版が設計された‐アスコルビン酸ペルオキシダーゼ (APX) タグはタンパク質をラベルし、鮮明に可視化する (Nat. Biotech.)
October 22, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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RNAポリメラーゼがDNAのプロモーター部位を認識し、転写を開始する転写プロセスの構造的基盤が報告された (Science)
October 22, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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漢方薬の雷公籐に含まれる免疫抑制作用を有する成分トリプトリドの水溶性アナログのMinnelidが膵臓腫瘍増殖を抑えるという前臨床評価結果が報告された (Sci. Transl. Med.)
October 17, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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あり得ないペアがタンパク毒素をシェア Unlikely Pair Share Toxin
ツマベニチョウ(褄紅蝶)と捕食性のイモガイ(芋貝)のナンヨウクロミナシは、共通の63アミノ酸から成るglacontryphan-M と呼ばれるペプチド毒素を有していることが見出された (PNAS)
October 22, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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風邪ウイルスタンパク質から形成される高分子マトリックスが腫瘍抑制タンパク質をトラップする
X線構造解析と高次構造解析から、アデノウイルスのオンコプロテインE4-ORF3は不規則なウェブ状構造に自己組織化し、様々な腫瘍抑制タンパク質を不活性化することが報告された (Cell)
October 16, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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食欲・代謝調節ホルモンレプチンはその受容体とどのように結合するか
クライオ電子顕微鏡を用いて、レプチン受容体の細胞外領域の構造が、フリーの状態とレプチンが結合した状態で比較して解析された (Mol. Cell)
October 11, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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神経ペプチドホルモンのニューロテンシンは、脳ではドーパミン作動系の活性、痛覚消失、食物摂取の抑制などを調節し、腸では消化プロセスを制御する。Gタンパク質共役型受容体であるニューロテンシン受容体NTSR1にニューロテンシンが結合した複合体の構造が報告された (Nature)
October 10, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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ニューロテンシンは、女性の糖尿病、心臓発作、乳癌の発症リスクを増加する
ニューロテンシン前駆体の血漿濃度は糖尿病、心血管疾患、乳癌の発症と有意に相関することが見出された (JAMA)
October 10, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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細胞外マトリックスタンパク質のfibulin-3が中皮腫の血中バイオマーカーであることが報告された (NEJM)
October 10, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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シンドラー/神崎病はα-N-アセチルガラクトサミニダーゼ (α-NAGAL)の酵素機能異常によって引き起こされる先天性代謝異常疾患である。構造解析の力を借りて、イミノ糖DGJNAcが欠陥のあるα-NAGALを安定化するシャペロンとして機能することが報告された (PNAS)
October 9, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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鉄硫黄クラスターを持つタンパク質IspHは 病原菌のテルペン代謝系の還元酵素で、抗菌剤開発のターゲットである。構造解析の力を借りて、IspHは還元酵素としての機能に加え、アセチレンをアルデヒドやケトンへと水和する活性も有することが見出された (Nature Commun.)
October 9, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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NMRを用いて、2種類のHIVウイルスRNAとリボソームの品質管理に関わるRNAのトランジェンとな構造変化が観察された (Nature)
October 7, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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NMDA受容体拮抗薬であるケタミンは、神経伝達物質グルタメートの放出を促しシナプス成長を刺激することにより症状を緩和することが報告された (Science)
October 4, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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T2R38味覚受容体の多型性が上気道感染のしやすさを決めていることが見出された (J. Clin. Invest)
October 8, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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植物の葉に含まれる強心配糖体カルデノリドの毒性に対し、昆虫はイオン輸送タンパク質ATPαに変異をもたらし、摂取したカルデノリドと結合しないように進化してきたことが報告された (Science)
October 8, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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コブラ科ブラックマンバから抽出されたペプチドが皮膚や中枢神経の酸感受性イオンチャネル(ASICs) をブロックすることにより痛みを和らげることが見出された (Nature)
October 5, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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ブロッコリーに含まれるスルフォランなどのイソチオシアナートが、細菌の転写活性因子LasR拮抗剤として機能し、クオラムセンシングと呼ばれる細菌間情報伝達を妨げることが見出された (MedChemComm)
October 8, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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詳細な構造解析から、タンパク質とリン酸塩の水素結合と較べヒ素酸塩のそれはひずんでいることが示され、構造生物学からもarsenic-based life説が否定された(Nature)
October 3, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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中皮腫を早期に診断可能とする13種類の血中タンパク質マーカーからなるパネルが報告された (PLoS ONE)
October 3, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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卵巣がん治療薬:タンパク質ジスルフィド異性化酵素の不可逆阻害剤
卵巣癌細胞で高発現するタンパク質ジスルフィド異性化酵素 (PDI)の活性サイトのシステインと共有結合を生成する小分子不可逆阻害剤PACMA31 が見出された (PNAS)
October 3, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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癌細胞は、健常細胞よりもずっと多くのメチオニンを消費する。シスタチオニンγリアーゼを改変して得られたメチオニン分解酵素の抗腫瘍能が報告された (ACS Chem. Biol.)
October 1, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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ミトコンドリア機能の低下した細胞が周辺の良性腫瘍をがん化する仕組み
ショウジョウバエを用い、ミトコンドリア機能を低下させると、炎症性サイトカインUpd (IL-6ホモログ) と細胞増殖因子Wg (Wntホモログ) が分泌され、これらによってその周辺の良性腫瘍ががん化する仕組みが明らかにされた (Nature)
October 1, 2012,JST・神戸大学共同プレスリリース,
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ハエの栄養感知タンパク質Upd2 は、ヒトの食欲や代謝の制御に関与するホルモンであるレプチンの"機能的ホモログ" であることが報告された (Cell)
September 27, 2012,Science Now,© 2012 AAAS/Science
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エイズウイルス(HIV)に対する防御タンパク質APOBEC3Cの構造
HIV は自身が作り出すタンパク質VifによってAPOBEC3 を分解し、防御システムから逃れる。Vif が相互作用するAPOBEC3C上のポケット構造(治療標的)が見出された(Nat. Struct. Mol. Biol.)
September 25, 2012,名古屋医療センター・名古屋大学共同プレスリリース,
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中性子線構造解析:酵素‐薬剤複合体の水素や水素結合を可視化する
中性子線結晶法を用いて、ヒト炭酸脱水酵素に阻害剤で緑内障治療薬アセタゾラミドが結合した複合体の構造が解かれた。X線結晶法では観察が難しい水素、重水素、水素結合、荷電状態が可視化された (J. Am. Chem Soc.)
September 24, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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一連のプラセボ対照臨床試験から、低用量のアスピリンの定期的服用がいくつかのがんの罹患リスクを低減すると報告されている (Lancet & Lancet Oncology)
September 21, 2012,Science News,© 2012 AAAS/Science
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がんが引き起こす酵素の変異の研究から、セレンディピティな発見が生まれた;安価で環境に優しい一連の酵素反応によるナイロン合成でミッシングリンクとされていた酵素が得られた (Nature Chemical Biology)
September 23, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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先天性代謝異常疾患であるライソゾーム症治療用に向けて、免疫原性リスクとなる植物特異的な糖分子の修飾をコントロールしながら、トウモロコシ細胞でα-L-イズロニダーゼ が産生された (Nature Commun.)
September 18, 2012,Nature News,© 2012 NPG
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創薬重要ターゲットGPCRの大部分の活性化を検出するアッセイ法
GPCR (Gタンパク質共役受容体) 発現細胞をリガンドで刺激し、ついで細胞表面からのタンパク質の放出に見られる反応を測定する汎用的な「切断アッセイ」が報告された。さらに、これまでにリガンドが知られていなかったオーファン受容体3個に内因性のリガンドが見出された (Nature Methods)
September 13, 2012,東北大・東大・愛媛大・JSTプレスリリース,
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非ホジキン(B細胞)リンパ腫の、ユビキチン化を介した発症メカニズム
脱ユビキチン化酵素A20が直鎖状ユビキチンに結合することでNF-κB経路を制御し、非ホジキンリンパ腫の発症機構に関与することが報告された (EMBO J.)
September 14, 2012,東大プレスリリース,
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マールブルグウイルスの二本鎖RNA を取り囲み、免疫系からマスクするタンパク質VP35の構造が報告された (PLoS Pathogens)
September 13, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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タンパク質の化学合成、鏡像ファージディスプレイ、ラセミ構造解析を駆使して、血管内皮成長因子VEGF-AのD型タンパク質拮抗薬が見出された (PNAS)
September 17, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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コレステロール排出輸送体ABCA1はミトコンドリアのコレステロールを低レベルに保つことにより抗癌活性を示すことが報告された (Cell Reports)
September 13, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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新たに開発された薬剤スクリーニング手法を用いて、病原体に感染したときだけ植物の免疫力を高め、耐病性を向上させる化合物プラントアクティベーター5種が見出され、その作用メカニズムが解明された (Plant Cell)
September 10, 2012,理研・岡山大プレスリリース,
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乾燥ストレス条件下で植物の生長を制御する転写因子OsPIL1の同定
OsPIL1を過剰発現させたイネの背丈が通常生育条件下では約2倍増加し、一方乾燥ストレスを受けた植物は、OsPIL1の働きを抑え、その結果として生長が抑えられているという分子機構が明らかにされた (PNAS)
September 11, 2012,東大プレスリリース,
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酵母の膜タンパク質 (MP) の相互作用パートナーがタンデム質量分析法で解析され、1,110の新規報告を含む総計1,726 のMP - タンパク質相互作用が見出された (Nature)
September 10, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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凝集しやすいタンパク質にintrinsically disordered proteinのタグを付けてその溶解性を向上させる手法が報告された (Biochemistry)
September 6, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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代謝酵素の変異のためロイシン、バリンなどの分枝鎖アミノ酸が欠乏する型の自閉症が同定された (Science)
September 6, 2012,Nature News,© 2012 NPG
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米国NIH傘下の国立医学図書館 (NLM) の予算カットのため、BMRB (Biological Magnetic Resonance Data Bank) やCASP (Critical Assessment of Techniques for Protein Structure Prediction) を含む5つのデータベースやツールが存続の危機にある
September 5, 2012,Nature News,© 2012 NPG
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ENCODE (Encyclopedia of DNA Elements) プロジェクトの結果が一斉に発表された;ヒトゲノムの約80%はジャンクどころか活性で、多くのRNAは、タンパク質合成のための仲介メッセンジャー分子ではなく、最終産物であることが報告された (Nature, Science, Genome Research and Genome Biology)
September 5, 2012,Science Now,© 2012 AAAS/Science
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遺伝的素因あるいはアミロイド斑のレベルに基づき将来の発症確立が高いと診断された患者を対象に、抗アミロイド薬が早期症状の発症を防げるかあるいは認知機能低下を抑止できるかを調べる3件の臨床試験が来年スタートする
September 4, 2012,Nature News,© 2012 NPG
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リンパ管新生は腫瘍原発巣からのリンパ液がセンチネルリンパ節に入り込むプロセスにも必須である。化合物スクリーニングからスタチンはリンパ管新生阻害剤であることが見出された (PNAS)
August 31, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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血漿タンパク質ハプトグロビンは、溶血時の遊離ヘモグロビンと特異的に結合し代謝に導き、溶血に伴う腎障害を抑制する。そのハプトグロビン‐ヘモグロビン複合体の構造が明らかにされた (Nature)
August 31, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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結核菌のβラクタマーゼの選択的基質が切断されて生じる蛍光プローブを用いて、LEDを用いた簡便なライトボックスと携帯カメラで唾液サンプルから結核菌を検出できることが示された (Nat. Chem.)
September 2, 2012,Nature News,© 2012 NPG
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大腸菌の代謝ネットワークの解析から、特異的な基質の決まった反応を触媒するスペシャリスト酵素は細胞増殖に不可欠であるのに対し、多くの基質に働くゼネラリスト酵素の細胞増殖への関与は弱いことが報告された (Science)
August 30, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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細胞外から細胞内へ、および細胞内から液胞内へアルミニウムを運ぶ2 種類の輸送 体が見出された。この仕組みの利用により、青い花の育種に可能性が広がる (PLoS One)
August 30, 2012,名大プレスリリース,
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Nitrosopumilus maritimus と呼ばれる海洋微生物がメチルホスホネート生合成機構を有しており、これを別の微生物がメタンへと代謝することが明らかにされた (Science)
August 30, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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土壌に棲む微生物が、ヒト病原体と同じ薬剤耐性遺伝子を持っていることが報告された (Science)
August 30, 2012,Science Now,© 2012 AAAS/Science
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自然な状態にある膜タンパク質の細胞表面での分布やリガンドとの結合状態を調べるためにラベルを必要としない表面プラズモン顕微鏡が考案された (Nature Chemistry)
August 27, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDail
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HIV-1の誤りの多い複製機構と安定的に導入遺伝子をヒト細胞に組み込む力を活用して、癌治療に使われるヌクレオシド誘導体薬剤を活性化するデオキシシチジンキナーゼ (dCK) の80種の変異タンパク質ライブラリーの作製とスクリーニング結果が報告された (PLoS Genetics)
August 28, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDail
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癌細胞は正常細胞よりもグルコースを大量に消費して、増殖に用いる。癌細胞でグルコースをエネルギー産生ではなく同化経路で用いているピルビン酸キナーゼ (PKM2) を活性化することにより腫瘍形成を抑制する化合物が見出された (Nat. Chem. Biol.)
August 26, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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天然物エポキソミシンの抗腫瘍活性発見、その全合成、ターゲットタンパク質プロテアソームの同定、選択的結合の構造解析、誘導体合成から臨床試験を経て本年7月のFDA認可までの歩み
August 27, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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グラム陰性桿菌ブルセラ菌が病原因子を宿主に送り込むIV 型分泌装置のタンパク質VirB8をターゲットとして、ハイスル-プットスクリーニングからヒット阻害剤が、X 線構造解析から阻害剤の結合サイトが見出された (Chemistry & Biology)
August 20, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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HIV やインフルエンザウイルスのワクチンの効果を増強する化合物
高分子化合物ポリエチレンイミンがHIV 、インフルエンザ、ヘルペスウイルスのワクチンの強力なアジュバントであることが報告された (Nature Biotechnology)
August 26, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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自然免疫細胞膜受容体ファミリーToll様受容体をターゲットにする小分子
自己免疫疾患や癌に関わるToll様受容体TLR1とTLR2の界面に結合する小分子プローブが開発された
August 22, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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NIH臨床センターで抗生物質耐性の肺炎桿菌の全ゲノム解析から、予想外の感染経路と想定以上の潜伏期間が明らかにされた。この結果は病院での院内感染への対処法に変革をもたらすであろう (Sci. Transl. Med.)
August 22, 2012,New York Times,© 2012 The New York Times
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酵母で細胞壁の維持を担う遺伝子/タンパク質群が、脊椎動物では血管形成に用いられていることを活用し、酵母のパスウェイをターゲットにする化合物の探索から、認可殺菌剤チアベンダゾールが血管新生阻害剤であることが見出された (PLoS Biology)
August 21, 2012,New York Times,© 2012 The New York Times
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BRD4タンパク質をターゲットに抗癌剤として開発されてきたJQ1化合物が、同じくブロモドメインを有し、精巣に特異的に発現するBRDT (Bromodomain testis-specific protein) の阻害剤であることが構造解析からも示された (Cell)
August 16, 2012,Science Now,© 2012 AAAS/Science
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有機合成:短縮された合成経路により、安価な薬剤や新規の類縁体の開発が期待される (Nature)
August 16, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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関節リューマチ治療薬としてFDA が審査中の薬剤が瘍性大腸炎にも有効との臨床試験結果が報告された (NEJM)
August 15, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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炎症性腸疾患のマウスの腸内菌叢は、DNAを損傷するバクテリアが優勢であることが見出された (Science)
August 16, 2012,Nature News,© 2012 NPG
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マラリア原虫に感染した赤血球が単球由来マクロファージでのHIV-1の複製に与える効果を調べる手法がビデオ論文として報告された (J. Visualized Experiments)
August 15, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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人類は9,000年にわたり酵母の恩恵を受けてきたが、酵母が冬をどうやって過ごすのか知られていなかった。スズメバチやアシナガバチの腸内が酵母の棲家であることが見出された (PNAS)
August 6, 2012,New York Times,© 2012 The New York Times
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酸化された脂質によって活性化されアミロイドベータの増加をもたらすGPCRであるトロンボキサンA2受容体をブロックする化合物が開発された (ACS Chem. Neurosci.)
August 13, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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青ジソに含まれるカルコン系化合物DDCが、生体内抗酸化システムNrf2 - Keap1系を活性化し、抗酸化タンパク質を増加させることが見出された (Free Radical Biology & Medicine)
August 6, 2012,京都大学プレスリリース,
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構造情報に基づくドラッグデザイン:インフルエンザウィルスのポリメラーゼを狙い打つ
X線構造解析を活用して、ポリメラーゼのエンドヌクレアーゼ活性を阻害する化合物が開発された (PLoS Pathogens)
August 2, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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ペプチドエンジニアリング:院内感染の主因菌MRSAに有効なペプチドを探し出す
抗菌ペプチドデータベースから有望な特性の組み合わせを持つペプチドを生成するフィルター手法が報告された (J. Am. Chem. Soc.)
August 6, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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人間や家畜にとっては有害な、植物の防御化合物グルコシノレートの種子への長距離移行を担う2種類のトランスポータータンパク質が同定された (Nature)
August 5, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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時間分解電子線トモグラフィーを用いて、細胞が栄養分などの分子を貪食する様子を描写するビデオが作成された (Cell)
August 3, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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脳、皮膚そして腸の腫瘍で癌幹細胞が腫瘍増殖の源であることが報告された (two papers in Nature, one in Science)
August 1, 2012,Science Now,© 2012 AAAS/Science
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薬剤とターゲットタンパク質の相互作用を予測するため、11の因子を考慮したプロテオケモメトリックな計算手法が開発され、3671のFDA認可薬に適用した結果が報告された (J. Med. Chem)
August 1, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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AIDSの治癒を目指して、免疫系を逃れて潜伏するウィルスを除去する試みが取り組まれている
July 27, 2012,Nature News,© 2012 NPG
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開発された光スイッチ分子AAQのトランス体はカルシウムチャネルをブロックするが、シス体に光異性化するとブロックが解除され網膜ニューロンが発火し、視覚入力が脳に送られる (Neuron)
July 30, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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アミノ酸の栄養不良と腸内細菌叢の状態や腸炎とを結び付ける酵素
ACE2 (アンギオテンシン変換酵素2) が、食物由来のアミノ酸の恒常性や自然免疫、腸内細菌叢、腸炎に対する移植可能な感受性を調節する重要な因子であることが明らかにされた (Nature)
July 24, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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αへリックスからβバレルへのドメインスイッチが、RfaH を転写因子から翻訳因子に変換することが見出された (Cell)
July 19, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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ピロリ菌の体内で産生された後、菌が保有するIV型分泌機構を介して胃の細胞内に注入される発がん性エフェクターCagAの構造が報告された (Cell Host & Microbe)
July 19, 2012,東大プレスリリース,
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狙い澄ましたタンパク質分解:ターゲットタンパク質を阻害するのではなく分解に導く
疎水性合成小分子で目印を付けられたタンパク質が細胞の品質管理機構により分解されることが見出された。創薬に向けたターゲットタンパク質の候補が広がる可能性がある (Chem. Biol.)
July 18, 2012,Nature News & Views,© 2012 NPG
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GFP (緑色蛍光タンパク質) の折り畳み過程のシミュレーション結果が、以前の熱力学・反応速度論の実験データと良く一致することが報告された (PNAS)
July 16, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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再構築したA2aアデノシン受容体の1.8 オングストローム高解像度構造から、水分子、ナトリウムイオン、脂質/コレステロールがGPCRの安定化や機能に果たす役割に関する知見が得られた (Science)
July 12, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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概日リズム調節タンパク質クリプトクロム (CRY) は肝臓でのグルコース産生も制御する。CRY に選択的に結合し、そのユビキチン依存性タンパク質分解を防ぎ、生物時計を延長する効果をもたらす小分子が見出された (Science)
July 12, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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アミロイド前駆体タンパク質遺伝子の稀な変異が、人々をアルツハイマー病から守るという発見は、アルツハイマー病のベータアミロイド仮説を強固に裏付けるものである (Nature)
July 11, 2012,New York Times,© 2012 The New York Times
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症状が表れるよりずっと前から、アミロイドベータ42やタウタンパク質の増減が始まることが明らかにされた (NEJM)
July 11, 2012,MIT Technology Review,© 2012 Technology Review
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現在用いられている全ての抗うつ薬は2型糖尿病罹患リスクを高める。抗糖尿病性のペプチドホルモンであるアディポネクチンで見出された効果は、新たな抗うつ薬開発の手がかりとなる (PNAS)
July 9, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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セリ科植物タプシアから抽出されたカルシウムポンプ阻害剤タプシガルジンを癌細胞表面の抗原に選択的に結合するペプチドと組み合わせたプロドラッグが開発された (Sci. Transl. Med.)
July 9, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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Washington Universityのチームが、急性リンパ性白血病に罹った同僚の白血病研究者の全ゲノムならびにmRNA解析からFLT3遺伝子の過剰発現を突き止め、腎臓癌に適用されるFLT3受容体遮断薬sunitinib (Sutent) で、白血病の小康を得ている
July 7, 2012,New York Times,© 2012 The New York Times
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Ppm1d (Wip1) 遺伝子を欠損するマウスは、血管拡張性失調症変異(ATM) 遺伝子の活性化によるmTor シグナリングの減弱化のためオートファジーが増強され、体重増と動脈硬化を起こしにくいことが見出された (Cell Metabolism)
July 5, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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研究開発の現場で3Dプリンターが活躍し始めている
July 4, 2012,Nature News Feature,© 2012 NPG
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癌を助けるタンパク質:何故分子標的療法は急速にその効力を失うのか
癌細胞は、その周囲の組織からリクルートした肝細胞増殖因子のようなタンパク質の助けを借りて分子標的薬の攻撃に耐える (2 papers in Nature)
July 4, 2012,Nature News,© 2012 NPG
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免疫系のタンパク質NLRP6を持たないマウスはバクテリア感染に強いことが見出された。NLRP6を中和する化合物が感染症治療のオプションになるかもしれない (Nature)
July 4, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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エーザイの米国子会社が開発したBelviq (一般名lorcaserin) は、脳内セロトニン2C受容体を刺激することにより食物渇望を抑制し、体重を減少させる (Obesity)
July 2, 2012,Nature News,© 2012 NPG
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31種の真菌類の比較ゲノム解析から、白色腐朽菌が、セルロースマトリックス中で不均一に架橋するフェノール樹脂で分解の困難なリグニンを劣化する能力を獲得する進化の過程が明らかにされた (Science)
July 2, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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野生のトマトのSlGLK2遺伝子はむらのある着色をするが、均一の着色をするよう選ばれた市販トマトは、この遺伝子の変異のためコードされるタンパク質は不活性で、甘さやリコペンなどの直物栄養素に欠ける (Science)
June 29, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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タンパク質トロンボモジュリンは、抗凝固作用、抗炎症作用をもつ活性型プロテインCの生成を助ける。遺伝子組み換えによるトロンボモジュリンや活性型プロテインCを静脈内注入すると、全身に放射線照射したマウスの死亡を防ぐことが見出された (Nat. Med.)
June 25, 2012,Nature Research Journal Highlights,© 2012 NPG
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ラットを用いて、neuritin 遺伝子をノックダウンするとうつ症状を示し、そのタンパク質レベルを増強すると症状が回復することが示された (PNAS)
June 25, 2012,Science Now,© 2012 AAAS/Science
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フェニルアラニンが有毒な原線維に会合することが見出され、フェニルケトン尿症がアミロイド病の一種であることが示唆された (Nat. Chem. Biol.)
June 25, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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自然免疫:防御タンパク質がクモの巣状“ナノネット”を織り微生物の侵入を防ぐ
腸内抗菌性ペプチドのαデフェンシン 6 (HD6) は微生物の表面と結合し、それを取り巻いて絡まりナノネットを形成し、バクテリアが腸管細胞に接触し侵入することを防ぐ (Science)
June 21, 2012,Science Dail,© 2012 ScienceDaily
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病原性プリオンはDNAと結合し、有毒な凝集体を形成する(Biochemistry)
June 21, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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Nox2 (NADPH Oxidase 2) の触媒活性サイトではなく、その集合体形成を妨げる化合物スクリーニングから、急性脳卒中や難聴に対して治験中の薬剤エブセレンが同定された(Chem. Biol.)
June 21, 2012,Science Dail,© 2012 ScienceDaily
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DNA配列の進化的履歴から抽出されたアミノ酸の共変動情報から膜貫通タンパク質の折り畳みが予測された (Cell)
June 22, 2012,Cell, © 2012 Elsevier Inc.
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筋ジストロフィー: MG53 タンパク質が組織損傷の修復に有望
大腸菌を用いた発酵により精製された組換えタンパク質MG53 (TRIM72)が、筋細胞と非筋細胞の両方において損傷を修復すると報告された (Sci. Transl. Med.)
June 20, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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リンゴの皮に大量に含まれるウルソール酸が、筋肉と褐色脂肪の2種類のカロリーを消費する組織を増やすことによって肥満を防ぐことが見出された (PLoS One)
June 20, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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抗がん剤:抗体薬物複合体 (Antibody-Drug Conjugates)
健常細胞は避け、特定のがん細胞を標的とする抗体と、強力な抗がん剤をリンカーで組み合わせたAntibody-Drug Conjugate (ADC) の成功例を受けて、多くの製薬メーカーがADCの開発に力を入れている
June 18, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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p53やヌクレオフォスミンなどの腫瘍抑制因子の輸送に関わる核外輸送受容体CRM1 (Exportin-1) の阻害剤の抗白血病性活性が報告された (Blood)
June 19, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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構造解析から、STING (stimulator of interferon genes) はバクテリアが分泌するc-di-GMP (サイクリックジグアニル酸)と直接結合してインターフェロン応答を誘発し、免疫細胞を活性化することが見出された (Mol. Cell)
June 18, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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緊縮政策で公共部門のサラリーが10%まで減少されることに懸念が広がっている
June 18, 2012,Nature News,© 2012 NPG
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物議をかもすflavor pairing 理論により、キャビアとホワイトチョコレート(アミン)、レバーとジャスミン(インドール)など、共通の香味分子を組み合わせるレシピが提案されている
June 18, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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タンパク質分解酵素のカスパーゼファミリーは互いに極めて類似した活性サイトを持つため、その阻害剤は副作用の問題に付きまとわれてきた。新しい着眼からカスパーゼ6を選択的に阻害するペプチドが見出された (Nat. Chem. Biol.)
June 18, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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植物で病原体の攻撃に反応して作られ、二次感染に対する全身的な獲得抵抗性を誘導するサリチル酸の受容体が同定された (Nature)
June 14, 2012,Nature ハイライト,© 2012 NPG
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植物ホルモンサリチル酸 (2): サリチル酸ディフェンスをすり抜ける病原菌
植物病原菌であるシリンゲ菌が分泌する毒素コロナチンは、植物ホルモンジャスモン酸を模倣してそのパスウェイを活性化し、サリチル酸が媒介する防御機構を抑制する (Cell Host&Microbe)
June 13, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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ピロリ菌の酸感受性受容体TlpB の構造解析から、受容体はウレアと高い親和力で結合して外部環境を感知していることが明らかにされた (Structure)
June 14, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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ウイルス核酸を包むヌクレオカプシドタンパク質をターゲットとするHIV阻害剤
薬剤抵抗性型に変異の起こりにくいタンパク質ヌクレオカプシドを阻害する2種の化合物が見出された (J. Med. Chem.)
June 13, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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ゲノム配列情報を活用することにより、折り畳まれたタンパク質の構造予測の精度を向上させる手法が報告された (PNAS)
June 12, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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米国NIHの見捨てられた薬の再開発プログラムに新たに製薬メーカー5社が参加
製薬メーカーで“お蔵入り”した58の既存薬の新たな薬効を探索するプログラムが始まる
June 12, 2012,Science Insider,© 2012 AAAS/Science
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副作用が既に知られている分子との化学構造の類似性に基づくコンピューターサーチから、656の上市薬につき、73の意図しない“副作用”ターゲットタンパク質が予測され、そのうちの約半分が確証された (Nature)
June 11, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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見つかった実験ノートが明らかにするストレプトマイシンの発見の真相
ノーベル賞に輝いた画期的抗生物質の発見を記録した埃まみれの実験ノートが、ラトガー大学の図書館で見つかった
June 11, 2012,New York Times,© 2012 The New York Times
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電荷、スピン、光、エネルギー相互作用などの極短時間プロセス解析に応用可能な実験室スケールのアト秒パルス線源が開発された (Science)
June 7, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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タンパク質が折り畳む間の過渡状態をトリプトファン残基の蛍光測定から解析することが報告された (Nat. Struct. Mol. Biol.)
June 10, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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摂食調節視床下部アグーチ関連ペプチドを産生するニューロンにおいて、Gタンパク質共役型プリン受容体がFoxO1の食欲促進効果を媒介することが見出された (Cell)
June 7, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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X線自由電子レーザーによる“壊れる前に測る”アプローチを用いて、光化学系IIマイクロ結晶の不安定なMn4CaO5 クラスターの室温測定が報告された (PNAS)
June 6, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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哺乳類の腸には豊富な真菌叢が棲みつき、自然免疫受容体Dectin-1 (CLEC7A) を介して免疫系と相互作用し、Dectin-1の変異は潰瘍性大腸炎と強く関連していることが見出された (Science)
June 6, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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インターロイキン22を産生するリンパ球細胞 (ILCs) が、腸内に共生するバクテリアを選択的に腸内に封じ込め、全身性炎症を防いでいることが報告された (Science)
June 6, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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ヒトには無害なM13ファージを用いて、機械力を電気に変換する圧電デバイスが試作された (Nature Nanotechnology)
June 6, 2012,New York Times,© 2012 The New York Times
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ハロゲン含有フラグメントライブラリーのスクリーニングと引き続く構造情報に基づく分子設計から、腫瘍細胞で変異した腫瘍抑制因子p53を再活性化する置換ヨードフェノール類が見出された (J. Amer. Chem.Soc.)
June 5, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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ヒトの祖先が進化のボトルネックを切り抜けた要因は、大腸菌K1などの病原菌がターゲットとする2種類のシアル酸認識シグナル伝達受容体 (Siglecs-13 and 17)を欠落や不活化したことにあるのかもしれない (PNAS)
June 4, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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低温電子顕微鏡を用いて、未成熟なレトロウイルスのGagポリタンパク質の構造が明らかにされた (Nature)
June 4, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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トランスサイレチン(TTR) とその30以上の小分子安定化剤との複合体構造解析の力を借りて、TTRアミロイド線維形成を阻害する薬剤tafamidisが見出された (PNAS)
May 31, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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75万の小分子ライブラリーのインシリコスクリーニングから、Bcl関連デスタンパク質BAX (BCL2L4)を活性化し、アポトーシスを促進する化合物が見出された (Nat. Chem. Biol.)
May 31, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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ステビアの甘味成分のステビオールグリコシド類は2種類の苦味受容体を活性化し、甘味の後に苦味を誘発する (J. Agri. Food Chem.)
May 31, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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Wntタンパク質がFrizzled受容体と結合した予期しない構造から、Wntタンパク質の機能とその受容体との相互作用に関する知見が得られた (Science)
May 31, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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自由電子レーザー (XFEL) を光源に用いたSFX 法 (Serial Femtosecond Crystallography) により、モデルタンパク質リゾチームのマイクロ結晶の高解像度立体構造が報告された (Science)
May 31, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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アルツハイマー病に関与するC99タンパク質の構造とそのコレステロールとの結合の知見は新しい治療薬開発に繋がるかもしれない (Science)
May 31, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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無細胞発現系を用いて系統的に同位体ラベルされたアミノ酸を導入し、溶液NMR分光法によりヒト膜タンパク質の構造を迅速に決定する戦略が報告された;1年半で6種の膜タンパク質の主鎖構造が解かれた (Nature Methods)
May 30, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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寒冷地に生息しているイシカリガマノホタケが生産する不凍タンパク質は、氷の成長を強く抑制でき、強力な不凍作用を示すことが明らかにされた (PNAS)
May 29, 2012, 産総研プレスリリース,
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ミツバチが産生する抗菌性ペプチドを、天然及び非天然アミノ酸を用いて改変し、薬剤抵抗性バクテリアに効能のあるペプチドが合成された (ACS Chem. Biol.)
May 29, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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栄養素の硝酸の輸送体タンパク質NRT (Nitrate transporter) 1.2が植物ホルモンアブシシン酸 (ABA) の輸送体としても働くことが報告された (PNAS)
May 29, 2012,理研プレスリリース,
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通常捨てられる回折データを有効利用して結晶構造を改善する (2 papers in Science)
May 28, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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日長が長くなると慨日リズムで制御された光受容体タンパク質FKF1 が発現し、FT (FLOWERING LOCUS T) 遺伝子の転写を促進し、開花を促すことが報告された (Science)
May 26, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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代謝物のプロファイリングから、急速な癌細胞の増殖におけるグリシンの存在が浮かび上がった;急速に分裂を繰り返す細胞でグリシンが猛烈に消費されている (Science)
May 24, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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認可薬のスクリーニングから、統合失調症の治療に使われるドーパミン受容体遮断薬チオリダジンが急性骨髄性白血病幹細胞の成長を阻害することが見出された (Cell)
May 24, 2012,Science Now,© 2012 AAAS/Science
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DNA鎖が、タンパク質に翻訳されるメッセンジャーRNA か、タンパク質合成に関わるトランスファーRNA かを、その水分子との親和性から予測する手法が提案された (J. Am. Chem. Soc.)
May 24, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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ビタミンD摂取が不十分な時には、副甲状腺ホルモン(PTH) と PTH関連ペプチド(PTHrP) が分泌性抗菌ペプチド産生を活性化し、皮膚感染に応答することが見出された (Sci. Transl. Med.)
May 23, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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脂肪吸収に応じて小腸で分泌されるアポリポタンパク質A-IV (apoA-IV)が、インシュリン分泌を亢進することによりグルコース恒常性を改善することが報告された (PNAS)
May 21, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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固相NMR分光法、電子顕微鏡、コンピューターモデリングを組み合わせて、サルモネラ菌が病原因子を宿主細胞に分泌するタイプIII分泌装置の構造が解明された (Nature)
May 21, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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ひまし油の構成成分のうち約90%を占めるリシノ‐ル酸は、選択的にプロスタグランジンEP3 受容体を活性化し、ひまし油の薬理効果を媒介することが見出された (PNAS)
May 21, 2012,Science Now,© 2012 AAAS/Science
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脳梗塞後のマウスの組織中に抗酸化酵素ペルオキシレドキシンが多量に産生されて、細胞外へ放出され、脳内に浸潤した炎症細胞を活性化することにより炎症を引き起こして、症状の悪化につながることが報告された (Nature Medicine)
May 21, 2012,JST‐慶応大学共同プレスリリース,
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FDA 認可の抗リウマチ薬オーラノフィンがアメーバ赤痢に効力があることが見出された。寄生虫のチオレドキシン還元酵素を阻害し、その酸化ストレス耐性を弱める (Nature Medicine)
May 20, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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一般的な病気、稀な変異:多くの稀な変異が疾病の原因なのかもしれない
二つの大規模な(一つは1万5千のタンパク質コード遺伝子の、もう一つは202のドラッグターゲットタンパク質コード遺伝子の)シーケンス解析から、多くの稀で新規の変異が見出された。コードするタンパク質の機能と構造に影響を及ぼすものが多く、“一般的な病気、共通の変異”仮説が揺らいでいる (2 papers in Science)
May 17, 2012,New York Times,© 2012 The New York Times
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トータルで同じカロリーの高脂肪食をマウスに与える際、時間制限した給餌は、のべつ幕なしに摂食した場合より、代謝性疾患を発症しにくいことが報告された (Cell Metabolism)
May 17, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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オメガ3脂肪酸は、炎症性反応を引き起こすプロスタグランジンを生成する酵素 (COX) を阻害することが見出された (PNAS)
May 17, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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ペルオキシレドキシン酵素の酸化‐還元サイクルが、生命共通の概日リズムの普遍的なマーカーの一つではないかとの提案がなされた (Nature)
May 16, 2012,Nature News,© 2012 NPG
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アポリポタンパク質 (ApoE4)の高リスクバリアントは炎症反応を引き起こし、血液脳関門の働きを弱めて脳血管系を傷つけることが見出された (Nature)
May 16, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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ボリビアで治験が始まる防虫ペンキは、マイクロキャプセルにベクターである昆虫の成長調節物質を包含し、サシガメの成長を妨げる
May 11, 2012,Science News Focus,© 2012 AAAS/Science
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温度の上昇により反応が速く進もうとすると、それに必要な酵素が不足して反応を抑え、結果的に時計の刻みが一定に保たれるという仕組みを発見 (PNAS)
May 8, 2012,東大プレスリリース,
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プロドラッグ設計:光照射によって活性化したルテニウムン錯体は、広く処方されている抗がん剤シスプラチンよりずっと効能が高いことが報告された (J. Am. Chem. Soc.)
May 9, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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Science Signaling 誌は5月にシグナリング伝達を担う分子と情報伝達を理解に向けた構造解析に関する論文と解説を順次掲載する (Science Signaling)
May 8, 2012,Science Signaling Editorial Guide,© 2012 AAAS/Science
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腫瘍増殖を障害するビスアミノキノリン系のオートファジー阻害剤の合成と評価が報告された (PNAS)
May 8, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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銅ヘム錯体を持つ金属酵素が設計され、酸素の水への還元触媒反応で高効率と1,000回以上のターンオーバーが報告された (2 papers in Angew. Chem. Int. Ed.)
May 7, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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カップ型のカリックスアレーンが結合したタンパク質複合体の構造が解析され、複数のサイトと結合するダイナミックな相互作用が明らかにされた (Nat. Chem.)
May 7, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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アルツハイマー病のペプチドがミスフォールドして神経細胞死を引き起こすには、ピログルタメート 修飾されたペプチドが必要であることが報告された (Nature)
May 7, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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田園で育つティーンは皮膚に抗炎症性細菌を持っている (PNAS)
May 7, 2012,Science Now,© 2012 AAAS/Science
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見捨てられた薬の再開発:NIHと製薬メーカーが見捨てられた薬を研究者に
製薬メーカーで“お蔵入り”した既存薬をアカデミアに開放し新たな薬効を探索するプログラムが始まる
May 3, 2012,Science Insider,© 2012 AAAS/Science
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黒胡椒のピリッとしたアルカロイド成分のピぺリンが、核内受容体PPARγの活性に拮抗することにより脂肪生成を阻害すると報告された (J. Agric. Food Chem.)
May 2, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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ソロモン諸島の人々に見られる金髪の決定因子はtyrosinase-related protein 1 (TYRP1) のアルギニン?システイン変異であることが見出された (Science)
May 3, 2012,Science Now,© 2012 AAAS/Science
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診断用イメージング剤を修飾してアミロイドβペプチドの毒性に対抗する
PET用画像診断薬として開発された蛍光性のフルオレン化合物の誘導体が、アミロイドβペプチドを不安定化してアミロイド形成を減少させることが見出された (PLoS ONE)
April 30, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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核酸やタンパク質と異なり、多糖類は合成用の鋳型を持たない。多糖ポリメラーゼが如何に忠実に単糖を繋ぐかを、二つのグル―プが基質アナログを用いて報告した (J. Am. Chem. Soc. & Org. Biomol. Chem.)
April 30, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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創薬スクリーニング:ラベルを付けずにスクリーニングを可能とするプローブ
ターゲットタンパク質に結合し、化合物に立ち退かされた時にのみ蛍光発光する低分子プローブが考案された (J. Am. Chem. Soc.)
April 27, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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オートファジーから逃れたミトコンドリアDNAが心臓の炎症を引き起こす
ストレス環境のためオートファジープロセスが機能せずに逃れたミトコンドリアDNA は、バクテリアからのDNA と認識され、免疫細胞でToll様受容体9 (TLR9) を活性化し、心臓細胞で炎症が引き起こされる (Nature)
April 26, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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正確な構造決定はRNA誘導サイレンシングプロセスの理解と創薬への応用に繋がるだろう (Science)
April 26, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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核と細胞質の間を輸送する新しい運搬体タンパク質“Hikeshi (火消し)”を発見
ストレスを受けると正常時と全く異なる核?細胞質間の輸送システムが働き、Hikeshiはストレス時にタンパク質分子シャペロンを核に輸送することが見出された (Cell)
April 27, 2012,理研プレスリリース,
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免疫抑制受容体タンパク質PD-1(programmed cell death-1)が免疫グロブリンA(IgA抗体)の質を維持し、腸内環境のバランスを制御すること、またIgA抗体の腸内細菌への結合力低下が、腸内環境のアンバランスを導くことが示された (Science)
April 27, 2012,理研プレスリリース,
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乳酸菌が産生するタンパク質分解酵素のlactocepinが 炎症性サイトカインを選択的に分解することが報告された (Cell Host & Microbe)
April 26, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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細胞の培養上清でのガウシアルシフェラーゼレポーターの分解に基づく簡便で高感度のmycosensor アッセイが提案された (Anal. Chem.)
April 26, 2012,Chemical & Engineering New,© 2012 ACS
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P6空間群に属する3へリックスコイルドコイルタンパク質結晶が設計され、実際のX線構造解析結果と照合された (PNAS)
April 25, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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体内で生合成される脂質(resolvins and protectins)が、白血球を刺激して組織損傷を和らげ、病原菌を一掃する抗炎症作用を示すことが報告された (Nature)
April 25, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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スルフォアミド類が、フケを引き起こす病原真菌のβ-炭酸脱水素酵素の阻害剤であることが見出された (J. Med. Chem.)
April 25, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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ヒト甘味受容体は多様な甘味物質群をどのように識別しているのか
甘味受容体 (T1R2-T1R3) のT1R2に甘味物質の認識に関わるアミノ酸残基を複数突き止め、化学的性質の異なる多種類の低分子甘味物質を受容していることが明らかにされた (PLoS One)
April 23, 2012,東大プレスリリース,
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アフリカ睡眠病を媒介するツェツェバエは哺乳類と同じミルク酵素を持っている
ツェツェバエのミルクには、哺乳に必須のスフィンゴミエリン分解酵素が含まれていることが見出された。この酵素を制御してツェツェバエ個体数を減らせるかもしれない (Biol. Reprod.)
April 23, 2012,New York Times,© 2012 The New York Times
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危機において、成長を制御するジベレリンと防御を制御するジャスモン酸の2種類の植物ホルモンが共同して問題に対処する (PNAS)
April 23, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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X線結晶学とNMRがスタープレイヤーである構造生物学で、マススペクトロメトリーが他の手法の苦手とするギャップ埋めるルーキーとして先発メンバーの地歩を獲得しつつある
April 23, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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グアニンの酸化が、多くの抗生物質に共通する細胞致死能力であることが報告された (Science)
April 23, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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ヒドロキシラジカルプロービング法を活用して、80 から230ヌクレオチドから成るRNAの分子動力学シミュレーションによる定量的講造精密化手法が報告された (Nature Methods)
April 15, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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セマフォリン3A (Sema3A) が、骨芽細胞から産生され、骨芽細胞自身と破骨細胞の両者に働きかけることにより、骨吸収(破壊)の抑制と骨形成の促進を同時にコントロールする作用を持つことが見出された (Nature)
April 19, 2012,JST‐東京医科歯科大共同プレスリリース,
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ペプチドを結合しひずみをかけたナノ粒子で疾病関連のタンパク質分解酵素を検知できることが示された (J. Am. Chem. Soc)
April 18, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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甘草などのマメ科植物に含まれる天然物のamorfrutin類は、核内受容体PPARγと結合して活性化することにより強力な抗糖尿病作用を示すことが見出された (PNAS)
April 17, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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小胞体膜タンパク質FTIP1 (FT-INTERACTING PROTEIN 1) が花成ホルモンフロリゲン(FTタンパク質) の輸送に必須の制御因子であることが報告された (PLoS Biol.)
April 17, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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シロイヌナズナが日陰に置かれると、光受容体フィトクロムBが転写因子PIF7 (phytochrome interacting factor 7) の蓄積を促し、オーキシン生合成系が活性化され、茎の成長が引き起こされることが報告された (Genes & Dev.)
April 16, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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小胞体でのオーキシンの蓄積を制御し、核でのオーキシンシグナル伝達を可能とするオーキシン輸送促進ファミリータンパク質群が同定された (Nature)
April 16, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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発表論文の撤回が急増し、抑えがきかなくなる状況に危惧の声が上がっている
April 16, 2012,New York Times,© 2012 The New York Times
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産学共同プロジェクトでエピジェネティクス研究用の化学プローブを探す
オープンアクセスの創薬研究を目指すStructural Genomics Consortiumでは、製薬メーカー研究者も加わり、エピジェネティクス研究用のtool compoundを開発し、シェアする試みが進んでいる
April 16, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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血液型A型の人がロタウイルス(乳児下痢症の原因)に罹りやすい
構造解析から、ロタウイルスのスパイクタンパク質VP4のVP8*ドメインはA型血液抗原と選択的に結合することが報告された (Nature)
April 15, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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漢方薬に用いられる植物から単離されたジテルペノイドのadenanthin が、白血病細胞の2種類のペルオキシレドキシンを阻害し、癌性血液細胞を良性細胞に分化誘導することが見出された (Nat. Chem. Biol.)
April 16, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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カスタムコンピューターAntonを用いた全原子分子動力学シミュレーションにより、電位依存性カルシウムイオンチャネルの閉じた状態と開いた状態の2状態が可視化された (Science)
April 12, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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東北大学発ベンチャーとGEヘルスケアが、タウタンパク画像診断薬の共同研究契約を締結
April 11, 2012,東北大プレスリリース,
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シンクロトロン光源からの高輝度集束赤外光で単一細胞を照らし、神経細胞への分化に伴うタンパク質リン酸化が測定された (Anal. Chem.)
April 11, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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時間分解X線構造解析法を用いて、水中のタンパク質ヘモグロビンのねじれ運動を100億分の1秒の時間精度で動画観測することに成功した (J. Amer. Chem. Soc.)
April 10, 2012,高エネ研‐東工大‐JST‐韓国科学技術院共同プレスリリース,
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造影剤Amyvidはアミロイド斑に結合し、PET診断薬として機能する
April 9, 2012,Science Insider,© 2012 AAAS/Science
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植物は、真菌感染や昆虫から身を守るため触覚を利用すること、ならびに触覚によって引き起こされる成長は植物ホルモンのジャスモン酸によって調節されていることが報告された (Current Biology)
April 9, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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世界最大の化学企業のBASFの本社は業界最大のワインセラーを有する、売上は全体の0.01%にすぎないが
April 9, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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RNA干渉スクリーニングから、転写因子Tbx1 が毛包幹細胞に毛髪の再生と成長を促す因子であることが見出された (Nature)
April 9, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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関節の間葉幹細胞を軟骨細胞に分化させ、変形性関節炎で破壊された軟骨を再生する化合物が見出された (Science)
April 9, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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ウイルスのRNAポリメラーゼの構造に基づき、3百万の化合物のインシリコスクリーニングから、その複合体形成を阻害する32の化合物が同定され、そのうちの1種は極めて有望であることが報告された (PNAS)
April 9, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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テルペン系臭気物質2‐メチルイソボルネオールを生合成するバクテリアの2種類の酵素の構造と触媒作用が解明された (2 papers in Biochemistry)
April 5, 2012,Chemical & Engineering News, © 2012 ACS
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抗がん剤ドセタキセルを内包し、前立腺特異的膜抗原を狙い撃ちするポリマーナノ粒子で有望な初期臨床試験データが得られた (Sci. Transl. Med.)
April 4, 2012,Science Now,© 2012 AAAS/Science
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尿酸排出輸送体タンパク質ABCG2の尿酸排泄機能の低下により、腎臓よりむしろ腸管からの尿酸排泄機能が低下することが、高尿酸血症の主要な原因の一つであることが報告された (Nature Communications)
April 4, 2012,東京薬科大学プレスリリース,
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狙い撃ちのドラッグデリバリーを目指して、光制御でタンパク質を生産する脂質小胞が試作された (Nano Lett.)
April 3, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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元プロ野球ピッチャーが次に目指すのはタンパク質の“ストライクゾーン”
‘Phosphorylation Regulates Assembly of the Caspase-6 Substrate-Binding Groove’ の筆頭著者は元マイナーリーグ選手 (Structure)
April 3, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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一卵性双生児の解析から、個人の全ゲノムシーケンシングによる疾病発症予測には限界があることが示された (Sci. Transl. Med.)
April 2, 2012,New York Times,© 2012 The New York Times
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慢性ストレスがグルココルチコイド受容体抵抗性を引き起こし、炎症反応をダウンレギュレートできなくなり、疾病発症に繋がるというモデルが提唱された (PNAS)
April 2, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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モルヒネは、オピオイド受容体ではなく、自然免疫受容体であるTLR4 (Toll様受容体4) をターゲットタンパク質として機能することが見出された (PNAS)
April 2, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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mTORC1(mechanistic target of rapamycin complex 1)阻害剤のラパマイシンは数種のモデル動物の寿命を延長する。ラパマイシンはもう一つのmTOR 複合体(mTORC2)も阻害し、糖耐性やインシュリン感受性を損なうことが報告された (Science)
March 29, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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慨日リズム形成に関わるCLOCKタンパク質の発現を調節する核内受容体を活性化する化合物が合成され、様々な代謝障害を改善することが示された (Nature)
March 29, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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NIHと装置メーカーFEI が、疾病関連の重要なタンパク質の構造解析加速を目指し、極低温電子顕微鏡を活用した構造生物学センターを開設した
March 26, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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腫瘍細胞に発現する“食べないで”シグナルである白血球表面抗原CD47をブロックする抗体が、免疫系を賦活化し様々な癌細胞を破壊すると報告された (PNAS)
March 26, 2012,Science Now,© 2012 AAAS/Science
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4種の重要なアポトーシス阻害タンパク質にしっかり結合するペプチドミメティックが、癌細胞でのアポトーシスパスウェイを復活させる抗がん剤として開発された (J. Med. Chem.)
March 26, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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感染に対する最初の防衛線であるinterferon-induced transmembrane protein 3 (IFITM3)がウイルスの肺への蔓延を抑えるが、このタンパク質に欠陥があるか欠損していると重篤化することが見出された (Nature)
March 25, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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Ray Stevens のチームがκ-オピオイド受容体の構造を、Brian Kobilkaのチームがμ-オピオイド受容体の構造を報告した (2 papers in Nature)
March 21, 2012,Nature News,© 2012 NPG
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総合科学会議の分析によれば、政府の政策が次世代研究リーダー育成を妨げている
March 20, 2012,Nature News,© 2012 NPG
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常磁性タグを用いた新しい固体NMR分光法が、タンパク質の3次元構造解析に適していると報告された (Nature Chemistry)
March 19, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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研究者個人の統合的オミクスプロファイリングから糖尿病の発症と治療を追跡
Stanford大学のMichael Snyderのグループが、 Snyder本人の個別化医療の経過を報告した。ゲノム解読をベースに、14か月に渡る遺伝子発現、メタボローム解析から2種類のウイルス感染とII型糖尿病の発症と治療を追跡した (Cell)
March 15, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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亜鉛イオンでタンパク質同士を連結し、シート状、チューブ状などの周期性タンパク質結晶アレイ集合体が形成されることが報告された (Nat. Chem.)
March 12, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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赤痢菌のIII分泌装置から宿主細胞に分泌される病原因子エフェクター(脱アミド化酵素)の機能と構造が解析された (Nature)
March 12, 2012,東大プレスリリース,
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交配により、古代品種に耐塩性を付与するナトリウム輸送体遺伝子HKT1を導入したデュラム小麦の圃場試験で耐塩性向上が確認された (Nat. Biotechnol.)
March 11, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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転写制御因子PRDM16 が、カロリーを蓄積する白色脂肪細胞からカロリーを消費する褐色脂肪細胞への転換を制御することが報告された (Cell Metabolism)
March 7, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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強度のエキササイズで筋肉細胞の代謝関連遺伝子のメチル化の度合いが変わることが示された (Cell Metabolism)
March 6, 2012,Nature News,© 2012 NPG
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PTENを過剰発現するマウスは、褐色脂肪細胞機能が活性化し、加齢に伴う代謝ダメージから守られることが見出された (Cell Metabolism)
March 6, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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タンパク質を結晶化せず構造解析することなどに挑戦
March 6, 2012,理研‐JASRI共同プレスリリース,
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インフルエンザウイルス粒子形成に関わる宿主因子F1F0-ATPaseの同定
宿主の細胞膜のATP合成酵素F1F0ATPaseのF1betaサブユニットがインフルエンザウイルス出芽に重要であることが示された (PNAS)
March 6, 2012,東大プレスリリース,
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サルファ剤のターゲット酵素であるジヒドロプテロイン酸合成酵素 (DHPS) の構造解析から、その作用機構と薬剤耐性機構が明らかにされた (Science)
March 2, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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構造解析が明らかにした稀な環形成酵素反応による抗生物質の産生
バクテリアの生合成酵素Lsd19の構造解析と量子化学計算から、ポリエーテル抗生剤ラサロシドの六員環形成の反応機構が明らかにされた (Nature)
March 5, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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二つの研究チームがエンテロウイルス71の構造解析結果を報告し、抗ウイルス薬設計に道を開いた (Science and Nat. Struct. Mol. Biol.)
March 2, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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タンパク質と様々なリガンドとの結合を計測する新しい手法として磁気浮揚法が提案された (J. Am. Chem. Soc.)
March 5, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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欧州で構造生命科学を推進する分散型支援基盤 ”Instruct” が形成され活動を開始した
February 23, 2012,Instruct Press Office,
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ボツリヌス毒素はどうやって消化管をすり抜けて血流に乗るのか?
無毒のタンパク質と結合したボツリヌス神経毒タンパク質の構造から、この毒素が消化を免れる謎を解く手がかりが得られた (Science)
February 27, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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化学修飾した骨粗鬆薬が、マラリア原虫のイソプレノイド生合成系のゲラニルゲラニルジホスフェート合成酵素 (GGPPS) を阻害することが報告された (PNAS)
February 27, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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生物時計が、バクテリアやウィルスのDNAを感知する免疫センサーToll様受容体9 (TLR9)の発現と機能を制御していることが見出された (Immunity)
February 16, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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トランスポータータンパク質ABCB6とABCG2 がそれぞれ、新しい血液型LangereisとJuniorを決めていることが見出された (2 papers in Nature Genetics)
February 23, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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筋緊張性ジストロフィーを引き起こすRNAを狙い撃ちする小分子
最も一般的な筋ジストロフィーの原因であるRNA欠陥に作用する一連の化合物が見出された (J. Amer. Chem. Soc. and ACS Chem. Biol.)
February 22, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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電子顕微鏡と分子動力学を用いて、コレステリルエステル転移タンパク質(CETP)が善玉高密度リポタンパク質(HDLs)から悪玉低密度リポタンパク質(LDLs) へコレステロールを転移する様子が捕えられた (Nat. Chem. Biol.)
February 21, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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固体NMRを用いて、大腸菌の脂質二重膜に埋め込まれたタンパク質や細胞表層の内在性分子成分の構造情報が得られることが示された (PNAS)
February 20, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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GPCRであるスフィンゴシン-1-リン酸受容体S1PR1がスフィンゴ脂質類縁体と結合した複合体の構造が決定された (Science)
February 16, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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Toll様受容体のうち唯一タンパク質と結合するTLR5にサルモネラ菌のフラジェリンタンパク質が結合した複合体の構造が決定された (Science)
February 16, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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ピエゾタンパク質として知られる感覚神経タンパク質ファミリーが痛覚に必須のイオンチャネルタンパク質であることが報告された (2 papers in Nature)
February 19, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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O結合型β-N-アセチルグルコサミン (O-GlcNAc)は、転写因子CREB と結合すると記憶形成を 阻害することが報告された (Nat. Chem. Biol.)
February 16, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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キイロショウジョウバエは単なる酔っ払いではない:熟した果実の発酵過程でできるアルコールで幼虫に産卵する寄生虫を殺す (Current Biology)
February 16, 2012,New York Times,© 2012 The New York Times
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ボロン酸エステルの一種であるベンゾオキサボロールで修飾されたタンパク質が細胞表面の糖と結合し、細胞質内へ滑り込むことが見出された (J. Am. Chem. Soc.)
February 15, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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FDA認可の抗がん剤ベキサロテンが、レチノイドX受容体(RXR)に作用し、脳内の過剰のアミロイドβタンパク質の除去に重要なアポリポタンパク質E (ApoE)の産生を促すことが見出された (Science)
February 13, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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古細菌のイオン交換膜タンパク質構造解析が報告された (Science)
February 13, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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約50種の主要漢方薬活性成分の一つであるフェブリフギンは、グア二ル‐プロリル‐tRNA合成酵素 (EPRS)に結合し、プロリルtRNA合成酵素活性を阻害することが見出された (Nat. Chem. Biol.)
February 12, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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論争を呼んだ仮説を支持する結果が報告された。マウスをある種のウイルスに感染させると、壊死する細胞から危険信号分子alarmin としてのインターロイキン33が放出され、免疫応答をトリガーすることが報告された (Science)
February 9, 2012,Science Now,© 2012 AAAS/Science
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アフリカトリパノソーマ症の治療薬として第1相臨床試験中のフェキシニダゾールの体内代謝酸化物がリーシュマニア症治療にも有望であることが見出された (Sci. Transl. Med.)
February 6, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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新規成分13-oxo-9,11-octadecadienoic acid (13-oxo-ODA)をトマトから見出し、肥満マウスにおいて顕著な改善効果が得られることを確認 (PLoS ONE)
February 10, 2012,京大プレスリリース,
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植物ウイルスグループに広域抵抗性を示すレクチンタンパク質の発見
農業上重要な40種類以上の植物ウイルスに対して強力な広域抵抗性を示すレクチンタンパク質JAX1が見出された (Plant Cell)
February 6, 2012,東大プレスリリース,
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神経毒サリンに構造が似た分子を分解する能力を持つ亜鉛含有酵素がコンピューターで設計された (Nat. Chem. Biol.)
February 6, 2012,Nature Research Journal Highlights,© 2012 NPG
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赤ワインに多く含まれるリスベラトロールのターゲットタンパク質
リスベラトールは、細胞が低エネルギー状態にある時に産生されるcAMPを分解する酵素ホスホジエステラーゼを阻害することによりcAMPのレベルを上昇させることが示された (Cell)
February 2, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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異常なヒトのタウタンパク質を嗅内皮質のみで発現するマウスを用いて、欠陥タウタンパクは脳細胞から脳細胞へ感染するかのごとく伝播することが、独立な2グループから報告された (PLoS One and Neuron)
February 1, 2012,New York Times,© 2012 The New York Times
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負荷運動後にマッサージを受けた足では、ミトコンドリア生合成に関わるPGC-1alpha が30%以上多く発現し、一方炎症に関わるNFkBは1/3に減少することが見出された (Sci. Transl. Med.)
February 1, 2012,Science Now,© 2012 AAAS/Science
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欧州は低線量放射線のリスクを調べるため、冷戦時代のデータを共有し、これからの研究のプライオリティーを決めるプログラムMELODIをスタートさせた。これを世界的規模で進めるべきだ
February 1, 2012,Nature Editorial,© 2012 NPG
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独立行政法人制度の見直しの一環として、理研、物材研、海洋機構、防災科研、JSTの統合が閣議決定された
February 1, 2012,Nature News,© 2012 NPG
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顧みられない病気(neglected diseases)との戦いのロードマップ
エーザイを含む13の製薬メーカー、米国、英国、UAE政府、世界銀行、ビルメリンダ・ゲイツ財団、ライオンズクラブ、並びに他の慈善団体が、10種類の顧みられない病気に対する共同の取り組みを発表した
January 30, 2012,Nature News,© 2012 NPG
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認可済みと臨床試験中の2種類の前立腺がん治療薬が、そのターゲットタンパクであるシトクロムP450酵素CYP17A1に結合した複合体の構造が報告された (Nature)
January 30, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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睡眠と関連するホルモンのメラトニンの受容体MTNR1B の変異が2型糖尿病の罹患リスクを約7倍増加させることが見出された (Nature Genetics)
January 30, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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現行の5種類の治療薬に関するトリパノソーマ・ブルセイのゲノムワイドなRNA干渉シーケンシングによるスクリーニングから薬物作用と抵抗性に関わる50種のタンパク質が抽出された (Nature)
January 25, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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ハンチントン病に関連するCAGトリヌクレオチド反復に選択的に結合する化合物が見出された (ACS Chem. Biol.)
January 26, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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Niemann-Pick C1-like 1 (NPC1L1) コレステロール受容体がウイルス受容体で、NPC1L1 をターゲットとする高脂血症治療薬エゼチミブがHCVの取り込みを阻害することが見出された (Nat. Med.)
January 24, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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健常な成人男子が寒さに曝されると、褐色細胞がエネルギーを消費して熱を発生することが示された (J. Clin. Invest.)
January 24, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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化学生態学:マダガスカルのカエルは揮発性分子を用いて連絡を取り合う (Angew. Chem. Int. Ed.)
January 24, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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タンパク質構造予測を行うオンラインゲームFolditは24万の登録プレーヤーにまで成長し、先週は2,200人がプレーした。一連の課題をプレーヤーに投げかけ、そのうちの最優秀アンサーを実験室で確かめることによって、出発よりも18倍高活性なDiels-Alder反応酵素が設計された (Nat. Biotech.)
January 22, 2012,Nature News,© 2012 NPG
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低温電顕、X線、化学架橋、プロテオミクスの諸手法を統合したアプローチで、プロテアソームのサブユニットの配置の解明が進んだ (PNAS)
January 23, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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E3 ユビキチンリガーゼ複合体の構成成分のkelch-like 3 (KLHL3) とcullin 3 (CUL3) における変異が高血圧と電解質異常を引き起こすことが明らかにされた (Nature)
January 22, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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足に外科損傷を与えたラットの代謝物を質量分析法で解析し、神経因性疼痛により過剰産生される代謝物N,N-dimethylsphingosine (DMS)が突き止められた (Nat. Chem. Biol.)
January 22, 2012,Nature News,© 2012 NPG
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嫌気呼吸に関わる一酸化窒素還元酵素qNORの立体構造解析から、好気呼吸酵素に備わっているプロトンポンプの原型にあたる構造が見出された (Nat. Struct. Mol. Biol.)
January 23, 2012,理研プレスリリース,
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マンガンカチオンがゴルジタンパク質GPP130を標的にして、志賀毒素のエンドソーム?ゴルジ輸送を阻害し、リソソームでの毒素の分解に導くことが見出された (Science)
January 19, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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バイオ燃料の原料として海藻を用いることは、その主要多糖成分のアルギン酸が工業的に扱いやすい微生物で発酵されにくいため検討が進んでいなかった。代謝改変された微生物が海藻を分解し、発酵により多糖からエタノールが産生することが示された (Science)
January 20, 2012,This Week in Science,© 2012 AAAS/Science
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2型糖尿病治療薬メトホルミンは活性酸素種を減弱することによりDNA損傷を減少させることが見出された (ROS) (Cancer Prev. Res.)
January 18, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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電子顕微鏡を用いてプロテアソームのサブユニットの配置の解明が進んだ (Nature & PNAS)
January 16, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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イリシンと名付けられた新既同定のホルモンが、過剰なカロリーを貯蔵する白色脂肪の熱を生成する褐色脂肪への変換を促進すると報告された (Nature)
January 11, 2012,MIT Technology Review,© 2012 Technology Review
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Life Technologiesが1,000ドルのコスト・1日で ヒト全ゲノムを解読できる新型シーケンサーを発表
January 10, 2012,Nature News Blog,© 2012NPG
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シャペロン分子の産生を増やしてタンパク質恒常性を促進する化合物を探索する90万分子のスクリーニングから、不必要なタンパク質凝集を抑える化合物が見出された (Nat. Chem. Biol.)
January 9, 2012,Chemical & Engineering News,© 2012 ACS
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南極の極寒の海に棲むタコは、中枢神経のチャネルタンパク質が低温でも働くようにRNAエディティングを用いていることが報告された (Science)
January 5, 2012,Science Now,© 2012 AAAS/Science
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脳の意欲、運動、報酬系を調節する部位で高発現するタンパク質Regulator of G protein signaling 9-2 (RGS9-2)が、体重をも制御する因子であることが見出された (PLoS One)
January 4, 2012,Science Daily,© 2012 ScienceDaily
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AIDSウィルスとヒトタンパク質相互作用の全体像と感染に必須の相互作用
ほぼ500に及ぶヒト‐HIVタンパク質相互作用が同定され、そのうちHIVタンパク質Vifとヒト転写因子CBF-βの結合が、HIV感染に対する自然免疫抑制因子APOBEC3Gの分解を引き起こすことが見出された (2 papers in Nature)
December 21, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily
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マメ科植物は窒素固定をしてもらう共生の根粒菌に、自身の細胞壁のペクチンを分解するペクチン酸リアーゼを供給する (PNAS)
December 19, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily
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サイエンス誌が選ぶ今年のブレークスルー:抗レトロウイルス剤併用療法によるHIV治療
次点は、日本はやぶさの成果、日本人研究グループによる光化学系II の精密構造決定、有望なマラリアワクチン、老化細胞の機能解明、解き明かされる腸内細菌の役割など
December 23, 2011,Science,© 2011 AAAS/Science
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マウスを用いて、ω3脂肪酸から得られる化合物δプロスタグランジンJ3 (D12-PGJ3)が慢性骨髄性白血病幹細胞を殺すことが見出された (Blood)
December 22, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily
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虫歯菌を含む多くのバクテリアがフッ素で選択的に活性化するRNA制御因子リボスイッチを持ち、これがバクテリアのフッ素防御システムを起動すると報告された (Science)
December 22, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily
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植物間の進化的関係の新しいマップは農業の改善に役立つ可能性がある (PLoS Genetics)
December 19, 2011,New York Times,© 2011 The New York Times
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アブシジン酸受容体を改変してストレス応答パスウェイを活性化状態に保つことが示された (PNAS)
December 19, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily
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不完全と考えられてきたシアノバクテリアのTCAサイクルは、2種の酵素が見出され完全に閉じることが分かった (Science)
December 15,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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マイコバクテリアの非対称的な細胞分裂のため抗生物質が効きにくいのかもしれない (Science)
December 15,Science Now,©2011 AAAS/Sciencec
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イネの体内において、カドミウムを種子(コメ)へ輸送する役割を担っているカチオントランスポーターOsLCT1が発見され、その発現を抑制することで、コメに含まれるカドミウム濃度をおよそ50%低下できることが報告された (PNAS)
December 13, 2011,東大プレスリリース,
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葉における光合成で産生される糖質は主としてショ糖の形で師部に輸送される。ショ糖トランスポーターとしてSWEETタンパク質サブファミリーが同定された (Science)
December 13, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily
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IBM社が製薬会社の協力を得て、1976年から2000年までに発行のバイオメディカルジャーナルの要旨から抽出した240万の化合物データが、化合物とその生理活性情報のデータベースPubChemに追加される
December 13, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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カンジダ酵母由来のリパーゼのアミノ酸置換からトランス脂肪酸と飽和脂肪酸を選択的に加水分解する酵素が見出された (Angew. Chem. Int. Ed.)
December 12, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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4省の生命科学系データベース合同ポータルサイトintegbio.jp
文科省、厚労省、農水省、経産省が取り組む生命科学系データベースの統合化の方針や成果を紹介する合同ポータルサイトintegbio.jp(インテグバイオ)が開設された
December 12, 2011,JST – NIBIO – NIAS – AIST 共同プレスリリース,
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摂食を調節する視床下部ペプチドであるアグーチ関連タンパク質に、正に帯電したアミノ酸を付け加えると、食欲上昇効果が高まることが見出された (ACS Chem. Biol.)
December 9, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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アミノ酸の進化的変異を手掛かりに、15種の多様なテストタンパク質の構造がアミノ酸配列のみから極めて正確にシミュレーションで決定された (PLoS ONE)
December 7, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily
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シベリア凍土で発掘された43,000年前のマンモスの大腿骨から126種のタンパク質が確認された (J. Proteome Res)
December 5, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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高効率の加水分解酵素として機能する人工酵素が報告された (Nat. Chem.)
December 5, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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2百万化合物をSchrödinger’s Glide ドッキングシミュレーションソフトで解析し、ピコモルレベルでHIVウイルス逆転写酵素を阻害する化合物が見出された (J. Med. Chem.)
December 5, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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多剤耐性菌感染症の原因となる異物排出トランスポーターAcrBが抗生物質と結合した結晶の構造が解析され、AcrBが幅広い範囲の基質を認識するメカニズムが提案された (Nature)
November 28, 2011,大阪大学プレスリリース,
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NMR分光法: 3段階の手法を積む上げて、特異的会合か非特異的会合か膜内に閉じ込められて近接しているのかを識別できることが示された (J. Am. Chem. Soc.)
November 28, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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アセトアミノフェンはそのその代謝物が、ワサビなどの刺激物のセンサーであるカチオンチャネルタンパク質TRPA1を活性化して解熱鎮痛効果を発揮することが明らかにされた (Nat. Commun.)
November 28, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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細菌は細胞膜の薬剤排出ポンプトランスポーターを活用して抗生物質を細胞の外に送り出し薬剤耐性化する。この排出ポンプを阻害するジペプチドで、古い抗生物質が効くようになることが報告された (Bioorg. Med. Chem.)
November 28, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily
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化学療法への応答の違いは、腫瘍細胞の細胞死への前処理(ミトコンドリア予備刺激)の違いによるのかもしれない。予備刺激された腫瘍には化学療法がより有効であることが見出された (Science)
November 25, 2011,This Week in Science,© 2011 AAAS/Science
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線虫を用いて、受精後ただちに精子によってオートファジーが誘起され、父性ミトコンドリアを選択的に除去することが示された (2 papers in Science)
November 25, 2011,This Week in Science,© 2011 AAAS/Science
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食欲抑制ペプチドホルモンPYYがビタミンB12取込経路にて血流に取り込まれることが示された (J. Med. Chem.)
November 21, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily
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エボラウイルスの外被タンパク質の2か所のセグメントに結合し、ウイルスの感染を妨げる抗体が単離され、その結合構造が解析された (Nat. Struct Mol. Biol.)
November 20, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily
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"GO Fight Against Malaria":コミュニティグリッドコンピューティング
Scripps ResearchとIBM社が マラリア撲滅に向けたWorld Community Grid への参画を呼び掛けている
November 19, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily
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レジオネラ菌は宿主のプロテアソーム分解で生じるアミノ酸を活用して、その増幅に必要な炭素とエネルギー源としている (Science)
November 17, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily
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レゴでProtein Data Bank 40周年を祝う
November 17, 2011,The Daily Scan,© 2011 GenomeWeb LLC
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40種類以上の腫瘍細胞で、オートファジー(自食)の1種であるシャペロン介在性オートファジーの増加が見出された (Sci. Transl. Med.)
November 16, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily
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マウスを使って、マンノース誘導体が感染性大腸菌のFimHタンパク質を阻害して尿路感染症を防ぐことが報告された (Sci. Transl. Med.)
November 16, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily
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線虫の害毒バクテリア認識は系統により優劣がある。線虫の酵素の変異が病原菌回避に影響を 及ぼしていることが見出された (Nature)
November 16, 2011,Science Now,© 2011 AAAS/Science
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242のアミノ酸から成る、今までで最大のタンパク質の設計と創製
ヒスチジン生合成酵素の変異体がインシリコ設計・産生され、結晶構造も解析された (J. Amer. Chem. Soc.)
November 15, 2011,Science Daily, © 2011 ScienceDaily
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電子顕微鏡イメージング:細胞機構のクローズアップが、遺伝子変異のためマラリア原虫の輸送ネットワーク形成が妨げられる様子を明らかにした (Science)
November 14, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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ベトナム時限爆弾病とも呼ばれる類鼻疽を引き起こす菌の毒素タンパク質BPSL1549 の構造と機能が突き止められた (Science)
November 10, 2011,Science Now,© 2011 AAAS/Science
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ボツリヌストキシン毒素タンパク質は様々な疾患に転用されているが、免疫細胞シグナリングの遮断にも効果があることが示された (Biochemistry)
November 10, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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マラリア原虫の細胞表面タンパク質PfRh5とヒト膜タンパク質Basiginとの結合が、原虫の赤血球侵入に不可欠であることが明らかにされた (Nature)
November 9, 2011,Science Now,© 2011 AAAS/Science
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白色脂肪組織に選択的に結合するペプチドとアポトーシス促進性ペプチドを組み合わせた合成ペプチドが、肥満マウスと肥満サルの体重減少に有効であることが報告された (Sci. Transl. Med.)
November 9, 2011,Science Now,© 2011 AAAS/Science
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血液の代わりに涙から血糖値を測定する電気化学センサーが試作された (Anal. Chem.)
November 9, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily
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麻疹ウイルスが感染しその後宿主から出ていく際の受容体として、宿主の接着結合タンパク質ネクチン4が同定された (Nature)
November 2, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily
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否定的な結果を検索するエンジンBioNETが開発された (BMC Bioibformatics)
November 2, 2011,Science Insider,© 2011 AAAS/Science
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データベースや検索条件の情報を暗号化したまま類似化合物を検索
November 1, 2011,産総研?筑波大?東大プレスリリース,
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国際チームが質量分析法を駆使して、ATPの加水分解エネルギーを使って生体膜を透過しないプロトンの輸送を行うV型ATPアーゼがどのような脂質と相互作用して生体膜を形成しているかを解析した (Science)
November 1, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily
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ピロリ菌が産生するタンパク質毒素VacAがどのようにして宿主のミトコンドリアの細胞死を引き起こすが明らかにされた (PNAS)
November 1, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily
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献血の不足やウイルス汚染の問題を克服するため、遺伝子組換えイネからヒト血清アルブミンを得る試みが報告された (PNAS)
October 31, 2011,Nature News,© 2011 NPG
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酵母をモデルとして、カロリー制限が有効に働くためには、有害な過酸化水素を分解する抗酸化酵素ペルオキシレドキシンPrx1が必要であることが明らかにされた (Molecular Cell)
October 31, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily
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ウイルスのエンベロープとコアを繋ぐ基質タンパク質はウイルス膜下に層を形成すると考えられてきたが、低温電子顕微鏡法によって得られたデータから、ゲノムを包むカプシドタンパク質の表面を覆っていることが示された (PNAS)
October 30, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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SARSを含む広範なコロナウイルスの複製を阻害するターゲットタンパク質
ウイルスタンパク質が複製の足場として相互作用する宿主のタンパク質シクロフィリンがターゲットタンパク質として同定された (PLoS Pathogens)
October 28, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily
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タンパク質の折り畳まれた構造と折り畳みがほどかれた状態間の遷移が、独立に、実験とシミュレーションにより追跡された (2 papers in Science)
October 27, 2011,Science Perspectives,© 2011 AAAS/Science
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肥満や糖尿病に関連する酵素FTOは、mRNAのメチル化されたアデノシンからメチル基を除去することが見出された (Nat. Chem. Biol.)
October 24, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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植物の成長や形態形成などで中心的な役割を果たす植物ホルモンオーキシンは、アミノ酸のトリプトファンから2種類の酵素の働きで合成されることが突き止められた (2papers in PNAS)
October 25, 2011,理研プレスリリース,
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洪水などで引き起こされる低濃度酸素状態では、エチレン応答性転写因子タンパク質が応答・機能することが報告された (2papers in Nature)
October 23, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily
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腸内細菌としては目立たない紡錘形の嫌気性発酵菌フソバクテリウムが、大腸癌細胞に豊富に存在することが見出された (2 papers in Genome Research)
October 17, 2011,New York Times,© 2011 The New York Times
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細胞表面パターン認識受容体RIG-Iが侵入してきたウイルスRNAを検知し、警戒シグナルを発信する構造機構が、2つのグループから報告された (2 papers in Cell)
October 17, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily
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古細菌修飾塩基アグマチジンの生合成酵素アグマチジン合成酵素TiaSが、RNAとタンパク質の両方の基質をリン酸化することが見出された (Nat. Struct. Mol. Biol.)
October 17, 2011,東京大学プレスリリース,
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ウイルスはバクテリアの細胞壁分子のリポ多糖 (LPS)で身をくるみ、免疫系受容体TLR4をトリガーし宿主への感染を果たす (2 papers in Science)
October 14, 2011,Science News & Analysis,© 2011 AAAS/Science
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コレステロール低下薬剤スタチンが良く効く人には、腸内細菌が産生する3種の胆汁酸が認められることが報告された。胆汁酸とコレステロールは、肝臓と小腸で胆汁酸輸送体を共有し、拮抗しており、ある種の胆汁酸の多寡と薬効が関連している (PLoS ONE)
October 13, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily
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腸内免疫細胞で重要な上皮内リンパ球の数は、細胞表面のアリール炭化水素受容体のレベルに依存し、それは主にアブラナ科野菜に含まれる成分で制御されることが分かった (Cell)
October 13, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily
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モルヒネなどのオピオイドは、神経細胞受容体MOR1に作用し鎮痛効果をもたらすのに対し、そのアイソフォーム MOR1D に作用すると痒みを引き起こすことが報告された (Cell)
October 13, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily
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アミド水素/重水素交換質量分析法 (H/D-MS) が、天然変性タンパク質 (IDPs) の不定形領域やしっかり折り畳んだ複合体への遷移を調べるために適していることが報告された (Biochemistry)
October 10, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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タンパク質精製:脂質二重層に電圧をかけ、膜タンパク質を電荷とサイズで一列に並べる手法 (electrophoretic-electroosmotic focusing) が提案された (Anal. Chem.)
October 6, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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脱リン酸化酵素カルシニューリンの阻害剤である免疫抑制薬タクロリムスは腎臓のナトリウム・クロライド共輸送体を活性化して高血圧を引き起こすことが報告された (Nature Medicine)
October 6, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily
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摂食・睡眠と関連するホルモンオレキシンが善玉褐色脂肪を活性化して肥満を防ぐ
脳内で産生される神経ペプチドホルモンのオレキシンが、マウスの褐色脂肪の成熟化に不可欠であることが示された (Cell Metabolism)
October 4, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily
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電子伝達体NAD合成の中間体ニコチンアミドモノヌクレオチ(NMN)が、糖尿病モデルマウスの糖と脂質代謝異常を回復させることが報告された (Cell Metabolism)
October 4, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily
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水素重水素交換質量分析法を用いて、膜タンパク質GPCRの信号伝達過程が追跡された (Nature)
October 3, 2001,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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非ステロイド性抗炎症薬ナプロキセンやフルルビプロフェンとターゲットタンパク質シクロオキシゲナーゼ-2 (COX-2) の複合体の構造解析から、S体とR体はCOX-2の同じスポットに結合するが、異なった基質への酸素添加を阻害し、従って疼痛緩和の効果も異なることが示された (Nat. Chem. Biol.)
October 3, 2001,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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安価なチタン酸塩のナノチューブやナノファイバーが、汚染された水溶液から放射性のセシウムやヨウ素イオンを除去するのに適していることが報告された (Angew. Chem. Int. Ed.)
October 3, 2001,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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文部科学省は来年度の科学関連予算総額を147億ドルへ5.8%増加させる方針
September 30, 2011,Science Insider,© 2011 AAAS/Science
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飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の健康に及ぼす相反する効果を分子レベルで理解する枠組みが提案された。飽和脂肪酸はチロシンキナーゼの膜内でのクラスター形成を引き起こし、キナーゼJNKを活性化する (Cell)
September 29, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily
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ウイルスセンサーであるパターン認識受容体RIG-Iが二本鎖RNAと結合した複合体の構造が報告された (Nature)
September 29, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily
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酸っぱいものを甘くする味覚修飾タンパク質ミラクリンの不思議を解き明かす
ミラクリンが酸味を甘味に変換する現象は、ヒト甘味受容体(T1R2-T1R3)に結合したミラクリンが、酸性条件下でヒト甘味受容体を活性化することによる (PNAS)
September 27, 2011,東京大学プレスリリース,
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アルツハイマー病患者は疾病進行の早い時期に臭覚を失いやすい。アミロイド前駆体タンパク質 (APP) が匂いを感知する神経細胞を殺すことが報告された (J. Neuroscience)
September 27, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily
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リジンに選択的に結合し、アルツハイマー病やパーキンソン病に見られる異常なタンパク質のもつれをほぐす化合物が見出された (J. Am. Chem. Soc.)
September 22, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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サメ由来の抗腫瘍性物質であるカチオン性ステロール、スクワラミンに広範なウィルス感染をブロックする効果があることが報告された (PNAS)
September 22, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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サーチュインタンパク質の長寿に及ぼす効果について相反する論文が報告され、論争を巻き起こしている (2 papers in Nature)
September 21, 2011,New York Times,© 2011 The New York Times
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研究者を悩ませてきたレトロウィルス酵素の構造をゲーマーが解いた
Folditコンテンダーズ、Folditボイドクラッシャーズといったゲーマーグループが分子モデリングの戦いを繰り広げ、3週間でHIV関連のレトロウィルスタンパク質分解酵素の構造を決めた (Nature Struct. Mol. Biol.)
September 19, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily
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HIVウィルスが感染過程で利用するT細胞のCCR5受容体を利用不能に改変したT細胞免疫療法の臨床研究の有望な結果が報告された
September 19, 2011,Science NOW,© 2011 AAAS/Science
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悪性卵巣がんは葉酸(ビタミンB9)受容体を高レベルで発現する。葉酸に蛍光分子を結合させたがん細胞プローブを用いた蛍光ガイド卵巣がん手術が報告された (Nature Med.)
September 18, 2011,Nature News,© 2011 NPG
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免疫細胞であるTh17細胞を誘導するセグメント細菌の全ゲノム構造を解明 (Cell Host & Microbe)
September 15, 2011,東京大学プレスリリース,
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中枢神経疾患治療薬の脳内への移行を促進するために、アデノシン受容体シグナル伝達系を用いてBBB透過性を調節することの可能性が報告された (J. Neurosci.)
September 20, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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放射線照射でターゲットタンパク質に共有結合し、その機能を阻害する“プロドラッグ”
14-3-3タンパク質とその阻害剤との複合体の構造解析から、阻害剤がX線照射により14-3-3タンパク質と共有結合を生じ、持続的に活性を阻害することが示された (PNAS)
September 12, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily
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プロテインキナーゼC イプシロンがニコチンとアルコールの両方の依存症の治療ターゲットとなりうることが報告された (PNAS)
September 12, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily
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イオンチャネルHCN2 が炎症性疼痛や神経因性疼痛で中心的役割を果たしていることが示された (Science)
September 9, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily
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哺乳類の強い酸性の胃の中を生き抜いて腸に達するには、シャペロンタンパク質HdeAが必須であることが報告された (Nature Chem. Biol.)
September 7, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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核内受容体PPARγをターゲットにした新しい糖尿病薬リード化合物
新しいタイプの糖尿病薬リード化合物として、肥満に関連した、キナーゼCdk5によるPPARγのリン酸化を狙い撃ちする化合物SR1664が見出された (Nature)
September 4, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily
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MIABE Standard: 生理活性分子に関する報告のガイドライン
Minimum Information about a Bioactive Entity (MIABE)と称する生理活性分子に関する報告のガイドラインが提案された (Nature Reviews Drug Discovery)
August 31, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily
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月齢3カ月のマウスの血液は老齢マウスに新しい脳細胞を作らせることが報告された。サイトカインなどの末梢の因子が脳に働きかけている (Nature)
August 31, 2011,Science NOW,© 2011 AAAS/Science
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ヒト代謝物に関する全ゲノム相関解析から37の遺伝子座と血液中の代謝物濃度との相関、例えば今までに知られていなかった糖タンパク質を構成する糖マンノースと糖尿病関連変異の相関、が見出された (Nature)
August 31, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily
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3万年前の凍土から採取されたDNA断片からバンコマイシン耐性の遺伝子とコードされたタンパク質が再構築され、その活性と構造が現代の変異体と同様であることが示された (Nature)
August 31, 2011,Science NOW,© 2011 AAAS/Science
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タンパク質翻訳を調節して、タンパク質の望みの場所に非天然アミノ酸を組み込めることが報告された (Science)
August 29, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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タンパク質トランスチレチンの凝集で引き起こされる心アミロイドーシス症の薬剤候補が、13万の低分子化合物ライブラリーからスクリーニングされた (Sci. Transl. Med.)
August 29, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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微生物の全ゲノムを迅速に解析する手法が、感染症を含め、微生物学に新時代の到来を告げている
August 29, 2011,New York Times,© 2011 The New York Times
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感冒からHIVまで15の異なったウィルスへの感染を感知し、感染した細胞を殺すキメラタンパク質薬剤が報告された (PLoS ONE)
August 26, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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感染応答性のヒトのISG15 (interferon-stimulated gene 15) タンパク質と結合したインフルエンザBウィルスNS1B (non-structural protein 1 of influenza B) タンパク質の立体構造解析から、ヒトにだけ見出されるISG15のアミノ酸配列がNS1Bと結合し、その固定化のため抗ウィルス性を妨げられることが分かった (PNAS)
August 25, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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栄養摂取に伴い分泌されるホルモン前駆体のプロウログアニリンは、中枢神経系でウログアニリンに転換され、それがグアニリルシクラーゼ2C (GUCY2C) 受容体を活性化し、マウスの摂食を減らすことが明らかにされた (J. Clin. Invest.)
August 25, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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腫瘍細胞マーカータンパク質PVRL4 (Nectin 4) がはしかウィルスの受容体であることが見出された。PVRL4は肺癌、乳癌、卵巣癌、大腸癌の細胞表面で高発現しているので、はしかウィルスを腫瘍治療に応用できるかもしれない (PLoS Pathogen)
August 25, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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エボラウィルスの宿主細胞侵入には、リソソーム膜に埋め込まれたコレステロール輸送体Niemann-Pick C1 (NPC1)が必須であり、スクリーニングから見出されたNPC1阻害剤はエボラウィルス感染を防ぐことが報告された (2 papers in Nature)
August 24, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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ヒトのサイトカインの一種であるインターロイキン37が、マウスを炎症性大腸疾患から守ることが見出された (PNAS)
August 23, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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昨年ハイチで死者6000人以上という猛威を振るったコレラ菌は、国連平和維持軍がネパールから持ち込んでしまったものであることが断定された (mBIO)
August 23, 2011,Science NOW,© 2011 AAAS/Science
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米国ベンチャーが非天然アミノ酸を含むタンパク質薬の開発を進め、いくつかはヒト臨床試験に入っている
August 22, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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トレポネーマデンティコラのタンパク質TvpA は、口腔に棲む他の多様なバクテリアに付着するために極端に多くの可変領域を有する (PNAS)
August 22, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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ラマから得られる稀な単一ドメイン抗体は極めて安定で、治療やバイオテクノロジーへの応用が期待される (Anal. Chem.)
August 19, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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既存薬の予期しない用途を予想する方法が提案され、実際に二つの化合物で新しい適応症への展開可能性が示された (2 papers in Sci. Transl. Med.)
August 17, 2011,Science NOW,© 2011 AAAS/Science
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パーキンソン病の鍵タンパク質αシヌクレインの健常細胞での構造は、従来考えられてきた天然変性タンパク質とは異なり、らせん状に折り畳まれた4量体であることが明らかとなった (Nature)
August 14, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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炎症を引き起こすサイトカインであるTSLP (胸腺間質性リンパ球新生因子)の過剰発現が好塩基球を成熟させ、多重アレルギー疾患に関与していることが報告された (Nature)
August 14, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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遺伝子操作で、合成アミノ酸からタンパク質を産生する線虫が作られた (J. Am. Chem. Soc.)
August 12, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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ピラジナミド(PZA)はリボソームタンパク質S1(RpsA)と結合し、結核菌の細胞生存に不可欠のトランス翻訳を阻害することが報告された (Science)
August 11, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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慢性リンパ性白血病の原因である癌性B細胞に特異的な分子と結合する受容体遺伝子を組み込んだT細胞は、癌性B細胞を破壊することが、ヒト臨床試験で実証された (Sci. Transl. Med. and NEJM)
August 10, 2011,Science NOW,© 2011 AAAS/Science
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善玉プリオン様タンパク質がウイルスに対する自然免疫応答を増強する
MAVS (mitochondrial antiviral signaling) タンパク質のプリオン様コンフォメーションによる凝集が抗ウイルスシグナル伝達カスケードを活性化することが報告された (Cell)
August 8, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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NIH Chemical Genomics Centerの化合物ライブラリーにある2,800の化合物と61系統のマラリア原虫を用いたスクリーニング結果とゲノムワイド相関解析の結果から、原虫死滅活性の高い32の化合物が報告された (Science)
August 5, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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RNAiスクリーンから、急性骨髄性白血病の薬剤ターゲットとしてBrd4タンパク質が同定され、Brd4の活性を阻害する化合物が疾病を抑制することが見出された (Nature)
August 3, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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なぜダイエットは失敗するのか:飢餓状態になった脳の神経細胞が自食し、餓えのシグナルを出す
食事を摂らないと、脳の神経細胞が飢餓に誘導されて自食を始める。このオートファジーが餓えのシグナルを誘発し、摂食に駆り立てる (Cell Metabol.)
August 3, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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味の感覚はどう終了するのか?味覚細胞にある味覚ターミネータータンパク質
味覚細胞で、甘み・旨み・苦味の感覚を終わらせるタンパク質が同定された (PLoS ONE)
August 3, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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タンパク質のフォールドを助けるシャペロンタンパク質をターゲットにした化合物が臨床試験に入っている
August 2, 2011,Nature News,© 2011 NPG
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NMR分光法: タンパク質に圧力をかけて稀なコンフォメーションを探る
NMR測定中に加圧することのできるデバイスが開発され、トランジェントなコンフォメーションの構造情報を得ることが示された (J. Am. Chem. Soc.)
August 1, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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シロイヌナズナの約2700のタンパク質が関与する約6200のタンパク質-タンパク質相互作用が、初期的な解析と併せて提示された (2 papers in Science)
July 28, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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Spinachと命名された緑色蛍光タンパク質GFPのRNA版が開発された (Science)
July 28, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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ラン藻類が産生する糖タンパク質Cyanovirin-N (CV-N) はHIVやインフルエンザウィルスを中和する効能を有し注目されている。CV-Nのオリゴマーがその効果を増強することが示された (PNAS)
July 28, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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セルベース・スクリーニングからがん浸潤を制御する化合物が見出された
浸潤突起生成を制御する化合物(阻害剤と活性化剤)が同定された。いくつかの阻害剤のターゲットタンパク質はサイクリン依存性キナーゼ(Cdk)であった (Science Signaling)
July 25, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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携帯フローサイトメトリー:50ドルのアクセサリーを装着して携帯電話で白血球細胞を計測する (Anal. Chem.)
July 26, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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安価なパーソナルグルコースメーターにDNAセンサーを組み合わせて、コカイン、アデノシン、インターフェロン、金属イオンなどの多様な物質を溶液中で検知・測定するデバイスが考案された (Nat.Chem.)
July 25, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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脂質ナノ粒子のカプセルに包まれたsiRNAが、血中からLDLを取り除ことを防ぐ酵素PCSK9をコードする遺伝子の転写をブロックする
July 21, 2011,MIT Technology Review,© 2011 Technology Review
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光学的読み取りの代わりに、DNA合成反応で生成されるプロトンを直接検知するイオンチップを用いて、半導体技術のムーアの法則で有名なインテル創業者ゴードン・ムーアのゲノムが解読された (Nature)
July 20, 2011,New York Times,© 2011 The New York Times
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Gタンパク質と結合したβ2アドレナリン受容体の構造が遂に解かれた
July 19, 2011,Nature News,© 2011 NPG
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ターゲットタンパク質の結合サイトに存在する水分子の役割をモデルに組み込むアプローチ
July 19, 2011,MIT Technology Review,© 2011 Technology Review
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ターゲットタンパクプログラム参画の青木淳賢研究室を含む東北大学の復興状況報告
July 8, 2011,Science: News Focus,© 2011 AAAS/Science
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コショウの実に含まれるピペロングミンが、酸化ストレスへの応答をブロックすることにより選択的にがん細胞を殺すことが見出された (Nature)
July 13, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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Early Flowering3 (ELF3)、ELF4、LUX の3種のタンパク質からなる複合体が、植物成長に重要な転写因子PIF4とPIF5の活性を抑えていることが報告された (Nature)
July 13, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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プロテオミクス:タンパク質のアセチル化の度合いは、饗宴・絶食に応じて変化する
July 14, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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日焼けした皮膚には、炎症性の免疫細胞を損傷部位に導くケモカインのうちCXCL5が、高レベルで蓄積し痛みを引き起こすことが示された (Sci. Transl. Med.)
July 11, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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遊離基などの活性酸素種(ROS)は変異原であり、腫瘍形成を促進すると考えられてきた。しかし、がん遺伝子に誘導された転写因子Nrf2の転写は、ROSの無毒化と腫瘍発生を促進することが報告された (Nature)
July 7, 2011,Nature今週のハイライト,© 2011 NPG
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花成ホルモンFT(フロリゲン)タンパク質は、気孔開口の調節も担うことが見出された (Current Biology)
July 8, 2011,名古屋大学プレスリリース,
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脂肪との闘い(1)体内のマリファナ様分子のために高脂肪食品の誘惑に抗しきれない
ラットが脂肪性のものを摂ると上部消化管の細胞で内在性カンナビノイド(大麻に含まれる化学物質の総称)が産生される。糖やタンパク質はこの作用を引き起こさない (PNAS)
July 4, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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脂肪との闘い(2)脂肪が引き起こす細胞死の背後にいた予想外の犯人
細胞中に過剰の脂肪が存在すると、核小体低分子RNA (snoRNA) が核内から細胞質に出て細胞死をトリガーすることが示された (Cell Metabolism)
July 5, 2011,Science Now,© 2011 AAAS/Science
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見過ごされていたアミロイドβ亜種が強力な病態促進因子 (Nature Neuroscience)
July 4, 2010,理研プレスリリース,
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糖タンパク質分析:ラマン分光法でタンパク質の糖鎖付加状態を見分ける(Anal. Chem)
June 30, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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カイコガのオスの性行動の匂い選択性は性フェロモン受容細胞で発現する嗅覚受容体の匂い選択性だけで決定していることが明らかにされた (PLoS Genetics)
July 1, 2011,東大プレスリリース,
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免疫抑制薬のラパマイシンが、患者の細胞でのタンパク質プロジェリンの異常蓄積を取り除く効果があることが示された (Sci. Transl. Med.)
June 29, 2011,Science Now,© 2011 AAAS/Science
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沖縄科学技術研究基盤機構(OIST)のテニュア研究者のリクルート
リサーチフリーダムを切り札に、5年間の研究資金と大学院生・ポスドクを保証し、研究室主宰者のリクルートが進行中
June 29, 2011,Nature News,© 2011 NPG
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プルトニウムは、鉄輸送を担うタンパク質トランスフェリンをヒッチハイクして細胞内に入る、但し鉄と一緒に (Nature Chem. Biol.)
June 28, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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睡眠病を引き起こす寄生虫を血中と脳内の両方で殺す化合物が、マウスを用いて見出された (PLoS Neglected Tropical Diseases)
June 28, 2011,Science Now,© 2011 AAAS/Science
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アミロイド形成タンパク質の特定のごく一部と相互作用するように設計されたペプチドが、全長タンパク質の線維化をも阻害することが示された (Nature)
June 27, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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RNAをターゲットにした創薬:様々な立体配置をとるRNAをたたく
異なった立体配座のRNAと小分子の結合エネルギーを定量的に予測し、さらに実際のライブラリースクリーニングから、HIV-1ウイルスのRNAであるTARと高親和性の6種の化合物が見出された(Nature Chem. Biol.)
June 26, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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米国NIHは、アカデミアでのDrug Repursosing(古い薬の新しい用途探し)のために、製薬メーカーに認可済み薬や途中でドロップアウトした薬剤候補とそれらに関するデータを提供するよう申し入れている
June 24, 2011,Science: News and Analysis,© 2011 AAAS/Science
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リスベラトロールオリゴマーの有機合成 (Nature)
June 22, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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分子インプリントポリマー(MIPs)でタンパク質結晶化を促進する
MIPs (Molecularly Imprinted Polymers) が、タンパク質を鋳型として利用することにより、核生成を促す物質として機能することが報告された (PNAS)
June 20, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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リンゴの皮に含まれるウルソル酸が、加齢や脊髄損傷による筋力低下を防ぎ、コレステロールや中性脂肪を減らす効果を持つことが報告され、“一日一個の林檎で医者いらず”のことわざが裏付けられた (Cell Metab.)
June 20, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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血液凝固系を活用して、ナノ粒子で腫瘍を見つけ出し、別のナノ粒子が抗がん剤を腫瘍に送り込むドラッグデリバリーシステムが設計された (Nature Materials)
June 19, 2011,Nature News,© 2011 NPG
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非マメ科多年生木本植物の共生菌として根粒内に生息し、窒素固定を行うフランキア属放線菌は、抗菌剤、除草剤、抗ガン剤など多様な天然物を産生するポテンシャルを有することが報告された (Applied and Environmental Microbiology)
June 17, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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双生児の稀な遺伝子疾患の診断と治療に役立った全ゲノムシーケンシング
双子、両親、兄弟のゲノムシーケンシングから、疾患の原因遺伝子を突き止め、適切な治療法が示唆され、症状が大きく緩和されたケースが報告された (Sci. Trans. Med.)
June 15, 2011,Nature News,© 2011 NPG
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二つの研究グループが独立に構造を解き明かした受容体の構造は、予想外にも高次らせんコンフォメーションの形であった (2 papers in Nature)
June 13, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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ニコチンが脳内のニコチン受容体を介して、食欲を抑制するメカニズムが明らかにされた (Science)
June 9, 2011,Science Now,© 2011 AAAS/Science
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バクテリアで初めて見出されたリグニン分解酵素はバイオ燃料生産に有望
分解が難しい木質成分のリグニンを過酸化分解する酵素が、土壌中に生息するロドコッカス属バクテリアから見出された (Biochemistry)
June 9, 2011, Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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様々なタイプの自閉症が共通のパスウェイを共有していることが明らかにされた (Sci. Trans. Med.)
June 8, 2011,Science Now,© 2011 AAAS/Science
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X 線自由電子レーザー施設 SACLA(サクラ)がX 線レーザーの発振に成功
June 7, 2011,理研‐高輝度光科学研究センター 共同プレスリリース,
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神経変性疾患に関連づけられているキヌレニン-3-モノオキシゲナーゼ (KMO)阻害剤JM6が見出された。JM6は血液脳関門を透過しないが、血中でKMOを阻害し、その保護性シグナルが脳に送られ、症状を緩和する (Cell and Current Biology)
June 3, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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受容体のアッセイによく使われるプロベネシドが、苦味受容体TAS2Rを阻害することが見出された (PLoS One)
June 3, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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マラリア原虫の宿主となっている蚊は、血を吸う相手である人間が発散する二酸化炭素の濃度変化をたどって餌を見つけ出す。蚊の嗅覚をかく乱して、方向性を狂わすことができる3種の新しい化合物群が見つかった (Nature)
June 1, 2011,Nature:今週のハイライト,© 2011 NPG
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一分子蛍光エネルギー移動を用いて、タンパク質のミスフォールディングは隣接したタンパク質ドメインのアミノ酸配列が類似しているほど起こりやすいことが示された (Nature)
May 31, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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生体高分子合成:化学合成が報告された306残基のテトラユビキチンは、今までに合成されたタンパク質で最も長い (Angew. Chem. Int. Ed.)
May 30, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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ユビキチンにより“廃棄物”とマーキングされたサルモネラ菌は、オートファジー受容体として機能するオプチニューリンにより分解へと導かれることが報告された (Science)
May 27, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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陸生生物より海洋生態系への影響が大きいようだとの調査が発表された (Environ. Sci. Technol.)
May 27, 2011,Nature News,© 2011 NPG
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細胞や組織のタンパク質複合体の構成成分や化学量論的特性を、単一分子レベルの分解能で解明する新しい方法が開発された (Nature)
May 25, 2011,Nature:今週のハイライト,© 2011 NPG
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血液と脳脊髄液との間の物質交換を制限する血液脳関門を透過できるよう設計された抗体を用いて、アミロイドβタンパク質産生が抑えられることが報告された (2 papers in Sci. Trans. Med.)
May 25, 2011,Nature News,© 2011 NPG
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ミトコンドリアの鉄トランスポーター「MIT」(Mitochondrial Iron Transporter)が、植物で初めてイネから単離された (Nature Communications)
May 25, 2011,東京大学プレスリリース,
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電子レンジを用いて簡便に、放射性ヨウ素を鉛とバナジウムの複合酸化物Pb5(VO4)3I として固定化できることが報告された (J. Nuclear Materilas)
May 24, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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腸内セロトニン量の骨密度と成長に及ぼす影響に関して、2つの研究グループが相反する結果を報告した (J. Bone Miner. Res. & Nat. Med.)
May 23, 2011,New York Times,© 2011 The New York Times
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病原菌のプロテアーゼClpPの講造が解析された:大きなコンフォメーション変化により水平な管孔が形成され、廃棄物はそこから拡散していく (Angew. Chem. Int. Ed.)
May 16, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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腸内細菌と行動:その不安は脳ではなく腸からくるのかもしれない
マウスを用いて、抗生物質で腸内細菌叢を乱すと行動に変化が引き起され、脳内でうつ状態や不安と関連する脳由来神経栄養因子BDNFが増加することが報告された (Gastroenterology)
May 17, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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タンパク質?タンパク質相互作用の新しいモデリング手法で、インフルエンザウイルス表面の抗原性糖タンパク質ヘマグルチニンの高親和性結合剤が設計され、結晶構造解析から予測された結合インターフェースが支持された (Science)
May 14, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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蚊の腸内のエンテロバクター属細菌が活性酸素種を産生しマラリア原虫を殺すことが見出された (Science)
May 13, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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経口糖尿病薬チアゾリジン誘導体は、核内受容体PPARγに結合し、代謝関連遺伝子の転写を調節してインスリン作用を増強させるが、副作用として体液貯留を伴う浮腫を生じることがある。東京大学の研究グループはPPARγに結合したチアゾリジン誘導体が、遺伝子転写の調節を介さずに速やかに腎臓のナトリウム再吸収を亢進させることを見出した (Cell Metabolism)
May 4, 2011,東京大学プレスリリース,
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土壌放線菌の酵素SpnFが選択的にDiels-Alder 環化付加反応を引き起こし、天然の殺虫剤スピノシンA を生合成することが明らかになった (Nature)
May 9, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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コンピューターモデリング手法を組み込み、従来法で困難だったタンパク質構造を解析
従来法で構造決定が困難だった13のタンパク質のうち8種の構造が決定された (Nature)
May 1, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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C?F結合を切断する稀な酵素の触媒作用が構造解析から明らかにされた (J. Am. Chem. Soc.)
May 2, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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腫瘍増殖に関与するキナーゼ類は、エイズ治療薬ネルフィナビルのターッゲトのHIVプロテアーゼとは機能が異なるが構造は類似し、ネルフィナビルと弱く結合する (PLoS Computational Biology)
April 29, 2011,Science Now,© 2011 AAAS/Science
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薬剤再評価: 希少疾病や熱帯病治療薬開発に向けた網羅的な認可薬ライブラリー
NIHのケミカルジェノミクスセンター (NCGC)が、認可薬や治験途中でドロップした化合物27,000を集めたライブラリーを公開し、希少疾病や熱帯病治療薬開発に向けたスクリーニングを開始した (Sci. Trans. Med.)
April 27, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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新規ターゲットタンパク質を狙った薬剤開発でC型肝炎治療に期待
初の分子標的治療薬(プロテアーゼ阻害剤)は認可間近で、EGFRなどの新しいターゲットに関する研究も進捗している (Nature Medicine)
April 26, 2011,Nature News,© 2011 NPG
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臨床診断法:アルツハイマー病や2型糖尿病の初期段階を検知する新しいアッセイ法 (Biochemistry and PLoS One)
April 25, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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腸内に大量に存在するグラム陰性桿菌バクテロイデス・フラジリスが産生する多糖A (PSA)は、Toll様レセプターTLR2を介してTLRシグナル経路を活性化し、宿主?細菌の共生を確立する (Science)
April 22, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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22人のヨーロッパ人、13人の日本人、4人のアメリカ人の腸内細菌の比較解析から明確な3種のサブタイプの存在が明らかとなった (Nature)
April 20, 2011 ,Nature News,© 2011 NPG
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最近の進展に関するレビュー (Nature Biotechnology)
April 8, 2011,Nature Biotechnology: Perspective,© 2011 NPG
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水分子が接着性の水素結合ネットワークを形成し、親水的タンパク質?タンパク質相互作用を安定化させる (Nat. Commun.)
April 11, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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フラボタンパク質を用いたラベルでタンパク質の細胞内局在を見る (PLoS Biology)
April 6, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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連鎖球菌のM1タンパク質が宿主タンパク質、血液凝固因子フィブリノーゲンと形成する複合タンパク質超構造が報告された (Nature)
April 6, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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不安定なペプチドを分子内架橋で安定化して薬剤を開発することが試みられている
April 4, 2011,MIT Technology Review,© 2011 Technology Review Inc.
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アルツハイマー病に特有のタンパク質凝集塊を染色するために使われる色素チオフラビンTは線虫の老化を遅くすることが示された (Nature)
March 30, 2011,Nature News,© 2011 NPG
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脳疾患で特徴的に認められる誤って折り畳まれ凝集したタンパク質は、がんにおいても役割を果たしているようだ (Nat. Chem. Biol.)
March 28, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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口腔内に棲むバクテリアが産生するある種の酵素は歯垢生成を阻害することが見出された (Appl. Environ. Microbiol.)
April 1, 2011,Science Now,© 2011 AAAS/Science
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NMRでプロバイオティクスチーズの代謝プロフィルを追跡する (J. Agri. Food Chem.)
April 4, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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ある種の藻類の持つカルシウムを避けてストロンチュームを選択的に取り込む能力が放射性廃棄物処理に利用できるかもしれない (ChemSusChem)
March 30, 2011,Nature News,© 2011 NPG
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XFELの愛称は「SACLA(さくら)」
March 29, 2011,理研‐JASRI共同プレスリリース,
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チェルノブイリ原発爆発事故から25年経ち、クリーンアップ作業は長期化し、健康被害に関する調査研究は躓いている。日本にとっての教訓はあるだろうか? Nature誌ニュースエディターによる現地ルポを交えた解説
March 28, 2011,Nature News,© 2011 NPG
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1945年に広島と長崎に投下された原爆の被爆者9万4千人の63年間に渡る追跡調査は、放射線リスク評価のゴールドスタンダードである
March 25, 2011,Science: News & Analysis,© 2011 AAAS/Science
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Science誌による東北大学、高エネルギー加速器研究機構などの状況速報
March 25, 2011,Science: News & Analysis,© 2011 AAAS/Science
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放射線被ばくの影響を防ぐことを目指したいくつかの薬剤候補の開発が進んでいる。しかし、この未だ有効な治療法がない医療ニーズに取り組むグループは少ない
March 25, 2011,Science: News & Analysis,© 2011 AAAS/Science
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東日本大震災:3月24日号Nature誌の論説
March 24, 2011,Nature Editorials,© 2011 NPG
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がんと闘う(1):黒色腫治療に向けた2つのターゲットタンパク質
ゼブラフィッシュモデルを用いて、メラノーマを促進する2種類の酵素(DHODH とSETDB1)が同定された (2 papers in Nature)
March 23, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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がんと闘う(2):38人の多発性骨髄腫患者の全ゲノムシーケンス
患者の癌性細胞と健常細胞の全ゲノムシーケンスから、治療薬開発に向けた新しいターゲットタンパク質が見つかったばかりでなく、BRAF変異を持つ患者にはメラノーマ治療用に臨床試験中の薬剤が有望であると示唆された (Nature)
March 24, 2011,MIT Technology Review,© 2011 Technology Review Inc.
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免疫細胞を活性化する抗体が手ごわい膵臓がんに有効であることが見出された (Science)
March 24, 2011,Nature News,© 2011 NPG
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線虫を用いたスクリーニングから、脂肪蓄積を制御する化合物群が見出された (Nat. Chem. Biol.)
March 23, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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Nature News誌による東北大学、高エネルギー加速器研究機構などの状況速報
March 21, 2011,Nature News,© 2011 NPG
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細胞の持つ品質保証システム:2種類の有益な変異体プリオンが、有害なミスフォールドしたタンパク質の凝集を防ぐことが酵母で見出された (Nat. Struct. Mol. Biol.)
March 21, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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産学協同の創薬:心筋ミオシンに作用し、心不全を軽減する小分子の創薬 (Science)
March 21, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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雌性ホルモンプロゲステロンがイオンチャネルを介して精子を受精に促す (2 papers in Nature)
March 21, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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ポリエン系抗生物質のアムホテリシンBは、菌の細胞膜に存在するステロールと結合してイオンチャネルを形成することが分かった (PNAS)
March 21, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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オリーブオイルに含まれる微量成分オレオカンタールは、痛みや冷気を感じるカチオンチャネルを活性化することが報告された (J.Neurosci.)
March 21, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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GPCRの構造解析: 1. 作動薬が結合したヒトA2Aアデノシン受容体
フルアゴニストが結合したヒトA2Aアデノシン受容体の構造が報告された (Science)
March 11, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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光受容し活性化された状態のロドプシンの構造が報告された (Nature)
March 10, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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活性サイトをブロックすることで、今までは観察できなかった酵素‐阻害剤の初期の相互作用状態が可視化された (J. Amer. Chem. Soc)
March 14, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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スクリーニングの難しいターゲットタンパクに初めてのヒット化合物
公的ライブラリーを用いたアカデミアの共同研究から、ホスファターゼメチルエステラーゼ‐1のナノモル阻害剤が見出された (PNAS)
March 10, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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HDL粒子の表面は心保護的なアポリポタンパク質A-Iが主に占めていることが明らかとなった (Nat. Struct. Mol. Biol.))
March 13, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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Intrinsically Disordered Proteins (不定形タンパク質)に関する動向解説
March 9, 2011 ,Nature News Feature,© 2011 NPG
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カーボンナノ粒子による抗がん剤デリバリーの多面的な利点が報告された (Sci. Trans. Med.)
March 9, 2011 ,Nature News,© 2011 NPG
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診断が難しい稀な遺伝性疾患の小児の治療のために、全ゲノムシーケンシングを役立てる試みが始まっている
March 8, 2011,MIT Technology Review,© 2011 Technology Review Inc.
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トランスレーショナルリサーチセンターの2012年発足を目指した動きが急ピッチで進められている
March 1, 2011,Nature News,© 2011 NPG
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新薬開発でアカデミアの研究が今まで以上の役割を果たすことが期待されている
March 2, 2011,Nature News,© 2011 NPG
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Sub1A遺伝子が冠水と乾燥の両方の応答経路の収束点に位置し、イネが両極端の環境を生き残り、再成長するのを助けていることが報告された (Plant Cell)
March 2, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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本研究プログラム参画の山本雅之教授に北米トキシコロジー学会 "最先端の基礎科学賞"
Keap1-Nrf2シグナル経路の発見とそれに続く一連の業績での受賞
February 28, 2011,東北大学プレスリリース,
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シトクロムP450の広い活性サイトの未使用部分を“ゲスト分子”で埋めて、メタンの水酸化が進行することが報告された (Angew. Chem.)
February 28, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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ストレスの消化器機能に及ぼす影響をマウスで実験中の研究チームが、アストレシン-Bペプチドに毛髪再成長の効果があることを偶然に見出した (PLoS One)
February 17, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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ゲノムシーケンスとソーシャル・ネットワーキングで肺結核流行の謎を解く
結核菌の全ゲノムシーケンシングとソーシャル・ネットワーク解析を突き合わせて、カナダでの不可解な肺結核の集団発生の原因は地域社会でのコカイン濫用にあると突き止められた (New England Journal of Medicine)
February 24, 2011,MIT Technology Review,© 2011 Technology Review Inc.
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マイクロNMRを用いた、臨床現場での腫瘍検体のタンパク質マーカー群の迅速・多重検査法が報告された (Sci. Transl. Med.)
February 23, 2011,Science Now,© 2011 AAAS/Science
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Wellcome Image Awards に選ばれた優秀アニメーションの一つ
February 23, 2011,Science Now,© 2011 AAAS/Science
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ビデオコンテスト:大腸菌を異なったカラーで染めて培養して作ったグーグルホームページイメージが、infectiously charming と評判を呼んでいる
February 22, 2011,Science Insider,© 2011 AAAS/Science
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バクテリアは極細のチャネルを作り、細胞内の中身を相互に共有する (Cell)
February 21, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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餌の桑葉にローダミン色素を混ぜると、カイコの絹タンパク質フィブロインが染まり、低コストで着色した絹を作れる (Adv. Mater.)
February 21, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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酵素グルカンスクラーゼの立体構造が解明され、この酵素による、歯垢原因物質粘着性多糖グルカンの合成メカニズムが明らかにされた (JMB)
February 17, 2011,静岡県立大‐京大‐東大‐JST共同プレスリリース,
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Structural Genomics Consortium のリーダーが提案する創薬の産学共同開発
GlaxoSmithKline 出身でStructural Genomics Consortium / Oxfordのリーダーが、開発の重複を避けうるコラボレーションモデルを提案している
February 14, 2011,Nature News,© 2011 NPG
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ショウジョウバエは匂い分子とその重水素置換体を弁別できるという報告が、嗅覚をめぐる論争を再燃させている (PNAS)
February 14, 2011,Nature News,© 2011 NPG
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創薬センターを新設する計画が波紋を呼んでいる
February 14, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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網膜症マウスモデルを用い、網膜症予防効能を有するオメガ3脂肪酸の代謝物4-HDHA とそれを産生する酵素5-リポオキシゲナーゼが同定された (Sci. Transl. Med.)
February 11, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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髄膜菌の線毛での翻訳後修飾(α-グリセロリン酸付加)が、無害な髄膜菌を病原性に変化させるスイッチとなることが報告された (Science)
February 14, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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ウイルスに感染している鞭毛虫リーシュマニア属は、宿主に感染した際、高い毒性を示すことが報告された (Science)
February 11, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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黄色ブドウ球菌のRnpAタンパク質の活性を阻害することで、そのRNAの代謝回転機構を遮断できる。3万の化合物ライブラリーのスクリーニングからリード化合物が見出された (PLoS Pathogens)
February 10, 2011,Science Now,© 2011 AAAS/Science
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メスのヤリイカの生殖器系で産生され、卵の外表面に留まるタンパク質フェロモンはオス同士の激しい戦いの引き金を引くことが見出された (Current Biology)
February 11, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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名古屋大学の研究グループは、線虫を用いた研究により、アルツハイマー病の原因タンパク質であるアミロイド前駆体タンパク質(APP)が神経細胞の軸索末端から細胞体へと輸送される(逆行輸送)過程において、微小管モータータンパク質であるキネシンと細胞質ダイニンの両方が必要であることを明らかにした (J. Neurosci.)
February 9, 2011,名古屋大学プレスリリース,
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NEJMに発表された調査研究によれば、公的機関で行われた研究は新薬や新しいワクチン開発に役立っている (New England Journal of Medicine)
February 9, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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新薬開発のパイプラインを充実させるためには、政府は業界の嘆願を聞き入れるばかりではなく、製薬メーカーと向き合わなければならない(署名入りコラム)
February 9, 2011,Nature News,© 2011 NPG
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ある種の連鎖球菌では、宿主に感染する際に使う毒素は抗毒素と結合し、自らを守っていることが構造解析から明らかにされた (Structure)
February 8, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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マウス実験で、サルモネラ菌に抗ウィルス性リボザイムを組み込み、経口投与でウィルス感染を防ぐことが示された (PNAS)
February 7, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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明治製菓の研究グループが、ポリフェノールのHDL増進とLDL減少効果の分子機構を報告した (J. Agric. Food Chem.)
February 7, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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X線自由電子レーザーの威力と可能性:膜タンパク微結晶と巨大ウィルス
世界で初めて稼働した米国のX線自由電子レーザー(LCLS)を用い、二つのインパクトある研究が報告された (2 papers in Nature)
February 3, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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マウスを使った実験で腸内細菌が脳の発達や行動に影響を及ぼすことが示された (PNAS)
January 31, 2011,ScienceNow,© 2011 AAAS/Science
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炎症性大腸疾患治療を目指してプロバイオティクス乳酸菌を遺伝子改変する (PNAS)
February 1, 2011,MIT Technology Review,© 2011 Technology Review Inc.
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免疫抑制剤および抗炎症剤として作用するトリプトライドのターゲットタンパクが同定された (Nat. Chem. Biol.)
January 31, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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長崎大などのグループが、クロイツフェルト-ヤコブ病(CJD)を引き起こす病原体ヒトプリオンの高感度検出法を報告した (Nat. Medicine)
January 30, 2011,Nature News,© 2011 NPG
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善玉菌(プロバイオティクス)の作用機構の一端を解明 (Nature)
January 27, 2011,理研‐東大‐横浜市立大共同プレスリリース,
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ラットの実験で、主に体組織の成長や修復に関与するとされるインスリン様増殖因子II(IGF-II)を投与すると、記憶保持が大幅に強化されことが示された (Nature)
January 26, 2011,Nature News,© 2011 NPG
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抗酸化酵素ペルオキシレドキシンのシステインチオール基の酸化還元の繰り返しによる時間管理が報告された (2 papers in Nature)
January 26, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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コレステリル化‐タンパク質の翻訳後修飾:クリックケミストリーでコレステリル化されたタンパク質をラベルする (Chem. Comm.)
January 21, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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好中球の抗菌ペプチド β‐デフェンシン 1 (hBD-1)を活性化するには、そのジスルフィド架橋をチオレドキシン酵素が開環する必要があることが分かった (Nature)
January 21, 2011,Science Daily,© 2011 ScienceDaily LLC
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ポータブルNMR がキャピラリー電気泳動と組み合わせられた (Anal. Chem.)
January 21, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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マラリア原虫の赤血球への侵入が可視化された(Cell Host & Microbe.)
January 20, 2011,ScienceNow,© 2011 AAAS/Science
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アミロイド斑に結合するよう設計されたトレーサーで有望な臨床試験結果が報告された(Journal of the American Medical Association)
January 19, 2011,MIT Technology Review,© 2011 Technology Review Inc.
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水晶体のタンパク質γ-クリスタリンのグルタミン酸がアラニンに置換されると、α-クリスタリンとの相互作用が強まり、混濁が生ずる (PNAS)
January 17, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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製薬化学:結晶多形の変換が温和で短時間に可能に (J. Am. Chem. Soc.)
January 17, 2011,Chemical & Engineering News,© 2011 ACS
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日本の来年度科学予算:ビッグサイエンス予算を削って競争的ファンドを増額
文科省の科学予算は3.3%増。原子力開発や地球科学が減少し、科研費やLife and Green Sciencesが増加
January 14, 2011,Science News of the Week,© 2011 AAAS/Science
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Gタンパク質共役型受容体に属するβアドレナリン受容体を持続的に活性化するには、作動薬分子とGタンパク質の両方が受容体に結合する必要があることが明らかになった (3 papers in Nature)
January 12, 2011,Nature News,© 2011 NPG
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EteRNA Game :タンパク質フォールディングのFolditに続くRNA設計ゲーム
毎週、寄せられた構造提案から最優秀が選ばれ、Stanford 大で合成される
January 10, 2011,NY Times,© 2011 The New York Times Co.
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“Scientific Reports” 誌は、PLoSのようにオンラインでオープンアクセス
January 6, 2011,Nature Press Release,© 2011 NPG
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健常者には検出されない血中の抗体が2種類見出された (Cell)
January 6, 2011,Nature News,© 2011 NPG
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アフリカに棲むホリネズミが、痰の中に生息する結核菌を嗅ぎわけることが報告された (Am. J. Trop. Med. Hyg.)
January 3, 2011,NY Times,© 2011 The New York Times Co.
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科学で経済を立て直す:Los Angels Timesの論説
科学とイノベーションは、雇用を作り出すのみならず、医療費支出も抑制する。基礎科学にはコストと時間がかかることを認識し、継続的な政府のコミットメントが必要である
December 26, 2010,Los Angeles Times,© 2010 Los Angeles Times
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父親の食生活が子孫の脂質代謝遺伝子に影響を及ぼす (Cell)
December 24, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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カカオと苺のゲノムが解読された (2 papers in Nature Genetics)
December 26, 2010,Nature News,© 2010 NPG
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From 7 to 70,000: PDBの生体高分子の構造の総数
1971年に7ヶの登録で始まったPDBにデポジットされた構造の総数が7万を超えた
December 21, 2010,wwPDB News,
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免疫を抑制する細胞を増やす腸内細菌‐クロストリジウム属細菌を発見
炎症性腸疾患やアレルギー疾患の予防・治療への新たな可能性 (Science)
December 24, 2010,JST-東大共同プレスリリース,
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多くの癌細胞は'Eat Me' シグナルタンパク質を発現している
癌細胞では、タンパク質カルレティキュリンが免疫細胞に癌細胞を飲み込み分解するようシグナルを送っている (Science Translational Medicine)
December 23, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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いわゆる“プラセボ効果”は、本当の薬を飲んでいると思い込む心理的なものと考えられている。ところがこの仮説を覆す新しい臨床試験の結果が報告された (PLoS ONE)
December 23, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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予算の詳細な配分が12月20日に発表された
December 20, 2010,Science Insider,© 2010 AAAS/Science
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テルペン生合成に関わるタキサジエン合成酵素の構造解析は、2種類の酵素ドメインを有するというバイオインフォマティクスに基づく予測を裏付けた (Nature)
December 20, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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サリドマイド類縁の古い薬剤レナリドマイドに、サイトカイン産生を刺激しT細胞を増殖することにより、高齢者を追加免疫するという新しい効能がみつかった (Clinical Immunology)
December 20, 2010,MIT Technology Review,© 2010 Technology Review Inc.
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鼻腔内に存在する常在細菌であり、感染症起因菌でもある黄色ブドウ球菌はなぜマウスよりヒトの方が感染しやすいか、ヒトにより感染しやすさが違うのは何故か? (Cell Host & Microbe)
December 16, 2010,NY Times,© 2010 The New York Times Co.
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LCLS(Linac Coherent Light Source)での第一ラウンドの実験結果に関するレポート
December 10, 2010,Science News Focus,© 2010 AAAS/Science
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閉じこもりがちな日本の若手研究者は日本の科学の停滞をもたらしてしまうのか?
年次推移の統計と識者の意見
December 10, 2010,Science News Focus,© 2010 AAAS/Science
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アブシジン酸が核内受容体PPARγと結合し、炎症と続いて起こる疾病を抑えることが報告された (JBC)
December 9, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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病害のメカニズムを明らかにするために、植物寄生菌のゲノムを詳しく比較解析した4件の研究報告 (4 papers in Science)
December 10, 2010,This Week in Science,© 2010 AAAS/Science
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干ばつがカベルネ・ソヴィニョンのポリフェノール生産を後押しする
ワインに含まれるポリフェノールであるリスベラトロールは、水不足で収量が多い。但し、シャルドネにはあてはまらない (J. Agric. Food Chem.)
December 13, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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Science論文の著者Felisa Wolfe-Simonがウェブサイトに声明を発表した
December 8, 2010,Science Insider,© 2010 AAAS/Science
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半導体技術を用い、光学系を必要としない5万ドルのシーケンサーの登場
December 8, 2010,MIT Technology Review,© 2010 Technology Review Inc.
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12月2日にScience Expressに発表され、大きな反響を呼んだ論文に多くの疑問が投げかけられている
December 7, 2010,Nature News,© 2010 NPG
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欧州放射光施設は、イギリスとイタリアからの施設運営費用負担の一時的縮減の申し出を認めた
December 2, 2010,Science Insider,© 2010 AAAS/Science
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我々の口腔と消化管に常在し、歯垢を引き起こすラクトバチルス・ロイテリ菌(乳酸菌の一種)の酵素グルカンスクラーゼの講造と機能が報告された (PNAS)
December 3, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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皆で寄ってたかって:Foldit?講造生物学、Phylo?比較ゲノミクス
December 1, 2010,Genomeweb Daily Scan,© 2010 Genomeweb LLC.
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進入のルール:アルファウイルスの宿主細胞感染機構は低pHによって始動される
2つのアルファウイルスのエンベロープ糖タンパク質構造の比較により、活性化制御の仕組みの手がかりが得られた (2 papers in Nature)
December 1, 2010,Nature今週のハイライト,© 2010 NPG
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数百のプロテアーゼの講造の網羅的比較に基づき、C型肝炎ウィルスの複製に必須なプロテアーゼの選択的共有結合型阻害薬が設計された (Nature Chem. Biol.)
December 1, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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短期のダイエットをしたマウスは、ストレスに敏感になり、そのため高カロリー食を渇望するようになる (J Neurosci.)
November 30, 2010,Science Now,© 2010 AAAS/Science
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Macromolecular Crowding: 窮屈な場所で
細胞内の込み合った条件では、タンパク質の構造、機能、活性が、希薄溶液中とは異なるという報告が増えてきた
November 29, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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バクテリアよりもずっと巨大で複雑な真核生物のリボソームの構造が報告された (Science)
November 25, 2010,Nature News,© 2010 NPG
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嫌気呼吸から酸素呼吸へと呼吸酵素が進化した手がかりを得る (Science)
November 26, 2010,理研プレスリリース,
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SWEETと命名された輸送体が、花蜜や種子、花粉発生のためのグルコースを供給する。この輸送体の一部は、病原体が盗用して糖を繁殖に使っている (Nature)
November 25, 2010,Nature今週のハイライト,© 2010 NPG
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タンパク質中の反応性の高いシステインを探し出す新しい手法 (Nature)
November 22, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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T細胞の環状DNAフラグメントの数と年齢(世代)の相関が明らかになった (Current Biology)
November 22, 2010,Science Now,© 2010 AAAS/Science
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GPCRファミリーに属する膜タンパク質、神経伝達物質ドーパミンD3受容体の構造が突き止められた (Science)
November 18, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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オーキシンやジベレリン、アブシシン酸など、数個の重要な植物ホルモンの受容体が最近同定され、構造機能研究により、それらの作用機構が明らかになっている。今回、成長調節や発生、防御反応に中心的な役割を果たす植物ホルモンであるジャスモン酸を、植物細胞が認識する機構が報告された (Nature)
November 18, 2010,Nature今週のハイライト,© 2010 NPG
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科学者とアニメ制作者が協力して、複雑な細胞内部の様子を再現する努力が始まっている
November 15, 2010,NY Times,© 2010 The New York Times Co.
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バイオウィキペディア:Community Annotation
協働してデータを格納するいくつかのバイオウィキが投稿者と読者を獲得し始めている
November 15, 2010,Nature News,© 2010 NPG
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チトクロムP450酵素とDNA修復ジオキシゲナーゼの酸化反応中間体が、二つの研究グループにより捕捉・解析された (Science & Nature)
November 15, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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Global Rice Science Partnership (GRiSP) と名付けられた、5年間で6億$の予算のイネ国際共同研究が始まる
November 10, 2010,Nature News,© 2010 NPG
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重篤なマラリアに罹患したアフリカ小児の治験で、アルテスナートと呼ばれる薬剤は既存薬に較べ、23%の死亡率低下の良好な結果を示した (Lancet)
November 8, 2010,Science Now,© 2010 AAAS/Science
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構造バイオインフォマティクス、分子モデリング、システムバイオロジーを統合し、様々な疾病向け各種既存薬が結核菌ターゲットタンパク質と相互作用することが推定された (PLoS Computational Biology)
November 8, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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免疫に関わるHLA-B タンパク質の僅か構造の違いがHIVに対する免疫を付与する(Science)
November 4, 2010,Nature News,© 2010 NPG
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抗がん剤イリノテカンの毒性は、腸内細菌の酵素βグルクロニダーゼの活性を阻害して回避できる (Science)
November 4, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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膜タンパク質生産に、従来の界面活性剤よりも適した、マルトース?ネオペンチルグリコール系両親媒性物質が報告された (Nature Methods)
November 2, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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ショウジョウバエに共生するバクテリアが、ハエのフェロモンに影響し、交尾の相手を選ばせる (PNAS)
November 1, 2010,Nature News,© 2010 NPG
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ビデオゲーム向けに開発されたGPU (Graphics Processing Units)が、以前は不可能だった分子シミュレーションを手近なものにし始めた (フォールディングシミュレーションのビデオ付き)
November 1, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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構造生物学:葉にある気孔の開閉をコントロールするイオンチャネルタンパク質は珍しい折り畳み構造を有する (Nature)
October 29, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 AC
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ゼブラフィッシュ、鱒、鮭などの硬骨魚の松果体に発現するアグーチタンパク質が周囲に応じた体色変化を司る (PNAS)
October 29, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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Science Shot: 73万DNA塩基対を有する巨大海洋ウィルス
ある種のバクテリアより多くのDNAを有するウィルスの発見は生命の定義を曇らせる (PNAS)
October 25, 2010,Science Now,© 2010 AAAS/Science
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肺における苦味受容体の発見は喘息治療法の革新に繋がるかもしれない (Nature Medicine)
October 25, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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構造生物学速報誌Acta Crystallographica Section Fの10月号は、米国PSI (Protein Structure Initiative) プロジェクトの基幹センターの一つであるJoint Center for Structural Genomics (JCSG)の特集号
October 21, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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父親ラットが脂肪分の多い餌を摂取し続けると、生まれた子ラットは糖尿病予備群になることが報告された (Nature)
October 20, 2010,Science Now,© 2010 AAAS/Science
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英国政府は向こう4年間の科学分野予算を横ばいとした。インフレーションが続くとすると、この期間の予算は10%削減に相当する
October 20, 2010,Science Insider,© 2010 AAAS/Science
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メキシコ湾原油流出事故に関する学術研究は、過去の同様の災害と比較して、インターネットのお陰で飛躍的に迅速なアウトリーチが可能になった
October 18, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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オーダーメイドのスーパコンがタンパク質フォールディングを可視化
アカデミアを一旦離れヘッジファンドマネージャーとして財をなした計算生物学者が私財を投じて作り上げた分子動力学専用コンピュータを用い、ミリセカンドスケールでタンパク質の動態を追跡 (Science)
October 15, 2010,Science News of the Week,© 2010 AAAS/Science
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結晶エンジニアリング:シスチンのメチルエステル類の効果はシスチン尿症と呼ばれる稀な腎結石の治療法を示唆 (Science)
October 14, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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“科学はその生産性を科学的に見てこなかった” 共同研究の効果は数値化できるだろうか? (Science Translational Medicine & Scientometrics)
October 13, 2010,Nature News,© 2010 NPG
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中国漁船と日本の巡視船の衝突に端を発する日中間のいさかいは学術的交流にも影を落としている
October 8, 2010,Science News of the Week,© 2010 AAAS/Science
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イギリスは世界中から最高のサッカー選手を集めているが、科学者は要らない?
来春に施行が予定されている科学者やエンジニアに関する移住抑制策に反対の声が上がっている
October 8, 2010,Science Insider,© 2010 AAAS/Science
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タンパク質の“足”のお陰である種のバクテリアは直立して動ける (Science)
October 7, 2010,Science Now,© 2010 AAAS/Science
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若い研究者がポスドクをスキップできるグラントを米国NIHが開始
Early Independence Award Programと呼ばれる新制度は、毎年10人の博士課程修了若手研究者がすぐに研究室を開くことを支援する
October 6, 2010,Science Insider,© 2010 AAAS/Science
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菌とウィルスの組み合わせが問題の原因と突き止められた (PLoS ONE)
October 6, 2010,NY Times,© 2010 The New York Times Co.
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見出されたPCG-1αタンパク質パスウェイのリンクは、このパスウェイを活性化する既存の上市薬(例えば武田製薬の2型糖尿病治療薬アクトス)の治験を促す (Science Translational Medicine)
October 6, 2010,Nature News,© 2010 NPG
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ジャスモン酸エステルの共受容体が同定され構造が解かれた (Nature)
October 6, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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研究予算削減の動きに対抗して、イギリスの科学者達が立ち上がった
October 5, 2010,Nature News,© 2010 NPG
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分岐アミノ酸(BCAA:ロイシン、イソロイシン、バリン)が中年マウスの寿命を伸ばし、心筋や骨格筋でのミトコンドリア生合成を支援する (Cell Metabolism)
October 5, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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米国構造生物学プロジェクトのフェーズIII、PSI: Biologyの予算確定
総額は5年間で$290M、内訳は4基幹センターに$140M、膜タンパク質構造解析に $75M、10の個別課題と材料ライブラリー、情報プラットフォームに併せて$75M
September 30, 2010,NIGMS News,
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国際構造生物学プロジェクト(SGC)が通算1000個目のタンパク質構造を解析
2004年開始の、オックスフォード大、トロント大、カロリンスカ研究所を中心とする国際プロジェクトSGC (Structural Genomics Consortium)のアナウンス
September 28, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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ウィルスタンパク質の抗原決定セグメントの構造を足場タンパク質で凍結して、抗体を作らせる (PNAS & Structure)
September 27, 2010,Nature News,© 2010 NPG
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ダイナミン関連蛋白質Drp1 によって引き起こされる膜の再構成がBax タンパク質のオリゴマー形成を促進することが明らかにされた (Cell)
September 27, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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クリックケミストリー を用いた新しいアッセイ法により、肥満や糖尿病治療のターゲットであるグレリンの阻害剤のハイスループットスクリーニングが可能に (Angew. Chem. Int. Ed.)
September 27, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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王立協会会長と6つの大学の高官が集結し、英国政府の科学予算縮減提案に反対した
September 24, 2010,Science Insider,© 2010 AAAS/Science
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染色体転座で引き起こされるこの腫瘍では、融合タンパク質BRD4 (Bromodomain-containing protein 4) - NUT が生じる。BRD4の阻害剤が見出され、その効力と選択性が、阻害剤‐BRD4共結晶の構造解析から説明された (Nature)
September 24, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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原虫P. falciparumの網状赤血球結合タンパク質PfRh4がヒト赤血球細胞表面受容体CR1 (Complement receptor 1)に結合して侵入する新しい経路が見出された (PNAS)
September 24, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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シアノバクテリアは、紫外線から自身を守るためmycosporine-like amino acid(MAA)という紫外線吸収性分子を生合成しており、MMAは日焼け止め成分として実用化されている。MMA生合成経路の4種の酵素全てが同定・解析された (Science)
September 24, 2010,This Week in Science,© 2010 AAAS/Science
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フェロモンは生物間の性的コミュニケーションに利用されることがよく知られている。東京大学のチームが、線虫の個体群密度はフェロモンシグナルを介して調節されることを明らかにした (Science)
September 24, 2010,This Week in Science,© 2010 AAAS/Science
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排出ポンプの構造: (1) 多剤耐性タンパク質ポンプNorM
NorMトランスポーターは多くの抗菌剤や薬剤の耐性化の原因となっている。コレラ菌のNorM自体とNorMにナトリウムイオンが結合した構造が解かれた (Nature)
September 23, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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排出ポンプの構造: (2) 内膜カチオントランスポーターCusA
カチオン排出システムのサブユニットであるCusAの構造が、単体、銅イオン、銀イオン結合状態で報告された (Nature)
September 23, 2010,Nature Editor's Summary, © 2010 NPG
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サルモネラ菌が腸内に侵入し急性腸炎を起すと、我々の免疫系は菌を殺すため酸素ラジカルを産生する。ところが、酸素ラジカルはテトラチオン酸塩と呼ばれる硫黄化合物を生成し、サルモネラ菌は、酸素の代わりにこの化合物を呼吸に使って増殖する (Nature)
September 23, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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中国がプロテオーム解析に突き進む:Human Proteome Project
北京プロテオーム研究センターを中心に、肝臓、血液、脳、皮膚などに発現するタンパク質の網羅的解析に乗り出した
September 22, 2010,Nature News,© 2010 NPG
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活性酸素産生酵素NADPHオキシダーゼ4(NOX4)が、脳卒中で引き起おこされる酸化ストレスの主要な源で、脳傷害を防ぐための治療薬ターゲットであると同定された (PLoS Biology)
September 21, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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HIVウイルスはどうやってAIDS治療薬AZTへの耐性を獲得するのか?
AZT(アジドチミジン)は、HIVウイルスが複製する際に必須のRNAからDNAを生成する逆転写酵素を阻害する。AZTへの耐性を獲得したウイルスの変異逆転写酵素は、そのAZTとの複合体の構造解析から、ATPの力を借りてAZTを切断することが明らかになった (Nature Struct. Mol. Biol.)
September 19, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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哺乳類の生体時計を制御するタンパク質クリプトクロムが、肝臓でのグルコース産生も制御することが見出された (Nature Medicine)
September 19, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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Toll様受容体TRL7やTRL9はウィルス性病原菌を認識し、炎症促進性サイトカインと抗ウイルス性I型インターフェロンの活性化という2種類の別々のシグナリング経路を誘起する。このためには細胞内局在化が鍵となることが示された (Science)
September 17, 2010,This Week in Science,© 2010 AAAS/Science
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可視化:メッセンジャーRNA分子の核から細胞質への移動のリアルタイム観察
空間分解能26nm、時間分解能20msの最新の顕微鏡技術を用いてmRNAの核から細胞質への核膜孔を通る輸送が観察された (Nature)
September 15, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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可視化:低温電子顕微鏡による重合糸状F-アクチンの2次構造観察
大阪大学のチームが最新の低温電子顕微鏡技術を用いて、6.6 Å の解像度でF-アクチンの構造を報告した (Nature)
September 15, 2010,Nature,© 2010 NPG
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アジア諸国の国際論文誌発表件数は、1980年の13%から2009年の30%に急上昇。米国は40%から28%に減少。2009年アジアトップは中国の11%、日本は2位で6.7%、3位インド3.4%
September 12, 2010,NY Times,© 2010 The New York Times Co.
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NMRに基づく手法で、折り畳み構造をとるタンパク質の中間体の姿を捕える (Science)
September 13, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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アミロイド前駆体タンパク質 (APP)は鉄イオン排出に関わる鉄イオン酸化酵素活性を有し、 この活性は、アルツハイマー病で蓄積したアミロイドβ(Aβ) ペプチドにトラップされた亜鉛イオンによって阻害されることが見出された (Cell)
September 10, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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アルツハイマー病で蓄積するアミロイドβ(Aβ) ペプチドは、ミトコンドリアや成長因子受容体など膜輸送で運ばれる様々なタンパク質積荷の軸索輸送機能を障害する。微小管結合タンパク質タウのレベルを減少させると、Aβが引き起こす“交通渋滞”を防ぐことが報告された (Science)
September 9, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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蚊のマラリア原虫に対する免疫:蚊はどうやってマラリアと戦っているのか?
マラリアを媒介する蚊であるガンビアハマダラカのマラリア原虫に対する自然免疫について、そのメカニズムが明らかにされた(Science)
September 9, 2010,Science Now,© 2010 AAAS/Science
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原核生物のゲノムに存在するCRISPR (clustered regularly interspaced short palindromic repeats、クラスターになっている規則的な短いパリンドローム反復配列) は、侵襲性遺伝因子に対する抵抗性を与える。CRISPR由来のcrRNAのプロセシングを担うエンドリボヌクレアーゼが同定され、構造と機能が明らかにされた(Science)
September 9, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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NIHが米国PSI:Biology プロジェクトで材料ライブラリーを$1.5M の予算で公募
PSI:Biology Materials Repository で、プロジェクト内にて作成されたベクターやクローンを収集・貯蔵し、一般公開する
September 8, 2010,GenomeWeb Daily News,© 2010 GenomeWeb LLC
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不定形(Intrinsically Disordered)タンパク質の遊離と脱リン酸化酵素と結合状態の構造
3種のタンパク質脱リン酸化酵素1 (PP1) 制御因子、I-2 (PPP1R2)、spinophilin (PPP1R9B)、DARPP-32 (PPP1R1B)とそれらがPP1と結合した複合体の構造が描像された (Structure)
September 8, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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ユビキチン鎖の長さによってプロテアソーム活性が調節されるという調節機序が報告された。脱ユビキチン化酵素USP14は、ユビキチン鎖を刈り込むことで、ユビキチン化された基質の分解を阻害する。さらに、小分子IU1がUSP14を阻害し、基質の排除を促進することが見出された (Nature)
September 9, 2010,Nature Editor\'s Summary,© 2010 NPG
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樹状細胞のHIVウィルスに対する免疫応答を活性化する感知機構が見出された
免疫の監視細胞である樹状細胞は、HIVに関しては適切に応答できない。樹状細胞はHIVウィルス内部の遺伝物質ではなく、カプシド(外衣タンパク質)を認識することが報告された (Nature)
September 8, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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タンパク質を輸送する:ナトリウムイオンに依存しないタンパク質の交換輸送
L-カルニチンとその前駆体ブチロベタインの膜内外の交換輸送を触媒する膜輸送タンパク質CaiT の構造が決定された (Nature)
September 9, 2010,Nature Editor's Summary,© 2010 NPG
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B-RAFタンパク質のアミノ酸変異をターゲットにした化合物PLX4032が、第1相臨床試験 (New England J. Med.) と、PLX4032が結合した変異B-RAFタンパク質の結晶構造解析に基づく基礎研究 (Nature) の両面から有望な結果を示した。
September 7, 2010,Nature News,© 2010 NPG
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寄生植物「ストライガ」の発芽を促す「ストリゴラクトン」の新機能を発見
植物の根から放出されるストリゴラクトンは、重要な「分枝ホルモン」であると同時に、ストリガ属の寄生植物が侵入するための合図にもなっている。寄生植物の侵入を遮断することができる小分子コチリミド類が見出された (Nature Chem. Biol.)
September 6, 2010,理研プレスリリース,
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チヌークサーモン(別名キングサーモン、鱒の介)の成長因子をアトランティックサーモン(大西洋鮭)に組み込み、成長速度を2倍にした遺伝子操作鮭の販売認可がFDAで審査されている
September 7, 2010,MIT Technology Review,© 2010 Technology Review, Inc.
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NMR法にX線・中性子散乱を組み合わせることで、今までで最大のタンパク質の溶液構造が解かれた (J. Am. Chem. Soc.)
September 6, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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マラリア治療に極めて有望なスピロインドロンという新しい化合物群が発見された。P型カチオントランスポーターATPアーゼ4 (PfATP4)にアミノ酸変異を持つ株で耐性が認められ、作用機構と耐性要因が示唆された (Science & J. Medicinal Chem.)
September 3, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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上皮組織内のγδ T細胞は、感染や外傷などに対して重要な一次防御を行なう。接合部接着分子様タンパク質(JAML)が上皮内γδ T細胞の共刺激受容体であり、CARタンパク質(Coxsackie and adenovirus receptor)と結合して細胞増殖やサイトカイン産生などを促することが見出された。CAR/JAML複合体の構造も報告された (2 papers in Science)
September 3, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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機械的刺激に対する細胞応答に関与する二つのイオンチャネルタンパク質Piezo1 (Fam38A) とPiezo2 (Fam38B) が同定された (Science)
September 3, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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ω3脂肪酸は、体脂肪中のマクロファージに高発現するGタンパク質共役受容体GPR120を活性化し、広範な抗炎症性効果を発揮することが明らかにされた (Cell)
September 3, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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84歳のノーベル賞受賞者Paul Greengardが率いるチームが、γ-セクレターゼを選択的にアミロイドβ産生に誘導するγ-セクレターゼ活性化タンパク質(GSAP)を発見した。抗がん剤イマチニブ(グリベック)が、GSAPに対する効果を介してアミロイドβ産生を阻害することも明らかにされた (Nature)
September 1, 2010,NY Times,© 2010 The New York Times Co.
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神経疾患変異はNa+/K+-ATPアーゼのC末端イオン経路を障害する (Nature)
September 2, 2010,Nature Editor's Summary,© 2010 NPG
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大腸菌を抗生物質に曝露し、自然発生した少数の薬剤耐性変異体が、集団の大多数を抗生物質から守ることが明らかになった。この耐性をもつ単離株はシグナル分子のインドールを産生し、これが仲間の抗生物質感受性菌がもつ薬物排出ポンプなどの防御機構を活性化する (Nature)
September 2, 2010,Nature Editor's Summary,© 2010 NPG
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酵母 のメッセンジャーRNA(mRNA)の二次構造の解析から、3,000を超える、それぞれ異なる転写産物の構造プロファイルが明らかにされた。類似の機能を示すRNA分子は構造も類似していることなど、配列ではなく構造からRNAをカテゴリー化することが期待される (Nature)
September 1, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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7人の健常者の約500万T細胞レセプターDNA鎖がシーケンスされ、獲得免疫細胞における強い類似性が示された (Science Translational Medicine)
September 1, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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土壌バクテリアのデスルホビブリオ・デスルフリカンスは、その膜表面の酵素ヒドロゲナーゼで、産業廃棄物中のパラジウムイオンを還元して金属として回収していることが見出された (Microbiology)
September 1, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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"発熱分子"、炎症性分子インターロイキン1(IL-1)がその活性化受容体や阻害性受容体と結合した複合体の構造が報告された。この知見は、新しい抗炎症治療の開発につながる可能性がある (Nature Immunology)
August 30, 2010,Nature Journal Highlights,© 2010 NPG
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アルコールの代謝に関わる酵素アルデヒドデヒドロゲナーゼ-2(ALDH-2)の阻害が、コカイン依存症の治療法になる可能性があると報告された (Nature Medicine)
August 23, 2010,Nature Journal Highlights,© 2010 NPG
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ヒドロキシ尿素は、従来の仮説と異なり、赤血球でのNO産生を促進し、ATPの放出が増加し、血流を改善することが明らかにされた (Eur. J. Pharmacol.)
August 30, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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ヒトアデノウイルスは急性感染の原因でもあり、ワクチンや遺伝子導入のベクターとしても用いられている。その構造が相補的な手法で解かれた (2 papers in Science)
August 27, 2010,This Week in Science,© 2010 AAAS/Science
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抗ストレスタンパク質Hsp 12は折り畳むことにより細胞膜をリークや破裂から守る
酵母のヒートショックタンパク質Hsp12は、ストレスに応答して発現量が数百倍上昇する。細胞質基質ではコンパクトに折り畳まらない不定形タンパク質のHsp12は、脂質と出会うとヘリックス構造をとり、ストレスから細胞膜を守ることが報告された (Molecular Cell)
August 26, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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シロイヌナズナを用いて、グルコース分解酵素をコードする遺伝子SFR2(SENSITIVE TO FREEZING 2)が脂質を生成し、葉緑体や細胞膜を凍結ダメージから守ることが見出された (Science)
August 26, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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半数以上のメラノーマでBRAF遺伝子変異に基づくBRAFタンパク質の恒常的活性化とそれによる細胞増殖が見られる。BRAFタンパク質を阻害する分子標的薬候補PLX4032は80%以上の患者に奏功との治験結果が発表された (New England Journal of Medicine)
August 25, 2010 ,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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植物乾燥ストレスホルモンであるアブシジン酸 (ABA)の合成模倣体ピラバクチンを活用して14種のABA受容体ファミリーが昨年同定された。ピラバクチンが結合した数種のABA受容体の結晶構造が比較された (2 papers in Nature Struct. Molec. Biol.)
August 25, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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染色体凝縮制御因子RCC1タンパク質がヌクレオソーム(染色質でのDNAとタンパク質の複合構造単位)に結合した複合体の構造が報告された (Nature)
August 25, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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タンパク質シャペロンHsp90 (heat shock protein) の二量体は、N末端に加えC末端でも開閉コンフォメーションを取ることが見出された (PNAS)
August 23, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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植物ホルモンアブシジン酸が引き起こす広範なタンパク質リン酸化と脱リン酸化
アブシジン酸ホルモンは50種類ものホスホペプチドのリン酸化状態を著しく変化させることが報告された (PNAS)
August 23, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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三つの独立なチームから、3418アミノ酸からなる巨大な遺伝性乳がん感受性タンパク質BRCA2の精製が報告された (Nature & 2 papers in Nature Struct. Molec. Biol.)
August 22, 2010,Nature News,© 2010 NPG
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麻酔薬ケタミンの即効性抗うつ作用の解析から抗うつ剤の新しいターゲット
NMDA(NメチルDアスパラギン酸)受容体拮抗薬であるケタミンの即効性抗うつ効果は、mTOR(哺乳類ラパマイシン標的タンパク質)依存性のシナプス形成によることが見出された (Science)
August 19, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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エフェクタータンパク質によるホストへの侵入(1):トマト病原体真菌
トマト病原体であるクラドスポリウム属の真菌の細胞壁の主成分はキチンであり、ホスト植物内でキチンオリゴ糖が病原菌分子パターン(PAMPs)として認識されて、ホストの免疫が活性化される。真菌のエフェクタータンパク質Ecp6は、この免疫を抑制して感染を成立させる役割を果たしていることが報告された (Science)
August 19, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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エフェクタータンパク質によるホストへの侵入(2):腸炎ビブリオ菌
魚介類の生食で食中毒を発症させる腸炎ビブリオ菌のエフェクタータンパク質VPA0450 は脱リン酸化酵素であり、ヒトの細胞膜維持に必須のホスホリン脂質を加水分解することが見出された (Science)
August 19, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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細菌の鞭毛モーターは、鞭毛繊維を回転させるが、その方向は鞭毛のスイッチ複合体によって調節されている。複合体の構成要素の1つで環状のタンパク質FliGの構造が決定された (Nature)
August 19, 2010,Nature Editor's Summary,© 2010 NPG
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ミトコンドリアのビオチン依存性酵素であるプロピオニルCoAカルボキシラーゼ(PCC)は、いくつかのアミノ酸、コレステロールや脂肪酸の異化作用に必須である。PCCホロ酵素の構造が決定された (Nature)
August 19, 2010,Nature Editor's Summary,© 2010 NPG
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有望視されていた治療薬候補の大規模治験の失敗は、進展する診断法と治療法のギャップを浮かび上がらせている。
August 18, 2010,NY Times,© 2010 The New York Times Co.
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テータを独り占めしない、特許を申請しない。アルツハイマー病診断のオープンイノベーションを目指す産官学プロジェクトANDIが PETスキャンや脊髄液テストで実績をあげている
August 12, 2010,NY Times,© 2010 The New York Times Co.
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マウスでは起こらないニッケルアレルギーの分子メカニズムが明らかになった (Nature Immunology)
August 15, 2010,Nature News,© 2010 NPG
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21 番目のアミノ酸と注目されるセレノシステインの生合成の仕組み
セレノシステイン(Sec)の生合成に必須なリン酸化酵素PSTK とSecを運搬する専用の転移RNAとの複合体の結晶構造が解析され、生物が反応性や毒性の高いセレン を有用なSec というアミノ酸としてタンパク質に正しく取り込む仕組みが報告された (Molecular Cell)
August 13, 2010 , 理研プレスリリース,
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樹状細胞におけるβ-カテニンの活性化により腸管での免疫と寛容が制御される
樹状細胞は病原体に対する免疫の開始と自己抗原への免疫寛容の維持に重要な役割を果たす。腸内のWnt-β-カテニンシグナル伝達経路が免疫寛容を生じさせることが判明した (Science)
August 13, 2010 ,This Week in Science,© 2010 AAAS/Science
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腫瘍タンパク質のペプチド断片が漏れ出て免疫細胞に入ると、免疫細胞はこのペプチドを表面に提示する。このペプチドは「危険信号」として機能し、癌に対する特異的な免疫反応を誘発する。しかし癌細胞は、発達し増殖するにつれ、免疫細胞に認識されなくなる。腫瘍にサルモネラ菌を注入すると、免疫細胞が再び腫瘍を認識できるようになることが明らかにされた (Sci. Transl. Med.)
August 12, 2010,Science Transl. Med.,© 2010 AAAS/Science
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米国NIH / NIGMSが膜タンパク質プロジェクトをスタート
Membrane Protein Structural Dynamics Consortiumと名付けられた5年間22.5M$のプロジェクトには、米国11機関に加え、ドイツ、オランダ、カナダからも参加
August 10, 2010,NIGMS Announcement,
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どのようなタンパク質が加齢に伴い不溶性の凝集塊を形成するのか?線虫で約700ものタンパク質が凝集することが報告された (PLoS Biology)
August 10, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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窒素をアンモニアに変換する反応を触媒する酵素であるバナジウムニトロゲナーゼが、一酸化炭素をエチレン、エタン、プロパンなどの炭化水素へと還元する触媒機能も有することが見出された (Science)
August 9, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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フラグメントベースの新薬探索、コンビナトリアルケミストリー、クリックケミストリーを組み合わせて、構造の知られていないミエリン関連糖タンパク質(MAG)の阻害剤が同定された (Angew. Chem. Int. Ed.)
August 9, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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鉄分のバランス (1): 乳癌における鉄調節?フェロポーチン
鉄はほとんどすべての細胞の成長に必要で、細胞内で厳格に調節されなければ重篤な問題を引き起す場合がある。鉄を細胞外に輸送するタンパク質フェロポーチンの低濃度が乳癌女性の不良な転帰の強力な予測因子であることが明らかにされた (Science Transl. Med.)
August 4, 2010,Science Transl. Med.,© 2010 AAAS/Science
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鉄調節タンパク質IRPがミトコンドリアにおける鉄分の調節して、その機能を確保していると報告された (Cell Metabolism)
August 6, 2010 ,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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細菌のトポイソメラーゼはそのDNA複製を担い、重要な抗菌剤のターゲットタンパク質である。新規抗菌剤?トポイソメラーゼ?DNA複合体の構造が報告された (Nature)
August 4, 2010 ,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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人間の視覚能力や直感は、解析の仕上げの部分で、スーパーコンピュータを出し抜く (Nature)
August 4, 2010,ScienceNow,© 2010 AAAS/Science
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バシラス属桿菌のATP合成酵素のタービン部分のローターであるc‐リングの結晶構造が報告された (PLoS Biology)
August 4, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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トリカルボン酸回路(TCA)は炭素代謝の中心となるハブであり、解糖、糖新生、呼吸、アミノ酸合成などの生合成経路を結びつけている。だが、熱帯熱マラリア原虫ではTCA代謝が解糖とほとんど切り離されており、根本的に異なる生産ラインに沿って組織化されていることが示された (Nature)
August 5, 2010 ,Nature Editor's Summary,© 2010 NPG
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X線結晶構造解析と低温電子顕微法を併用して、質量6Mダルトンに及ぶ、真核生物で最も巨大なタンパク質分解酵素であるTripeptidyl peptidase II (TPP II)の構造が提示された (Nat Struct Mol Biol.)
August 2, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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ピロリ菌が産生する病原性タンパク質CagAは、宿主の腫瘍抑制タンパク質RUNX3をプロテアソームが媒介する分解へと仕向ける (Oncogene)
August 2, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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腫瘍抑制タンパク質p53によって活性化されるタンパク質PUMAは、DNAダメージに応答し細胞死をトリガーする。この細胞死スイッチタンパク質が、ある場合には腫瘍形成をあおることが報告された (2 papers in Genes Dev.)
July 31, 2010,Nature News,© 2010 NPG
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原子間力顕微鏡法を用いて、天然由来の窒素含有有機化合物アルカロイドの構造が明らかにされた (Nature Chemistry)
August 1, 2010,Nature News,© 2010 NPG
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米国タンパク質構造プロジェクトPSIの第3期は、厄介だが重要なヒトのタンパク質受容体に挑戦。本研究プログラムへの言及も。
July 27, 2010,Nature News,© 2010 NPG
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タンパク質ADAM10:アミロイド前駆体タンパク質を切断する酵素
タンパク質分解酵素ADAMファミリーの中でADAM10 が、アミロイド前駆体タンパク質(APP)を切断し、βアミロイドの生成を妨げることが報告された (EMBO J.)
July 30, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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ラン藻で脂肪酸代謝物をアルカンやアルケンに転換する生合成経路が明らかにされた(Science)
July 30, 2010,This Week in Science,© 2010 AAAS/Science
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免疫センサーの制御タンパク質複合体(RAR1- SGT1-HSP90)の立体構造解析から機能を解く (Molecular Cell)
July 30, 2010,理研プレスリリース,
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摂食時には膵島がインスリンを分泌してグルコースの恒常性を維持するが、糖尿病患者ではこの律動的な過程に障害が生じている。膵β細胞で局所組織の時計が概日リズムと代謝シグナルを統合していることが示された (Nature)
July 29, 2010,Nature Editor's Summary,© 2010 NPG
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ハンチントン病治療法開発に手がかりとなるタンパク分解酵素ファミリー
ハンチンチンタンパク質の毒性断片への分解過程に、細胞外マトリックスを切断する金属含有酵素の一群 (MMPs) が関与していることが見出された (Neuron)
July 22, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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スティールワイヤーが健常な脳組織から悪玉タンパク質の出現を“触媒”することが報告された (PNAS)
July 26, 2010,Nature News,© 2010 NPG
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悪玉細胞と思われていた好塩基球がダニ防御に活躍 (J. Clinical Investigation)
July 27, 2010,JST?東京医科歯科大学 共同プレスリリース,
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タンパク質を精製してどの金属が含まれているのかを調べるのではなく、金属ピークに着目してどのタンパク質が付随しているか調べることにより、多様な金属結合タンパク質の存在が報告された (Nature)
July 26, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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長寿命は、細胞の毒物排出ポンプ?多剤耐性 (MDR) タンパク質トランスポーター?と関連しているかもしれない (Nature Cell Biol.)
July 25, 2010,Nature News,© 2010 NPG
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レジオネラ菌タンパク質DrrAに関する構造・機能解析から、DrrA酵素がヒトの細胞内膜輸送調節タンパク質Rab1を修飾して、潜入に活用することが明らかにされた (Science)
July 23, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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コノトキシン(イモガイのペプチド神経毒)のN末端とC末端を繋げた環状16残基ペプチドは経口投与可能な鎮痛剤となることが報告された (Angew. Chem. Int. Ed.)
July 26, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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代謝疾患と骨量の関連:骨形成?骨吸収過程が血糖をチェックする
二つの独立なチームが、骨組織におけるインシュリンのシグナル伝達により骨の非コラーゲン性タンパク質ホルモンオステオカルシンが活性化され、膵臓でインシュリンの放出を促すことを明らかにした (2 papers in Cell)
July 22, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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SIRT1 (sirtuin1): 加齢と関連するタンパク質のアルツハイマー病との関連
これまでに加齢プロセスに関連付けられてきた脱アセチル化酵素sirtuin 1が、アミロイド前駆体タンパク質(APP)を無害なペプチド断片に切断する酵素αセクレターゼを活性化することによって、アルツハイマー病関連βアミロイドペプチドの産生を抑制することが見出された (Cell)
July 22, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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SIRT1 (sirtuin1): 記憶機能で重要な役割を果たすタンパク質
二つの独立なチームが、sirtuin 1タンパク質を欠失するマウスは記憶や学習機能を損ねることを明らかにした (Nature & J. Neuroscience)
July 22, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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脂肪細胞分化を制御するタンパク質PPARγのCdk5キナーゼによるリン酸化がインスリン抵抗性の発生に関わっていることが示された。副作用でつまずいたPPARγをターゲットとする抗糖尿病薬の見直しの可能性が出てきた (Nature)
July 21, 2010,Nature News,© 2010 NPG
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蛾の性フェロモンの生合成に不可欠な脂肪酸アシル還元酵素遺伝子に存在する差異によって、雌のフェロモンである酢酸塩化合物のシス異性体とトランス異性体の比率が異なり、生殖隔離に結びついていることが明らかにされた (Nature)
July 22, 2010,Nature Editor's Summary,© 2010 NPG
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相選択的ゲル化剤を用いて流出原油をゲル化してすくい取る (Angew. Chem. Int. Ed.)
July 21, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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セルロース合成酵素と相互作用し、植物の一次細胞壁形成に関与するタンパク質CSI1が見出された (PNAS)
July 20, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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多発性硬化症モデル系統の無菌マウスにセグメント細菌(非病原性の常在性腸内細菌)を共生させると、腸内でTh17細胞分化が誘導され、マウス多発性硬化症を促進することが示された (PNAS)
July 19, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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牛舎のかいばから、牧場の子供をアレルギー発症から守る物質?アラビノガラクタンと呼ばれる植物多糖類が見出された (Journal of Allergy and Clinical Immunology)
July 19, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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院内感染の主因で普通の抗生物質が効かないメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) の表面タンパク質の探索から、新たな白血球傷害性外毒素タンパク質が見出された (PLoS ONE)
July 16, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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蚊を捕食するカメムシ目のマツモムシが放出する2種類の高級炭化水素が、蚊の産卵を妨害することが見出された。害虫忌避剤に応用できるかもしれない (Ecology Letters)
July 16, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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Micropeptides: 極小ペプチドによる発生制御のしくみ
わずかアミノ酸11個からなるペプチドをコードするpri遺伝子が、ショウジョウバエの胚の発生過程を制御する一群の遺伝子の発現に必要であることが見出された (Science)
July 16, 2010,JST?基礎生物学研究所共同プレスリリース,
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狙った反応に酵素を仕立てる2つの異なったアプローチ?Diels-Alderaseのコンピューターデザインとアミノ基転移酵素の進化分子工学的改変?が報告された (2 papers in Science)
July 16, 2010,Science: Perspectives,© 2010 AAAS/Science
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Good gene, bad gene:腎疾患とアフリカ睡眠病
アフリカ系アメリカ人が高い頻度で有するアポリポタンパク質L-1(APOL1)をコードする遺伝子の変異は、腎臓病を発症させる一方で、このタンパク質はアフリカ睡眠病を引き起こすトリパノソーマ原虫を溶解することが見出された (Science)
July 16, 2010,Science: News of the Week,© 2010 AAAS/Science
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腸内には細菌に加えて、細菌性ウイルス(バクテリオファージ)が常在し、個々人に固有で長期的に安定であることが報告された (Nature)
July 14, 2010,Nature News,© 2010 NPG
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リボソームの単粒子低温電子顕微鏡像190万個の解析から、その動的変化が可視化された。リボソームの構造変化は熱的に駆動される運動、つまりブラウン運動であり、この変化によりリボソーム中の狭い経路上でtRNAの方向性のある動きが引き起こされると結論された (Nature)
July 15, 2010,Nature Editor's Summary,© 2010 NPG
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タンパク質の骨格に沿った予期せぬ相互作用:n→π* 相互作用
結合軌道解析と高分解能結晶構造データベースの照合から、骨格アミド間の、酸素孤立電子対 (n) のその次のカルボニル基の反結合性軌道 (π*) への非局在化によるn→π* 相互作用が構造安定化に重要であることが示された (Nature Chemical Biology)
July 11, 2010,Nature Chemical Biology,© 2010 NPG
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蛍光顕微鏡法の方法論的改良により、生理的環境にあるGタンパク質共役受容体(GPCR)の二量体、オリゴマーの存在が確認された (Nature Chemical Biology)
July 11, 2010,Nature Chemical Biology,© 2010 NPG
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ヒト病原菌の必須遺伝子を極寒に棲むバクテリアのカウンターパートで置き換えて、防御免疫応答を誘発するが、害を引き起こす可能性のある温かい臓器には拡がらない細菌株が作成され、マウスで効果が示された (PNAS)
July 12, 2010,ScienceNow,© 2010 AAAS/Science
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ほとんどのHIV-1分離株に結合し中和する能力を持つ広域中和抗体
HIV-1に対して極めて強力で広域に有効な中和抗体VRC01、VRC02が見出され、VRC01とHIV-1エンベロープタンパク質gp 120との複合体の結晶構造が報告された (2 papers in Science)
July 9, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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インフルエンザウイルスの主な遺伝子サブタイプに有効な広域中和抗体
トリH5N1、季節性H1N1、2009新型H1N1などの遺伝子サブタイプのウイルスに有効なモノクローナル抗体A06が見出された (PLoS Pathogen)
July 9, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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BKカリウムイオンチャネルは、膜タンパク質ポア、膜タンパク質 電位センサードメイン、カルシウムイオン濃度のセンサーとして機能する大きな細胞質ドメインから成る。ヒトBKチャネル細胞質ドメインの構造が決定された (Science)
July 9, 2010,This Week in Science,© 2010 AAAS/Science
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シロアリのメスネオテニー(secondary queens)が放射するフェロモン中の2成分が、他のシロアリを新しい女王に発達することを抑制していることが突き止められた (PNAS)
July 9, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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ショウジョウバエに共生し、母系伝播する細菌スピロプラズマは、寄生線虫からホストのハエを守ることが見出された。線虫はメスバエを不妊化するが、スピロプラズマに感染すると線虫の生育は抑えられ不妊化は起こらない(Science)
July 9, 2010,This Week in Science,© 2010 AAAS/Science
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カリウムチャネルKcsAの一連のX線結晶構造が解かれ、選択フィルターでのコンフォメーション変化に基づくC型不活性化の分子基盤が提示された (2 papers in Nature)
July 8, 2010,Nature Editor's Summary,© 2010 NPG
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シアル酸アセチルエスル分解酵素(SIAE)は、B細胞活性化に関与し、免疫寛容の維持に必要な酵素である。SIAE遺伝子の稀な機能喪失型変異は自己免疫疾患の感受性と強く関連することが見出された (Nature)
July 8, 2010,Nature Editor's Summary,© 2010 NPG
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細胞運動の“ブレーキ” アクチンキャッピングタンパク質(CP)の特性が明らかに
細胞運動において、アクチンは駆動力を与えるエンジンであり、CPはそれを制御するブレーキに相当する。2種類のタンパク質、V-1(ブレーキの数を減らす)とCARMIL(ブレーキをアクチンフィラメントから外す)がどのようにCPのブレーキ能力を調節しているのかが明らかにされた (PLoS Biol.)
July 7, 2010,名大、理研、東北大、JST共同プレスリリース,
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単純ヘルペスウイルスHSV-2の宿主細胞への侵入に使われる糖タンパク質複合体構造が報告された (Nat Struct Mol Biol.)
July 6, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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POMC(プロオピオメラノコルチン)は脳視床下部にあり、食欲抑制や体重減少誘起の役割を果たす。このためにはPOMCニューロンにSIRT1脱アセチル化酵素が必要であることが見出された (Cell Metabolism)
July 6, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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米国のX線自由電子レーザー:Linac Coherent Light Source (LCLS)
時代遅れになっていた米国のSLAC国立加速器研究所の線形加速器は世界最高輝度のX線レーザーとして生まれ変わった。
July 5, 2010,NY Times,© 2010 The New York Times
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ミトコンドリア呼吸系の最大の酵素のアーキテクチャーが解明された
巨大な酵素複合体であるミトコンドリア複合体I (NADH dehydrogenase) の結晶構造が解析され、各機能モジュールの配置が決定された (Science)
July 2, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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3チームによる独立の解析は、転写因子HIF-2-alpha (Hypoxia-inducible factor 2-alpha, あるいはEndothelial PAS domain-containing protein 1とも呼ばれる)に収束した (2 papers in Science and one in PNAS)
July 1, 2010,NY Times,© 2010 The New York Times
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東大東原教授らのグループは、オスのマウスの涙腺中に分泌されるフェロモンESP1ペプチドが雌の性的受け入れ行動を促すことを見出し、その特異的な鋤鼻受容体V2Rp5)を同定した (Nature、TPプレスリリース欄参照)
July 1, 2010,Nature Editor's Summary,© 2010 NPG
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固体NMRの技術を援用して、広幅化する溶液NMRシグナルの解像度を高める手法の提案 (J. Amer. Chem. Soc.)
June 30, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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一つのタンパク質に3種の異なった合成アミノ酸をいっぺんに導入する (Angew. Chem.)
July 1, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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ヒト細胞のオートファジーのプロテオミクス解析から409タンパク質と751のタンパク質相互作用が検出された (Nature)
July 1, 2010,Nature Editor's Summary,© 2010 NPG
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TPに依存しない合成経路が報告され、天然物から薬を仕立てるために活用が期待される。ATPの代わりにS-アデノシルメチオニンを使ってカルボン酸塩を活性化する (Nat. Chem. Biol.)
June 30, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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木の年輪からその成長を探るのと同じように、結晶の断面から結晶成長の状況を振り返ってみる手法が提案された (Angew. Chem. Int. Ed.)
June 28, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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妊娠中には膵臓でのセロトニン産生が急増し、インスリン分泌細胞の増殖を刺激する (Nature Medicine)
June 27, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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3次元空間分解能に時間分解能を加えた電子トモグラフィーが開発された (Science)
June 25, 2010,This Week in Science,© 2010 AAAS/Science
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マウスを用いて、クローン病は遺伝子と環境が相互作用して発病することが見出された (Science)
June 24, 2010,ScienceNow,© 2010 AAAS/Science
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紫外光によるDNA損傷を修復する酵素、DNAポリメラーゼエータの構造が2つの研究グループから報告された (2 papers in Nature)
June 23, 2010,Nature News,© 2010 NPG
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新しいアプローチは、従来の合成法の問題点である非天然アミノ酸の取り込みの難しさを解決する (Nature)
June 24, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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ハチ毒のペプチド、メリチンを認識、中和してマウスを守るプラスチック抗体が報告された (J. Amer. Chem. Soc.)
June 21, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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共同研究:開発のスピードアップを狙い、欧米の製薬大手がアルツハイマー病治療薬の臨床試験データを共有 (Coalition Against Major Diseases)
June 21, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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多くの癌で重要な生存因子であると分かってきているタンパク質MCL-1は, 抗アポトーシス性のBCL-2 (B-cell lymphoma- B細胞リンパ腫- 2)ファミリーに属する。構造と機能解析から、MCL-1のBCL-2ホモロジー(BH)ドメインのうちBH3へリックス自体が強力かつ選択的なMCL-1阻害剤と報告された (Nat. Chem. Biol.)
June 20, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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ドラッグデリバリーシステム:抗がん剤ドキソルビシンを内包するリポソーム(リン脂質小胞)にシアル酸含有糖鎖を結合し、腫瘍細胞を狙い撃ちする試み (Blood)
June 21, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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CMLに特異的な異常タンパク質BCR-ABLの数ある遺伝子変異のうち、T315I遺伝子変異をもつCML細胞の増殖を抑制するオーロラキナーゼ阻害剤の前臨床研究 (Blood)
June 16, 2010,京都大学プレスリリース,
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脂肪組織は様々なアディポカイン(細胞増殖制御因子)を分泌する。肥満・2型糖尿病モデルマウスを用いて、Sfrp5 (secreted frizzled-related protein 5)が、抗炎症性のアディポカインであることが見出された (Science)
June 17, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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構造生物学:Toll様受容体のシグナル伝達メディエーター複合体の構造
アダプタータンパク質MyD88、キナーゼIRAK4とIRAK2は、TLR/IL1-Rスーパーファミリーに属する重要なシグナル伝達メディエーターである。MyD88–IRAK4–IRAK2 積層型集合複合体の構造が報告された (Nature)
June 16, 2010,Nature News and Views,© 2010 NPG
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免疫系B細胞の調節に関わるシアル酸アセチルエステラーゼ(SIAE) 遺伝子の変異が、糖尿病、関節炎など自己免疫疾患患者の約2%に見出された (Nature)
June 16, 2010,Nature News,© 2010 NPG
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膵臓で生合成、分泌されるペプチドホルモンであるグルカゴンは、インシュリンとは反対に血糖値レベルを上昇させる。マウスで、グルカゴンとその受容体が味覚受容体細胞に発現しており、甘味感受性に影響を与えていることが分かった (FASEB J.)
June 15, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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タンパク質の輸送と分解を担うエンドソームとリソソームの塩素イオン
エンドソームとリソソームの機能は内部の酸性pHのみならず内部への塩素イオンの蓄積に依存することが報告された (2 papers in Science)
June 15, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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昨年報告された有望な抗体PG9とPG16のうちPG16の構造が、2グループから報告された (PNAS & J. Virol.)
June 14, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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リソソーム蛋白質分解とオートファジーはプレセニリン1(PS1)を必要とし、アルツハイマー関連のPS1変異により障害をきたす (Cell)
June 10, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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植物から糖類、菌からリン酸塩という共生関係はイネでは活用されてこなかったが、菌根菌の選別でイネの成長速度が5倍増加すると報告された (Current Biology)
June 10, 2010,ScienceNow,© 2010 AAAS/Science
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5種の必須遺伝子をタバコに組み込んで、ヒトコラーゲンを生産 (Biomacromolecules)
June 10, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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赤ワインと緑茶のポリフェノールは、スフィンゴシンキナーゼ1/スフィンゴシン-1-リン酸のパスウェイを阻害して前立腺がん増殖抑制効果を示すことが報告された (FASEB J.)
June 10, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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HIVウィルスのタンパク質Tatは感染の初期にヒトの転写因子P-TEFb を乗っ取って使う。Tat - P-TEFb 複合体の構造が報告された (Nature)
June 9, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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携帯型のNMRが、診察室での採血で血塊、バクテリア、腫瘍マーカーなどの迅速検査を可能とするかもしれない (Angew Chem Int Ed Engl)
June 10, 2010,MIT Technology Review,© 2010 Technology Review, Inc.
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肥満に伴いタンパク質AIM (Apoptosis Inhibitor of Macrophage)の血中濃度が著しく上昇し、脂肪細胞中に取り込まれ、脂肪酸合成酵素の機能を抑制することが分かった。その結果、脂肪細胞に貯まっていた脂肪滴の融解が生じ、脂肪細胞の大きさが著しく縮小する (Cell Metabolism)
June 9, 2010,東大プレスリリース,
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X線回折顕微鏡を用い50?60ナノメーターの解像度で、染色せずに細胞全体の定量的3次元画像化が報告された (PNAS)
June 7, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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日本に自生するアブラナ科の植物ハクサンハタザオが持つ温度に応答する開花調節遺伝子FLCに着目し、遺伝子の働きを1週間おきに2年間にわたって測定した結果、過去6週間の気温にしたがってFLC遺伝子の発現が調節されていることが明らかにされた (PNAS)
June 8, 2010,京大プレスリリース,
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A型インフルエンザウイルスのリボ核タンパク質を薬剤開発ターゲットとした化合物スクリーニングが行われ、有望な化合物nucleozin が報告された (Nature Biotechnology)
June 7, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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食中毒や感染症の起因菌である黄色ブドウ球菌は、aureusimineと呼ばれる非リボソームペプチド二次代謝物を使ってヒトを攻撃することが明らかにされた。この代謝物生産を阻害する薬剤が新しい抗菌薬開発に繋がるかもしれない (Science)
June 7, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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細胞内に存在する制御領域のコンフォメーションが変わると、イオン選択フィルターがオン/オフスイッチとして機能することが、結晶構造解析から明らかにされた (Cell)
June 3, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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シロイヌナズナのACD6遺伝子の一つの変異体は、バクテリアや微生物の侵入に対し高い抵抗力を有するが、一方で葉の生育を遅らせ、この変異体を持たない仲間に比べ小型であることが突き止められた (Nature)
June 2, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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トウモロコシの雌性配偶体で特殊なディフェンシンが放出され、花粉管のカリウムイオンチャネルを開き、花粉の急激な放出をもたらすことが分かった (PLoS Biology)
June 2, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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モモやプラムに含まれるポリフェノールにエストロゲン非依存性乳がんの抑制効果が見出された (J. Agric. Food Chem.)
June 2, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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嵩高いGFPラベルの欠点を克服する方法が提案された。連結酵素が観察するターゲットタンパク質の目印タグに蛍光プローブを結合する (PNAS)
June 1, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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ショウジョウバエ幼虫の嗅覚神経にある臭覚受容体の代わりに光感受性タンパク質を発現させると、匂いではなく光に応答する (Front. Behav. Neurosci.)
June 1, 2010,Nature News,© 2010 NPG
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植物や菌類が有する光受容体タンパク質フィトクロムのうち赤色光吸収型の全体の詳細構造が決定された (PNAS)
May 31, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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2種類の極めて類似した化合物が、ヒートショックタンパク質Hsp70に対し活性化と阻害という正反対の効果を示す理由が突き止められた (ACS Chem. Biol.)
May 31, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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針が体内の鎮痛剤アデノシンの遊離を促す (Nature Neuroscience)
May 30, 2010,ScienceNow,© 2010 AAAS/Science
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バクテリアや微生物が、脂肪酸エステル混合物であるバイオディーゼルを加水分解して硫化水素や有機酸を発生し、炭素鋼を劣化させる (Energy Fuels)
May 24, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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双子葉植物の寄生植物「ストライガ」のゲノム中に、単子葉植物の宿主のイネ科由来遺伝子が存在。異なる植物間で、核内遺伝子の移行を確認した最初の例に (Science)
May 28, 2010,理研プレスリリース,
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動物や高等植物はディフェンシンと呼ばれる内因性のペプチド性抗生物質を発現している。菌類のディフェンシンであるプレクタシンは、バクテリアの細胞壁前駆体lipid II と結合し、その細胞壁形成を阻害する (Science)
May 28, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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苦味は、Gタンパク質共役型受容体であるhTAS2R ファミリーの苦味受容体を介して感じられる。ハイスループットスクリーニングを用いて、6種のhTAS2R苦味受容体の働きを阻害する化合物GIV3727が見出された (Current Biology)
May 27, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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呼吸鎖複合体Iは呼吸鎖の1番目の酵素であり、NADHとキノン間の電子伝達をプロトン転位に共役させることにより、ミトコンドリアでの細胞のエネルギー産生に中心的役割を果たす。大腸菌の複合体Iの膜ドメインと、高度好熱菌の複合体Iの全体構造が決定された (Nature)
May 27, 2010,Nature 今週のハイライト,© 2010 NPG
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シグナル識別粒子(SRP) は新生タンパク質を特定の標的組織にターゲティングすることを仲介する。古細菌スルホロブス・ソルファタリカスのシグナルペプチドとSPR54複合体の結晶構造が決定され、シグナルペプチド認識のモードが明らかにされた (Nature)
May 27, 2010,Nature Editor's Summary,© 2010 NPG
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二機能性のイソクエン酸脱水素酵素リン酸化酵素/脱リン酸化酵素の構造
大腸菌のイソクエン酸脱水素酵素リン酸化酵素/脱リン酸化酵素 (AceK) はイソクエン酸脱水素酵素 (ICDH) を、環境変化に応じてリン酸化あるいは脱リン酸化というユニークな機能を示す。AceK単体とAceK-ICDH複合体の構造が決定された (Nature)
May 26, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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アルツハイマー病患者の脳にはベータ‐セクレターゼ1(アミロイドベータペプチドを産生する細胞外切断酵素、BACE1)が高レベルで発現している。細胞内輸送タンパク質GGA3が媒介するBACE1の分解をユビキチンが調節していることが報告された (JBC)
May 25, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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II型トポイソメラーゼ‐DNA複合体の構造解析から、トポイソメラーゼのDNAとの結合、その切断、再結合の機構が提案された (Nature)
May 24, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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名大の芦苅教授のグループと中国のグループが独立に、イネ収量増加をもたらすOsSPL14アレルを突き止めた (2 papers in Nature Genetics)
May 23, 2010,ScienceNow,© 2010 AAAS/Science
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腸内細菌など、ヒトの体内、体表面に住む微生物群のゲノム解読を目指す米国のプロジェクトが178種のゲノムを読み終えたと中間発表 (Science)
May 20, 2010,Nature News,© 2010 NPG
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海洋性のシアノバクテリアで見つかった、セリンあるいはスレオニンとシステインを環化する酵素は、ペプチド上のどこに反応するアミノ酸同士があるかは、32アミノ酸残基の長さまで問わない (PNAS)
May 20, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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欧米豪の国際チームがマラリア原虫の成長を阻害するヒット化合物を同定、公開
グラクソスミスクライン(GSK)を含む国際チームが31万の化合物ライブラリーを用いたスクリーニングの結果(1,100のヒット化合物と、うち172については詳細なデータ)をデータベースとして無償公開 (Nature)
May 19, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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グラクソスミスクラインがマラリア原虫の成長阻害剤の大規模スクリーニングの結果を公開
グラクソスミスクライン(GSK)が所有する200万の化合物ライブラリーを用いたスクリーニングの結果(13,533のヒット化合物、うち約80%の分子はGSK所有)をデータベースとして無償公開 (Nature)
May 19, 2010,GSK Press Release,© 2010 GlaxoSmithKline plc.
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機能と構造の両面からの研究から、カルシウム依存性プロテインキナーゼ1(CDPK1)がトキソプラズマ症に対する絶好の創薬ターゲットであることが判明した (Nature and Nat. Struct. Mol. Biol.)
May 19, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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天文学者エドウィン・ハッブルのアプローチをタンパク質の進化に敷衍した研究によれば、共通の祖先を持つタンパク質は互いに分岐し続け、タンパク質アミノ酸配列の世界は膨張している (Natrure)
May 19, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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抗体を産生するために、タンパク質から出発するのではなく、抗体を先に作る手法が発表された。アミノ酸のランダム配列からペプチドを作り、2種類をリンカーで繋ぎ合成抗体(synbody)とし、これを多くのタンパク質に対しスクリーニングする (PLoS ONE)
May 19, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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HIVと宿主とのタンパク質間相互作用を小分子で阻害して、HIVの複製を阻止
HIV-1の酵素インテグラーゼと宿主細胞の補因子LEDGF/p75との相互作用は、ウイルスの組み込みで重要な役割を演じている。この相互作用を阻害する小分子が開発され、結晶構造解析からも阻害が確証された。臨床使用されているインテグラーゼ阻害剤に耐性をもつ系統のHIVでもその複製を阻害する (Nat. Chem. Biol.)
May 17, 2010,Nature姉妹誌ハイライト,© 2010 NPG
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宿主の小さなタンパク質プロサイモシン‐αがToll様受容体TLR4と結合し、インターフェロンの産生を刺激する (PNAS)
May 17, 2010,Science Daily, © 2010 ScienceDaily LLC
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シクロオキシゲナーゼ-2 (COX-2) が、オメガ‐3脂肪酸から抗炎症性の代謝産物を生成すると報告された (Nat. Chem. Biol.)
May 17, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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チベット人は2種の遺伝子に持つ変異のおかげで、低地にすむ人々より、酸素を効率的に使えるようだ (Science)
May 13, 2010,ScienceNow,© 2010 AAAS/Science
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マウスは、多くの陸生脊椎動物が分泌するタンパク質Mup (Major Urinary Protein:主要尿タンパク)の臭いを感知し恐れる (Cell)
May 13, 2010,ScienceNow,© 2010 AAAS/Science
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ポプラに共生し、その成長を40%増加させるバクテリアのゲノムが解読され、相利共生関係を説明する多くの遺伝子が同定された (PLoS Genetics)
May 13, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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中国北部での遺伝子組み換え作物Bt綿花の栽培で、以前はきわめて少数であった害虫、カメムシが近年急増していることが明らかになった (Science)
May 13, 2010,Nature News,© 2010 NPG
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クモ糸タンパク質は、高濃度で貯蔵されている際には高い可溶性を示すが、必要に応じて極めて丈夫な繊維へと変化する。このような挙動を可能にする分子機構はまだ解明されていないが、今回2つの構造研究から新たな手がかりが得られた (2 papers in Nature)
May 13, 2010,Nature 今週のハイライト,© 2010 NPG
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結核菌は、宿主の免疫応答から逃れるためにタンパク質分解酵素複合体であるプロテアソームを有している。結核菌プロテアソームの構築プロセスとゲート開閉機構の詳細が報告された (EMBO J.)
May 11, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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尿で検出される、腎臓障害に関わる7種の新しいバイオマーカーが報告された。開発中の候補化合物の安全性の指標となるこれらの成果は、産官学の共同研究 (FDA's 2004 Critical Path Initiative) がもたらした (4 papers in Nature Biotechnology)
May 10, 2010,Nature News,© 2010 NPG
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放射光ビームラインを用いて、始祖鳥の羽と骨の元素成分が解析された
ジュラ紀に生息した最古の鳥類とされる始祖鳥の化石の羽と骨が、スタンフォード放射光ビームラインで解析された (PNAS)
May 11, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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ほとんどの病原性バクテリアは、細胞膜を傷つける毒素や脂質分解酵素のような病原性因子を分泌する。殺菌剤であるナトリウムアジドで満たされたリン脂質小胞が作成された;バクテリアからの毒素に出会うと小胞は破れ、殺菌剤が機能する (JACS)
May 10, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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経口糖尿病薬チアゾリジン誘導体は、核内受容体PPARγに結合し、代謝関連遺伝子の転写を調節してインスリン作用を増強させるが、副作用として体液貯留を伴う浮腫を生じることがある。東京大学の研究グループはPPARγに結合したチアゾリジン誘導体が、遺伝子転写の調節を介さずに速やかに腎臓のナトリウム再吸収を亢進させることを見出した (Cell Metabolism)
May 4, 2011,東京大学プレスリリース,
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診断:前癌性あるいは悪性腫瘍において高レベルで産生される酵素、シクロオキシゲナーゼ-2 (COX-2)に選択的に結合し蛍光を発する造影剤 “fluorocoxibs” が開発された (Cancer Research)
May 10, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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マウスを用いて、炎症に関与する酵素COX-2が褐色脂肪細胞の産生を刺激することが明らかにされた。褐色脂肪組織はエネルギーを熱に変換するので、COX-2酵素を過剰発現したマウスはスリムになる (Science)
May 7, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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これまでの研究で記憶固定のための遺伝子発現は、DNAを核内に収納する役割を担うタンパク質ヒストンのアセチル化によって制御されていることが示唆されていた。今回高齢マウスにおいて、H4ヒストンのリジンのアセチル化が減少し、記憶固定の低下を来すことが明らかにされた (Science)
May 6, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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ペルオキシソームはウイルスに対抗する自然免疫のシグナル伝達を担う
ペルオキシソームのMAVS (mitochondrial antiviral signaling) タンパク質が、素早い抗ウイルス免疫応答を活性化すると報告された (Cell)
May 7, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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オンラインのトラッキングシステムHealthMapで感染症を監視する (NEJM)
May 6, 2010,MIT Technology Review,© 2010 Technology Review, Inc
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選択的スプライシングによって、単独の遺伝子から多様なメッセンジャーRNA が生成する。 数千のエキソンについて、数百のRNA特性が協働して組織依存的な選択的スプライシングを調節する仕組みを正確に予測する「スプライシングコード」が構築された (Nature)
May 6, 2010,Nature News,© 2010 NPG
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脱パルミトイル化と再パルミトイル化のサイクルが、癌原遺伝子Rasタンパク質を含む様々な膜表在性タンパク質の局在と機能をコントロールしていることが見出された (Cell and Nature Chemical Biology)
May 6, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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デングウイルスを媒介する蚊 ネッタイシマカで、虫よけスプレーの主成分ディート化合物への非感受性は遺伝的形質であることが見出された (PNAS)
May 3, 2010,Nature News,© 2010 NPG
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マンモス化石の骨から採取したDNAを大腸菌に組み込み発現させたヘモグロビンの解析から極低温に適応した酸素供給の仕組みが探られた (Nature Genetics)
May 2, 2010,ScienceNow,© 2010 AAAS/Science
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南アメリカ吸血虫や巻貝の1種であるモノアラガイから哺乳動物へ、転位性の遺伝子トランスポゾンが水平伝播することが明らかにされた (Nature)
April 30, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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ScienceShot: アブラムシは菌類から盗んだ遺伝子で赤くなる
アブラムシは、進化の過程で真菌からカロテノイド合成経路の遺伝子群を水平伝播で調達し、強力な抗酸化剤であるカロテノイドを自ら産生できる稀有な動物となった (Science)
April 30, 2010,ScienceNow,© 2010 AAAS/Science
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バクテリアは生育環境が悪化すると、生物界で普遍的なL型ではなくD型アミノ酸を分泌し、自らが住むバイオフィルムと呼ばれる膜状の構造体を分解する (Science)
April 30, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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小胞はどのように形成されるか?:ダイナミンGTPアーゼの構造
エンドサイトーシス(細胞内とり込み)の主要な制御因子Dynamin-1から得られた融合タンパク質の構造が報告された (Nature)
April 28, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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インフルエンザウイルスを閉じ込める: ダイナミン様MX1 GTPアーゼの構造
MX1 (myxovirus resistance)タンパク質のリング状オリゴマーの構造が報告された。インフルエンザウイルスはこのリングに閉じ込められ、複製できなくなる (Nature)
April 28, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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メタンを酸化する金属結合酵素の金属イオンの正体と所在位置が明らかにされた。メタンモノオキシゲナーゼは二つの銅イオン活性中心でメタノールを産生する (Nature)
April 28, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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コレステロールの結晶がinflammasome(インフラマソーム:炎症やアポトーシスにかかわるタンパク質の複合体)を活性化し、血管壁で炎症を引き起こす (Nature)
April 28, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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リポソーム(リン脂質小胞)に充填した分泌シグナリングタンパク質Wntをマウスに注射すると、数日で新しい骨が形成されることを見出した (Science Translational Medicine)
April 28, 2010,Nature News,© 2010 NPG
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X線回折顕微鏡を用いて、11?13 nmの高解像度で酵母細胞全体が撮像された (PNAS)
April 27, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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非天然アミノ酸をプローブとして膜タンパク質 GPCR の活性化の様子を探る
p-アジド-L-フェニルアラニンで標識する手法で、Gタンパク質共役受容体(GPCR)ファミリーに属する光受容タンパク質ロドプシンの活性化の初期過程が追跡された (Nature)
April 27, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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タンパク質合成:転写と翻訳の協調の証拠がバクテリアで見つかった (Science)
April 26, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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温度をどのように感知するか: TPRV1 (カプサイシン受容体)
一過性受容体電位チャネルタンパク質TRPV1 は温度を感知することで知られ、炎症や痛みの脳への伝達に関与する。このタンパク質の温度を感知するドメインが同定された (Nature Neuroscience)
April 22, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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痛みはどのように発生するか: TPRV1 (カプサイシン受容体)
熱によるリノール酸代謝物の酸化物がTRPV1 を活性化して痛みを生ずる (J. Clinical Investigation)
April 26, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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中枢神経系の重要な神経伝達物質受容体であるGABA -B 受容体に新しく補助的な4つのサブユニットKCTDタンパク質群が同定され、GABA -B 受容体の薬理学的な特徴を決めていることが見出された (Nature)
April 23, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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ショウジョウバエの感覚細胞のチャネルタンパク質TRPA1は害虫予防のターゲット
TRPA1は、植物が昆虫による食害を避けるために産生する摂食抑制物質アリストロキア酸を特異的に認識する (PNAS)
April 23, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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病原菌Cryptococcus gattii の病原性が解析され、周辺への感染の広がりが危惧されている (PLoS Pathogens)
April 22, 2010,ScienceNow,© 2010 AAAS/Science
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高分解能の既知の相同部分構造からの特定の情報を援用して、低分解能回折データから高分解能構造を推定する手法が報告された (Nature)
April 22, 2010,Nature Editor's Summary,© 2010 NPG
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脂肪量・肥満関連(FTO)タンパク質が肥満を標的とする仕組み
DNA/RNAデメチラーゼであるFTOタンパク質は体重増加や肥満のリスクと関係している。今回、モノヌクレオチドである3-メチルチミジンと複合体を形成したヒトFTOの結晶構造が決定された (Nature)
April 22, 2010,Nature Editor's Summary,© 2010 NPG
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主としてタンパク質の分解に関与するユビキチンがパターン認識受容体RIG-Iと結合して活性化し、自然免疫系をトリガーすることが見出された (Cell)
April 21, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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β2アドレナリン受容体:アルツハイマー病治療薬の有望なターゲット
アミロイド‐βタンパク質が、β2アドレナリン受容体と、神経伝達物質やホルモンが結合する部位とは異なる部位と相互作用することが見出された (FASEB Journal)
April 20, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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炭酸ガス嗅覚ニューロンを持たないショウジョウバエは長寿命 (PLoS Biology)
April 20, 2010,ScienceNow,© 2010 AAAS/Science
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グリコシルトランスフェラーゼ(糖転移酵素)の阻害剤が見出され、酵素‐阻害剤複合体の構造解析から阻害のメカニズムが明らかになった (Nature Chemical Biology)
April 19, 2010,Chemical & Engineering News ,© 2010 ACS
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国際宇宙ステーション(ISS)日本実験棟「きぼう」を利用したタンパク質結晶生成実験
宇宙航空研究開発機構(JAXA)がタンパク質結晶生成実験の実施状況を公表した
February 24, 2010,JAXA公開資料,
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バイオテロで使われる恐れのあるリシンの攻撃から細胞を守る化合物Retroが見つかった。 Retroはリシン自体に作用するのでは無く、リシンの細胞質基質への輸送を阻止する (Cell)
April 16, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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古細菌酵素の耐熱性のおかげで鎮痛剤合成が容易に。 出発物ラセミ体を鎮痛剤前駆S-体に変換 (JACS)
April 15, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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カロリー摂取を10%から50%カットすると、インスリン様成長因子、グルコース、 TOR (target of rapamycin)が関与する栄養分感知パスウェイの活性が低下し、寿命が長くなる(Science)
April 15, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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リボソームによってタンパク質が作られる過程を、蛍光シグナルによって1分子レベルで直接可視化することが報告され、翻訳過程を阻害することで細菌の増殖を抑制することが知られているフシジン酸やエリスロマイシンが、実際に翻訳阻害している状態が観察された (Nature)
April 15, 2010,JSTプレスリリース,
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アクチン繊維の束化タンパク質ファシン:抗がん剤開発ターゲット
放線菌が分泌する天然物のミグラスタチンならびにその類似体は腫瘍の浸潤、転移に対する阻害剤である。X線結晶構造解析により、ミグラスタチン類似体がファシン上のアクチン結合部位に結合することが明らかにされた (Nature)
April 15, 2010,Nature Editor's Summary,© 2010 NPG
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特定の遺伝子を特定の標的組織に仕向けることが病原菌で始めて見出された。トウモロコシに腫瘍をもたらす黒穂菌は、トウモロコシのどこの組織に感染するかによって遺伝子兵器庫から取り出す武器を選び出す (Science)
April 14, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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ヒトのアフリカ睡眠病の病原体であるガンビアトリパノソーマのゲノムが解読され、家畜にナガナ病を引き起こす病原体ブルーストリパノソーマのゲノム(2005)との比較が報告された (PLoS Neglected Tropical Diseases)
April 13, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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米国と韓国の日本料理店で提供の鯨肉は日本の調査捕鯨で捕獲したものを密輸か
米オレゴン州立大などの研究チームが、ロサンゼルスとソウルの日本料理店から入手した鯨肉をDNA解析 (Biology Letters)
April 13, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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ウェブ技術とスーパーコンピューターを活用して進化する病原菌を追跡する
病原菌の塩基配列情報とGISを統合したSupramap (supramap.osu.edu) は感染の広がりと重要な変異の出現を時空間的に追跡する。ユーザーは配列データを投稿すると菌株の系統樹が得られ、結果は地球儀上に投影され、Google Earth で閲覧できる (Cladistics)
April 13, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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メスが発する、極めて低濃度で複雑な混合物の性フェロモンを高感度に弁別・感知する匂い受容体遺伝子のセットが同定された (PNAS)
April 12, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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薄煙の中に含まれるシグナル分子karrikin (karrik: アボリジニー語で煙)のおかげで、山火事の灰燼の中から種子は芽を出す (PNAS & J. Nat. Prod.)
April 12, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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構造生物学: DNAやRNAかメチル基を除去する酵素FTO (fat-mass and obesity-associated protein) の構造が解かれた (Nature)
April 12, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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細胞の浄化機構がハンチントン病で大きな役割を果たしているかもしれない
細胞の浄化機構にオートファゴソームと呼ばれる、不要なタンパク質などを包み込んで“ゴミ袋”を形成する過程がある。変異型ハンチンチンタンパク質はオートファゴソーム内層に固着し、“ごみ収集”から逃れ蓄積することが示された (Nature Neuroscience)
April 11, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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天然変性タンパク質(intrinsically disordered proteins)の構造情報を得るための改良された手法が提案された (JACS)
April 8, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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多くの抗がん剤は腫瘍内部へ深く浸透できないというに共通の課題を有する。マウスを用いた実験で、各種抗がん剤が腫瘍内に侵入するのを助けるペプチドが見つかった (Science)
April 8, 2010,ScienceNow,© 2010 AAAS/Science
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日本人は、北米人には欠落している海藻を消化する酵素を有する腸内細菌と共生している (Nature)
April 7, 2010,ScienceNow,© 2010 AAAS/Science
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心筋、骨格筋、褐色脂肪組織に高発現している血管内皮増殖因子VEGF-Bに脂質を末梢組織に差し向けるという予期せぬ役割が見つかった (Nature)
April 8, 2010,Nature Editor's Summary,© 2010 NPG
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水を感知するイオンチャネルタンパク質がショウジョウバエで見つかった
昆虫や哺乳類での水の検知の詳しい機構はまだ分かっていない (Nature)
April 7, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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構造解析から、ウイルス複製阻害剤は、ウイルスが宿主を攻撃する際に用いるウイルスRNAの屈曲をまっすぐにすることで効果を発揮することが分かった (PNAS)
April 5, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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2種類の変性状態のタンパク質で結び目が見つかった (PNAS)
April 5, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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ネルギーを消費する褐色脂肪細胞は成人にも存在することが昨年4月に報告された。 白色脂肪細胞よりも筋組織に類似しているようだ (Cell Metabolism: five minireviews)
April 6, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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サリドマイドが、血管の遺伝性疾患の治療に役立つ可能性がある (Nat Med.)
April 4, 2010,ScienceNow,© 2010 AAAS/Science
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アンドロゲン受容体の選択的コアクチベーター はステロイド受容体コアクチベーター SRC3と同定され、その複合体の構造が決定された (JBC)
April 4, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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HIVエンベロープタンパク質gp120 モノマー‐CD4受容体‐抗HIV抗体21c から成る複合体の構造が決定された (Nat Struct Mol Biol.)
April 4, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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大豆(特にベータコングリシニンという成分に富む大豆)が脂肪酸合成酵素を阻害することにより、脂肪細胞での脂質の蓄積を抑えることが明らかになった (FEBS Journal)
April 2, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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海藻に多く含まれる植物繊維であるアルギン酸塩の脂肪の吸収を妨げる効果は凡百の健康食品より優れている (ACS Meeting)
March 22, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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クランベリージュースはバクテリアのバイオフィルム形成を妨げ尿路感染を防ぐ効果がある (ACS Meeting)
March 23, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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名称はScientific Nature あるいは Natural Science? エイプリルフール
April 1, 2010,ScienceNow,© 2010 AAAS/Science
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ブルーストリパノソーマのN-ミリストイルトランスフェラーゼ(NMT)が抗トリパノソーマ薬のタンパク質標的となる可能性が立証され、また、薬剤のような特性をもつ強力な阻害剤が見つかった (Nature)
April 1, 2010,Nature 今週のハイライト,© 2010 NPG
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ヒト細胞株で、21,000個のタンパク質コード遺伝子をRNA干渉によって抑制し、分裂中の細胞のイメージングを行って、表現型を定量的に評価した。その結果、有糸分裂や細胞の生存や移動などの細胞過程で機能する数百個の遺伝子が明らかになった。この全データセットは、機能ゲノミクスの公開リソースとして入手できる (Nature)
April 1, 2010,Nature 今週のハイライト,© 2010 NPG
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枝野幸男行政刷新相は、国費の無駄遣いを調べる「事業仕分け」第二弾の対象に研究関連独立行政法人も含まれると言明した
March 30, 2010,Science Insider,© 2010 AAAS/Science
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アヒルは、トリを殺すインフルエンザウイルスにも耐性がある。アヒルにはインフルエンザウイルスのセンサー遺伝子RIG-I が存在し免疫応答をトリガーするのに対し、トリはこのセンサーを持たないことが見出された (PNAS)
March 30, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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植物ホルモン・ジャスモン酸はアブラナの花蜜蓄積をトリガーする
ジャスモン酸は植物組織ごとに異なる機能を発揮する:葉や根では外敵による摂食などの傷害応答を活性化させるが、花では花蜜産生を制御する (PLoS ONE)
March 29, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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アルツハイマー病に付随するβ-アミロイドはPI3キナーゼの活性を増強させ、翻って記憶喪失を引き起こし、プラークの蓄積を招く (PNAS)
March 29, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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花成ホルモン・フロリゲンをコードする遺伝子がトマトの収量と甘味を劇的に増大する
トマトの雑種強勢で、フロリゲン遺伝子の一方のコピーの変異が短期間で多くの開花をもたらし、収量を増大する (Nature Genetics)
March 29, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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ある種のがん細胞はケモカインCCL21を分泌することによりその外層をリンパ様組織に変換する (Science)
March 26, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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細胞表面上のクラスAスカベンジャー受容体SR-Aがウイルス二本鎖RNAと結合して細胞内に持ち込み、ウイルスへの免疫応答がスタートする (PLoS Pathogen)
March 26, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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衝撃波がアミノ酸生成の化学反応を引き起こしたのかもしれない
March 26, 2010,Nature News,© 2010 NPG
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構造生物学:1918スペイン風邪ウイルスの抗体が2009新型インフルエンザウイルスもかわす訳
二つのウイルスの構造類似性からその理由が明らかになり、次の大流行に向けての指針が得られた (Science Express & Science Translational Medicine)
March 24, 2010,Nature News,© 2010 NPG
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アラビドプシスを用いて提案された手法は農業用植物の育種のスピードアップに役立つ可能性がある (Nature)
March 24, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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トリパノソーマ原虫に固有のペプチドに結合する色素を用いる迅速・安価なテスト法
March 23, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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極微量のタンパク質分解酵素の活性による呈色の変化で前立腺がんやHIVを診断する
March 23, 2010,Nature News,© 2010 NPG
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樹状細胞表面のレクチン受容体DC-SIGN は特有のオリゴ糖を認識して病原菌を捕獲する。この受容体に結合するオリゴ糖を模擬した化合物が合成され、HIVウイルスが受容体を利用してリンパ組織に侵入するのを妨げることが見出された (ACS Chem. Biol.)
March 22, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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マクロファージではなく、リンパ節の樹状細胞がレクチン受容体SIGN-R1を用いてウイルスを捕獲し、Bリンパ球に提示する (Nature Immunol.)
March 22, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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植物の重力感知遺伝子と先天性白皮症関連遺伝子のリンク、酵母は血管発達のモデル(PNAS)
March 22, 2010,Nature News,© 2010 NPG
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初めてのヒト臨床試験で、パーティクルは癌細胞に届き、ターゲット遺伝子の発現を抑えた (Nature)
March 21, 2010,MIT Technology Review,© 2010 Technology Review, Inc.
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トランスファーRNAはアポトーシスをチェックする。tRNAはミトコンドリアから放出されたチトクロムc と結合することによって、アポトーシスを促進する複合体形成を阻害する (Mol. Cell)
March 19, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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大腸菌などのバクテリアは環境変化に応じて能動的に遊泳速度を制御する。この行動はモーターブレーキタンパク質によって支配されている (Cell)
March 19, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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細菌べん毛のミクロのプロペラが形態をスイッチするナノ機構の解明
阪大と理研の共同研究チームが、低温電子顕微鏡法とらせん像再構成法により細菌の遊泳器官であるべん毛の超分子繊維構造を解析し、微小な生体プロペラの形成とスイッチの分子メカニズムの解明に成功した (Nat. Struct. Mol. Biol.)
March 15, 2010,阪大‐理研プレスリリース,
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昆虫(ショウジョウバエ、アリ、ハチ)の精子は、互いに力づくであるいは化学兵器を用いて戦っている (Science)
March 18, 2010,Nature News,© 2010 NPG
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自治医科大のチームが、遺伝子操作で唾液腺にリーシュマニア症ワクチンを発現するカを 産生することに成功した (Insect Mol. Biol.)
March 18, 2010,Science Now,© 2010 AAAS/Science
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日本学術会議は、科学者委員会学術の大型研究計画検討分科会において審議した結果を提言として発表した
March 17, 2010,日本学術会議,
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ワサビや催涙ガスなどの刺激性化学物質の痛覚センサーである受容体タンパク質TRPA1は、動物進化の過程で約5億年に渡って保存されてきたことが判った (Nature)
March 17, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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アミロイドβ(Aβ) ペプチドに結合して毒性型への凝集を防ぐばかりでなく、Aβ凝集体を溶解する小さな合成タンパク質が報告された (PLoS Biol.)
March 16, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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バナナに含まれるレクチン(糖鎖に結合活性を示すタンパク質) BanLec がHIVウイルスの外被タンパク質gp120に結合し、ウイルスの侵入をブロックする (JBC)
March 16, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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インスリン様成長因子(IGF) は正常酸素圧状態では筋細胞の分化を、低酸素状態では増殖を促進する (PNAS)
March 15, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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触った証拠に残された指のバクテリアのDNA解析で犯罪人を同定する(PNAS)
March 15, 2010,ScienceNow,© 2010 AAAS/Science
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ハンチントン病やベータアミロイドプラーク形成に関わる遺伝子が見つかり、ヒドラを疾患モデルとして使える可能性がある (Nature)
March 14, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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餌食の体からの熱によって活性化されるチャネルタンパク質のおかげで、ヘビは暗がりでも“見る”ことができる (Nature)
March 14, 2010,Nature News,© 2010 NPG
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ケシでコデインからモルヒネへの転換する2種の酵素が見つかった (Nature Chem. Biol.)
March 14, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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東工大の半田宏教授らのグループは、サリドマイドのターゲットタンパク質がセレブロンという酵素であることを突き止め、サリドマイドはこの酵素の働きを阻害することで四肢の形成を阻害していることを明らかにした (Science)
March 12, 2010,東京工業大学プレスリリース,
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タンパク質分解酵素カスパーゼの新しい機能が見出された。カスパーゼがRNA切断酵素であるダイサーを切断すると、ダイサーはDNA切断酵素に変換され染色体を分解して細胞を殺す (Science)
March 11, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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マラリアを媒介するガンビアハマダラカは摂食の際に2種類の酵素が保護膜を作り、そのおかげで病原菌は蚊の免疫応答から免れており、それがヒトに伝わる (Science)
March 11, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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神経毒とアセチルコリン受容体の立体構造から、神経毒は神経伝達物質アセチルコリンの結合サイトそのものに挿入することが分かった (PNAS)
March 11, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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ヒトのほぼすべての遺伝子をカバーするゲノムリソースを完成、利用が可能に
March10, 2010,理研プレスリリース,
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二つの独立な研究チームが患者の全ゲノム解析で正確な遺伝的要因を解読した (New England Journal of Medicine and Science)
March10, 2010,NY Times,© 2010 The New York Times
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HIV-1のようなレトロウイルスのインテグラーゼ酵素は、ウイルスゲノムを宿主のゲノムへ組み込む反応に関わっている。非病原性レトロウイルスの完全長インテグラーゼの結晶構造が、同種ウイルスDNAと複合体を作った状態で決定された (Nature)
March11, 2010,Nature 今週のハイライト,© 2010 NPG
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味覚受容ニューロンでナトリウムチャネルのENaCを遺伝子操作により失わせたマウスでは、塩の感知とナトリウムへの味覚応答の両方が失われていることがわかった (Nature)
March11, 2010,Nature 今週のハイライト,© 2010 NPG
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植物ホルモンであるサイトカイニンをワタの種子や若いワタに与えることで、乾燥条件での収量を5から10%増加できる
March 10, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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蚊は宿主の発する二酸化炭素、アンモニア、乳酸黄熱病、オクテノールなどの匂いを感知する。黄熱病を媒介する蚊の嗅覚受容体は、オクテノールの鏡像異性体(右手・左手)を識別する (PLoS ONE)
March 9, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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ヘビが分泌する毒液は薬理活性のペプチド・タンパク質の宝庫である。キングコブラから新しい神経毒ペプチドが見出され、構造と機能が報告された (JBC)
March 9, 2010,JBC Papers of the Week,
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生殖におけるアルゴノート9触媒タンパク質の役割に焦点を当てた研究により、有性生殖植物を無性生殖に変換することに一歩近づいた。実現すれば、種子会社や農業家は現行の大きな労働力を要するクロスハイブリッド形成法を単純化できる (Nature)
March 8, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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抗体治療やホルモン療法などの治療用ヒトタンパク質を藻類に作らせる
藻類の1種コナミドリムシを用いて、標準治療法で用いられている、あるいは臨床試験中のヒトタンパク質7種の生産を試みた。そのうち生産された4種タンパク質の生理活性は現行の工業生産法に基づくものと遜色が無かった (Plant Biotechnology Journal)
March 8, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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出血熱ウイルスはげっ歯類が媒介し激しい症状を起こす感染症である。ボリビア出血熱ウイルス(Machupo virus)の糖タンパク質1がヒトトランスフェリン受容体1に結合した複合体の立体構造が報告された (Nat Struct Mol Biol.)
March 8, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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免疫系のキラー細胞であるT 細胞は活性化のためにビタミンDに依存しており、血中にビタミンDが欠乏していると休止状態のままであることが見出された (Nat Immunol.)
March 7, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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ケミカルバイオロジー:原核生物から真核生物のN-結合型糖タンパク質を産生するプラットフォームの報告 (Nat. Chem. Biol.)
March 8, 2010,Chemical & Engineering News , © 2010 ACS
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免疫系の要素で、細菌を感知するTLR5受容体タンパク質を欠損したマウスは、メタボリックシンドローム所見に加え、腸内細菌叢の変化を示すことが報告された。変異マウスの腸内細菌を野生型マウスに移入するとメタボリックシンドロームのいくつかの特徴が発現した (Science)
March 5, 2010,Science 今週のハイライト,© 2010 AAAS/Science
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構造と機能が進化的に保存されたタンパク質であるセストリンは、ショウジョウバエを加齢関連病変の悪影響から守る (Science)
March 5, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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シアノバクテリアでは、効率良い炭素固定のため、酵素を集積した構造体であるカルボキシソームが(平均4個) 細胞の長軸方向に整列している (Science)
March 5, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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化学生態学: Beewolf スズメバチは次世代を守るために、共生するバクテリアが産出する9種類の抗菌薬カクテルを吐き出す (Nat. Chem. Biol.)
March 4, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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重い外傷を負った患者の血漿サンプルの分析から、組織が損傷すると、ミトコンドリアは致死性の自然免疫応答を引き起こすことが明らかになった (Nature)
March 3, 2010,Nature News ,© 2010 NPG
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ヒトの細胞内のミトコンドリアのゲノムは均一だと考えられていたが、広範な多様性があることが報告された (Nature)
March 3, 2010,GenomeWeb Daily News,© 2010 GenomeWeb LLC
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ミトコンドリアに局在する脱アセチル化酵素SIRT3 は、飢餓状態で肝臓や脂肪組織に誘起され、脂肪酸酸化を制御していることが示された (Nature)
March 4, 2010,Nature Editor's Summary,© 2010 NPG
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蚊は血液を吸うと、体液と塩分の過負荷を排尿で減らさないと飛び去ることができない。蚊の腎臓で排尿作用制御の鍵を握るタンパク質が見つかった (Am J Physiol)
March 3, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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アルツハイマー病関連タンパク質は自然免疫システムの要素かもしれない
アルツハイマー病の脳に沈着するプラークの主要成分であるアミロイドβタンパク質は、抗菌性ペプチドであることが示された (PLoS ONE)
March 3, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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尾索動物のホヤで、アルツハイマー性プラークを蓄積できることが分かり、アルツハイマー病のモデル動物として有望であると報告された (Disease Models & Mechanisms)
March 2, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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線虫と共生する腸内細菌科に属するバクテリアが産生する毒素タンパク質が昆虫(ガ)を殺す分子メカニズムが解明された (Science)
March 2, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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土壌バクテリアBtが産生する毒素タンパク質が、マウスで腸に寄生する回虫治療に有効であると示された (PLoS Neglected Tropical Diseases)
March 2, 2010,Nature News,© 2010 NPG
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単一生細胞内のタンパク質の折りたたみおよび安定性を観察する方法が提案された (Nat. Methods)
March 1, 2010,Nature姉妹誌ハイライト,© 2010 NPG
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バクテリアがライバルを扼殺するために排出する極めて安定な輪縄構造ペプチドが創薬設計に役立つかもしれない (Chem. Bio.)
March 1, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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システインの代わりにセレノシステインを用いた新しい合成法で天然コノトキシンの天然構造を実現する (JACS)
March 1, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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疾患と関連付けられてきたアミロイドが甲殻類の固着力の源と分かった (Langmuir)
March 1, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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溶液中のタンパク質複合体のNMRによる構造解析の効率的なプロトコルが報告された (Angew. Chem. Int. Ed.)
February 25, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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ショウジョウバエでプロテインキナーゼRacが短期の記憶の除去を助ける役目を担っていることが分かった (Cell)
February 25, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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この50年間で世界のイネ生産高は平均で2.3倍の増加に対して、フィリピンでは3倍以上増加した
February 25, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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たった5つの核酸からリボザイム‐ 化学反応の触媒能をもつRNA ‐ が合成された (PNAS)
February 22, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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ショウジョウバエの小さな舌が肥満との戦いの手がかりになるかもしれない
食べるか食べないかを決める概日時計システムが味覚感知細胞でみつかり、食餌行動に密接に関連していることが報告された (Current Biology)
February 22, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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それ自体は甘味を持たないが、味覚受容体に作用して砂糖や人工甘味料の甘さを増強する複素環化合物が見つかった (PNAS 2報)
February 22, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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デング熱はメスの蚊がウイルスを媒介する。飛べないように遺伝子改変された系統が開発された (PNAS)
February 22, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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定向進化の手法を用いて、一つのタンパク質に複数の非天然アミノ酸を挿入できる新しいリボソームが構築された (Nature and JACS)
February 19, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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タンパク質の主鎖のデータのみを用いたNMR構造決定法が開発され、25kDという高分子量のタンパク質の正確な構造解析の結果が報告された (Science)
February 19, 2010,This Week in Science,© 2010 AAAS/Science
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緑膿菌は重篤な健康上の問題を引き起こす日和見性薬剤耐性病原菌である。緑膿菌の細胞外膜の形成に不可欠なLptDという、緑膿菌のみに見いだされるタンパク質を標的とするペプチドミメティック抗生物質 が開発された (Science)
February 19, 2010,Science: 今週のハイライト,© 2010 AAAS/Science
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リジンのアセチル化が代謝酵素の機能を制御する重要な調節機構であることを二つの報告が示した (Science)
February 19, 2010,This Week in Science,© 2010 AAAS/Science
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細胞内タンパク質のN末端アセチル化は、タンパク質の分解を防いでいるのではなく、ユビキチンリガーゼによって認識される分解シグナルとして機能していることが明らかになった (Science)
February 19, 2010,This Week in Science,© 2010 AAAS/Science
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イルカに見られるインスリン抵抗性などの症状は、ヒトの糖尿病で見られる状況と驚くほど類似していると報告された (J. Comparative Medicine)
February 18, 2010,ScienceNow,© 2010 AAAS/Science
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ワクチンを糖と混ぜ、メンブランフィルター上で乾燥するという新プロセスで熱帯地方の温度でも使用可能に (Science Translational Medicine)
February 18, 2010 ,MIT Technology Review,© 2010 Technology Review, Inc.
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構造生物学:ユビキチン活性化酵素の触媒サイクルのコンフォメーション変化
ユビキチンやユビキチン様タンパクによる翻訳後修飾は様々な細胞プロセスを制御している。ユビキチン活性化酵素の触媒サイクルの構造変化の詳細が明らかにされた (Nature)
February 18, 2010,Nature Editor's Summary,© 2010 NPG
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マスター制御因子遺伝子RSL4 がオンになると根毛細胞が成長し、オフになると成長は止まる (Nature Genetics)
February 17, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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酵素の構造解析からマラリアに立ち向かう新しい武器が開発された
ヒトは持たず、マラリア原虫に固有の鉄含有酵素の構造解析に基づく創薬リード化合物の開発 (PNAS)
February 16, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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ニワトリで5種の錐体光受容体細胞の組織化された空間配置が詳しく解析された (PLoS One)
February 16, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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ドクチョウ属に属する9種の蝶で翅の色を検知するよう光受容体が進化してきたことが分かった (PNAS)
February 16, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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古典的な仮説(解糖系代謝亢進に関するワールブルグ効果)の復活:創薬ターゲットピルビン酸キナーゼをめぐるレポート
February 15, 2010,Chemical & Engineering News ,© 2010 ACS
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多くの研究者が癌と代謝の多様な関連に注目している
February 15, 2010,Chemical & Engineering News ,© 2010 ACS
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我々の腸内の2種のタンパク質が、ヒトの血液型糖鎖分子をその細胞表面に有する大腸菌を認識し、死滅させる (Nature Medicine)
February 15, 2010,Science Daily ,© 2010 ScienceDaily LLC
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コレラ菌の病原性を制御するタンパク質ToxT の構造が決定された。予想外にもToxT に埋め込まれた脂肪酸が見出され、この脂肪酸がToxT を阻害し、コレラを引き起こすことを防いでいる (PNAS)
February 12, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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微生物はプランクトン様の独立浮遊運動状態から、バイオフィルムと呼ばれる固着したコロニー状態に変換し環境ストレスへの耐性を獲得する。コレラ菌では、転写制御因子VpsT がバイオフィルム形成のマスター制御因子であることが示された (Science)
February 12, 2010,This Week in Science,© 2010 AAAS/Science
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抗生物質は細菌内で活性酸素種(ROS)生成をうながし、ROSが細菌DNAの変異を引き起こして細菌の耐性獲得に繋がってしまうことが明らかになった (Molecular Cell)
February 12, 2010,ScienceNow,© 2010 AAAS/Science
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アシル化セリン誘導体とクエン酸誘導体の2種の新しいクモ性フェロモンが見つかった (Angew. Chem. Int. Ed.)
February 12, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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ある種のバクテリアはアミノ酸対向輸送体AdiCにより細胞内アグマチンと細胞外アルギニンを交換して水素イオンを排出する。アルギニンが結合したAdiC の結晶構造が解かれた (Nature)
February 11, 2010,Nature Editor's Summary,© 2010 NPG
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2報の全ゲノムRNAiスクリーニングにより、インフルエンザウイルス複製に重要なヒト宿主因子が同定された。ウイルスではなく宿主因子をターゲットとした抗ウイルス剤開発に繋がることが期待される (Nature)
February 11, 2010,Nature Editor's Summary,© 2010 NPG
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栽培が容易で遺伝学的操作も行いやすいミナトカモジグサのゲノム塩基配列が解明されたことは、この植物が新しいエネルギー作物、食用作物開発のためのモデル植物の1つとして定着する一助となるだろう (Nature)
February 11, 2010,Nature 今週のハイライト,© 2010 NPG
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新たに生まれた酵母の娘細胞は傷つき年老いたタンパク質を母細胞に送り返し、自らの若さと健康を保証する (Cell)
February 8, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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ビールは、骨のミネラル濃度を高める重要な成分であるシリコンの豊富な供給源であることが判った (J. Sci. Food Agric.)
February 8, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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コレステロール代謝経路の機構に関する知見がアルツハイマー病治療薬開発に繋がるかもしれない (PNAS)
February 8, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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光活性化ATP類似化合物でキナーゼと基質を架橋することにより基質を同定する (Angew. Chem. Int. Ed.)
February 8, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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ある種のウイルスは、バクテリアバイオフィルムと同様に、バイオフィルム様集合体を形成して増殖することが示された (Nature Medicine)
February 5, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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NMRデータとコンピューターモデリングを組み合わせて、より複雑なタンパク質の構造を解く (Science)
February 4, 2010,ScienceNow,© 2010 AAAS/Science
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抗ウイルス薬のアマンタジンやリマンタジンは膜貫通プロトンチャネルであるM2タンパク質を標的とする。固体NMR分光法を用いて高分解能で決定されたリン脂質二重層中のM2チャネルの構造から、アマンタジンに対してそれぞれ高い親和性と低い親和性を示す、2つの結合部位が明らかになった (Nature)
February 4, 2010,Nature 今週のハイライト,© 2010 NPG
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マラリア原虫の細胞からは数百種のタンパク質が宿主血球に送り出されるタンパク質はPEXELとよばれる進化的に保存されたモチーフを含んでいる。2つの研究によって、PEXELモチーフを切断する酵素がアスパルチルプロテアーゼのプラスメプシンVであることが明らかになった (Nature)
February 4, 2010,Nature 今週のハイライト,© 2010 NPG
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蚊にとって悪い知らせ:トラップや駆散薬の改良に繋がる匂い受容体が突き止められた
マラリアを媒介する蚊が人間の汗に含まれる化合物群を感知する27種の匂い受容体が見出された (Nature)
February 4, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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フランスで世界最高性能の核磁気共鳴装置は稼働開始
February 3, 2010,Nature News Feature,© 2010 NPG
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天然物: 植物もステロイドホルモンの一種であるプロゲステロンを作る (J. Nat. Prod.)
February 3, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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iPhoneと iPod Touchユーザーは Nature やNature News 全文にアクセス可能に
February 1, 2010,Nature Press Release,© 2010 NPG
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AIDS、C型肝炎、エボラ、ウエストナイル、黄熱ウイルスなどエンベロープを持つウイルスに有効な抗ウイルス剤が報告された (PNAS)
February 1, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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DNA損傷で生成する8-オキソグアニンを分解する酵素が見出された
グアニンの酸化体8-オキソグアニン(8-oxoG)はDNA修復で切り取られる。 遊離した8-oxoG を尿酸へ分解する脱アミノ酵素が見出された (JACS)
February 1, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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HIV 研究者たちを20年の間悩ませてきたパズルの一つが解けた
HIVインテグラーゼは、阻害剤が開発されているにも関わらず、その構造は不明であった。類縁のプロトタイプ泡沫状ウイルスのインテグラーゼとそのDNAとの複合体の構造が解かれた (Nature)
January 31, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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ユタ大学のペアウェブサイトLearn.Genetics とTeach.Geneticsが受賞
January 29, 2010,Science,© 2010 AAAS/Science
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日本以外で初めての特許は米国ベンチャーiPierian 社に
January 28, 2010,Nature News,© 2010 NPG
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狂牛病はスクレイピー異常プリオンタンパク質のみが引き起こすことが示された (Science)
January 28, 2010,ScienceNow,© 2010 AAAS/Science
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ビタミンKエポキシド還元酵素(VKOR)は、血液凝固の維持に必要なビタミンKサイクルで重要なビタミンKヒドロキノンの生成過程を触媒する。VKORの細菌ホモログのX線結晶構造が決定された (Nature)
January 28, 2010 ,Nature 今週のハイライト,© 2010 NPG
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フッ素イオンからC?F結合を生成するフルオリナーゼを活用する
生合成:chlorinaseの代わりにfluorinaseを深海細菌に組み込み、フッ素含有生理活性化合物fluorosalinosporamideを合成する (J. Nat. Prod.)
January 26, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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一つのヒット骨格化合物から出発して、骨形成タンパク質(BMP)阻害剤と血管内皮増殖因子(VEGF)阻害剤が見出された (ACS Chem Biol.)
January 26, 2010,Science Daily,© 2010 ScienceDaily LLC
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正常プリオンタンパク質PrPcは神経細胞ミエリン鞘形成に重要であることが示された (Nature Neuroscience)
January 25, 2010,Nature News,© 2010 NPG
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エコーロケーション(反響定位)にPrestinタンパク質を使っている (Current Biology)
January 25, 2010,ScienceNow,© 2010 AAAS/Science
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構造生物学:ウイルスの作るタンパク質VP35がウイルスRNAを覆い隠し免疫系をすり抜ける(J. Virol.)
January 25, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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タンパク質の誤った折り畳みを阻止する様々な試みから、アミロイド変性疾患の有望な治療薬候補が産み出されている
January 25, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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ワクチニアウイルスは宿主細胞に感染後、細胞表面にA33とA36と呼ばれる2種のタンパク質を産生し、別のウィルスの侵入を妨げる (Science)
January 22, 2010,ScienceNow,© 2010 AAAS/Science
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製薬大手グラクソスミスクラインがマラリア治療薬開発データと候補薬剤を一般公開
13,500の化合物の構造・特性データを開示し、“オープンラボ”でアクセス可能に
January 21, 2010,Nature News,© 2010 NPG
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欧州分子生物学研究所(European Molecular Biology Laboratory、EMBL)が創薬データベースを公開
52万の生理活性化合物のデータベースChEMBLdbが欧州生命情報学研究所(European Bioinformatics Institute、EBI)より無償公開された
January 21, 2010,GenomeWeb Daily News,© 2010 GenomeWeb LLC
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パンダは主食のササの消化に用いるセルラーゼの遺伝子を欠いており、その消化は腸内微生物叢に依存しているらしい。偏食は、味覚が要因となっているのかもしれない。旨味受容体T1R1遺伝子の機能喪失は、パンダが「旨味」を味わったことがない可能性を示している (Nature)
January 21, 2010,Nature今週のハイライト,© 2010 NPG
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グループIIシャペロニンは、真核生物や古細菌での細胞内タンパク質の折りたたみを助ける円柱状巨大複合体である。古細菌のグループIIシャペロニンであるMm-cpnの、ヌクレオチドを含まない(開いた)状態とヌクレオチドにより誘導される(閉じた)状態の4つの単粒子低温電子顕微鏡構造が報告された (Nature)
January 21, 2010,Nature Editor's Summary,© 2010 NPG
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新しい遺伝子マーカーの比較解析から120万年前の"人口”は18,500と推定された (PNAS)
January 19, 2010,ScienceNow,© 2010 AAAS/Science
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ヒトの睡眠病を引き起こす寄生性原虫ブルーストリパノソーマの生存に必須な酵素の構造が解かれた (JBC)
January 19, 2010,NIGMS News,
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害虫への耐性向上を目指した遺伝子組換えイネはタンパク質、アミノ酸、ビタミンEなどに劣ることが報告された(J. Agric. Food Chem.)
January 18, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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キク科1年草セイコウ(Artemisia annua、生薬名は黄花蒿[オウカコウ]) の遺伝子連鎖地図により、薬物増産への栽培標的が明確になった (Science)
January 15, 2010,Science 今週のハイライト,© 2010 AAAS/Science
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膜翅目版「実験用ラット」と呼ばれるNasonia属のハチ、ミツバチ、アリなどは、農作物に害を与えたり病気を媒介したりする害虫などの昆虫を刺して卵を産みつける。そのゲノム情報は害虫の駆除に新たな道を開くだろう (Science)
January 15, 2010,Science 今週のハイライト,© 2010 AAAS/Science
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ゼブラフィッシュを用いたハイスループットドラッグスクリーニング
次世代不眠症薬のスクリーニングを通じて、ゼブラフィッシュがヒトの“代役”を務められることが明らかになった (Science)
January 15, 2010,MIT Technology Review,© 2010 Technology Review, Inc.
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実験心理学者がしばしば用いる迷路学習に化学者が取り組んだ。仕掛けはケモタキシス(走化性) (JACS)
January 15, 2010,ScienceNOW,© 2010 AAAS/Science
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物体の像を三次元で生成するには、多数の視点から測定するか、断面ごとに走査しなくてはならない。単色の入射ビームを使った1回の露光でナノスケールの三次元画像を作出する方法が開発された (Nature)
January 14, 2010,Nature 今週のハイライト,© 2010 NPG
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ショウジョウバエで見つかった攻撃フェロモンとその受容体 (Nature)
January 14, 2010,Nature 今週のハイライト,© 2010 NPG
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自然界に最も大量に存在するタンパク質であるRubisco(リブロース-ビスリン酸カルボキシラーゼ)のform Iは、光合成での大気中CO2の吸収を触媒している。シアノバクテリアのRubiscoの形成が in vitroでの再構成と低温電子顕微鏡法により解析された (Nature)
January 14, 2010,Nature 今週のハイライト,© 2010 NPG
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フィトクロムはビリンを含む光受容体で、基底型(Pr)と光活性化型(Pfr)との間の光変換を行う能力により、多くの光反応を制御している。シアノバクテリアのフィトクロムを使って、Pfrのビリン結合ドメインの三次元溶液構造が報告された (Nature)
January 14, 2010,Nature Editor's Summary,© 2010 NPG
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構造的柔軟性を持つ創薬ターゲットのホスファチジルイノシトール-3-キナーゼPI3Kと多様な阻害剤との複合体結晶構造が報告された (Nat Chem Biol.)
January 12, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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シリコンナノワイヤーを用いて生体分子を生きた細胞内に導入する技術が開発された (PNAS)
January 12, 2010,MIT Technology Review,© 2010 Technology Review, Inc.
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誤って折り畳まれたプリオンが再び別の形に折り畳む、すなわち構造的に進化することが見出された (Science)
January 11, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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ユビキチンは、分解へと運命づけられたタンパク質の折り畳みをほどく
分解へのタグ付けの役割に加え、ユビキチンは、ユビキチン結合サイト近傍でタンパク質が折り畳みをほどくことを助けることが報告された (PNAS)
January 11, 2010,Chemical & Engineering News,© 2010 ACS
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JAPAN: 2010年の科学予算は恐れられていたほどの惨状ではなかった
昨年末に閣議決定された日本の新政権の科学分野予算案は、いくつかのプロジェクトが打撃を被ったものの、おおむねマイナーチェンジであった
January 8, 2010,Science: News of the Week,© 2010 AAAS/Science
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RNAポリメラーゼII-基本転写因子TFIIB複合体の新しい構造が報告された。従来の報告がTFIIB のアミノ末端領域を明らかにしたのに対し、今回はカルボキシル末端領域が解明された (Science)
January 8, 2010,This Week in Science,© 2010 AAAS/Science
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膜タンパク質GPCRの細胞外表面部分のリガンド特異的コンフォメーション変化
β2アドレナリンレセプターの膜貫通コア内に結合し、Gタンパク質活性化に関して異なった影響を示す薬剤群が、細胞外表面部分を異なったコンフォメーションで安定化することが判った。多様な細胞外表面を標的にする薬剤がサブタイプ選択性の高いアロステリック調節因子として機能する可能性がある (Nature)
January 7, 2010,Nature Editor's Summary,© 2010 NPG
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ヒトDNA依存性プロテインキナーゼ(DNA-PK)の触媒サブユニットDNA-PKcs(4,128個のアミノ酸からなる1本のポリペプチド鎖のセリン/トレオニンプロテインキナーゼ)の結晶構造が報告された
January 7, 2010,Nature Editor's Summary,© 2010 NPG
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高度好塩古細菌で、ユビキチンに類似し、タンパク質付加体を形成する低分子量古細菌修飾タンパク質(small archaeal modifier protein:SAMP)が見つかった
January 7, 2010,Nature Editor's Summary,© 2010 NPG
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米国PSI (Protein Structure Initiative) の第三期にあたるPSI-Biologyの公募が始まった
January 6, 2010,GenomeWeb Daily News,© 2010 GenomeWeb LLC
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愛飲されているワインの多くの葡萄品種の母親は、質が悪く栽培が禁止された絶滅種
葉緑体のDNA解析から、母親(卵細胞ドナー)がグアイス・ブラン(Gouais Blanc)種、父親(花粉ドナー)がピノ・ノアールと判った
January 4, 2010,NY Times,© 2010 The New York Times
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多様なバクテリアで、毒性や揮発性の代謝物の反応はタンパク質性のマイクロコンパートメントで実行される。エタノールアミンの代謝を隔離するシェルを構成する4種のタンパク質の構造が報告された
January 1, 2010,This Week in Science,© 2010 AAAS/Science
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感染性の腫瘍のため絶滅の危機に瀕する有袋類タスマニアデビルにがん検診の望み
顔面腫瘍の起点は末梢神経のシュワン細胞と突き止められ、その膜上に発現するタンパク質ペリアキシンが診断マーカーとして有望であることが分かった
December 31, 2009,Nature News ,© 2009 NPG
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PNE誌が,53年あまりの歴史を経て休刊に
2009年12月,『蛋白質 核酸 酵素』編集委員会,© 2009 KYORITSU SHUPPAN CO., LTD.
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口内バクテリアのゲノム解析が明らかにした善玉腸内細菌の迷惑な口内への適応
December 24, 2009,ScienceNOW,© 2009 AAAS/Science
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上皮増殖因子受容体(EGFR)キナーゼ阻害剤の EGFR 変異型非小細胞肺がんに対する臨床効果は、T790M変異をはじめとする新たな薬剤耐性変異の発生によって制限される。EGFR T790Mに特異的に共有結合を形成する阻害剤が同定され、阻害剤?EGFR複合体の構造解析からその作用機構が示された。
December 24, 2009,Nature Editor's Summary,© 2009 NPG
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ヒトにみられる病原性細菌の多くはグラム陰性で、細菌の個体どうしの接合によるDNA伝搬はIV型分泌系によって仲介される。IV型分泌系の巨大外膜複合体の結晶構造が決定され、DNAが細菌の細胞膜を通過する機構が示唆された。
December 24, 2009,Nature 今週のハイライト,© 2009 NPG
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金属含有タンパク質一酸化窒素還元酵素の構造・機能モデルが設計され、設計されたタンパク質のX線結晶構造解析による確認がなされた
December 24, 2009,Nature Editor's Summary,© 2009 NPG
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ウイルスとヒトの遺伝子・タンパク質の大規模な相互作用マップがNatureと2報のCell で報告された
December 23, 2009,ScienceNOW,© 2009 AAAS/Science
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希薄溶液中のペプチド‐アルキル鎖ファイバー間の静電反発が3次元化をもたらす
December 21, 2009,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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複数のヒ素原子を含む天然からの初めての有機多ヒ素化合物の合成と構造が報告された
December 21, 2009,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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チャネルのダイオード様伝導特性と毒素不感応性の基盤が明らかになった
December 18, 2009,This Week in Science,© 2009 AAAS/Science
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LKB1‐STRAD‐MO25複合体の構造から判明したキナーゼ活性化のアロステリック機構が明らかになり、LKB1の機能が、がんなどで認められる変異によってどのように損なわれるかが判明した
December 18, 2009,This Week in Science,© 2009 AAAS/Science
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リン酸化ではなく、一過性の水素結合が重要な役割を果たす不活性状態?活性化状態の構造遷移の例
December 17, 2009,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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シュワネラという岩に居住するバクテリアは膜タンパク質ヘム複合体を介して電子をやりとりする
December 17, 2009,ScienceNOW,© 2009 ACS
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バクテリア由来のグルタミン酸輸送体の内向き状態の結晶構造が決定され、ナトリウムイオンと連動したグルタミン酸取り込みの分子機構が提案された
December 17, 2009,Nature Editor's Summary ,© 2009 NPG
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哺乳類のDNA損傷応答に、SUMO(small ubiquitin-like modifier)化経路が重要な役割をもつことが確証された。
December 17, 2009,Nature今週のハイライト,© 2009 NPG
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総合科学技術会議は縮減が提言されていた研究プログラムへの予算支援を提言
December 15, 2009 ,Nature News,© 2009 NPG
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トリプトファニルtRNA合成酵素は、タンパク質合成での酵素機能に加えて血管新生を阻害する機能を示すという10年前の発見の裏付けが得られた
December 15, 2009,NIGMS News,
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二酸化炭素が豊富な時、植物はその気孔を閉じ水の蒸散を防ぐ。炭酸脱水酵素の触媒反応が気孔の閉鎖を引き起こすことが明らかにされた
December 15, 2009,NIGMS News,
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免疫抑制剤ラパマイシンの作用機構から着想した、血液中の薬剤の半減期の向上手法
December 14, 2009 ,MIT Technology Review,© 2009 Technology Review, Inc.
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大麦の脂質輸送タンパク質が醸造過程中に部分的に折り畳みを解き、ビールの細かい泡を安定化する
December 14, 2009 ,Chemical & Engineering News ,© 2009 ACS
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赤ワイン中のポリフェノールとアンチエージングとのリンクに疑問
赤ワイン中に含まれるリスベラトロールと脱アセチル化酵素Sirtuinsの関係を再訪する
December 14, 2009 ,Chemical & Engineering News ,© 2009 ACS
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無細胞タンパク質合成系を活用した膜タンパク質合成方法の開発に成功
医薬品ターゲットなど臨床的にも重要だが合成が困難な膜タンパク質を、正しい形と機能を保持した活性体として大量合成する方法を開発(本プロジェクト成果)
December 11, 2009,RIKEN RESEARCH,© 2009 RIKEN
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ピクサー社などが多用しているハイエンド3次元コンピュータグラフィクスソフトウェアMayaに基づくフリーのMolecular Maya ツールキットのアナウンス
December 11, 2009,Nature News ,© 2009 NPG
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植物病原菌であるキサントモナス属細菌は、アミノ酸ベースのコード(1対のアミノ酸が1つの塩基)を用いることによって、TALエフェクター分子を特異的なDNA配列標的へ向けることができる
December 11, 2009,Science Perspectives,© 2009 AAAS/Science
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エフリンタンパク質とエフリン受容体を介した細胞間の『対話』を聞き取る
エフリンは細胞表面に発現する膜タンパク質であり、エフリン受容体を発現する細胞と相互作用すると双方向にシグナルが伝達される。この系を用い、異なる細胞集団間の相互作用によって生じる双方向性のシグナル伝達を、同位体と質量解析を組み合わせた手法によって同時に解析する手法が開発された。
December 11, 2009,This Week in Science,© 2009 AAAS/Science
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ニューロン特異的に発現していることが知られていたものの機能が不明であったnorbinは、代謝型グルタミン酸受容体5(mGluR5)の脳内調節因子であることが明らかになった
December 11, 2009,This Week in Science,© 2009 AAAS/Science
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新規発見のペプチド性因子「ストマジェン」が気孔の数を調節する機能を担っている。
December 10, 2009,京都大学ニュースリリース,
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アラニルtRNA合成酵素は時々、アラニンではなく、グリシンやセリンに結合することがある。結晶構造解析により、この問題が編集タンパク質AlaXpの進化によって克服された仕組みが明らかにされた。
December 10, 2009 ,Nature今週のハイライト,© 2009 NPG
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膜結合タンパク質が作る、尿素だけを通過させるチャネルは、腎臓の水を保持する機能に必須である。このチャネルの結晶構造から、狭い隙間を通過させることで尿素分子を選別する仕組みが明らかになった。
December 10, 2009 ,Nature News and Views,© 2009 NPG
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DNA損傷の修復には最初に大過剰の無傷のDNAに埋もれた傷害を検出しなければならない。DNA修復酵素とDNA二本鎖中に存在する損傷を受けた核酸塩基が遭遇する最初期段階の構造が明らかにされた。
December 10, 2009 ,Nature Editor's Summary,© 2009 NPG
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イソクエン酸脱水素酵素1(IDH1)における変異は、ヒトの原発性脳腫瘍の主要なタイプに共通する特徴である。構造研究から、この変異によりIDH1は酵素機能を失うばかりでなく、ケトグルタル酸の 2-ヒドロキシグルタル酸へ変換する触媒能が生じることが判った。
December 10, 2009 ,Nature Editor's Summary,© 2009 NPG
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花の存在ではなく、葉脈の発達による効率良い光合成が要因との研究報告
December 8, 2009,ScienceNOW,© 2009 AAAS/Science
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スーパーコンピュータで認可済みの薬からインフルエンザ薬を探す
インフルエンザウイルスの酵素ノイラミニダーゼの大規模なコンピュータシミュレーションから新型、従来型に共通に有望な既存認可薬フラグメントが報告された
December 8, 2009,MIT Technology Review,© 2009 Technology Review, Inc.
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2報の画期的論文が低温電子顕微鏡を用いて、リボソーム出口トンネルの新生ポリペプチド鎖の直接的可視化に成功した
December 4, 2009,Science Perspective,© 2009 AAAS/Science
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DNAジャイレースはバクテリアに必須で、ヒトでは欠損しているため重要な抗菌剤ターゲットである。DNAジャイレースに結合した抗菌剤シモシクリノンの構造解析から、本剤は酵素活性を阻害するのでなく、ジャイレースとDNAの結合を阻害することが判った。
December 4, 2009,This Week in Science,© 2009 AAAS/Science
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昆虫では、変態は神経ペプチドである前胸腺刺激ホルモン(PTTH)により活性化される。このホルモンの発見後およそ1世紀経って、PTTH 受容体とそのシグナル伝達経路が同定された。
December 4, 2009,This Week in Science,© 2009 AAAS/Science
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ウイルスではなく、宿主のマイクロRNAをターゲットにした新しいC型肝炎薬
C型肝炎ウイルスは肝細胞への感染の際に、肝臓で発現されるmiR-122というmiRNAを必要とする。miR-122を阻害する化合物が報告された。
December 4, 2009,Science 今週のハイライト,© 2009 AAAS/Science
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植物ストレスホルモンアブシジン酸のシグナル伝達経路解明の進展
紆余曲折を経たアブシジン酸受容体の追跡がようやく正解を突き止めた。今週号のNature 誌掲載の4報(うち1報は本プロジェクトの成果)など最近の報告を総合して、本ホルモンがそのメッセージを伝達する詳細が明らかになった
December 3, 2009,Nature News and Views,© 2009 NPG
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X線結晶構造解析法とNMR 分光法を組み合わせて、プロリン異性化酵素の隠された高エネルギー準安定状態が解析された
December 3, 2009,Nature Editor’s Summary,© 2009 NPG
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単一ユビキチン分子が1つずつ運ばれることにより、基質上でユビキチン鎖が形成されるという考え方が裏付けられた
December 3, 2009,Nature 今週のハイライト,© 2009 NPG
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ケミカルバイオロジー:自己反応性T細胞の選択的リガンドを探索する新規なスクリーニング戦略
December 3, 2009,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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大沢文夫名古屋大学名誉教授「ネイチャー・メンター賞」(生涯功績賞)受賞
大沢文夫名古屋大学名誉教授は、1954年から筋肉を構成する主要なタンパク質であるアクチンに取り組み始めた。5年後の1959年にアクチンに関する最初の論文を発表。今回、若手研究者の育成への貢献を顕彰された。なお、大沢教授が設立に貢献した生物物理学会は来年(2010年)50周年を迎える
December 1, 2009 ,Nature Asia-Pacific,© 2009 NPG
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ノーベル賞受賞者と一流の研究者が集結し、政府の歳出削減方針に抗議した
December 1, 2009,Nature News,© 2009 NPG
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国民ならびに政治のサポートを求める日本の科学界と事業仕分タスクフォースの戦いがエスカレートしている
December 1, 2009,Science Insider,© 2009 AAAS/Science
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アスパラガスの枝のワックス状表面に卵を付着させるための界面活性作用を持つタンパク質を含む接着剤の知見は防虫に役立つだろう
December 1, 2009 ,New York Times,© 2009 The NY Times Co.
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中枢神経系で重要な機能を果たす膜タンパク質受容体であるグルタミン酸受容体の構造が解かれた(Nature Epub 11/29)
November 30, 2009 ,Nature News,© 2009 NPG
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分子動力学シミュレーションを用いて、ウレアが水素結合によりRNA塩基間にスタックする機構が提案された。
November 30, 2009 ,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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アラスカかぶと虫から、糖質と脂質からなる天然物不凍剤が見つかった
November 30, 2009 ,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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緊急討論会に参加した科学者たちの嘆きに、ホールを埋め尽くした聴衆は耳を傾けていた
November 27, 2009,Nature News,© 2009 NPG
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エクスポーチンExp5とGTPアーゼRanGTP はpre-microRNAをRNA分解酵素によって分解されないように保護しながら、核から細胞質にmicroRNAを輸送する
November 27, 2009,This Week in Science,© 2009 AAAS/Science
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RSウイルスのヌクレオカプシド様核タンパク・RNA複合体の結晶構造
RSウイルス(呼吸器合胞体ウイルス)では、このウイルスのポリメラーゼに接近できる塩基をもつヌクレオカプシドヘリックスの周囲に、ウイルスのRNAが巻き付いている
November 27, 2009,This Week in Science,© 2009 AAAS/Science
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リボザイムからなるリガーゼの構造から、RNAがどのように自己複製できるかについての知見が得られた
November 27, 2009,This Week in Science,© 2009 AAAS/Science
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最小の細菌のひとつであるマイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)において、全タンパク質の相互関連性を示す新たな報告がなされた
November 27, 2009,Science 今週のハイライト,© 2009 AAAS/Science
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公聴会方式で予算配分を決めようという日本の取り組みは、日本自身のためになり、科学のためになるかもしれないが、今のやり方ではそうはならない
November 26, 2009,Nature Editorial,© 2009 NPG
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中性子回折、固体核磁気共鳴分光法と分子動態シミュレーションを組み合わせた研究により、膜タンパク質が膜電位の変化を感知して応答するのに使われるS1-S4電位感知ドメインを含む脂質二重膜の構造と、水和の詳細な様相が明らかになった
November 26, 2009 ,Nature 今週のハイライト,© 2009 NPG
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HeLa細胞を使った研究から、タンパク質合成に使用されるメチオニン残基はおよそ1%がアミノアシル化されて、「教科書では誤りとされる」tRNAができることが示された
November 26, 2009 ,Nature 今週のハイライト,© 2009 NPG
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根粒菌の共生窒素固定に必須な宿主マメ科植物遺伝子の発見と機能解明
根粒に特異的なマメ科植物遺伝子が、共生する根粒菌の窒素固定酵素の活性中心の形成に直接関与していることを発見
November 26, 2009 ,農業生物資源研究所ニュース,
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X線結晶解析と低温電子顕微鏡観察のデータを組み合わせて、リボソームが他のタンパク質と共同して、新しいタンパク質を組み立て目的地にガイドする様子を明らかにする(ビデオ付き)
November 25, 2009,NIGMS News,
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タンパク質モーターがメッセンジャーRNAと結合し移行する様子(ビデオ付き)
November 25, 2009,NIGMS News,
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10ナノメートルの壁を世界で初めて突破
November 23, 2009,SPring-8 ニュース,
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システインをセレノシステインで置き換えてジスルフィド橋架けのNMR識別能力を向上する
November 23, 2009,Chemical & Engineering News ,© 2009 ACS
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多くの硫酸基を持つ線状多糖類で、生理活性にも期待が持たれるヘパラン硫酸の新規合成法が報告された
November 23, 2009,Chemical & Engineering News ,© 2009 ACS
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細胞表面に存在する膜結合型ヘパラン硫酸プロテオグリカンの一種 グリピカン -1がプリオンタンパク質を伝染性型に凝集するのを助けていることが見出された
November 23, 2009,Chemical & Engineering News ,© 2009 ACS
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November 20, 2009 ,Science Insider,© 2009 AAAS/Science
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最も古く重要な作物の1つであるトウモロコシの、複雑を極めるゲノム配列が決定された。今回の成果は植物遺伝学に新たな洞察を与えるとともに、環境面での持続可能性と特定の気候への適合性を強化した作物育種の躍進にもつながるに違いない。
November 20, 2009 ,This Week in Science,© 2009 AAAS/Science
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東京?概算要求の抑制のため、政府のタスクフォースが来年度科学技術関連予算の大幅なカットを勧告した。科研費から次世代スーパーコンピューターに代表される大型プロジェクトに至るまですべての分野に痛手を与えるだろう。
November 20, 2009 ,Science: News of the Week,© 2009 AAAS/Science
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葉を切り取り巣に運ぶハキリアリは窒素固定バクテリアと共生関係
November 20, 2009 ,ScienceNOW,© 2009 AAAS/Science
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Pol II (RNAポリメラーゼII) /TFIIB (基本転写因子) 複合体の結晶構造解析から6ステップの転写開始の機構が示唆された
November 19, 2009,Nature 今週のハイライト,© 2009 NPG
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アロステリックタンパク質では構造だけによって活性が調節されているという見方は改めるべきで、タンパク質の動態変化が主な要因となる場合も多いことが示唆された
November 19, 2009,Nature 今週のハイライト,© 2009 NPG
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分泌タンパク質のアミノ末端にある解離性のシグナルペプチドは輸送および局在化を指示する役割に加えて、トランスロカーゼのアロステリックな活性化因子であることが見出された
November 19, 2009,Nature Editor’s Summary ,© 2009 NPG
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生物学にとって情報共有は不可欠であり、データベースなどの情報資源に対し、国際的な支援が必要だ。
November 19, 2009 ,Nature Editorial,© 2009 NPG
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アメリカ国立科学財団がTAIR(アラビドプシスデータベース)へのサポートを段階的に廃止
November 18, 2009,Nature News,© 2009 NPG
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日本の新政権は、選挙公約で科学に対する支援強化を明言していたが、これまでのところでは、科学技術予算が縮減される見込みである
November 17, 2009,Nature News,© 2009 NPG
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ホログラフィー“ピンセット”で操作される微粒子が放つ“香り”に好中球がおびき寄せられる様子
November 16, 2009 ,NIGMS News,
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ヒ酸塩還元酵素Azurinの酸化還元電位と反応性をコントロールする手法が2グループから報告された
November 16, 2009,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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NMRと電子顕微鏡を用いて、HIVウィルスのゲノムを取り囲むコート(外膜)タンパク質の“縫い目”が見つかった
November 12, 2009 ,NIGMS News,
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効果的な感染症・アレルギーに対する経口ワクチンの開発に期待
November 12, 2009,理研プレスリリース,
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ヒトとチンパンジーのFOXP2タンパク質の比較から両者の言語機能を浮き彫りにする
November 11, 2009,Nature News ,© 2009 NPG
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NOTCH複合体のタンパク質?タンパク質相互作用を阻害する細胞透過性の合成ペプチドが報告された
November 11, 2009,Nature Editor’s Summary ,© 2009 NPG
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プロトン移動中のGFP構造変化のフェムト秒ラマン分光法によるマッピング
November 11, 2009,Nature Editor’s Summary ,© 2009 NPG
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2種のタンパク質が銅イオン橋架け複合体を形成して銅を輸送する
November 10, 2009,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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脳内ホルモンの副腎皮質刺激ホルモン放出因子(CRF)が常用癖に関わっている
November 9, 2009 ,ScienceNOW,© 2009 AAAS/Science
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イネの白葉枯病抵抗性遺伝子XA21を介して自然免疫を活性化するタンパク質(AX21:activator of XA21-mediated immunity)が同定された
November 6, 2009,This Week in Science,© 2009 AAAS/Science
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アポトーシス性のプロカスパーゼ-3と-6を活性化させる低分子が同定された
November 6, 2009,This Week in Science,© 2009 AAAS/Science
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タンパク質結合:キラル分子の両方の鏡像異性体(R体とS体)を同時に受け入れるバクテリアの酵素が見つかった
November 5, 2009 ,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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NF-κBシグナル伝達経路中にあるTBK1がKRAS形質転換細胞の生存に必須のキナーゼであると突き止められた
November 5, 2009,Nature 今週のハイライト,© 2009 NPG
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染色体のHMGBタンパク質が、核酸受容体を介する自然免疫応答の活性化全般に不可欠であることが明らかになった
November 5, 2009,Nature 今週のハイライト,© 2009 NPG
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天然物アルカロイドCortistatin Aのターゲットタンパクが見つかった
抗がん剤のリード化合物として注目されるCortistatin Aはタンパク質キナーゼROCK、CDK8、CDK11の高親和性リガンドであることが分かった
November 2, 2009,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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タンパク質工学:合成ペプチドでGFPを改変・改良する
November 2, 2009,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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ケミカルバイオロジー:フォトクロミック(可逆的光異性化)化合物でカリウムイオンの流れをオン・オフする
November 2, 2009,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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パンデミック:ワクチン供給が遅滞するなか、米国FDA(食品医薬品局)は応急処置として未認可のインフルエンザ薬の使用を許可
November 2, 2009,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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プロテインチップによるヒトタンパク質?DNA相互作用のプロファイリングから多くの新規転写因子が見出された
November 1, 2009,NIGMS News,
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斬新なアプローチで約7000対の薬剤?タンパク質の関連を予測(11/1 Nature Epub)
November 1, 2009 ,Nature News,© 2009 NPG
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伸長因子に結合したリボソームの結晶構造解析により、tRNAの転位(トランスロケーション)とコドン解読についての新たな知見が得られた
October 30, 2009,This Week in Science,© 2009 AAAS/Science
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DNAに結合するタンパク質は、莫大な量のDNAの中からどのようにして標的を見つけるのか?
タンパク質とDNAの複合体の三次元構造の新たな解析から、DNAの形状が認識に重要であることが示唆された
October 29, 2009,Nature Editor’s Summary,© 2009 NPG
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共通の匂い(ノナナールというアルデヒド)が、ヒトとトリに西ナイルウイルスの感染を引きおこす蚊を誘引する
October 27, 2009,ScienceNOW,© 2009 AAAS/Science
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げっ歯類としては極めて長寿命の地中生活ネズミが示す、驚くべきガンに対する抵抗性を解明する手がかりが得られた
October 26, 2009,ScienceNOW,© 2009 AAAS/Science
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顕微鏡:蛍光発光ではなく光の吸収を可視化する
October 26, 2009,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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環境ストレス耐性を担う植物ホルモン、アブシジン酸の受容体との結合様式
最近同定された受容体PYR1(本欄5月4日ニュース参照)とアブシジン酸の結晶構造が解かれた
October 24, 2009,NIGMS News,
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触媒機能の再構築により、コレステロール低下薬のロバスタチンがどのように生合成されるのかについての洞察が得られた。
October 23, 2009,This Week in Science,© 2009 AAAS/Science
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赤ワイン中の鉄分が主要な原因とメルシャンの研究者が報告
October 22, 2009,ScienceNOW,© 2009 AAAS/Science
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睡眠が妨げられると海馬のサイクリックAMP依存性プロテインキナーゼA(cAMP/PKA)に基づく可塑性が低下することが明らかになった。
October 21, 2009,Nature 今週のハイライト,© 2009 NPG
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タンパク質のフォールディング(折り畳み)を操作・理解するための二つの手法の提案
October 19, 2009,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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フィブラート系高脂血症治療薬や除草剤が味覚受容体T1R3の働きを阻害することが見出された
October 19, 2009,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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炭酸脱水酵素が二酸化炭素と水を炭酸水素イオンと水素イオンに変換し、発生する水素イオンが酸味を感知する味細胞を活性化する
October 16, 2009,Science: News of the Week,© 2009 AAAS/Science
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タンパク質の構成要素であるα-アミノ酸の、実用的で適応性の高い新しい触媒不斉合成法が報告された
October 14, 2009 ,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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T細胞が中枢神経系に侵入する様子が可視化された
October 14, 2009 ,Nature News ,© 2009 NPG
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キイロショウジョウバエでは、単一の炭化水素フェロモン(ヘプタコサジエン)が性別と種別の標識付けの両方に使われている
October 14, 2009 ,Nature News ,© 2009 NPG
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19世紀から20世紀初頭にかけて、大英帝国のヴィクトリア女王の子孫達を苦しめたいわゆる「呪われた血」は血液凝固障害である血友病Bであったことが明らかになった。
October 9, 2009,ScienceNOW,© 2009 AAAS/Science
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慢性疲労症候群(CFS)と前立腺腫瘍:レトロウイルスコネクション?
前立腺腫瘍の一部にも最近認められたヒトレトロウイルスXMRVは、かなりの割合のCFS患者も保有していることが報告された。
October 9, 2009,Science: News of the Week,© 2009 AAAS/Science
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核内のDNAポリマーは、コンパクトでもつれのないフラクタルな小球状であることが示された。
October 9, 2009,MIT Technology Review,© 2009 Technology Review, Inc.
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リアクトームアレイ (Retracted on November 12, 2010)
生物の主な代謝経路を代表する1676種の代謝産物(基質)と色素をスライドガラス上で結合させたリアクトームアレイを用いて、酵素の作用で遊離する色素の蛍光を測定することにより、試料中の代謝活動の包括的な分析を迅速に行うことができる。
October 9, 2009,This Week in Science ,© 2009 AAAS/Science
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米国は先週稼働開始、日本は2010年、ヨーロッパは2014年完成予定
October 8, 2009,Nature News ,© 2009 NPG
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植物の葉の表面は葉圏とよばれ、多くの微生物が暮らしている。「群集プロテオゲノミクス」という手法から、この独特な生息環境中で生存し、繁栄するための条件について、新しい見方が得られる。
October 8, 2009,Nature News and Views,© 2009 NPG
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トリプシンを分子鋳型に使った分子インプリントポリマー(MIP)は、従来知られている低分子阻害剤よりも高活性・高選択性を示す
October 5, 2009 ,Chemical & Engineering News ,© 2009 ACS
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植物ホルモンのブラシノステロイドをスプレーすることにより農薬残留量を減らすことができる
October 5, 2009 ,ScienceNOW,© 2009 AAAS/Science
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結核菌がヒトの自然免疫システムをすり抜けるのを助ける防御分子を産生する酵素が同定された
October 3, 2009,NIGMS News,
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哺乳類の寿命はリボソームタンパク質S6キナーゼ1 (S6K1)を介したシグナル伝達により制御されている
October 2, 2009,This Week in Science,© 2009 AAAS/Science
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必要不可欠であると考えられてきたAtg5, Atg7等のタンパク質に依存しない新規のオートファジー機構の発見
October 1, 2009,東京医科歯科大学プレスリリース,
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結晶性化合物内の空間を化学反応の場として用いることにより、出発物質が生成物に至るまでの「スナップショット」を精密に観測
October 1, 2009,JST?東京大学共同プレスリリース,
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育種と植物分子生物学の進歩がもたらす乾燥ストレス耐性作物
September 28, 2009,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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タンパク質ではなく、疾患関連RNAを標的とする創薬開発の現状と課題
September 28, 2009,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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化学受容体?化学的刺激を感知し応答する受容体?の配置構成が可視化された
September 28, 2009,NIGMS News,
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レーザー駆動の高輝度小型軟X線源の試作
September 27, 2009,Nature News,© 2009 NPG
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質量分析法を用いた、微生物から新しい天然物化合物を探し出すプロテオミクスアプローチ
September 24, 2009 ,Chemical & Engineering News ,© 2009 ACS
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睡眠不足はマウス脳内でアミロイド斑の蓄積を加速する
September 24, 2009 ,ScienceNOW,© 2009 AAAS/Science
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プロテインキナーゼが、触媒部位から遠く離れたポケットへの低分子化合物の結合により活性化される仕組みが結晶構造から明らかになった。これにより、タンパク質リン酸化の調節因子設計への道が開けるだろう。
September 24, 2009,Nature News and Views,© 2009 NPG
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RAFの活性化はキナーゼドメインの二量体化形成により調節されることが明らかにされた
September 24, 2009,Nature Editor’s Summary,© 2009 NPG
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Dylan to Darwin: Don't Look Back
グルココルチコイド受容体という調節性タンパク質の4億年の進化の過程の研究は、進化は逆行しないことを示す
September 23, 2009,ScienceNOW,© 2009 AAAS/Science
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マイコバクテリアのプロテアソーム機能のみ阻害し、宿主ヒトプロテアソームには影響しない化合物の発見と、その選択性の構造的考察
September 21, 2009,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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好熱菌(Thermotoga maritima)の中枢代謝ネットワークの三次元描像
タンパク質三次元構造データを生化学データと統合し、細菌細胞の代謝ネットワークの三次元像を作成する試み
September 18, 2009,This Week in Science,© 2009 AAAS/Science
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細菌はD-アミノ酸を産生することによって、細胞壁の構成、構造、量、および強度を制御している
September 18, 2009,This Week in Science,© 2009 AAAS/Science
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グルコース(ブドウ糖)欠乏は、ヒト癌細胞においてある種の発癌変異(KRAS遺伝子変異)の獲得を促進する
September 18, 2009,This Week in Science,© 2009 AAAS/Science
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A trick of the tail-anchored protein
細胞質ATPアーゼシャペロンGet3の結晶構造解析が明らかにする尾部アンカー型膜タンパク質の結合と解離のメカニズム
September 17, 2009,Nature Editor's Summary ,© 2009 NPG
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FDA認可の抗寄生虫薬が、活発に複製中の結核菌にしか効かなかった従来の薬とは異なり、非複製期の結核菌にも有効であることが見出された
September 14, 2009,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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古細菌のBoxC/D型低分子リボ核タンパク質(sRNP)の二量体構造
電子顕微鏡単粒子解析により、核内sRNPが二量体構造であることが明らかになった
September 11, 2009,This Week in Science,© 2009 AAAS/Science
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グアニンヌクレオチド交換因子DOCKファミリーによるRho GTPaseの活性化はヌクレオチドセンサーを介して起こる
結晶構造解析によって、グアニンヌクレオチド交換因子(GEF)であるDOCK9が細胞骨格および細胞シグナル伝達を制御する機構が明らかとなった
September 11, 2009,This Week in Science,© 2009 AAAS/Science
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細菌は、一酸化窒素合成酵素(bNOS)を動員してアルギニンからNOを生合成し、天然毒素や抗生物質由来の酸化ストレスに対応する
September 11, 2009,This Week in Science,© 2009 AAAS/Science
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Apoptosis: how cells become targets
アポトーシス細胞がATPとUTPを放出し、それがfind-me(私を見つけて)シグナルとして働き、P2Y2 ATP/UTP受容体を発現している貪食細胞に対する誘因物質となることが明らかになった
September 10, 2009,Nature Editor's Summary ,© 2009 NPG
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Membrane proteins: structures without crystallization
低温電子顕微鏡法によって明らかになった脂質膜中のBKカリウムチャネルの構造
September 10, 2009,Nature Editor's Summary ,© 2009 NPG
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スルフィルイミン(S=N)結合が細胞外マトリックスのコラーゲンIV鎖の構造的安定性を強化する
September 7, 2009,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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Potent HIV Antibodies Spark Vaccine Hopes
HIVワクチン開発に朗報:大きな共同研究チームが多くのHIV変異株に強力な中和抗体を同定した
September 4, 2009,Science: News of the Week,© 2009 AAAS/Science
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Sugary Achilles' Heel Raises Hope For Broad-Acting Antiviral Drugs
HIVタンパク質の糖鎖のマンノースと結合することによりウィルスの侵入を防ぐタンパク質GRFTは、HIVだけでなくSARSやエボラウィルスにも効能
September 4, 2009,Science: News Focus,© 2009 AAAS/Science
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Watch the Clock to Lose Weight
ダイエットに関する二つの研究報告:いつ食べるか、免疫関連遺伝子の効果
September 3, 2009,ScienceNow,© 2009 AAAS/Science
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Cancer: The fat and the furious
代謝の変化とがんの進行を結びつける証拠が集まりつつある。がん細胞は自身のエネルギー産生を維持し、本来ある環境から離れても十分なエネルギーを得て生き続けるらしい
September 3, 2009,Nature News and Views ,© 2009 NPG
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Ribozyme's Kick Is In Its Fold
リボザイムは3次元構造に折り畳むことにより、その触媒活性を調節する
September 3, 2009,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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ヒトとチンパンジーのDNA配列比較から、両者を区別する、“非翻訳”DNA起因の3種の“若い”遺伝子が見つかった
September 1, 2009 ,ScienceNOW,© 2009 AAAS/Science
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シグマ アルドリッチ社が10月からノックアウトラットを販売予定
September 1, 2009 ,Nature News,© 2009 NPG
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Atoms and Bonds of Molecule Visualized
高分解能AFM法で多環芳香族炭化水素ペンタセン分子の原子と結合を見る
August 31, 2009,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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Odors Inhibit Fly CO2 Response
新しい昆虫駆散薬開発へ:昆虫の二酸化炭素応答を調節する化合物が見出された
August 31, 2009,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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呼気に含まれる4種の有機分子をモニターして肺がんを検知する
August 31, 2009,ScienceNOW,© 2009 AAAS/Science
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腸内細菌叢は病原菌の抗生物質耐性遺伝子の大きな貯蔵庫であることが明らかにされた
August 28, 2009 ,This Week in Science,© 2009 AAAS/Science
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Tapping the Mitochondrial Proteome
ミトコンドリアタンパク質 (Sdh5) は呼吸複合体II の活性に必須で、その変異が遺伝性傍神経節腫の患者で見いだされた
August 28, 2009 ,This Week in Science,© 2009 AAAS/Science
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毎日数千個もの菌類胞子を吸い込んでも免疫反応が起こらないわけ
August 27, 2009,Nature Editor's Summary ,© 2009 NPG
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Biotech Bacteria Could Help Diabetics
GLP-1タンパク質を産生するよう遺伝子操作した大腸菌をマウスに与えるとインシュリンの生成をうながす
August 25, 2009 ,MIT Technology Review ,© 2009 Technology Review, Inc.
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Protein Synthesis Initiation Complex
最初のペプチド結合の生成:70Sリボソームに結合した翻訳伸長因子P(EF-P)の結晶構造
August 21, 2009,This Week in Science,© 2009 AAAS/Science
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ラチェット運動(反転しない部分回転運動)の中間状態におけるリボソームの構造解析
August 21, 2009,This Week in Science,© 2009 AAAS/Science
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Na+非依存的アミノ酸トランスポーターの構造と機構
August 21, 2009,This Week in Science,© 2009 AAAS/Science
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新しいタイプのいもち病抵抗性遺伝子Pi21を陸稲(オカボ)から発見、従来育種法では困難だった、美味しく、いもち病に強い品種を育成
August 21, 2009 ,農業生物資源研究所ニュースリリース,
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名古屋大学の芦苅教授らが、洪水は発生しイネが水没しても、溺死しない「浮イネ」の洪水回避遺伝子SNORKEL1 とSNORKEL2を突き止めました
August 20, 2009,名古屋大学ニュースリリース,
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腸内細菌が胃の強い酸性環境を生き延びるために必須のプロトンポンプの役割を果たしているアルギニン?アグマチン交換輸送体の結晶構造が報告された
August 20, 2009 ,Nature Editor’s Summary ,© 2009 NPG
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Engineered protein-like molecule protects cells against HIV infection
HIV膜タンパク質gp41を模倣した合成α/βペプチドがHIV?ホスト細胞融合を効果的に妨げる
August 17, 2009 ,NIGMS News,
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酸性基質タンパク質Pif97とPif80が炭酸カルシウムの整然とした形成をうながし、真珠や貝殻に真珠光沢の輝きをもたらす
August 17, 2009 ,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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転写抑制因子DEC2の変異が睡眠時間の長短と関連することが報告された
August 14, 2009,ScienceNOW,© 2009 AAAS/Science
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高分解能質量分析計を用いたプロテオームワイドな解析から、リジンアセチル化は今まで認められていたよりずっと広範に起こっていることが明らかにされた
August 14, 2009,This Week in Science,© 2009 AAAS/Science
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新しいスクリーニング手法で、マウスのがん幹細胞を選択的に標的とする化合物が同定された
August 13, 2009 ,Nature News,© 2009 NPG
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Bacteria Interfere With Painkillers
腸内細菌が分泌するクレゾールが解熱鎮痛剤アセトアミノフェンの肝臓での代謝を妨害する
August 11, 2009 ,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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DNA Bar Codes For Chemical Libraries
DNAタグを付けた8億種の低分子化合物を次世代DNAシーケンサーで同定する新しい化合物スクリーニング手法の提案
August 10, 2009,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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Immortality improves cell reprogramming
がん抑制遺伝子p53パスウェイの遮断によりiPS細胞の樹立効率が飛躍的に改善
August 9, 2009,Nature News,© 2009 NPG
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Early Evolution of Protein Editing
タンパク質翻訳過程での校正を担当する酵素の進化を解明する
August 7, 2009 ,NIGMS News ,
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トリの光周性(繁殖・成長・移動などの生理活動の調節する)を担う光受容体タンパク質が特定された
August 7, 2009 ,ScienceNOW,© 2009 AAAS/Science
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Inside HIV-1: structure of an entire RNA gnome
伝染性のウィルス粒子から抽出されたHIV-1 の全RNA ゲノムの二次構造が決定された
August 6, 2009,Nature Editor’s Summary,© 2009 NPG
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数ナノ秒の近赤外レーザー光照射で結晶化をトリガー
August 5, 2009,Nature News,© 2009 NPG
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Structure of Promising New Antibiotic
結晶構造解析が示唆する、期待の抗生物質ラモプラニンの作用機構
August 4, 2009,NIGMS News,
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抗体とマイクロ流路技術を用いたハンドヘルドNMRデバイスで結核菌を迅速検知する
August 4, 2009,MIT Technology Review,© 2009 Technology Review, Inc.
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害虫を殺す寄生虫を誘引するカリオフィレン(テルペンの一種)を放散する遺伝子組換えトウモロコシ
August 3, 2009,Nature News,© 2009 NPG
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RNAポリメラーゼII伸長複合体は、DNAがヒストンに巻きついたヌクレオソームに出会った時に、どのように対処するのか
August 3, 2009,Chemical & Engineering News ,© 2009 ACS
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Sabotage At Energy Department Facility
米国のSLAC国立加速器研究所で前従業員が4,000のタンパク質結晶サンプルを破壊
August 3, 2009,Chemical & Engineering News ,© 2009 ACS
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膵臓ベータ細胞内のシグナル伝達分子cAMPを感知するタンパク質Epac2の化合物スクリーニングから、現在最も広く使用されている糖尿病薬スルホニル尿素がEpac2と結合することを見出した
July 31, 2009,JST?神戸大学共同ニュースリリース,
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Monitoring Monocyte Reservoirs
免疫の開始に重要な単球の貯蔵所として骨髄と血液に加えて、脾臓が重要であることが示された
July 31, 2009 ,This Week in Science,© 2009 AAAS/Science
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哺乳動物?腸内細菌の共生維持のために自然免疫と適応免疫が柔軟に協調している
July 31, 2009 ,This Week in Science,© 2009 AAAS/Science
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Structural biology: Trimeric ion-channel design
ATP活性化イオンチャネルであるP2Xレセプターチャネルの構造が明らかにされた。その特徴的な3量体構造は酸感受性イオンチャネルASICでも共通に見出された
July 30, 2009,Nature News and Views,© 2009 NPG
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NIGMS to Fund New Protein Structure Programs
米国構造生物学プロジェクトの第3期となるPSI: Biologyの公募が開始された
July 29, 2009,GenomeWeb Daily News,© 2009 GenomeWeb LLC
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微生物のゲノムの特定領域に変異を標的導入する高速な手法が提案された
July 27, 2009 ,ScienceNOW,© 2009 AAAS/Science
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DNA barcodes for plants a step closer
植物種を一意的に同定するDNAバーコードに関する共同提案が発表された
July 27, 2009 ,Nature News,© 2009 NPG
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Special Online Collection: Complex Systems and Networks
様々な分野での複雑なシステムのネットワーク解析に関する解説特集
July 24, 2009,Science,© 2009 AAAS/Science
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Phytoplasma Research Begins to Bloom
昆虫媒介性の植物病原菌であるフィトプラズマは、ある時は植物の美しい色合いを生み出すが、多くの場合惨害をもたらす
July 24, 2009,Science: This Week’s News ,© 2009 AAAS/Science
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小胞体?ミトコンドリア接合はオルガネラ間のリン脂質やり取りに重要
July 24, 2009,This Week in Science,© 2009 AAAS/Science
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Neuronal SNARE complex structure
細胞膜貫通領域を含んだニューロンSNARE複合体のX線結晶構造解析から、SNARE会合の最終段階は膜との融合を引き起こすことが分かった
July 23, 2009,Nature Editor’s Summary ,© 2009 NPG
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Rapid detection and profiling of cancer cells in fine-needle aspirates
超小型NMRと磁性ナノ粒子を組み合わせた診断磁気共鳴(DMR)センサーでがん細胞を迅速に検出・プロファイルする
July 20, 2009,PNAS,© 2009 National Academy of Sciences
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PSPP: A Protein Structure Prediction Pipeline for Computing Clusters
ハイスループットな構造ゲノム科学向けのスタンドアローンなタンパク質構造予測ソフトウェアパッケージ
July 20, 2009,PLoS ONE,
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Protein Structure Helps Decipher Route To Selenocysteine
セレノシステインのtRNAと、セレノシステイン生成の最後のステップを触媒するSepSecS酵素との複合体の結晶構造解析が明らかにしたセレノシステイン生合成機構
July 20, 2009,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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Pheromone Tells Fly Suitors to 'Buzz Off'
オスのショウジョウバエが生成する性フェロモンが新たに見出された
July 17, 2009 ,NIGMS News,
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Researchers Image Crucial Anthrax Protein
炭疽菌が自己を守るカプセルを作る際に働く酵素CapDの立体構造が決定された
July 14, 2009,NIGMS News,
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New Drugs Faster From Natural Compounds
多様な構造と生理学的活性を持つ天然物ファミリーである非リボソームペプチドを迅速に特性づけるツールが開発された
July 14, 2009,NIGMS News,
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New Class Of Drugs For Avian Flu
H5N1ウィルスの宿主細胞への侵入を防ぐ化合物のライブラリースクリーニングから見出されたサポニン誘導体は、新しいタイプのトリインフルエンザ治療薬となる期待
July 13, 2009 ,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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How Membrane Proteins Self-Organize
バクテリアの多数の膜タンパク質が集合してクラスターを形成し、置かれた環境中のケミカルを選択する細胞運動を方向付ける様子の観察
July 11, 2009,NIGMS News,
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Anti-obesity drugs: Improving sleep may promote weight loss
T型カルシウムチャネルが睡眠と体重維持の両方を制御するという知見は、睡眠調節が有望な肥満治療戦略の一つであることを示唆
July 10, 2009,Nature Signaling-gateway,© 2009 NPG
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天然物に基づく創薬:一つの時代の終わりか、あるいは無限のフロンティアか?
July 10, 2009,This Week in Science,© 2009 AAAS/Science
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Calorie-Counting Monkeys Live Longer
アカゲザルで20年間にわたり食餌のカロリー制限と寿命の関連を調べた結果が報告された
July 9, 2009 ,ScienceNOW,© 2009 AAAS/Science
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ケモカイン受容体CCR3 が加齢黄斑変性症の診断法並びに治療法のターゲットとなるバイオマーカーであることがわかった
July 9, 2009,Nature Editor’s Summary,© 2009 NPG
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他の受容体と協働してバクテリア細胞壁のリポ多糖を認識するCD14受容体は、リポ多糖刺激後に樹状細胞のアポトーシスを制御することが見出された
July 9, 2009,Nature Editor’s Summary,© 2009 NPG
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Microorganism behavior: be prepared
腸を通過する大腸菌や発酵プロセスの様々な段階を経由する酵母は、“次の事態を予測し”、それに備えて代謝経路を構築する
July 9, 2009,Nature Editor’s Summary,© 2009 NPG
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Fountain of Youth on Easter Island?
イースター島の土壌から発見された免疫抑制剤ラパマイシンがマウスの寿命を延ばす
July 8, 2009,ScienceNOW ,© 2009 AAAS/Science
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糖転移酵素反応の“つなぎわ”機構が、結核菌の細胞壁の糖鎖の長さを制御する
July 6, 2009,Chemical & Engineering News ,© 2009 ACS
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モデル生物の線虫を使って、生体アミンに応答するイオンチャネルファミリーが見出された
July 3, 2009,This Week in Science ,© 2009 AAAS/Science
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Immunology: A metabolic switch to memory
2種の治療薬が、細胞代謝を変えることによって免疫系細胞であるCD8 T細胞の記憶を増強すると報告された
July 2, 2009,Nature News and Views,© 2009 NPG
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Site of Alcohol Action in Brain
X線結晶構造解析を用いて、薬物乱用やてんかんに関連する脳機能で重要な役割を果たしているイオンチャネルとアルコール分子の結合構造が明らかにされた
July 1, 2009,NIGMS News,
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Study Refutes Protein's Role in Heart Attacks
炎症や組織壊死によって増加する血漿マーカータンパク質であるC-reactive protein (CRP)は長らく心臓病へ追い立てる悪玉とみなされてきたが、10万人規模の臨床試験がこの推論を否定
June 30, 2009 ,ScienceNOW,© 2009 AAAS/Science
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可溶性のアミロイド‐βオリゴマーはシナプシ(二つの神経細胞の接合部)で神経伝達物質であるグルタメートの正常な再吸収を妨げることが見出された
June 29, 2009,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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質量分析を用いたイネの根と苗条の解析が、土壌中からの無機水銀イオンとメチル水銀化合物の吸収と輸送の違いを明らかにした
June 29, 2009,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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膜内在性のリン酸転移酵素ファミリーの一つであるジアシルグリセロールキナーゼ(DAGK) の40kDホモ三量体のポーチ型立体構造がNMRによって決定された。
June 26, 2009,This Week in Science ,© 2009 AAAS/Science
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Antibiotics in Nature: Beyond Biological Warfare
感染症を抑圧する抗生物質が、それを産生する微生物コミュニティーの代謝機構において重要な役割を果たしているという証拠が蓄積されてきている。
June 26, 2009,Science: This Week’s News,© 2009 AAAS/Science
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Plant hormones: ten and counting
20世紀前半に見出された5種とその後見出された5種、併せて10種の新旧の植物ホルモンの分子機構研究が急速な進展を見せている。
June 25, 2009 ,Nature Editor’s Summary ,© 2009 NPG
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New protein structures replace the old
開発したソフトウェアを用いてヨーロッパの研究チームがProtein Data Bankに登録されたタンパク質構造データの精密化を試みている
June 24, 2009,Nature News ,© 2009 NPG
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アルギニン:アグマチン(アルギニンが脱炭酸したアミン)共輸送タンパク質AdiCの結晶構造解析から提示されたpH検知と輸送の仕組み
June 19, 2009,This Week in Science,© 2009 AAAS/Science
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Protein Wavers Between Two Forms
バクテリアRopタンパク質のホモ二量体は周囲の環境に応じてアンチ体(head-to-tail)とシン体(head-to-head)に行ったり来たりする
June 19, 2009,NIGMS News,
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プリオン病、アルツハイマー病、パーキンソン病などミスフォールド(誤って折り畳まれた)タンパク質が引き起こす疾病の共通点と違い ? 分子伝播性と伝染性は?
June 17, 2009,Nature News and Views,© 2009 NPG
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Malaria: The gatekeeper revealed
マラリア寄生虫が宿主細胞に自身のタンパク質を排出する分子機構が明らかにされ、貴重な治療薬ターゲットが見出された
June 17, 2009,Nature News and Views,© 2009 NPG
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Inflammation: Wound healing in zebrafish
傷を感染から防ぐ免疫細胞の迅速な流入を指示する最初のシグナルは?ゼブラフィッシュを用いた研究が突き止めた答えは過酸化水素の濃度勾配
June 17, 2009,Nature News and Views,© 2009 NPG
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Structure of the HIV Protein Shell
HIVウィルス核酸を包む外衣タンパク質であるカプシドのビルディングブロックの結晶構造解析
June 15, 2009,NIGMS News,
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Lilly To Provide Free Access to Drug Discovery Platform Under New Collaborative
米国製薬メーカーLillyの、創薬に向けた新しい産学協同研究の仕組み
June 15, 2009,GenomeWeb Daily News,© 2009 GenomeWeb LLC
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Tantalizing clues to the chemical origins of life
DNA鋳型に合わせて自己をリシャッフルするペプチド―核酸ハイブリッド
June 11, 2009,Nature News,© 2009 NPG
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ミスフォールド(誤って折り畳まれた)プリオンタンパクの神経細胞破壊に関する仮説の提案
June 11, 2009,ScienceNOW ,© 2009 AAAS/Science
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バクテリア酵素の結晶構造解析が明らかにした、不活性な炭素?炭素結合切断のルート
June 10, 2009,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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Sexual gene shuffling suppressed in plants
無性生殖細胞分裂が植物育種にブレークスルーをもたらす手がかりとなるかもしれない
June 9, 2009 ,Nature News,© 2009 NPG
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白アリの免疫システムを阻害することにより殺虫剤よりも人や益虫に優しい駆除の可能性
June 8, 2009,ScienceNOW,© 2009 AAAS/Science
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Case Closed: Scientists Nab Birds That Brought Down Airplane
US Airwaysジェットのハドソン川非常着陸の犯人は、DNAバーコーディングと安定同位体比質量分析によりCanada Goose(Branta canadensis) と判明
June 8, 2009,ScienceNOW,© 2009 AAAS/Science
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Rhes-olving Huntington's Disease?
大脳基底核にある線条体に局在発現するGタンパク質Rhesがハンチントン病疾患原因遺伝子である変異 ハンチンチンと結合し、その神経毒性が増加するという知見はRhes-Htt結合が治療標的となりうることを示唆
June 5, 2009 ,This Week in Science ,© 2009 AAAS/Science
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植物由来のアルカロイドであるHalofuginone が、自己免疫疾患の病態形成に密接に関与しているTh17細胞の分化を防ぐメカニズム
June 4, 2009,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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Exploiting Cortistatins' Essence
血管新生阻害物質である天然物ステロイドアルカロイドcortistatinの合成類似化合物 が、しばしば失明に至る黄斑変性症治療に有望
June 4, 2009,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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Membrane-protein structure: Piercing insights
バクテリアのタンパク質毒素が宿主細胞膜に開ける“孔”の構造解析は、多様な膜孔形成毒素が似通った会合体構築経路を経ることを示唆
June 4, 2009 ,Nature News and Views,© 2009 NPG
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Drug giants unite to develop cancer therapy
メルクとアストラゼネカが治験初期段階の候補化合物を持ち寄り、抗腫瘍二剤併用療法の治験を共同で開始
June 2, 2009,Nature News,© 2009 NPG
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Allosteric Effects Govern Nuclear Receptor Action: DNA Appears as a Player
DNAがアロステリックエフェクターとして核内受容体グルココルチコイドの活性を調節
June 2, 2009,Science Signaling,© 2009 AAAS/Science
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Finding Crystallization Sweet Spots
膜タンパク質の成分をナノリットルバッチで混合するデバイスの開発
June 1, 2009,Chemical & Engineering News ,© 2009 ACS
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Probing More Of That Vast Chemical Space
多様な化合物骨格を含有した広い化合物空間をカバーするケミカルライブラリーの提案
June 1, 2009,Chemical & Engineering News ,© 2009 ACS
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Cancer cells need normal, non-mutated genes to survive
Ras癌遺伝子に関する研究は、変異したタンパク質だけでなく正常なタンパク質も創薬のターゲットとなりうることを示唆
May 30, 2009,NIGMS News,
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NIH Seeks Chemical Library Development
NIHが傘下のMolecular Libraries Probe Production Centers Network で使う新しい化合物ライブラリー構築のプロジェクトを公募
May 28, 2009,GenomeWeb Daily News,© 2009 GenomeWeb LLC
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Disorderly Proteins Turn Predictable
タンパク質の不規則(不定形)領域は低分子化合物と結合する短いセグメントを有する?腫瘍性タンパク質c-Mycについての報告
May 27, 2009,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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Disorder in Protein May Provide Wiggle Room
Naイオン‐水素イオン交換輸送体の制御因子NHERF1 の構造解析が明らかにする不規則(不定形)領域の役割
May 26, 2009 , NIGMS News,
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New Structure Revisits History
第一次世界大戦と酵素学で重要な役割を果たしてきたアセト酢酸デカルボキシラーゼ(AADアーゼ)の結晶構造
May 25, 2009,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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Stressed Out Over a Stress Hormone
本欄5月4日付け既報のアブシジン酸受容体をめぐる研究小史
May 22, 2009,Science: This Week’s News,© 2009 AAAS/Science
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NIH Announces New Program to Develop Therapeutics for Rare and Neglected Diseases
米国NIHが顧みられない疾病(Neglected Diseases)の新薬開発プロジェクトTRND(24M$)を発表
May 20, 2009 ,NIH News,
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Flagship drug-development initiative picks projects
ECが産学共同の創薬研究ファンドを発表
May 20, 2009 ,Nature News ,© 2009 NPG
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Detecting Aircraft Pathogens Before It's Too Late
パンデミックの制御には単一粒子検出デバイスが必要
May 19, 2009 ,MIT Technology Review ,© 2009 Technology Review, Inc.
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腫瘍そのものが不安や抑うつ状態をもたらすというラットでの実験の報告?サイトカイン(細胞増殖・分化調節因子)やグルココルチコイドホルモンが関係
May 19, 2009 ,ScienceNOW,© 2009 AAAS/Science
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CAS Launches Free Online Database
米国化学会が一般向けフリーオンライン化合物情報サイトCommon Chemistryをオープン
May 19, 2009 ,Chemical & Engineering News ,© 2009 ACS
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チェルノブイリ原子力発電所事故による放射線汚染の中、ダイズなどの植生はどう適応したか?タンパク質発現解析の報告
May 15, 2009,ScienceNOW,© 2009 AAAS/Science
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Tracking Activity At Single Synapses
神経伝達物質ドーパミンの放出と取り込みの可視化を可能とする新しい蛍光性化合物
May 14, 2009,Chemical & Engineering News ,© 2009 ACS
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RNAのビルディングブロック、リボヌクレオチド(核酸塩基+糖+リン酸)の始原的な生成に関する独創的な合成ルート
May 13, 2009,Nature News,© 2009 NPG
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Japan to pay firms to relieve postdoc glut
文科省がポスドクを雇用する企業に総計5億円を支払う計画を発表
May 13, 2009,Nature News,© 2009 NPG
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トランスクリプトーム解析と化合物スクリーニングから見出されたベンゾチアジノン系化合物が抗結核薬として有望
May 8, 2009,This Week in Science,© 2009 AAAS/Science
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Fluorescent Proteins Go Invisible
ヘモグロビンや脂質で吸収されてしまう可視光でなく、赤外光で励起・発光する蛍光性タンパクにより組織のより深いレベルの観察が可能に
May 7, 2009 ,ScienceNOW,© 2009 AAAS/Science
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Protein structures: Structures of desire
タンパク質構造解析の大きなターゲット?真核生物リボソーム、スプライソソーム、核膜孔複合体、HIV三量体、膜タンパク質
May 6, 2009,Nature News Features ,© 2009 NPG
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China joins world-class synchrotron Club
中国が170億円を費やして上海に放射光施設をオープン
May 6, 2009,Nature News,© 2009 NPG
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アミノアシル化されたtRNAを基質としてシクロジペプチドを産生する酵素ファミリーの発見
May 6, 2009,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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二つのグループが植物ストレスホルモンであるアブシジン酸の活性を仲介するタンパク質ファミリーを報告
May 4, 2009,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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もう一つの基質であるNotch関連の副作用を避けてガンマセクレターゼを阻害するアルツハイマー病治療薬開発戦略
May 1, 2009,This Week in Science,© 2009 AAAS/Science
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8千万年前のハドロサウルスのコラーゲンアミノ酸配列が明らかにする鳥と恐竜の密接な関係
May 1, 2009,This Week in Science,© 2009 AAAS/Science
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HIV's undercover route to infection
エイズウィルスはヒト細胞に感染する前に膜を渡るヒッチハイクをする
April 30, 2009,Nature News ,© 2009 NPG
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Plants genes get fine tailoring
植物の遺伝子を狙った場所に入れる、あるいは除去する効率の良い手法
April 29, 2009,Nature News ,© 2009 NPG
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3種のタンパク質でマウスES細胞から心筋細胞を作成
April 27, 2009,MIT Technology Review ,© 2009 Technology Review, Inc.
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最も広く使われるレポーター遺伝子GFPの光誘起電子供与性
April 25, 2009,Nature News ,© 2009 NPG
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遺伝子を使わず、遺伝子産物のタンパク質を使ってiPS細胞を作成
April 23, 2009,ScienceNOW,© 2009 AAAS/Science
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The Mystery of PolyP Polymerase
結晶構造と生化学解析から酵母液胞膜トランスポーターシャペロン複合体がATPから無機ポリリン酸を生成することが判明
April 23, 2009,This Week in Science,© 2009 AAAS/Science
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ウシゲノム配列解読が切り開く育種新時代
April 23, 2009,Nature News,© 2009 NPG
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新しいタイプの低分子?RNA複合体:補酵素 Aが結合したRNAの発見
April 23, 2009,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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World's First X-ray Laser Powers Up
SLAC (Stanford Linear Accelerator Center)が硬X線領域のレーザービームのテストに成功
April 21, 2009,ScienceNOW,© 2009 AAAS/Science
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細胞の成熟に伴う遺伝子制御ネットワークの変化の追跡?文科省ゲノムネットワークプロジェクトの研究成果
April 21, 2009,ScienceNOW,© 2009 AAAS/Science
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Disrupted Copper Regulation Linked to Prion Diseases
プリオンタンパク?銅イオン結合性の異常とプリオン病のリンク
April 18, 2009,NIGMS News,
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DNA配列変異が調節因子グルココルチコイド受容体の構造と活性を調節するという事実は、DNA配列は単にドッキングサイトであるだけでなく、遺伝子発現に影響を及ぼすシグナルであることを示している
April 17, 2009,This Week in Science,© 2009 AAAS/Science
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チミジル酸合成酵素類の反応機構がいくつかの病原菌と哺乳動物とで異なり、新しい抗菌剤開発のターゲットの可能性
April 16, 2009,Nature News and Views,© 2009 NPG
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コレラの毒素の複数のサブユニットに結合する合成ペプチドは新しい治療法に繋がるか?
April 16, 2009,Chemical & Engineering News ,© 2009 ACS
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Cells Don’t Always Respond According to Genetics
遺伝子レベルで同一な細胞で化学療法の効果が異なる理由はタンパク質発現量の違い
April 14, 2009,NIGMS News,
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日本初の大規模公的化合物ライブラリーの活用による創薬研究の促進
April 13, 2009,文部科学省ニュースリリース,
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Flowering Plant Sheds Light on Human Clock
哺乳動物の時間を司るタンパク質クリプトクロムと極めて良く類似した植物タンパク質光修復酵素の立体構造の報告
April 12, 2009 ,NIGMS News,
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Science誌のタンパク質ダイナミクスに関するレビュー小特集:タンパク質の相互作用やコンフォーメーションと機能との相関
April 10, 2009,Science,© 2009 AAAS/Science
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2種類のインフルエンザウィルスの異なる抗原性糖タンパク質ヘマグルチニンと結合した中和抗体の結晶構造
April 10, 2009,This Week in Science ,© 2009 AAAS/Science
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Giving Malaria a Double Whammy
現行のキノリン系マラリア治療薬の薬剤耐性を感受性に反転させ、かつ自らも抗マラリア効果を持つ新しい化合物
April 10, 2009,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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Researchers Find "Good" Fat in Human Adults
エネルギーを消費する褐色脂肪細胞(brown fat)は成人にも存在?ダイエットに朗報?
April 8, 2009,ScienceNOW,© 2009 AAAS/Science
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Open-access policy flourishes at NIH
研究者、研究機関、出版社ともNIHのオープンアクセス政策に応じるも、一部にまだ反論も
April 7, 2009 ,Nature News,© 2009 NPG
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DNAから作られた細胞内pHセンサー
April 6, 2009,Nature News,© 2009 NPG
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Fluorescent Anesthetic May Expedite Drug Discovery
麻酔薬の作用メカニズム理解と探索に有用な蛍光ラベル麻酔剤
April 5, 2009,NIGMS News,
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How do plants prime themselves to resist systemic pathogenic infections?
アゼライン酸とその誘導する遺伝子AZI1 が植物の浸透移行性免疫を担う成分である
April 3, 2009 ,This Week in Science,© 2009 AAAS/Science
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伝染性のプリオンは過酷な条件下で酵母の生存を助ける
April 2, 2009,Nature News,© 2009 NPG
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骨粗鬆症などの骨疾患に使われているビスホスフォネートの脂溶性を増加させ顕著な抗がん作用を発見
April 1, 2009,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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Identifying the Proteins to which Small Molecules Bind in Cells
低分子化合物と結合するタンパク質を同定するための定量プロテオミクス (SILAC)とアフィニティクロマトグラフィを組み合わせた分析プラットフォームとその応用例
March 31, 2009 ,The Daily Scan,© 2009 GenomeWeb LLC
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Anti-HIV protein made in plants
エイズウィルスをブロックするタンパク質griffithsin をタバコで大量に作る
March 30, 2009 ,Nature News ,© 2009 NPG
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Peptide Disciplines Dishevelled Protein
Wntシグナルパスウェイを制御するDishevelled (Dsh) プロテインに結合するペプチドの同定と結合複合体の構造解析
March 30, 2009,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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Dissecting Drug Expulsion Portal
膜タンパク質能動輸送担体P-糖蛋白の結晶構造解析が明らかにするその多様な薬剤結合サイト
March 27, 2009,This Week in Science,© 2009 AAAS/Science
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酸素輸送機能を持つタンパク質のスクラッチからの構築
March 25, 2009,NIGMS News,
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Ideas Gel for Better Diagnostics
積層ピリジン分子ゲルによる肺がんや結核の診断の可能性
March 25, 2009,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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Networking out of natural disasters
オープンソースソフトが伝染病集団発生や自然災害への対応を革新する
March 25, 2009,Nature News,© 2009 NPG
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Finding Early Signs of Mad-Cow Disease
狂牛病早期診断法開発に繋がる可能性を持つ包括的な遺伝子発現パスウェイ変化の追跡
March 24, 2009,MIT Technology Review,© 2009 Technology Review, Inc.
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Double Trouble on World TB Day
HIVと結核の両方に罹患する患者数は以前の推定よりも約2倍多い137万人
March 24, 2009,ScienceNOW,© 2009 AAAS/Science
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倉庫から発見された出金簿が明らかにするチャールズ・ダーウィンの学生時代の生活
March 24, 2009,ScienceNOW,© 2009 AAAS/Science
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Promiscuous antibody targets cancer
二種の抗原(HER2とVEGF)にしっかり結合する抗体
March 19, 2009,Nature News ,© 2009 NPG
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分化を誘導する低分子化合物の化合物スクリーニングによる発見
March 17, 2009 ,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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NIH to Assist Molecular Probe Screening
化合物スクリーニングセンターの共同利用支援策
March 17, 2009 ,GenomeWeb Daily News,© 2009 GenomeWeb LLC
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Researchers 'watch' as individual alpha-synuclein proteins change shape
パーキンソン病やアルツハイマー病にリンクするタンパク質が示す大きな構造遷移
March 16, 2009 ,NIGMS News,
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隕石が地球に“左手型”アミノ酸の種を蒔いたのかもしれない
March 16, 2009 ,ScienceNOW ,© 2009 AAAS/Science
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A Crayon Box For The Biotech Set
DNA骨格上の蛍光色素が生体システムを多彩に光らせる
March 16, 2009,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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A Toxin a Day Keeps the Maggots Away
寄生虫にたかられた毛虫は有毒な植物を食べて自己を治療する
March 13, 2009 ,ScienceNOW,© 2009 AAAS/Science
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Body clock regulates metabolism
生物時計を司るタンパクとメタボリズムを司るタンパクの相互依存関係
March 12, 2009,NIGMS News,
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Missing Piece of Plant Clock Found
植物における日の出感知と日没感知のフィードバック系の解明
March 12, 2009,NIGMS News,
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There is more to life than sequences
DNAは配列情報だけでなく構造情報も重要な役割を果たしている
March 12, 2009,Nature News,© 2009 NPG
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DNAで表面修飾された細胞同士が自己組織化して3次元のミクロ構造を形成
March 11, 2009,MIT Technology Review,© 2009 Technology Review, Inc.
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Gouda Cheese Surrenders Its Secrets
ゴーダチーズの風味の正体はガンマ-L-グルタミルペプチド
March 11, 2009,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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Creating Cell Parts from Scratch
Harvard “Future of Life” シンポジウムで合成リボソームの発表
March 10, 2009,MIT Technology Review,© 2009 Technology Review, Inc.
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抗生物質開発のターゲットとされてきた、病原菌における脂肪酸合成の阻害は有効ではないという報告
March 9, 2009,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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Malaria Drug Is Found to Curb Deadly Infections Spread From Animals
新種のNipah 及びHendraウイルス感染の治療に古い抗マラリア剤が有望
March 9, 2009,The New York Times,© 2009 The NY Times Co.
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Web usage data outline map of knowledge
35,000種のジャーナルのウェブ利用解析から人文社会系科学の役割に新しい視点を提供
March 9, 2009,Nature News,© 2009 NPG
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NMRで生きた細胞中のタンパク質の原子構造を探る?日本から2報のNature論文
March 5, 2009,JSTプレスリリース,
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医学研究のオープンアクセスプラットフォームSageの構想
March 4, 2009,Nature News,© 2009 NPG
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A Vaccine Offers Instant Immunity
あらかじめプログラムされた化合物を抗体に結合させ、病原体を速やかに攻撃する新しいアプローチ
March 3, 2009,MIT Technology Review,© 2009 Technology Review, Inc.
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Why Nicotine Prefers Brains Over Brawn
何故ニコチンは筋肉の受容体ではなく脳の受容体と選択的に結合するのか ? たった一つのアミノ酸の違い
March 2, 2009,ScienceNOW,© 2009 AAAS/Science
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多くのインフルエンザウィルスに共通する、ウィルス表面タンパク質ヘマグルチニンの「幹」に結合する抗体についての2グループからの機能・構造解析報告、ビデオ付
March 2, 2009,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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2種の認可薬、ベータラクタマーゼ阻害剤とベータラクタム抗生物質のコンビが結核菌に効果
March 2, 2009,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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'Harmless' prion protein linked to Alzheimer's disease
正常型プリオンタンパク質とアルツハイマー病のリンク.
February 25, 2009,Nature News,© 2009 NPG
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植物の傷を自己犠牲的に自分の体液で塞ぎ、口針で癒す兵隊アブラムシ
February 25, 2009,産総研ビデオ付ニュースリリース,
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Nanopore Sequencing to Identify DNA Bases
英国のベンチャーOxford Nanopore社がラベル無しのDNA塩基検出の原理実験結果を発表
February 24, 2009,MIT Technology Review ,© 2009 Technology Review
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New antibodies block a range of influenzas
新しい抗体の同定と構造決定は広範囲の効能をもつワクチン開発に朗報
February 22, 2009,Nature News,© 2009 NPG
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Software Speeds Enzyme Redesign
抗生物質を産生する鍵となる酵素の形と変化を効率よく提示するフリーソフトウェアの開発
February 21, 2009,NIGMS News,
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ハダカデバネズミの30年を超える長寿命の秘密は“健康な”タンパク質に?
February 18, 2009,MIT Technology Review,© 2009 Technology Review
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Researchers Find Protein Domain To Serve as Cancer Drug Target
マトリックス分解酵素MMPsの酵素活性ドメインではなくヘモペキシン様ドメインが抗がん剤開発のターゲットになりうる
February 17, 2009,NIGMS News,
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ヘムから誘導されるテトラピロール系色素ビリルビンが植物からも見出された
February 16, 2009,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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Taking Stock of A Cell's Protein Production
リボソームがいかに効率的にメッセンジャーRNA をタンパク質に翻訳するかのスナップショットを提供する新しい手法の提案
February 13, 2009,Science: This Week’s News,© 2009 AAAS/Science
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オーファンG蛋白質共役受容体GPR3は神経細胞におけるアミロイドペプチドの産生の調整因子と同定され、アルツハイマー病の治療のためのドラッグターゲットとなりうる。
February 13, 2009,This Week in Science,© 2009 AAAS/Science
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酵母では、従来の分泌経路ではなく、Mdr トランスポーターから直接排出されるフェロモンが接合相手の細胞を誘因する。
February 13, 2009,This Week in Science,© 2009 AAAS/Science
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Receptor's Binding Partner Identified
幻覚剤DMT(N,N-dimethyltryptamine)は体内でも産生され、神経系シグマ1受容体と結合する.
February 12, 2009,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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Ancient Virus Gave Wasps Their Sting
寄生性のハチは毛虫にウィルスを注入してその免疫機能を不全化し、毛虫の体内で幼虫を生育させる。
February 12, 2009,ScienceNow,© 2009 AAAS/Science
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Prostate cancer marker found in urine
サルコシン(N-メチルグリシン)などの尿中のメタボライトが前立腺がん進行度とリンク
February 11, 2009,Nature News,© 2009 NPG
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超高解像度光学顕微鏡による細胞3次元像
February 9, 2009,MIT Technology Review,© 2009 Technology Review
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Flu: It's the Humidity. Absolutely
相対湿度でなく絶対湿度が低いことが、インフルエンザウィルスの生き残りと蔓延を助長する
February 9, 2009,ScienceNOW,© 2009 AAAS/Science
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細胞の中で脂質を運ぶ小胞がうまく働かないニーマンピック病C型に可溶化剤シクロデキストリンが効果
February 9, 2009,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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Genome sequencing: the third generation
“第3世代”のシーケンサーの学会デビュー
February 6, 2009,Nature News,© 2009 NPG
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ワーキングメモリーを改善するテストがドーパミンリセプターに及ぼす驚くべき効果
February 5, 2009,Nature News,© 2009 NPG
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Cell biology: How to combat stress
細胞がどのようにストレスに対処しているのか?小胞体ストレス応答に関する最新の分子メカニズムの提示
February 5, 2009,Nature News and Views,© 2009 NPG
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Luciferase Reporter Could Skew Drug Screening, Study Suggests
発光酵素ルシフェラーゼのドラッグスクリーニングプローブとしての使用は注意が必要
February 3, 2009,GenomeWeb Daily News,© 2009 GenomeWeb LLC
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In a Worm, a Mutation to Survive in Low Oxygen
極めて低い酸素濃度で生き延びる線虫の分子基盤
February 2, 2009,NY Times,© 2009 NY Times Co
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MS stem-cell trial shows promise
幹細胞治療が初期の多発性硬化症に有望という臨床研究報告
January 30, 2009,Nature News,© 2009 NPG
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Two Classes of Chemicals Disrupt Wnt Pathway
20万化合物ライブラリーのスクリーニングから見出されたWnt パスウェイを切断する2種類の化合物
January 30, 2009,NIGMS News,
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セロトニンが単独性のバッタを群生に形態変化させるという発見は新しい害虫蔓延防止戦略となるか?
January 29, 2009,ScienceNow,© 2009 AAAS/Science
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Plant genomics: Sorghum in sequence
モロコシの耐乾燥性は、この植物を貴重な穀物たらしめる性質の1つに過ぎない。このようなイネ科植物の完全なゲノム配列から、農学研究者が学ぶことは多い。
January 29, 2009,Nature News and Views,© 2009 NPG
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Protein Racemate Yields Crystals
ラセミ結晶化法による難結晶化タンパク質の構造解析例
January 26, 2009,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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Small Molecule Stops Cancer-Related Hedgehog Protein
ヘッジホッグタンパク質と結合し、そのシグナル伝達をブロックする化合物の発見
January 26, 2009,Chemical & Engineering News,© 2009 ACS
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生命の基本タンパク質「アクチン」が担う生理機能のメカニズム解明に一歩
January 22, 2009,理研プレスリリースハイライト,© 2009 RIKEN
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Molecular biology: Concealed enzyme coordination
ホモマーである環状ATPアーゼでのサブユニット間の協調
January 22, 2009,Nature News and Views,© 2009 NPG
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Blocking Enzyme Prevents Obesity
adipose-specific phospholipase A2 (AdPLA)欠損マウスは太らない、しかし糖尿病罹患リスク
January 20, 2009,MIT Technology Review,©2009 Technology Review
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Vanderbilt Forms Pact With J&J
大学発創薬研究プログラムの新しい試み:ユニークな産学連携
January 19, 2009,Chemical & Engineering News,©2009ACS
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Protein Loss Sparks Cartilage Breakdown
加齢に伴うHMGB2タンパク産生の減少が関節の軟骨の劣化をもたらす
January 19, 2009,Chemical & Engineering News,©2009ACS
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Chemical biology: Fluorescent timers
生きた細胞中でのタンパク質の動的挙動観察を可能とする青色から赤色に徐々に変化する蛍光“タイマー”
January 15, 2009,Nature News,©2009NPG
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イメージングのブレークスルー:ウィルスを3次元で視る
January 13, 2009,MIT Technology Review,©2009 Technology Review
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Bacterial Export Machine Unveiled
バクテリアの巨大なIV型タンパク質分泌装置の構造の初めての報告
January 12, 2009,Chemical & Engineering News,©2009ACS
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EVOLUTIONARY ROOTS: On the Origin of Life on Earth
ダーウィン生誕200年を祝う月刊エッセイ第1弾:実験室でのプロセス再現による地球上での生命の起源を解明する試み
January 8, 2009,Science: This Week’s News,©2009 AAAS/Science
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生命の起源の再現のための一歩:合成RNAの驚異的自己増殖触媒作用
January 8, 2009,Nature News,©2009NPG
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コドンの定説に再考をせまる原生動物の特異性
January 8, 2009,ScienceNow,©2009 AAAS/Science
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Anticancer drug target pictured
エストロゲン性乳癌治療薬のターゲットタンパクであるアロマターゼの構造解析
January 8, 2009,Nature News and Views,©2009NPG
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だしの「相乗効果」の分子機構
January 8, 2009,Nature News and Views,©2009NPG
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Errors rectified in retrospect
伸長中のポリペプチド鎖にアミノ酸を付加する際の誤りがタンパク質合成の間に防止されなかった場合の品質管理機構
January 8, 2009,Nature News and Views,©2009NPG
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2008: Signaling Breakthroughs of the Year
タンパク質結晶から細胞レベル、全ゲノムまで、2008年のシグナル伝達ブレークスルー論文
January 6, 2009,Science Signaling,©2009 AAAS/Science
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NINDS, NIAAA, NIDA to Fund Small-Molecule Probe Studies of Neurological & Drug-related Diseases
NIH傘下の3研究所が、精神神経疾患、薬物依存に関連するターゲットタンパクの機能解析用小分子プローブ開発のプロジェクト(予算1.75M$)を公募
December 31, 2008,GenomeWeb Daily News,©2008 GenomeWeb LLC
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Wellcome Trust Gives $5.9M to Fund UK, US Chemical Probe Partnership
エピジェネティックシグナリングに係る25のタンパク質の活性に影響するケミカルプローブ開発プロジェクト?GlaxoSmithKline、NIH Chemical Genomics Center、Oxford大などが参加
December 29, 2008,GenomeWeb Daily News,©2008 GenomeWeb LLC
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NHGRI Informatics Training Programs Could Become Bioinformatics Centers
NHGRI/NIHがFogarty International Center、National Library of Medicineと共同プロジェクト推進
December 29, 2008,GenomeWeb Daily News,©2008 GenomeWeb LLC
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Reprogrammed skin cells provide testing ground for new drugs
iPS細胞のマイルストーン:骨髄性筋委縮症患者の皮膚細胞から疾病モデル細胞の作製
December 23, 2008,Nature News,©2008NPG
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プリオンタンパクの正常型は臭覚で任務を果たしている
December 23, 2008,Science Signaling,©2008 AAAS/Science
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オピオイド受容体作動鎮痛薬は女性より男性に効果
December 23, 2008,Science Signaling,©2008 AAAS/Science
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分子のスナップショットが明らかにしたRNA干渉のからくり
December 17, 2008,Nature News,©2008NPG
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Publish in Wikipedia or perish
論文誌が著者に投稿論文サマリーのウィキペディア掲載を要請
December 16, 2008,Nature News,©2008NPG
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Tryptophan Clarifies Antidepressant Drug Binding
トランスポーターの結晶構造が示す抗うつ剤開発のもう一つの出発点
December 15, 2008,Chemical & Engineering News,©2008 ACS
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First Dynein Protein Structure Reported
Scientists unveil an atomic-level view of the motor protein dynein, which carries cargo along microtubule tracks in cells 様々な分子を微小管に沿って輸送するモータタンパク質ダイニンの原子レベルの描像
December 15, 2008,Chemical & Engineering News,©2008 ACS
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A small amount of salt can alter the secondary structure of proteins, and thus the texture of some foods 微量の塩がタンパク質の二次構造を変えて、食べ物のテクスチャーに変化をもたらす
December 15, 2008,Chemical & Engineering News,©2008 ACS
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Immunologists show how deaths in 1966 could have been avoided
December 12, 2008,Nature News,©2008NPG
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MALARIA:Vaccine Comes Another Step Closer
The most advanced candidate vaccine for malaria has cleared another major hurdle and is now ready for its last and biggest test: a phase III trial of 12,000 to 16,000 children at 11 locations in seven African countries
December 12, 2008,Science: This Week’s News,©2008 AAAS/Science
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Canadian lab retracts work on abscisic acid.
December 11, 2008,Nature News,©2008NPG
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Three-Dimensional View of Core Replication Machinery
Structural biologists have obtained a detailed structure for the core of the replisome, molecular machinery assembled to copy DNA
December 11, 2008,NIGMS News,
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A One-Two Punch Against Sleeping Sickness
Drug combo could save thousands of lives in Africa
December 9, 2008,ScienceNOW,©2008 AAAS/Science
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Serotonin produced by the gut reduces bone mass.
December 9, 2008,Science Signaling,©2008 AAAS/Science
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Blue light triggers the association of a photoreceptor, transcription factor, and DNA site, thus inducing expression for the gene FT (flowering time) and initiating flowering.
December 9, 2008,Science Signaling,©2008 AAAS/Science
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More biologists report plastic contamination
Chemicals from lab equipment are ruining experiments worldwide.
December 9, 2008,Nature News,©2008NPG
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Crystallography offers peek at a mammalian sperm receptor.
December 8, 2008,Chemical & Engineering News,©2008 ACS
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Fetal Immune System Hushes Attacks on Maternal Cells
Researchers provide an explanation for why some maternal cells that cross the placenta escape attack by the fetal immune system.
December 5, 2008,Science: This Week’s News,©2008 AAAS/Science
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Proteins that read DNA backwards
Some enzymes transcribe DNA in the 'wrong' direction to create puzzling RNAs
December 5, 2008,Nature News,©2008NPG
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BBC reports that the European Light Source, a synchrotron based in Grenoble, France, is due for a £150 million upgrade.
December 3, 2008,Genome Technology Online,©2008 GenomeWeb LLC
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Agronomy: Five crop researchers who could change the world
The current crisis in worldwide food prices reinforces the need for more productive agriculture. Emma Marris meets five ambitious scientists determined to stop the world from going hungry.
December 3, 2008,Nature News,©2008NPG
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Structure of receptor of key plant hormone gibberellin reveals how molecule works.
December 1, 2008,Chemical & Engineering News,©2008ACS
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Highly selective catalysis dramatically reduces steps to multiring structure.
December 1, 2008,Chemical & Engineering News,©2008ACS
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Micropatterning for quantitative analysis of protein-protein interactions in living cells
November 28, 2008,Omics News,©2008NPG
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Human protein factory for converting the transcriptome into an in vitro-expressed proteome
November 28, 2008,Omics News,©2008NPG
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Global protein stability(GPS) for proteomes
November 28, 2008,Omics News,©2008NPG
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Epitope mapping of antibodies using bacterial surface display
November 28, 2008,Omics News,©2008NPG
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Gene networks: Network analysis gets dynamic
November 28, 2008,Omics News,©2008NPG
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Mice share yeast's ageing system
Sirtuin proteins linked to lifespan in mammals.
November 26, 2008,Nature News,©2008NPG
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This week's issue of PNAS focuses on mass spectrometry and "attempts to illustrate the breadth and uniqueness of applications of molecular MS to a variety of scientific fields with current examples.
November 26, 2008,Genome Technology Online,©2008 GenomeWeb LLC
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Tiny Protein Provokes Bonding Between Cells
Alpha-catenin allows cells to recognize neighboring cells as ‘friends’, leading to strong bonds that are hard to break, according to a new NIGMS-supported study.
November 25, 2008,NIGMS News,
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Cancer Cell ‘Bodyguard’ Turned Into Killer
NIGMS-supported researchers have developed a peptide that converts the Bcl-2 protein from a cancer cell's friend to a foe.
November 24, 2008,NIGMS News,
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Scientists Shed Light on How DNA Is Unwound
NIGMS-supported researchers have figured out how a molecular machine unwinds DNA tangles so that the genetic information can be read and used.
November 24, 2008,NIGMS News,
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Unearthing New Protease Substrates
Mass spectrometry helps elucidate glucose-regulating enzyme’s activity in greater detail
November 24, 2008,Chemical & Engineering News,©2008ACS
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Cast of 1000 Proteins Shines in Movies of Cancer Cells
Systems biologists describe online in Science this week how fluorescent markers and a time-lapse microscope have allowed them an unprecedented view of the fluctuating locations and levels of about 1000 proteins in individual human cancer cells.
November 21, 2008,Science: This Week’s News,©2008 AAAS/Science
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Not yet, but biotechnology company is on track for 2013.
November 20, 2008,Nature News,©2008NPG
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Search engines provide information about epidemics.
November 20, 2008,Nature News,©2008NPG
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Rhesus protein stops blood becoming acidic
Blood-group-factor family has a role in pH control.
November 20, 2008,Nature News,©2008NPG
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Celebrating the man and the book.
November 20, 2008,Nature News,©2008NPG
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Tumor Secrets Written in Blood
Cancer cells release telltale traces into bloodstream
November 19, 2008,ScienceNOW,©2008 AAAS/Science
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Scratch it by knowing first which type you have.
November 18, 2008,Nature News,©2008NPG
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Acrobatic HIV Enzyme Caught In Action
New mechanistic finding on reverse transcriptase’s sliding and flipping catalytic motions could help advance AIDS drug design
November 17, 2008,Chemical & Engineering News,©2008ACS
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Network pharmacology: the next paradigm in drug discovery
November 15, 2008,Omics News,©2008NPG
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November 15, 2008,Omics News,©2008NPG
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Targeting and tinkering with interaction networks
November 15, 2008,Omics News,©2008NPG
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Learning biological networks: from modules to dynamics
November 15, 2008,Omics News,©2008NPG
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Native mass spectrometry: a bridge between interactomics and structural biology
November 15, 2008,Omics News,©2008NPG
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CARDIOVASCULAR HEALTH: Statin Therapy Reduces Disease in Healthy Volunteers--But How, Exactly?
Some experts are calling the 17,800-person JUPITER trial a huge success in preventing cardiovascular disease and proving the value of c-reactive protein, an indicator of inflammation, as a risk marker for heart disease. The trial comes with a host of caveats, however, muddying the picture of inflammation's role in cardiovascular disease.
November 14, 2008,Science: This Week’s News,©2008 AAAS/Science
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The ubiquitous disinfectant may kill bacteria by unfolding their proteins.
November 13, 2008,Nature News,©2008NPG
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Billion-dollar bid for stem-cell treatments
Genzyme, a biotechnology company based in Cambridge, Massachusetts, announced last week that it will invest up to US$1.4 billion in two adult stem-cell therapies being developed at Osiris Therapeutics.
November 12, 2008,Nature News,©2008NPG
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Neuroscientists are pretty sure they know what causes Alzheimer's disease, but their theory has not yet given rise to effective drugs.
November 12, 2008,Nature News,©2008NPG
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Cholesterol Drug Tackles Inflammation--or Does It?
Patients were helped, but experts differ on how to incorporate findings into health care
November 10, 2008,ScienceNOW,©2008 AAAS/Science
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Shiga Toxin Inhibitor Could Help Combat Food Poisoning
A polymer bound ligand helps hold together an E. coli toxin and an immune protein, which safely whisks the toxin away
November 10, 20008,Chemical & Engineering News,©2008ACS
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HIV vaccine failure explained?
Failed vaccine makes immune cells easier to infect in culture.
November 5, 2008,Nature News,©2008NPG
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Growing up under the guidance of bacteria
Scientists discover how microbes help the mouse gut to mature.
November 5, 2008,Nature News,©2008NPG
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Up to 94% of human genes can generate different products (alternative splicing).
November 4, 2008,Nature News,©2008ACS
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Amino acid chain length is not as big a factor as folding dynamics in deciding what constitutes a protein, researchers in Japan say.
November 3, 20008,Chemical & Engineering News,©2008ACS
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New Leads Found For Alzheimer's Therapies
Two potential treatments target enzymatic pathways to reduce amyloid ß-protein levels in mice.
November 3, 20008,Chemical & Engineering News,©2008ACS
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The outward facing open and substrate-bound occluded conformations for a nucleobase transporter were reported.
October 31, 2008,This Week in Science,©2008 AAAS/Science
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The structural features of the three essential clock components - KaiA, KaiB, and KaiC - combined with biochemical and biophysical data, reveal molecular mechanisms of biological timekeeping.
October 31, 2008,This Week in Science,©2008 AAAS/Science
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Genomic-scale prioritization of drug targets: the TDR Targets database
http://tdrtargets.org : Identification and ranking of targets against neglected tropical diseases
October 31, 2008,Nature News,©2008NPG
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Study Clears Protein Long a Suspect in Artery Damage
Molecule blamed for heart disease might be a bystander
October 30, 2008,ScienceNOW,©2008 AAAS/Science
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"Allergy" cells in the rodent brain may keep baseline anxiety under control.
October 29, 2008,ScienceNOW,©2008 AAAS/Science
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Not Your Garden-Variety Tomato
Researchers engineer cancer-fighting purple tomatoes
October 29, 2008,ScienceNOW,©2008 AAAS/Science
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The cellular location in which an enzyme folds helps it select the right metal catalyst.
October 27, 20008,Chemical & Engineering News,©2008ACS
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Spotting Nascent Protein Crystals
Optical technique reduces background noise and could cut screening times and costs.
October 20, 20008,Chemical & Engineering News,©2008ACS
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Researchers have designed a hybrid protein in which the activity of one protein is controlled by that of another.
October 20, 20008,Chemical & Engineering News,©2008ACS
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Double RNAi Screen Provides Insights Into Signaling Networks
October 17, 2008,GenomeWeb Daily News,©2008 GenomeWeb LLC
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DIABETES: Paradoxical Effects of Tightly Controlled Blood Sugar
Researchers are puzzling over recent trials that had great success in lowering blood sugar in type 2 diabetics, but no success in reducing deaths from cardiovascular disease.
October 16, 2008,Science: This Week’s News,©2008 AAAS/Science.
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Inclusion bodies may have more diverse structures than anticipated.
October 13, 2008,Chemical & Engineering News,©2008ACS
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Chemical switch activates disease-enhancing toxin.
October 13, 2008,Chemical & Engineering News,©2008ACS
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Lights! Camera! Action! Zebrafish Embryos Caught on Film
A set of unusual movies, described online this week in Science and available on the Web, shows all the movements and divisions of cells in a zebrafish embryo during its first day of development.
October 9, 2008,Science: This Week’s News,©2008 AAAS/Science.
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New Data Resource to Advance Computer-Aided Drug Design
The University of Michigan will lead an NIGMS-supported effort to expand and enhance the molecular data needed to develop computer programs that more accurately predict potential drug candidates
October 9, 2008,NIGMS News,
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Making Clinical Data Widely Available
Granting public access to drug trial results and sharing patient data among researchers will make products safer and advance science, proponents say.
October 9, 2008, Science,This Week’s News,©2008 AAAS/Science.
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Recent trials of drugs that either lower "bad" cholesterol or raise the "good" kind have produced surprising results; along with genetics research, these findings have put in question some long-held beliefs
October 9, 2008,Science: This Week’s News,©2008 AAAS/Science.
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Great glowing jellyfish! It's the Nobel Prize in Chemistry
Green fluorescent protein bags the biggest gong in science.
October 9, 2008,Nature News,©2008NPG
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What makes a successful team? John Whitfield looks at research that uses massive online databases and network analysis to come up with some rules of thumb for productive collaborations.
October 9, 2008,Nature News,©2008NPG
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Virus discoveries secure Nobel prize in medicine
Work on HIV and human papilloma virus already offers health benefits.
October 7, 2008,Nature News,©2008NPG
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HIV, HPV Researchers Honored, but One Scientist Is Left Out
October 7, 2008,ScienceNOW,©2008 AAAS/Science
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Half of life's furry creatures are declining in number, according to new database
October 7, 2008,ScienceNOW,©2008 AAAS/Science
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Researchers are getting a clearer picture of massive microbial assembly-line enzymes.
October 6, 2008,Chemical & Engineering News,©2008ACS
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Cycloaddition never before used biologically could help assemble sophisticated probes.
October 6, 2008,Chemical & Engineering News,©2008ACS
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First comprehensive view of stressosome complex.
October 6, 2008,Chemical & Engineering News,©2008ACS
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Researchers make significant progress toward sequencing highly complex crop
October 3, 2008,ScienceNOW,©2008 AAAS/Science
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Fifty-year-old sample sheds light on when HIV jumped from chimps to humans
October 2, 2008,ScienceNOW,©2008 AAAS/Science
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Non-Coding, 'Ultraconserved' DNA Rarely Lost from Mammalian Genome
October 2, 2008,GenomeWeb Daily News,©2008 GenomeWeb LLC
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Researchers Trace Small RNAs Back to Early Animal Evolution
October 1, 2008,GenomeWeb Daily News,©2008 GenomeWeb LLC
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The fight to buy ImClone highlights the value of new cancer drugs #20; especially if they're difficult to copy.
September 30, 2008,Nature News,©2008NPG
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X-ray scattering technique captures conformational changes on nanosecond time scale.
September 29, 2008,Chemical & Engineering News,©2008ACS
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Crystal structure of G-protein-coupled receptor provides new insight for how this class of proteins senses chemical and light signals
September 29, 2008,Chemical & Engineering News,©2008ACS
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Amino Acid Switch Turns Protein From Binder To Cleaver
By replacing a single naturally occurring amino acid with an unnatural amino acid
September 29, 2008,Chemical & Engineering News,©2008ACS
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Walnut trees under stress fill the air with significant quantities of methyl salicylate
September 29, 2008,Chemical & Engineering News,©2008ACS
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September 29, 2008,OMICS Gateway,©2008NPG
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Conquering Malaria Once and For All
New plan, unveiled today, calls for billions to fight the disease
September 26, 2008,ScienceNOW,©2008 AAAS/Science
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PROTEOMICS: Proteomics Ponders Prime Time
Improved technologies for tracking thousands of proteins at once have spawned talk of a full-scale project to reveal all the proteins in each tissue--but the price tag would be daunting.
September 26, 2008,Science: This Week’s News,©2008 AAAS/Science
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PROTEOMICS: Will Biomarkers Take Off at Last?
After years of disappointments, proteomics researchers say they're cautiously optimistic that they will be able to detect proteins that are markers for specific diseases.
September 26, 2008,Science: This Week’s News,©2008 AAAS/Science
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AGING: Searching for the Secrets of the Super Old
More and more people are living past 110. Can they show us all how to age gracefully?
September 26, 2008,Science: This Week’s News,©2008 AAAS/Science.
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Conquering Malaria Once and For All
New plan, unveiled today, calls for billions to fight the disease
September 25, 2008,ScienceNOW,©2008 AAAS/Science.
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Cell 'rebooting' technique sidesteps risks
Virus reprograms cells without disrupting genome.
September 25, 2008,Nature News,©2008NPG
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Are Bacteria Foes of Diabetes?
In mice, researchers uncover link between microbes and metabolic? disease prevention
September 23, 2008,ScienceNOW,©2008 AAAS/Science
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Studies advocate blocking cell-division protein, essential metabolic pathway.
September 22, 2008,Chemical & Engineering News,©2008 ACS
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NIH Awards $138M for 'Deep Innovation,' Including Genomics, Proteomics Research
September 22, 2008,GenomeWeb Daily News,©GenomeWeb LLC
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Building consensus spectral libraries for peptide identification in proteomics
Building consensus spectral libraries for peptide identification in proteomics
September 21, 2008,OMICS Gateway,©2008NPG
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Japan fast-tracks stem-cell patent
Kyoto University secures first award for induced pluripotent cells.
p://www.nature.com/news/2008/080917/full/455269September 21, 2008,Nature News,©2008NPG
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SCHOLARLY PUBLISHING: House Weighs Proposal to Block Mandatory 'Open Access'
Last week, members of a powerful House committee held the first-ever congressional hearing on a controversial policy requiring researchers to make their papers freely available to the public at a U.S. National Institutes of Health Web site--and floated a proposal to overturn it.
September 19, 2008,Science: This Week’s News,©2008 AAAS/Science.
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Cotton engineered to produce natural pesticide also protects nonmodified plants nearby
September 19, 2008,ScienceNOW,©2008 AAAS/Science.
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Fat Molecule Fights Weight Gain
Compound prevents mice from storing unhealthy fat
September 19, 2008,ScienceNOW,©2008 AAAS/Science.
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FBI to Request Scientific Review of its Anthrax Investigation
National Academy of Sciences will evaluate evidence that implicated Army researcher
September 17, 2008,ScienceNOW,©2008 AAAS/Science
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NIGMS Protein Structure Initiative Partners with Nature to Relaunch Knowledgebase
September 16, 2008,GenomeWeb Daily News,©2008 GenomeWeb LLC
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Researchers Merge Sequencing, Proteomics to Analyze Nitrogen-Fixing Cyanobacterium
September 16, 2008,GenomeWeb Daily News,©2008 GenomeWeb LLC
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Advances could spur treatments for more symptoms than current drugs address.
September 15, 2008,Chemical & Engineering News,©2008 ACS
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Oleic Acid's Hypotensive Effect
Olive oil component lowers blood pressure through physical, not metabolic, means.
September 15, 2008,Chemical & Engineering News,©2008 ACS
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Broad Gives $400 Million More to Cambridge Institute
Last week, Los Angeles businessman Eli Broad announced a $400 million gift that will allow the Broad Institute in Cambridge, Massachusetts, already a genomics research powerhouse, to become a self-sustaining entity.
September 12, 2008,Science: This Week’s News,©2008 AAAS/Science
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Protein engineering: The fate of fingers
Proteins with 'zinc fingers' designed to bind almost any DNA sequence will soon be available to any lab that wants them #20; from two very different sources. Helen Pearson reports on a revolution in designer biology.
September 10, 2008,Nature News,©2008NPG
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Investigation into lost bacteria collection raises concerns about biobanks
Destruction of specimens leaves legislators worried about biological research collections.
September 10, 2008,Nature News,©2008NPG
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Telomerase Component's Structure Solved
Catalytic subunit forms doughnut.
September 8, 2008,Chemical & Engineering News,©2008 ACS
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September 8, 2008,Chemical & Engineering News,©2008 ACS
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Chemical screening centers get funding boostChallenging Assumptions
Nine centres in the United States receive $280 million to hunt for useful biochemicals.
September 5, 2008,Nature News,©2008NPG
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GENETIC PRIVACY: Whole-Genome Data Not Anonymous, Challenging Assumptions
The discovery that a type of genetic data that is widely shared and often posted online can be traced back to individuals has prompted the U.S. National Institutes of Health and the Wellcome Trust to strip some genetic data from their publicly accessible Web sites and NIH to recommend that other institutions do the same.
September 5, 2008,Science: This Week’s News,©2008 AAAS/Science
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PLANT SCIENCE: China Plans $3.5 Billion GM Crops Initiative
Confronted with land degradation, chronic water shortages, and a growing population, the Chinese government later this month is expected to roll out a $3.5 billion R&D initiative on genetically modified plants.
September 5, 2008,Science: This Week’s News,©2008 AAAS/Science.
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Towards a cyberinfrastructure for the biological sciences: progress, visions and challenges
September 5, 2008,OMICS Gateway,©2008NPG
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NYU, Natural History Museum to Use $1.6M NSF Grant for Plant Proteome Bioinformatics Research
September 4, 2008,GenomeWeb Daily News,© 2008 GenomeWeb LLC
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Test tube experiments may help identify the most hazardous prion proteins.
September 4, 2008,Nature News,©2008NPG
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NIH's $42M in EUREKA Awards Backs 'Omics, Biomedical Resarch
September 3, 2008,Nature News,©2008NPG
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What will happen in the next 10 years?
September 3, 2008,Nature News,©2008NPG
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Pioneering biologists are trying to use wiki-type web pages to manage and interpret data, reports Mitch Waldrop. But will the wider research community go along with the experiment?
September 3, 2008,Nature News,©2008NPG
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DNA databases shut after identities compromised
September 3, 2008,Nature News,©2008NPG
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'YouTube for test tubes' to be listed on PubMed
September 3, 2008,Nature News,©2008NPG
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NIH Awards $280M to Nine Centers in Second Phase of Molecular Probe Network Initiative
September 2, 2008,GenomeWeb Daily News,©GenomeWeb LLC
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Cholesterol-lowering drug given cancer all-clear
Full trial results and meta-analysis both contradict preliminary scare.
September 2, 2008,Nature News,©2008NPG
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Heart of'ageing enzyme'revealed
Telomerase protein structure will help research into ageing and cancer.
August 31, 2008,Nature News,©2008NPG
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