本プログラムでは、医学・薬学、食品・環境、基本的な生命現象等に重要なタンパク質ネットワーク群について、それらを構成するタンパク質群の立体構造及び機能の解析に基づいて、ネットワークの作用機序の解明を進める「ターゲットタンパク研究」と、現在の技術水準では解明が困難なタンパク質の解析を可能とするために重要かつ基盤的な要素技術である生産・解析・制御の高度化及び情報プラットフォームの整備を行う「技術開発研究」の2つの柱から構成されております。
(1)ターゲットタンパク研究の概要
「ターゲットタンパク研究」については、①基本的な生命の解明、②医学・薬学等への貢献、③食品・環境等の産業利用の3つの分野で展開される構造・機能研究を実施します。研究成果の社会還元の観点から目標を設定し、本プログラム実施期間中に当該目標を達成するような成果を創出するため、我が国で当該研究を担うに相応しい研究者から構成される機関・組織に対して委託されています。
研究課題は、本プログラムの目標とその進捗状況を明確にするための課題(課題A)と、課題A以外の重要なタンパク質群であって創造的なアイデアを提案するための課題(課題B)に分かれております。
なお、ここで「タンパク質群」とは、生物機能の発現に関わるネットワーク又はシステムを構築する複数のタンパク質のことをいいます。
「基本的な生命の解明」分野
- 【課題A】
- 「基本的な生命の解明」では、遺伝(複製、転写、翻訳等)、細胞機能(細胞膜、細胞骨格、細胞増殖、細胞死等)、代謝、発生、免疫、癌等の基本的な生命現象を担うタンパク質群を対象としています。
本分野では、重要なターゲットの立体構造と機能の解析によって、ライフサイエンスにおけるブレークスルーをもたらすようなネットワーク、パスウェイ、システム等の基本的な作用機序の解明を目標としています。
- 【課題B】
- 課題Aのテーマを除く創造的なアイデアを募集し、その結果選定された課題です。
「医学・薬学等への貢献」分野
- 【課題A】
- 今後重要と考えられるにも関わらず、治療方法の満足度が低いため、これからの構造・機能解析とそれに基づいた治療方法の開発が国家プロジェクトとして強く要望される疾患群・分野は、脳/神経系、糖尿病、癌、免疫などの分野と考えられます。
本分野の研究の目標は,産業利用につながる可能性のある成果とし、ナノモルオーダーの阻害剤の創成も視野に入れて、研究課題が設定され、実施されます。
ただし、癌は細胞増殖、細胞周期、接着などと密接に関連し、「基本的な生命の解明」そのものであるため、当該分野で取り扱うこととしています。
- 【課題B】
- 課題Aのテーマを除く創造的なアイデアを募集し、その結果選定された課題です。
「食品・環境等の産業利用」分野
- 【課題A】
- 食品・環境等産業利用に関わる研究基盤形成を指向するタンパク質構造・機能研究は、将来の我が国の産業を持続的に成長させていくために重要な分野です。また、これらの分野は創薬などに比べて実用化までの期間が比較的短いと期待されます。
産業応用を目指したタンパク質研究として、食品、環境、有用酵素、病原体、化学工業等産業利用の分野の研究課題が設定され、実施されます。
- 【課題B】
- 課題Aのテーマを除く創造的なアイデアを募集し、その結果選定された課題です。
(2)技術開発研究の概要
「技術開発研究」については、①タンパク質の試料を作る「生産」、②タンパク質の構造を解く「解析」、③タンパク質の機能を知る「制御」、④「生産」・「解析」・「制御」の情報を共有化させる「情報プラットフォーム」の4つの領域で展開される技術開発を実施します。
研究課題は、本プログラムの研究支援のために共通性・汎用性の高い基盤的な技術開発や技術基盤の整備を行う課題(課題C)と、難解析性タンパク質の構造・機能解析における革新的な技術開発に挑戦する課題(課題D)に分かれています。
- 【課題C】
- ①「生産」領域
構造・機能解析に適した試料調製が困難な重要ターゲットタンパク質の研究のために、新たな技術開発を行い、研究基盤を整備することを目的としています。
高分子量複合体や膜タンパク質等について、X線結晶構造解析のための良好なタンパク質の結晶やNMR解析のための安定同位体標識タンパク質の調製を可能にするため、最新の技術を駆使して、発現条件、発現用クローン、精製条件、結晶化条件等の探索・最適化を図り、その結果を知識体系として整備することにより、研究基盤「タンパク質発現ライブラリー基盤」を構築することを目標にしています。
この基盤構築のために、現在の技術では不可能なタンパク質調製の要素技術を新たに開発することも目標にしています。
- ②「解析」領域
立体構造解析が困難な重要ターゲットタンパク質の研究のために、新たな技術開発を行い、基盤的ファシリティーを整備します。
X線結晶構造解析技術については、膜タンパク質、複合体タンパク質等、大きな結晶を作成することが困難なタンパク質の結晶構造解析を進めるために、基盤となる微小結晶用の構造解析装置を開発し、さらに、X線結晶構造解析について、解析方法の自動化、迅速化等の先端的な技術開発によって、構造解析研究の推進を図る基盤を提供することを目標にしています。
- ③「制御」領域
重要ターゲットタンパク質の構造・機能研究のために、新たな技術開発を行い、基盤的リソースを整備します。タンパク質のリガンドとなる性質を持っている代表化合物を集積した化合物ライブラリーを整備し利用できる研究基盤「化合物ライブラリー基盤」として、整備、運営します。
特に、今後のターゲットタンパク質研究に重要となるタンパク質に注目した、リガンド候補化合物の収集が重要になりますが、タンパク質ネットワークを解明し、さらに重要タンパク質の制御を加速するために、「化合物ライブラリー基盤」を活用してリガンド化合物を探索する新規技術を開発します。
特に重要なタンパク質の機能や相互作用を阻害する化合物、結晶化を可能にする化合物等を、迅速に探索するためのウェットの新規スクリーニング技術を開発します。対象タンパク質の立体構造関連情報と、関連化合物に関する実験情報、既知情報等の活用によって、対象タンパク質のリガンド候補化合物をインシリコで予測する新規技術開発を実施します。
- ④「情報プラットフォーム」領域
本研究プログラムにおける「情報プラットフォーム」構築では、研究の進捗状況を把握するためにシステムを構築してプログラム全体で情報を共有することを目的にしています。このために、選定されたターゲットタンパク質の解明を進める本研究プログラムの各研究課題とともに「生産」・「解析」・「制御」3領域の基盤技術開発拠点から産出される成果データや関連する研究情報を集約化して統合する「情報マネージメントシステム」を構築し運営すること、ならびに、本研究プログラムで選定されたタンパク質ネットワークの作用機序を理解するため、公知の情報をはじめ、タンパク3000プロジェクトや本研究プログラムの成果を統合した情報基盤「タンパク質統合データベース」を構築し公開することを目的にして、これを達成するため、「情報マネージメントシステムの構築」と「タンパク質統合データベース構築」のための研究開発を実行するとともに、本プログラムの推進に必要な業務を支援します。
- 【課題D】
- 課題Dについては、上記課題Cの内容に関わらず、難解析性タンパク質の構造・機能解析において、例えばタンパク質発現、構造解析(X線・NMR・電子線)、スクリーニング、バイオインフォマティクス等に関して、本プログラム期間中にブレークスルーとなり得る革新的な技術を開発するような挑戦的・意欲的な課題が選定され、実施されます。